著者
若林 三千男
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.154-169, 1973
被引用文献数
4 1

東アジアに分布するユキノシタ属のDiptera節は,ENGLER(1930)によると13種を含み,そのうち5種が日本に産するが,最近,この節に属する新種が福井県の丈競山北山麓で,渡辺定路氏によって最初に採集された.そこで,この新種の分類学的位置づけのため,新種を含めた6種の日本産種について,いくつかの形質を比較検討し,各種間の類縁関係を考察するとともに,新種の記載を行ったので,ここに要約してみたい.結論として導き出された6種間の関係をFig. 14に示してあるが,最も大きな指標形質となったものは染色体数,及び核型である.各種の染色体はTable 1に示すとおり,2n=22 (ジンジソウ,ダイモンジソウ),2n=20 (ハルユキノシタ,センダイソウ,新種),2n=36, 54 (ユキノシタ)であり,基本数はそれぞれX=11, X=10, X=9である.これらの3群は各々まとまった分類群と考えられるが,このことはジンジソウとダイモンジソウ(X=11),及びハルユキノシタとセンダイソウ(X=10)の核型がよく似ていることからも示唆される.染色体の大きさは,ジンジソウ,ハルユキノシタでは大変大きく,ダイモンジソ,ユキノシタでは小さく,センダイソウ,新種ではその中間の大きさである.進化の過程において,染色体の大きさの退化,及び基本数の減少は,広く認められている.おそらくダイモンジソウ,及びセンダイソウは,染色体の大きさの退化を伴ないながら,それぞれジンジソウ,及びハルユキノシタに似たものから導びかれてきたものと考えられる.ユキノシタは,2n=18をもったprimitiveな種を仮定し,そのようなものから倍数化,及び染色体の退化によって導びかれたものと考えられる.新種の核型をみると,ハルユキノシタ,センダイソウより,terminalに一次狭窄をもつ染色体が多い.これは,この新種が,より特殊化していることを示すものであろう.また基本数の減少,x=11→10→9,から,ジンジソウ→ハルユキノシタ→ユキノシタの祖先型が考えられる.ジンジソウ,ハルユキノシタとも,同じように大きい染色体をもつことも1つの傍証となる.要するに,ジンジソウ,ハルユキノシタなどはprimitiveな型を保っているものと考えられ,ダイモンジソウ,センダイソウ,新種,及びユキノシタはadvancedのものであって,前者から後者へとそれぞれ平行的に進化してきたものと考えられる.外部形態からみると,花弁に走る脈が一般に多いもの(ジンジソウ,ハルユキノシタ,ユキノシタ)と,一般に脈の少ないもの(ダイモンジソウ,センダイソウ,新種)が認められ,後者は前者の退化型と考えられる.種子の表面形態にも2つの型があり,1つは,表面に大小2種類の突起を有するもの(ジンジソウ,ハルユキノシタ,ユキノシタ)と,他は1種類の突起しか有しないsimpleなもの(ダイモンジソウ,センダイソウ,新種)である.葉に含まれる修酸石灰結晶の形にも2種類あり,1つは針状のもの(ジンジソウ,ハルユキノシタ): 他は金米糖状のもの(ダイモンジソウ,センダイソウ,新種,ユキノシタ)である.花序にある腺毛の形態にも2つの型があり,1つは腺毛の柄が一列の細胞からなるもの(ジンジソウ,ハルユキノシタ,ユキノシタ)と,他は多列の細胞からなるもの(ダイモンジソウ,センダイソウ,新種)である.以上のように,外部形態のいくつかの形質には,それぞれ2つの型が認められ,その型に含まれる種は,ほとんど一致している.それぞれの型で代表される群は,各々まとまった自然群であるというよりむしろ,前者の型から後者の型へと平行的に進んできたものと考えられる.このことは,花弁や染色体の形質から推定されるように,一方が他よりも,よりadvancedのものと考えられるからであり,葉に含まれる修酸石灰結晶,種子表面の突起,花序の腺毛などに認められるそれぞれの型も,前述のものと関連があるからである.以上の結果から,今のところ,日本産Diptera節の各種の関係はFig. 14に示されたようなものと考えられ,ここでの新種は,センダイソウ,あるいはハルユキノシタに類縁の近い種として位置づけられるだろう.新種の特徴として,以上述べた形質の他に,葉は掌状に5〜7深裂し,裂片は,倒卵状披針形鋭頭,不規則な欠刻状鋸歯を有し,根茎は横走して密に分枝し,花期は5〜6月,などである.名称はSaxifraga acerifolia WAKABAYASHI et SATOMI とし,和名は渡辺定路氏によるエチゼンダイモンジソウとする.
著者
内林 政夫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.125, no.7, pp.583-586, 2005-07-01 (Released:2005-07-01)
参考文献数
5
被引用文献数
3 3

