著者
林 正子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

日清戦争後から大正期にかけての日本におけるドイツ思想・文化論が、当時の知識人の意識や国情の実態を反映していることを確認し、国民国家確立期の日本におけるドイツ哲学・芸術の受容の意義について論じるというのが、本研究の目的であった。次のようにその結論の概要を挙げておきたい。1.当時の青年知識人たちにとって、ショーペンハウアー、ニーチェ、ウァーグナーらが代表するドイツ思想・文化は、俗化の方向をたどる文明の改革と主体性のない社会の道徳への反抗を実現するための支柱となった。2.ドイツ思想・文化受容の成果が雑誌「太陽」に掲載されたことで、数多くの読者に具体的な情報が与えられ、相対的・客観的な日本文化論の展開によって、日本(=自己)自身への認識を深めさせるというパラダイムが創り上げられ、時代精神そのものが形成されていった。3.<生の哲学>(Lebensphilosophie)の受容とその評論の隆盛は、明治というひとつの時代を閲した時期の[日本=自己]の存在の基盤を問う風潮と精神性を象徴的に表わすものであった。4.オイケンの<新理想主義>が移入されたことによって、現代文明・自然主義の超克、精神生活の建設が提唱されることとなった。5.<文明>と<文化>が、当該の社会状況や思潮の動向に応じ、用語として区別されるようになるのは1910年代であり、ドイツ語<Kultur>の翻訳である<文化>概念の登場が<文化主義>を導き出した。その要因としては、明治期における<日本文明>の進展についての自覚、<国民文化>確立の重要性の認識、ドイツ思想の受容による<教養>の練磨などが挙げられる。
著者
林 正樹
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 : 映像情報メディア (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.1017-1021, 2008-07-01

情報伝送工学の仕事は,対象を伝送して人に届ける,という図式に則っている.本稿では,廣松渉の哲学を参照し,この図式では人が対象に感動するという状況を説明できないのではないか,との問題提起をしている.そして,今後重要なコンテンツを扱う工学においては,一度旧来の図式を忘れて,物づくりや手仕事を見直すべきではないか,と述べている.
著者
林 正人
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.4-13, 2016-07-01 (Released:2016-07-02)
参考文献数
84
被引用文献数
2 1

近年の情報理論の発展の背景には,量子情報理論の成果がある.本稿ではそのような情報理論に対する量子情報理論の影響に注目し,これまで情報理論の発展に対して量子情報理論が果たしてきた役割について解説する.これにより,近年の量子情報理論の成果がその分野内に閉じたものでないことを説明する.
著者
小林 正秀
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第131回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.203, 2020-05-25 (Released:2020-07-27)

ナラ枯れは、江戸時代以前から日本で発生しており、過去の被害は周辺に拡がらなかったが、1980年代以降、全国的に拡大するようになった。京都府では、1990年代に被害が発生し、2011年以降は終息に向かったが、被害が再発している地域も多い。 ナラ枯れの発生原因についても、主因、誘因、素因に別けて考えるべきであろう。主因は、カシノナガキクイムシが媒介する糸状菌(Raffaelea quercivora)であることが証明された。誘因については、2005年の総説で、ブナ科樹木の大径化を指摘した。すなわち、燃料革命で化石燃料の利用が増え、薪炭林(里山よりも奥山に多い)が放置され、カシノナガキクイムシが繁殖しやすい大径木が増えたことを指摘した。この説が定説になってしまったが、総説では温暖化の影響も指摘した。しかし「温暖化を原因とする説が提唱されたこともあったが、60年以上前に冷涼な地域で発生しており、関連性を示すデータは得られていない」と反論され、科学的な検証を試みる人はなかった。そこで、演者は、温暖化がナラ枯れに与える影響について検証してきた。ここでは、温暖化がナラ枯れの要因であることを示す。
著者
原 久仁子 小林 正敏 秋山 康博
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.231-240, 2001 (Released:2002-09-27)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

