著者
林 伸和
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.12-19, 2016

<p>Acne is a chronic skin condition that affects patient quality-of-life. More than 90% of the Japanese population experiences acne at some point in their lifetime. Comedones, which are caused by excess sebum secretion and hyperkeratosis in the infundibulum, appear in the first stage of acne. The second stage involves inflammatory eruptions mainly caused by <i>Propionibacterium acnes</i>. Benzyl-peroxide (BPO), and fixed combination products of BPO and clindamycin, became available in Japan in 2015. BPO acts on both comedones and inflammatory eruptions, and it can be used for maintenance therapy because it does not induce antibiotic-resistant <i>P. acnes.</i> To achieve early results and to prevent the emergence of antibiotic-resistant bacteria, the revised guidelines for the treatments of acne in Japan recommend combination therapy with adapalene, antibiotics, and BPO, including fixed-combination topical agents, in the acute inflammatory phase. Once inflammation has improved, comedones treatment should be continued with adapalene and/or BPO in the maintenance phase to achieve further improvement and to prevent recurrence. The acute phase lasts approximately 3 months, and antibiotics should not be used for maintenance therapy. Sometimes, inflammatory eruptions can result in hypertrophic and atrophic scars that cannot be treated completely. Early aggressive treatment is important to prevent scars. Skin care and cosmetics are also important in the treatment of acne as well as to avoid aggravation. The guidelines recommend twice-daily face washing with a suitable cleanser. Non-comedogenic moisturizers should be used by patients who have dry skin and by those who need to avoid the adverse effects of adapalene and BPO. There is no reliable evidence connecting certain foods and acne, and we should not uniformly restrict specific foods. There is compelling evidence demonstrating the efficacy of azelaic acid and chemical peels with glycolic acids in the treatment of acne. Camouflage also helps acne patients improve their quality of life. To improve acne treatments, more evidence is needed regarding the integration of treatments and skin care.</p>
著者
剣持 龍介 小林 知世 山岸 敬 佐藤 卓也 今村 徹
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.236-244, 2013-06-30 (Released:2014-07-02)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

【目的】 Rey-Osterrieth Complex Figure Test (ROCF) の模写課題における認知症患者の遂行機能障害を評価する簡易な尺度を作成し, 妥当性を検討する。【対象】 新潟リハビリテーション病院神経内科を初診し, 数唱, MMSE, Alzheimer's Disease Assessment Scale(ADAS), Frontal Assessment Battery (FAB)および ROCF の模写課題を施行した認知症患者で MMSE 得点が15 点以上かつ25 点以下の97 症例。【方法】 評価項目は, 計画的で効率的な模写遂行のために適切な順序で模写されているか否か(模写時方略)を評価する 2 項目と, 体系的な模写遂行のために重要な ROCF の部位がまとまった形態として抽出されひと続きで模写されているか否か(骨格要素の抽出)を評価する 5 項目の計7 項目とした。評価項目ごとに得点あり/なしを従属変数とし, MMSE 得点および教育年数を共変量, 年齢, ADAS 下位項目のうちの単語再生, 構成, 観念行為, 見当識, 単語再認の減点, FAB 得点いずれかを独立変数とする logistic 回帰分析を施行した。【結果】 教育年数と認知機能の全体重症度の影響を除外した logistic 重回帰分析において, 評価項目のうちの(1)模写時方略のa)大きな長方形の描き方, b)大きな長方形内部の描き方, (2)骨格要素の抽出のa)大きな長方形, b)大きな長方形内の2 つの対角線, d)大きな長方形内の水平な中央線の 5 項目でFAB 得点との間に有意な関係また有意ではないものの関係する傾向が認められた。これら5 項目の合計得点を従属変数とし, 教育年数と認知機能の全体重症度の影響を除外した重回帰分析においても, FAB 得点に有意な偏回帰係数が得られた。【結論】 本研究では, 評価項目の多くと遂行機能障害との関係が確認され, 尺度として一定の妥当性が示唆された。これらの評価項目を用いた尺度は, 認知症患者の ROCF 模写課題における遂行機能障害を評価する簡便な評価方法であり, 物忘れ外来などの日常的な臨床場面での使用に一定の有用性を有すると考えられた。
著者
富井 啓介 門脇 徹 北島 尚昌 福井 基成 永田 一真 堀江 健夫 阿部 博樹 奥田 みゆき 丞々 弥生 坪井 知正 仁多 寅彦 蝶名林 直彦
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.291-297, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
33