A certain Chinese herbal book presented to the emperor in 1505 shows a drawing of maize under the caption of Yiyi-ren (Job's Tears). Also, a Chinese poem written around 1368 contains a term yumi, which indicates maize. These new findings offer clear evidence that maize existed in China in the pre-Columbian era, or before 1492. Details of this evidence are discussed here.
著者
細川 由梨 大伴 茉奈 熊崎 昌 田島 千紘 猪俣 巴 勝俣 凜香 東海林 理紗 巻渕 泰輝 中山 晴雄
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.257-265, 2022-04-30 (Released:2022-06-05)
参考文献数
14

国内の大学競技レベルにおけるスポーツ関連脳振盪(SRC)に関する情報発信の実際を調査した結果,一般公開されているSRCのガイドラインは11団体で確認された.今後の課題としては,Risk reductionに関して明記している団体が少ないことが明らかとなった.SRCのガイドラインは競技規則や競技特性に合わせて策定する必要があり,今後より多くの競技団体から情報発信されることや,実際に活動している者へ最新情報を届けることが重要である.

2 0 0 0 OA 婦人職業案内

著者
林恕哉 著
出版者
文学同志会
巻号頁・発行日
1897

2 0 0 0 OA 光珠内季報

著者
北海道立林業試験場
出版者
北海道
巻号頁・発行日
no.(156), 2009-09
著者
菅原 慎悦 小林 誠道 長井 裕傑
出版者
関西大学 社会安全研究センター
雑誌
社会安全学研究 = Journal of societal safety sciences (ISSN:21860815)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.57-81, 2021-03-31

This study explores how the COVID-19 was reported in Japanese media focusing particularly on 'reducing contact by 80 percent', an oft-mentioned policy slogan during the emergency period. Our qualitative content analysis of five major newspapers in Japan between 1 April and 30 June shows that media agenda had shifted from 'socializing the slogan of 'reducing contact by 80 percent'' to 'highlighting unachieved status against this goal', and to 'reviewing the boundary between science and politics'. By and large, our analysis indicates that Japanese print media coverage were modest and 'media hype' was not observed. Rather, the slogan had been emphatically represented as a 'scientific' and thus an uncompromised goal, which might orient people toward selfrestraint behavior. Meanwhile, it may have hindered the public from scrutinizing the incertitude of scientific expertise which supported governmental decisions.
著者
伊達 修一 寺林 敏 松井 浩平 並木 隆和 藤目 幸擴
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.485-489, 2002-07-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

水道水を用いて作成した培養液による水耕栽培で, しばしば発生する根部褐変の原因について調査した.サラダナの根部褐変は次亜塩素酸の形態で存在する水道水中の残留塩素とアンモニウムイオンが存在する培養液でのみ発生し, どちらか一方しか存在しない培養液では発生しなかった.また, 次亜塩素酸あるいはアンモニウムイオンどちらかを含む培養液に交互に移植しても根部褐変は発生しなかった.従って, 根部褐変は次亜塩素酸とアンモニウムイオンにより生成するクロラミンにより発生するものと考えられた.さらに培養液中の残留塩素濃度の低下は, 光条件下で鉄イオンの存在により促進された.

2 0 0 0 OA 粘土と耐火物

著者
林 武志
出版者
The Clay Science Society of Japan
雑誌
粘土科学 (ISSN:04706455)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.105-115, 1978-09-25 (Released:2011-09-20)

Clay has played an important role in the refractories industry because of its special properties such as favorable plasticity, good sinterability and low cost. An outline of fire clay refractories and the features of clays are mentioned in this paper.The principal chemical composition of clays is silica, alumina and water, and these consist mineralogically of kaoline mineral and quartz. Clays also contain impurities, for example iron oxide, potassium oxide, and sodium oxide, and therefore also contain feldspar, sericite and pyrophyllite.In industrial ceramics, clays are used two ways. One way is the dead burning of clays which is used for large grog or refractory grain particles in fire clay refractories. The process requires special properties such as high density and high temperature stability. In the second way, clays are used for binder for which it is necessary to have favorable plasticity.Fire clay refractories are composed of refractory grain particles of burned clay and binder clay, their properties are decided by the raw materials and heat treatment used.The chemical composition of fire clay refractories are silica, alumina and accessary components which are the same as clays, and these mineralogically consist of mullite, cristobalite and a glass phase.This fact suggests that the kinds and quantity of impurity contained in the formation of cristobalite give a marked effect on the shrinkage, tightening and the spalling of a ceramic body.Damage in fire clay refractories can be observed during service in the following cases; 1) presence of impurities which cause the formation of glass, 2) thermal expansion spalling due to the presence of cristobalite, 3) alkali attack in the blast furnace, 4) bloating phenomena in the ladle.
著者
川野 徳幸 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 星 正治 小池 聖一 平林 今日子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