骨粗鬆症治療薬は一般に単剤での処方だけでなく, 数種類の薬剤が併用されることが多いが, その根拠となるデータは非常に少ない. ビタミンK2(メナテトレノン, K2)と1α(OH)ビタミンD3(D3)はいずれも臨床で骨粗鬆症治療薬として広く用いられている. そこで卵巣摘除ラットを用いて両薬剤の併用の意義を検討した. フィッシャー系20週齢雌性ラットを偽手術あるいは卵巣摘除し, 卵巣摘除ラットをさらに対照, K2, D3, K2+D3の4群(n=10)に分けた. 全てのラットを個別ケージで制限給餌により飼育し, K2はメナテトレノン(MK-4)約37mg/kgを混餌投与, D3は1α(OH)D3を0.3μg/kg週3回, 8週間経口投与した. 8週後の血漿中カルシウム(Ca), 無機リン, アルカリホスファターゼ活性, オステオカルシン, 1,25(OH)2D3, 副甲状腺ホルモン(PTH), MG-4濃度および大腿骨の骨密度と3点曲げ骨強度を測定した. 卵巣摘除による血漿中各パラメータへの影響は認められなかった. D3群は単独, 併用ともに血漿中Caは高値を, PTHは低値を示した. 全骨領域および海綿骨領域の骨密度は卵巣摘除により骨端部ではそれぞれ偽手術群の81%, 41%に, 骨幹部ではそれぞれ96%, 86%に減少した. K2, D3の各単独群は骨端部全骨領域の骨密度, 骨幹部海綿骨領域の骨密度, 骨塩量の低下を抑制した. K2+D3群では単独群で作用を示したパラメータの他に骨端部での全骨領域および海綿骨領域の骨塩量の低下を抑制した. またK2+D3群は骨端部海綿骨領域の骨密度, 骨塩量, 骨幹部の皮質骨厚でD3群に比して有意に高値を示した. 骨強度はK2+D3群でのみ対照群に比して最大荷重は有意に高値を, 剛性は高値傾向を示した. すなわちK2+D3群が骨端部, 骨幹部のいずれのパラメータにおいても一番高い値を示した. 以上, K2とD3との併用投与はそれぞれの単剤投与に比してより大きな薬効が期待できることが示唆された.
著者
林 正幸
出版者
Entomological Society of Japan
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.120-123, 2023-06-25 (Released:2023-06-28)
参考文献数
10

The green lacewing Plesiochrysa ramburi (Schneider, 1851) (Neuroptera: Chrysopidae) was recorded from Minami-Daito Island in the Daito Islands, representing the first report of this species in Japan. In the laboratory, larvae of P. ramburi were successfully reared by feeding on eggs of the flour moth Ephestia kuehniella (Zeller, 1879). The mean total development period at 25°C was 25.7 d for females and 23.2 d for males. I propose Semadara-nan-you-kusakagerou as the Japanese name for this lacewing species.
著者
堀 進悟 副島 京子 篠澤 洋太郎 藤島 清太郎 武田 英孝 木村 裕之 小林 正人 鈴木 昌 村井 達哉 柳田 純一 相川 直樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Supplement5, pp.11-14, 1997-12-20 (Released:2013-05-24)
参考文献数
6

近隣救急隊の1994年12月から1996年4月まで16ヵ月間の出場記録を調査し,浴室内で発生した急病の調査を行った.浴室の急病は43例で当該期間の全救急件数の0.19%を占めていた.年齢は77±10歳と高齢者に多く,男女比は24例対19例と男性に多かった.診断は心肺停止26例(60%),失神(前駆症)14例,脳血管障害3例であった.各群とも高齢者が多く,明らかな年齢差を認めなかった.浴室急病の発生時期は,心肺停止のみならず,いずれの群も12-3月の厳寒期に集中していた。心肺停止は自宅浴室の発生が26例(100%)で,公衆浴場における発生は認めなかった. 一方, 非心肺停止例では自宅浴室が12例,公衆浴場が5例であった(p<0.01).さらに浴室内の発生場所を検討すると,心肺停止は浴槽内が22例(85%),洗い場が4例,非心肺停止では浴槽内が7例,洗い場が7例,不明が3例であった(p<0.01).溺水の有無を検討すると,心肺停止では21例に,非心肺停止では2例に溺水を認めた(p<0.01).すなわち,心肺停止は非心肺停止例と比較して自宅浴室の浴槽内で発生しやすく,溺水をともない易いことが示された.本研究により,公衆浴場よりも自宅浴室が心肺停止の危険をもたらしうることが示された.すなわち,身近に救助者がいれば入浴急死は防止できる可能性が示唆された.
著者
葛谷 健 中川 昌一 佐藤 譲 金澤 康徳 岩本 安彦 小林 正 南條 輝志男 佐々木 陽 清野 裕 伊藤 千賀子 島 健二 野中 共平 門脇 孝
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.385-404, 1999-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
47
被引用文献数
86