慢性呼吸不全に対する在宅長期ハイフローセラピーは,解剖学的死腔の洗い出し,相対湿度100%の加湿,呼気時陽圧換気,低侵襲のインターフェイス,高流量システムによる安定したFIO2供給などにより,COPD,気管支拡張症,拘束性換気障害などで有効性が期待される.特にCOPDに関しては夜間就寝中の使用で夜間及び日中のPaCO2低下,QOL改善,増悪抑制などがランダム化比較試験で示されており,PaCO2が 45 mmHg以上 55 mmHg未満,もしくは 45 mmHg未満でも夜間低換気を認めるような場合が適応と考えられる.臨床試験における長期ハイフローセラピーの有害事象は軽微なもののみであったが,導入にあたっては入院の上,動脈血ガスや経皮酸素飽和度,経皮CO2分圧,バイタルサインなどをモニターしながら適切な流量とFIO2,加湿温度を設定し,さらに鼻カニュラの装着や加湿用水,機器の管理教育などを十分に行う.
著者
渡邉 誠衛 大野 剛 小林 忠彦 佐渡 高智
出版者
秋田県総合食品研究センター
巻号頁・発行日
no.18, pp.9-16, 2016 (Released:2017-04-28)

我々は、清酒の品質保持と様々な要因との関係を検討している。本報では、ビン内の気相と熟成との関連を検討した結果、清酒への二酸化炭素置換または窒素置換が、貯蔵中のオフフレーバーの発生抑制効果があることが分かった。また、ビンの色と熟成との関連を検討した結果、遮光環境下においても水色のビンにオフフレーバー(硫化物臭、脂肪酸臭等)が強く発生し、銅と高い正の相関があり、添加試験でも再現性が確認できた。
著者
小林 享夫 佐藤 賢一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.138-148, 1976-04-25

本病菌 Cercospora spiraeicola Muller et Chupp は南米グアテマラでシジミバナ (Spiraea prunifolia) 上に記載されたもので, わが国ではテマリシモツケ (Physocarpus amurensis) およびケアメリカシモツケ (P. opulifolius) の葉を侵して著しい褐斑と早期落葉をおこす。人工接種ではシモツケ科の Spiraea 属, Stephanandra 属, Sorbaria 属などには発病しない。日本産の菌は Physocarpus 属にのみ病原性を有し Stiraea 属に陰性である点で若干の疑義は残るが, シジミバナの苗木かえられないこと, シモツケ科の植物上には本種以外に形態的に一致する種がないことから, やはり Cercospora spiraeicola に包括されるものと結論した。本病菌の分生胞子は病落葉上で脱落することなしに高い発芽率を保持したまま越冬し, これが翌春5〜6月に第一次伝染源となる。冬芽における潜伏越冬の可能性はほぼ否定された。感染から発病までの潜伏期間は春の低温期で約2か月, 夏〜初秋の高温期で約1か月である。本病菌の分生胞子は25〜30Cを発芽適温とし空気湿度98%以上で良好な発芽を示し, 92〜94%でも低率ながら発芽する。培地上では分生胞子の形成は認められず, ジャガイモ, 麦芽, 斉藤氏しょう油および Waksman 氏寒天培地上で良好な発育をする。菌そうは10〜35Cの間で生育し25〜30Cを適温とする。水素イオン濃度は, 極端な酸性側を除いては, 分生胞子の発芽および菌そうの発育にほとんど影響しない。
著者
井上 勝夫 神谷 俊介 吉林 利文 宮岡 等
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.199-207, 2018-04-01 (Released:2019-08-21)
参考文献数
18

重症の聴覚過敏症状を呈した自閉スペクトラム症autism spectrum disorder(ASD)の18歳女性症例の治療経過を報告した。患者は13歳時に不登校のため当院を初診し,特定不能の広汎性発達障害と診断された。18歳時,ほとんど全ての日常生活音に過敏となり驚愕の反応を示し恐怖を感じるようになり,耳栓とイヤーマフでも対処困難なため再診した。耳鼻科での医学検査,頭部magneticresonance imaging検査,および脳波検査で異常所見なく,ASDに関連した聴覚過敏と診断された。適応外使用であることを含めた説明と同意を経て薬物治療を試みた。Aripiprazole(ARP)を18mgまで漸増したところ症状は軽快したが,副作用が生じたため中止した。その後,ARP 3 mgで症状の軽快がみられたが効果不十分だったため,ARP再開3カ月後より音曝露を課題とした治療の併用を試みた。音曝露は,音楽を耐えられる音量で1日1回15分毎日,徐々に音量を上げ,耳栓の上からヘッドホンを装着して聴くことを課題とした。その結果,音刺激に対する馴化と般化が生じ聴覚過敏は大幅に軽減した。ARP再開5カ月後,副作用のためARPを中止し音曝露のみを3カ月間継続したが,症状の改善が続いた。本症例の治療経過から,ASDの聴覚過敏に対する少量のARPと音曝露の併用の効果の可能性が示唆された。ASDの聴覚の特徴,ASD治療におけるARPについての副作用を含めた最近の知見,聴覚過敏の治療,および今後の展望について考察した。
著者
林 信太郎 岡田 豊博 堤 久 熊川 寿郎 森 眞由美
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.373-376, 1999-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