①セミパラチンスク核実験場近郊住民を対象に、アンケート調査・証言収集調査を実施した。4年間で計597件のアンケートを回収。②朝日新聞・読売新聞実施の被爆実態アンケート調査の結果を援用し、原爆被爆者の「核なき世界」以外の「思い」の一端、「ヒロシマ」というアイデンティティ、被爆体験継承の可能性、を考察した。③被爆証言を用い、経時的に観測されたテキストデータの特徴を、時間を考慮して視覚化する方法を提案した。これは、業績に示すように国際学会において、Best paper Awardを受賞。④オーラルヒストリーを編集し、『チェルノブイリ・旧プリピャチ住民へのインタビュー記録(第二報)』を発行した。
著者
若林 上総 加藤 哲文
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.71-82, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本研究では発達障害のある高校生、および学級に在籍するその他の生徒によるグループ学習場面に介入し、課題達成行動の生起に対する非依存型、および相互依存型集団随伴性が与える影響、ならびに集団随伴性が仲間間の相互交渉へ与える影響について検討した。また、介入前後には介入実行者である教師の介入受容性(treatmentacceptability)を測定し、その変化も検証した。結果として、非依存型、および相互依存型集団随伴性の適用は、発達障害のある高校生を含めた学級全体の課題達成行動の生起に影響を与え、教師も高い介入受容性を示すことが明らかとなった。一方で、発達障害のある生徒とその仲間間の相互交渉に与えた影響は明らかにされず、ネガティブな副次的作用としてサボタージュ行動が生じることも明らかとなった。以上のことから、有効かつポジティブな副次的作用を発現する集団随伴性に必要な手続き上の課題を議論した。
著者
中山 祥嗣 磯部 友彦 岩井 美幸 小林 弥生 小栗 朋子 竹内 文乃
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.156-163, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

In this review, we present an initial plan for exposure assessment in the Japan Environment and Children’s Study (JECS) by focusing on a biomonitoring technique and discuss the challenges encountered when using the biomonitoring technique for exposure measurements. JECS registered 103,099 pregnant mothers and has been following children born to them. Various biological samples were collected from mothers during pregnancy (blood and urine), at birth (blood and hair) and at check-up one month after birth (breast milk). Samples were also collected from children at birth (cord blood) and at check-up one month after birth (hair and blood spot). Those samples will be used to assess maternal and foetal exposures to chemical substances. Measurement reliability, i.e., intraclass correlation coefficient (ICC), and attenuation bias related to low ICCs should be taken into consideration when using the biomonitoring results. Along with the biomonitoring technique, simulation models, pharmacokinetic (PK) models and exposomics techniques are under development in JECS. New analytical techniques include deciduous teeth measurements and -omics analyses. In particular, PK models and sensor technologies are one of the most important methodologies for future JECS exposure analyses. Statistical methods for examining the effects of intercorrelated multiple exposures as well as nondetection data should also be explored.
著者
森田 慎一 杉谷 想一 小林 由夏 原 弥子 野中 雅也 藤原 真一 堀 高史朗 飯利 孝雄
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.573-578, 2007 (Released:2007-04-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は51歳女性。原発性アミロイドーシスにともなう著明な肝腫大により腹痛が出現。モルヒネの投与を行ったが効果不十分であったため腹腔神経叢ブロックを施行し、有効な除痛を得ることができた。腹腔神経叢ブロックは内臓痛の緩和を目的として施行されるが、手技的に簡便であり重篤な合併症も少ない。腹腔神経叢ブロックは良性疾患および腹部悪性腫瘍にともなう難治性疼痛に対し重要な除痛手段の1つであると考える。
著者
小林 正明 清水 光 藤井 温子 石川 洋
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.47(2005-MBL-033), pp.37-42, 2005-05-25

本稿では、交通工学と制御工学を統合させるシステム理論的観点から、交通ネットワークの交通流ダイナミクスを制御する信号制御システムや動的経路誘導システム、ならびにこれら2つのダイナミックシステムをオンラインリアルタイム結合させた交通流制御システムについて提案する。最初に、信号交差点の交通流ダイナミクスの基礎となる交通量収支において、捌け交通量の上限値を決定する交通処理量は、ある交通条件と信号制御条件のもとで道路設計によって決定される。交通流ダイナミクスを車線単位、サイクル長単位で解析するために、信号交差点の動的交通情報について調査する。つぎに、時々刻々と変動する交通流ダイナミックスシステムを記述しオンラインリアルタイムで制御する大規模システムを、3レベルの階層制御を用いて構成する。最後に、交通工学と制御工学の統合例として、信号制御システムと動的経路誘導システムの構成や機能、有効性などについて示し、交通流制御システムの構成や制御アルゴリズムについて提案する。