糖尿病は, インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし, 種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である. その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与する. 代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすく, 動脈硬化症をも促進する. 代謝異常の程度によって, 無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示
著者
上野 浩太 林 正博 竹内 凌也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.4, pp.158-170, 2023-04-01

本論文では,信頼性制約下での通信ネットワーク最適化問題(以下単に「最適化問題」と呼ぶ)について新たな定式化を提案する.まず,通信ネットワークの信頼性研究には二種類のアプローチがあることを指摘する.一つはグラフ理論的アプローチであり,もう一つは通信経路に着目したアプローチである.後者の方が一般的・汎用的と言えるが,最適化問題に関する既存研究は,全て前者のアプローチに基づいている.本研究が,初めて通信経路に着目したアプローチの下での最適化問題を検討する.具体的には,実現可能な通信経路の集合から,一定の信頼性を保証しつつ最もコスト最小となる部分集合を自動的に生成する問題を検討し,その数学的定式化と二つの解法を提示する.解法の一つは総当たりによる方法であり,もう一つは2分木探索に基づく.最後に数値実験結果を示す.
著者
小林 正尚 大塚 智子 鈴木 昇一
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.19-27, 2013-01-20 (Released:2013-01-25)
参考文献数
18
被引用文献数
9 10

The purpose of this paper is to reappraise the accuracy of a conversion coefficient (k) reported by International Commission on Radiological Protection Publication 102 Table A.2. The effective doses of the routine head computed tomography (CT), the routine chest CT, the perfusion CT, and the coronary CT were evaluated using the conversion coefficient (adult head: 0.021 mSv·mGy-1·cm-1, adult chest: 0.014 mSv·mGy-1·cm-1). The dose length product (DLP) used the value displayed on the console on each scanning condition. The effective doses were evaluated using a human body type phantom (Alderson Rando phantom) and thermoluminescent dosimeter (TLD) elements for comparison with the converted value. This paper reported that the effective doses evaluated from conversion coefficient became different by 0.3 mSv (17%) compared with measurements, the effective dose computed with the conversion coefficient of the adult chest may be underestimated by 45%, and the bolus-tracking which scans the narrow beams should not use a conversion coefficient.
著者
倉林 正 武村 政春
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.114-121, 2017 (Released:2018-10-29)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本研究は,安価で簡単に自作できる簡易電気泳動装置を開発するとともに,電気泳動実験全体の費用を軽減させる方法を考え,授業で実施しやすくする安価な電気泳動実験を開発することを目的とした.本研究では,「弁当用シリコーン容器」,「鉛筆の芯」,「乾電池」,「リード線」を材料に安価で簡単に自作できる簡易電気泳動装置を開発することができた.さらに,使用する試料やゲル,結果確認の方法を工夫することによって,電気泳動実験全体の費用も軽減することができた.授業実践では,生徒たちもスムーズに実験操作を行うことができ,適切な結果を得ることができた.また,生物教員を対象とした質問紙調査では,多数の教員から本研究で開発した電気泳動実験を授業で実施できるという回答が得られた.以上のことから,本研究は,高校生物等の授業で電気泳動実験を実施しやすくするために有効であることが明らかとなった.
著者
小林 正治 玉乃井 英嗣 井上 智晴 益山 新樹
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 55 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP-13, 2013 (Released:2018-03-09)