症例は72歳男性. 1991年頃より膝関節痛が出現しNSAIDsが投与された. 同時期に軽い腎障害を指摘された. 1993年に貧血 (Hb 9g/dl台) を指摘された. 1996年7月に下腿の浮腫と息切れを主訴に当院に受診し, 貧血の進行 (Hb 6.9g/dl) と腎障害 (Cr 1.5mg/dl) を認め入院となった. 貧血の主因として骨髄異形成症候群 (以下MDS) が, 腎障害の精査で行った腎生検でIgA腎症が確認された. また10月下旬には両側手, 膝関節に関節炎が出現した. このためプレドニン20mg/日を開始したところ, すみやかに関節炎は消失し, 貧血と腎機能にも改善傾向がみられた.本例は経過中にMDS, 腎障害, 関節炎と多彩な臨床像を呈したが特にMDSと成因の一つに骨髄異常を指摘されているIgA腎症の合併例はこれまでになく, 本報告が一例目と思われる.
著者
小林 信一
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.131-154, 2009-05-23 (Released:2019-05-13)
参考文献数
12
被引用文献数
1

1990年代以降の研究活動の改革を含む大学改革は,3つの理念により先導されてきた.第1は1990年代前半からの「基礎研究シフト」や博士後期課程の拡大などによる拡大モデルである.これは,90年代半ばから徐々に,イノベーション・モデルとも呼ぶべき,科学技術と社会経済的価値との関連性を重視した改革モデルと,ニューパブリック・マネジメント・モデルとも呼ぶべき改革モデルに置き換えられていく.改革は,90年代には大学の研究活動を拡大する方向に働いたが,2000年代には改革の成果があがっているとは言いがたい.むしろ,大学間格差の拡大,ポスドクの増加などが顕在化し,「選択と集中」の方向性は妥当なのか,システムに矛盾はないのか,制度的な対応に偏りすぎていないか,などの問題に直面している.
著者
森 美奈子 上村 浩 竹林 正樹
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.146-153, 2022-05-31 (Released:2022-06-10)
参考文献数
25

目的:ナッジが設計された社員食堂での健康メニュー選択促進の実践と利用者の状況等の報告を目的とした.活動内容:特定非営利活動法人TABLE FOR TWO Internationalと契約した社員食堂では,ナッジのEASTフレームワークに則って健康メニュー選択を促進している.Easyナッジとして,手に取りやすい場所に健康メニューを配置し,健康メニューを選ぶと20円が自動的に寄付できる仕組みとした.Attractiveナッジとして,手書きポップで健康メニューを強調し,支援を受けた子どもの笑顔の写真を掲示した.Socialナッジとして,開発途上国の学校給食への寄付数を,Timelyナッジとして,今すぐに援助を要する子どもがいることを掲示した.活動評価:参加群(当該社員食堂利用者)100名に質問紙調査を,未参加群(当該社員食堂を利用したことのない労働者)70名にウェブ調査を実施した.参加群(解析対象者47名)は,未参加群(同70名)より社会貢献活動と健康メニューの両方に興味がある者が多く,ボランティア活動の参加経験率も高かった(いずれもP<0.001).参加群の利用期間は平均29.3か月,今後も継続利用したい者が71.0%だった.これらのナッジは,既存のナッジの弱点である「短期的効果」を克服できる可能性が示唆された.今後の課題:本実践では各群で調査法が異なったこと等の限界があるため,今後は同一企業の社員を対象に条件を揃えて検証する必要がある.
著者
林 祐介 吉原 聡 吉田 久雄 見川 彩子 林 明人 藤原 俊之
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11613, (Released:2019-11-22)
参考文献数
28
被引用文献数
1