1. はじめに 食用キノコであるヤマブシタケには,アルツハイマー型老年期認知症の中核・周辺症状を改善する効果があることが臨床試験によって認められており[1],最近では,生もの,乾燥体,粉末,錠剤などの様々な形体で健康食品として販売されている。ヤマブシタケの機能性を司る因子の一つとして,子実体に含まれるヘリセノン類の関与が指摘されている。ヘリセノン類は1991年に発見された天然由来としては初の神経成長因子(NGF)合成促進物質であり,間接的にニューロンの分化・成熟・機能維持を助けることにより脳の老化を予防すると考えられている[2]。ヘリセノン類には多数の同族体が存在し,NGF合成促進活性だけでなく血小板凝集抑制活性[3]や小胞体ストレスによる細胞死の抑制活性[4]などの多彩な生物活性が知られている。しかしながら,これらの生物活性は個別の化合物に対して局所的に調べられたものであり,多様な構造を持つヘリセノン類の包括的な構造活性相関については明らかにされていない。活性試験についても,天然物サンプルの量的供給が隘路となり,in vivoでの毒性試験や薬物動態試験まで十分に検討されていない。以上の背景を踏まえ,本研究では,多様な構造を持つヘリセノン類の体系的な構造活性相関と創薬・治療学的応用を目指し,全合成研究を行った。2. 合成計画 ヘリセノン類は大別して,側鎖の5’位が酸化されているものと酸化されていない図1.ヘリセノン関連天然物の体系的全合成戦略(☆は本研究で合成完了した化合物)ものに分けられ,芳香環右辺や左辺側鎖の構造の違いによって系統化できる(図1)。私たちは,側鎖とコアのカップリングによって生成するフタリド1を共通中間体として,非天然型の誘導体も含めて網羅的に合成するルートを計画した。3. コア部の短段階合成[5] ヘリセノン類を効率的に合成するために重要となるのは,多様な官能基を直截的かつ位置選択的に導入することである。私たちは,不飽和エステル3とアセト酢酸エチルのMichael-Claisen反応によりジケトン5を合成し,臭化銅(II)によるワンポット多官能基化反応を経てコア部6を直截的に合成した(図2)。5→6の多官能基化反応では,酸性度の高いジケトンのα位が選択的に臭素化された後 (中間体i),メタノールの付加,HBrの脱離,芳香環化,ラクトン化が連続的に起こり所望のフタリドが生成したと考えられる。以上のように,市販のカルボン酸2から4工程でコア部を合成するルートを見出した5。図2.コア部の短段階合成4. ヘリセノンJおよびヘリセンA-Cの全合成5 続いて,側鎖とのカップリングを検討した。7aは2つのオルト位に電子供与性置換基を持つ反応性の低いアリールブロミドであったが,条件の最適化を行った結果,CsF存在下,(Ph3P)2PdCl2を触媒として80~85 °Cでカップリングを行うことで,目的の1bが単離収率60-87%で生成した(図3)。なお,本過程では7aから誘導したアリール銅試薬のゲラニルブロミドに対する置換反応も検討した(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
長岡 千香子 古川 雅子 林 正治 孫 媛 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.424-427, 2022-12-18 (Released:2023-01-27)
参考文献数
8

現在,国内の複数の研究・高等教育機関では,自大学で提供した講義の映像をまとめたOpenCourseWare (OCW),教育用ガイドライン,自学用教材等の学習・教育用コンテンツを,誰でも無償で利用できるOpen Educational Resources(OER)として公開している.これらのOERを公開するためのプラットフォームの種類は多様であるが,その一つの手段として,機関リポジトリ上で公開する試みがみられる.本発表では,日本国内のOER公開に関する取組,機関リポジトリで実際に公開されているOERへのアクセス状況の集計,機関リポジトリ上でOERを公開する際の検討事項等を通じて,OER公開用プラットフォームとしての機関リポジトリの可能性について検討・考察する.
著者
山神 彰 山田 武宏 北川 善政 大廣 洋一 佐藤 淳 石黒 信久 今井 俊吾 小林 正紀 井関 健
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.254-261, 2019-05-10 (Released:2020-05-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2 4

Third-generation oral cephalosporins are broad-spectrum antimicrobial agents and constitute one of the most used antibiotic classes in Japan. In the “National Action Plan on Antimicrobial Resistance (AMR),” the Japanese government declared implementation of efforts to reduce the use of oral cephalosporins by 50% by 2020, compared to 2013. Antimicrobial resistance generally occurs due to inappropriate use or low-dosage exposure to antibiotic agents. Therefore, the choice of appropriate antibiotics is essential for implementing antimicrobial stewardship. To evaluate the prophylactic effects of antibiotics in impacted mandibular third molar surgery, we compared the rate of surgical site infection (SSI) in patients who were administered cefcapene-pivoxil (CFPN-PI) orally with that in patients who received amoxicillin (AMPC) orally. We conducted a retrospective study by reviewing the medical charts of patients from Hokkaido University Hospital from April 2016 to March 2017. The patients evaluated were classified into two groups: the AMPC group (n = 164) and the CFPN-PI group (n = 129). The SSI ratio of the CFPN-PI group was significantly higher than that of the AMPC group (CFPN-PI group, 11.6% (15/129); AMPC group, 2.4% (4/164); P = 0.002). Multivariate logistic regression analysis demonstrated that “use of CFPN-PI for prophylactic treatment” and “hospitalization after surgery” were independent factors related to the onset of SSI following impacted mandibular third molar surgery. These results demonstrated that AMPC was more effective than CFPN-PI in the prevention of SSI after impacted mandibular third molar surgery, and its regulated dosage can effectively contribute to the optimal use of antimicrobial prophylactic treatment.
著者
大科 枝里 小林 正典 金城 美幸 中川 美奈 大塚 和朗 赤星 径一 田邉 稔 松木 裕子 小林 大輔 岡本 隆一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.683-691, 2022-07-10 (Released:2022-07-11)
参考文献数
24

52歳,女性.胆道閉鎖症にて生後120日で胆囊十二指腸吻合術が行われた.反復する胆管炎に対して内視鏡治療を行った際の胆汁細胞診でClass Vが検出された.マッピング生検で胆囊管肝管合流部に癌を確認し,肝外胆管切除術,胆管空腸吻合術を行った.胆管癌はBilIN-3までの粘膜内癌でR0切除であった.胆道閉鎖症に対する胆囊十二指腸吻合術はまれで,術後長期の胆管癌合併の報告はなく,文献的考察を加えて報告する.
著者
菊池 真 舘 延忠 小塚 直樹 二宮 孝文 小林 正裕 堀本 佳誉 内田 英二 佐々木 公男 辰巳 治之
出版者
札幌医科大学医学部
雑誌
札幌医学雑誌 = The Sapporo medical journal = The Sapporo medical journal (ISSN:0036472X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.39-44, 2005-08-01

Formalin is a main fixative in the field of pathology. Molecular biological analysis of formalin-fixed samples was difficult because formalin fixation decreased the quality of isolated DNA. Therefore, we compared the quality of DNA obtained by using DNA extraction kit (Sepa GeneR) to that using proteinase K. Using proteinase K, it was possible to extract high quality DNA, and obtain DNA from samples of 3 months fixative. Moreover, by proteinase K method, it was also possible to analyze aprataxin gene exon 5 in DNA extraction from formalin-fixed human brain tissues from a suspected case of early-onset ataxia with ocular motor apraxia and hypoalbuminemia (EAOH). The aprataxin gene exon 5 DNA sequences were obtained following in vitro gene amplification using nested-PCR. Mutation on aprataxin gene exon5 was not observed in the suspected case of EAOH; however, it was possible to perform sequence analysis of aprataxin gene exon5. This method was more useful for DNA extraction and direct sequencing of formalin-fixation samples than the kit method.
著者
林 正義
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.121-143, 2019 (Released:2021-07-28)
参考文献数
7

大学の学部専門課程で利用される財政学や公共経済学の教科書では,課税が市場に与える効果の一例として,完全競争市場における部分均衡の枠組みを用いた「物品税の効果」が取り上げられている。その典型的な解説は,納税義務が供給者にある場合,物品税によって供給曲線が税率分だけ上方に「シフト」し,シフト後の「供給曲線」と需要曲線との交点が物品税下での新しい市場均衡になるというものである。本稿では,この物品税の効果に関して,1990年以降に出版された財政学や公共経済学の教科書111点がいかなる解説を行っているかを検証する。そして,多くが必ずしも正確に解説しているわけではなく,場合によっては読者(学生)を誤った理解へと誘導しているおそれがあることを指摘する。