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)術後患者における術後早期膝関節可動域が自立歩行獲得期間および在院日数に及ぼす影響を検討した。【方法】TKA 術後患者78 例を対象とした。年齢とBody Mass Index,術後4 日時点の膝関節可動域(自動・他動屈曲,自動・他動伸展),運動時痛と歩行時痛(Visual analogue scale),炎症所見(血清C 反応性蛋白)と術後7 日時点の膝関節伸展筋力(ハンドヘルドダイナモメーター)を評価し,在院日数および自立歩行獲得期間に与える影響を重回帰分析(ステップワイズ法)にて検討した。【結果】重回帰分析の結果,在院日数および自立歩行獲得期間に有意に影響する因子は,それぞれ自動膝屈曲可動域と年齢,および自動膝屈曲可動域と自動膝伸展可動域が抽出された。【結論】TKA 術後患者において,術後早期の自動膝関節可動域の拡大は,自立歩行獲得期間および在院日数の短縮に影響を与える可能性がある。
著者
大類 伸浩 藤田 真敬 菊川 あずさ 蔵本 浩一郎 小林 朝夫 溝端 裕亮 立花 正一 高田 邦夫 山田 憲彦 別宮 愼也
出版者
航空医学実験隊
雑誌
航空医学実験隊報告 (ISSN:00232858)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.43-66, 2016 (Released:2020-04-11)
参考文献数
127

Gravity-induced loss of consciousness (G-LOC) is a major threat to fighter pilots and may result in fatal accidents. High +Gz (head-to-foot direction) acceleration force induces cerebral blood loss and results in gray-out, black out, and G-LOC. Countermeasures to avoid G-LOC include anti-G strain maneuver, anti-G suits, and pressure breathing for G, etc. They effectively decrease G-LOC incident, but have not eradicated it. Objective detection of G-LOC related symptoms is the prerequisite. In spite of many G-protective measures, G-LOC monitoring system has yet to be developed. Technologies for non-contact monitoring or motion capture have ventured into health care market. Real time physiological sensing for heart rate, body temperature, respiratory rate, etc, is used to medical, health care, physical fitness and sports area. Those advanced technologies might have potential for future G-LOC monitoring. This article reviews current status and future of countermeasures for G-LOC, and related technologies.
著者
小林 麻里子 奥脇 義行 川井 英雄
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.105-110, 2006 (Released:2006-11-14)
参考文献数
8
被引用文献数
1 5

1996年より国産小容量PET飲料の販売が解除された。2003年における清涼飲料水生産量1,800万kLのうちPET飲料は56%のシェアを占め,その内の36.4%を500mLが占めている。500mL PET飲料が短期間でこれほど普及したのは,小容量PET飲料は,缶と違って再栓ができるという利点から,飲みかけの状態で長時間持ち歩くことが何らかの問題を生じないか,ということを細菌学的観点から検討する研究を行った。(1) PET飲料からの直接飲用により,口腔内に常在する様々な細菌が混入したが,時間経過とともに減少した。(2) 特に,抗菌性をもつと言われている緑茶飲料,ウーロン茶飲料では減少が急速であり,8時間保存後に生菌は認めなかった。(3) 糖類を含む果汁飲料,アミノ酸を含むスポーツ飲料,デンプンを含むむぎ茶飲料では減少が緩慢であり,8時間保存後でも生菌が多く認められた。(4) 通常は複数回の開栓・飲用があり,その都度細菌の暴露を受けるので,生残は多くなるものと考えられる。従って,特にむぎ茶飲料を飲みかけの状態で長時間持ち歩き飲用することにおいては注意が必要である。(5) Staphylococcus属菌は生菌数の減少が急速なウーロン茶飲料や緑茶飲料でも生残しており,減少が緩慢なむぎ茶飲料などではStreptococcus属菌も検出された。
著者
丹野 誠志 羽廣 敦也 林 明宏 金野 陽高 上野 敦盛 葛西 和博
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.3315-3323, 2014 (Released:2014-09-27)
参考文献数
56

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)のコンセンサスガイドラインが2012年に改訂された.2006年初版と2012年改訂版の最大の違いは,分枝型IPMNの診療方針選択に関するアルゴリズムの変更である.初版では嚢胞径を重視したアルゴリズムが推奨された.しかし改訂版では,壁在結節や10mm以上の主膵管径といったhigh-risk stigmataの有無が重視され,さらに悪性の疑いを示す所見をworrisome featuresと定義した上で,それらを認めない場合は嚢胞径に応じた診療方針を選択するとしたアルゴリズムに変更された.一方,浸潤癌のみを悪性と定義したWHO分類にしたがってcarcinoma in situという用語を廃止し,同程度の異型を示す病変をhigh-grade dysplasiaと定めたことも大きな変更である.2012年改訂版は今後,その有用性についてさまざまな検証を受けるとともに,新たなエビデンスにもとづいてさらに改訂されていく必要がある.