著者
梶原 雄 Yu Kajiwara
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 = Bulletin of Center for Japanese Language and Culture (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.17, pp.93-111, 2020-03

2008年に日本政府が発表した「留学生30万人計画」によって外国人留学生の来日が急増し、日本全国の多くの大学ではキャンパス内の国際化が一層進み、日本人学生と外国人学生との交流の機会も増加した。しかし、交流の機会が増えたとは言え、日本人学生と外国人留学生との間で十分な交流が行われていると一概には言えない。「学校内で日本人学生と交流できなかった」と悩みや不満を訴える外国人留学生は少なくない。そこで本稿では、キャンパス内での双方向的な交流の可能性を探るために、受け入れ側の日本人学生の視点から、キャンパス内の外国人留学生をどのように見ているかについてアンケート調査を実施した。その結果、回答者である日本人学生は、外国人留学生の留学生活や学習意欲、日本語能力等を高く評価していた。また、外国人留学生との交流は自身のキャリアデザインに有益なものであると考え、外国人留学生との交流を希望していた。しかし、「言葉の壁」や「コミュニケーション」、「文化の違い」、「話題」等の不安や心配から、外国人留学生と友達になるために自分から積極的に活動を行っている人は少ないことが明らかになった。
著者
安酸 建二 梶原 武久
出版者
日本会計研究学会
雑誌
会計プログレス (ISSN:21896321)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.10, pp.101-116, 2009 (Released:2021-09-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

コスト・ビヘイビアに関連する近年の実証研究において,売上高の変動に対するコストの変動は,売上高が増加する場合と減少する場合とで非対称(asymmetry)であり,売上高が減少する場合のコストの減少率の絶対値は,売上高が増加する場合のコストの増加率の絶対値よりも小さいことが明らかにされている。このようなコスト・ビヘイビアは,コストの下方硬直性と呼ばれている。コストの下方硬直性が生じる原因として,経営者・管理者の合理的な意思決定の結果,コストが下方硬直的になる可能性―「合理的意思決定説」と本稿では呼ぶ― が指摘されている。すなわち,売上高の減少が一時的であり近い将来回復すると予測される場合,売上高の減少時での経営資源の削減と,売上高の回復時での経営資源の再獲得は,短期的に過剰な経営資源を維持することよりも,結果的に高いコスト負担につながることがある。この場合,経営者は,積極的にコストの低い方を選ぶという合理的な意思決定を行うと考えられている。しかし,先行研究では,経営者・管理者が抱く将来の売上高の見通しに関する情報が,分析モデルに組み込まれていないため,合理的意思決定説はこれまでのところ検証されていない。本研究では,日本企業が決算短信で要求される次期売上高予測を,将来の売上高の見通しに関する情報とみなして合理的意思決定説の検証を試みる。
著者
林 健司 荒木 さおり 岡安 誠子 平松 喜美子 梶谷 みゆき
出版者
日本運動器看護学会
雑誌
日本運動器看護学会誌 (ISSN:2186635X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.35-42, 2022-02-28 (Released:2022-03-11)
参考文献数
27

本研究の目的は,大腿骨近位部骨折術後高齢者における居宅での生活様相を明らかにすることである.データ収集方法は大腿骨近位部骨折術後で居宅での生活が1ヵ月経過した高齢者に対し半構造化面接を実施した.分析方法は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチとした.結果,9名の研究参加者を得た.分析の結果,19個の概念が生成され,7つのカテゴリーに分類された.大腿骨近位部骨折術後に居宅退院した高齢者は『自由を手に入れる』一方で,『想定外の現実』に直面し,次第に『生活環境の狭小化』状況にあった.そんな中,徐々に『老いと折り合う』ことで,居宅で暮らす自分を客観視するようになっていた.そして,大腿骨近位部骨折術後に居宅退院した高齢者は,『前向きな依存』と『無理のない自律』の二方向で生活の再構築を始めつつあった.また,一度骨折を経験した高齢者は退院後,『脳裏によぎる再転倒』を抱えながら生活していた.
著者
梶田 学
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.5-45, 1999-05-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
199
被引用文献数
7 5

DNAを用いた鳥類の系統解析は近年急速に発達し,現在では多くの研究例が知られている.DNAの中でもmtDNAは近縁な分類群の系統解析に適した性質を多く持つ.ただし,mtDNAのみを解析に使用した場合には,異種間浸透などによって誤った系統を推定する可能性も知られている.DNAを採取するためのサンプルとしては血液,組織,羽毛などが利用可能で,標本からのDNA採取も可能である.分析はDNA抽出,増幅,塩基配列決定の順で行われる.得られた塩基配列データから,系統推定法によって分類群の系統関係が推定される.得られた系統樹についてはその信頼性を統計的処理によって判断することが可能である.日本周辺には,鳥類の系統や進化に関する研究課題が山積されており,これらの課題を解明するには分子系統学的側面からの研究が不可欠である.今のところDNAの塩基配列データのみを利用して種•亜種の境界を決めることは困難であるが,鳥類の分類を再検討する上での非常に重要な情報となる可能性が高い.DNAの塩基配列データを用いた系統解析が,鳥類の進化を明らかにする上で大きな役割を担う手法となることは間違いなく,この分野の国内での早期の発展が望まれる.
著者
梶山 智史
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.815-848, 2013-11-30

本稿は北魏後期に史学を掌る家として繁栄した東清河崔氏一族の動向を辿り、その中で一族出身の崔鴻が五胡十六国の史書『十六国春秋』を編纂した背景について考察した。この一族は五世紀後半に南朝宋から北魏に帰順した。冬山の伯父崔光は深い学識をもとに北魏後期の漢化を志向する政治で活躍した。注目すべきは、長く国史編纂を担当したことである。一方、崔鴻も学識をもって北魏に仕えて起居注編纂などに携り、崔光の死後は国史編纂を受け継いだ。かかる境遇にあった彼が編纂した『十六国春秋』は、国号「魏」を定めた道武帝以降を叙述対象とする崔光の国史を前提とし、国史以前の歴史をまとめたものであった。しかし十六国史の位置づけは北魏の前身である代国の歴史とも関わる難しい問題であり、『十六国春秋』の筆法は代国を軽視していると批判される可能性があった。崔鴻の死後に同書が公開されると果して批判が噴出し、その影響で一族は没落したのである。
著者
山口 智 杉山 一彦 岡村 達憲 山崎 文之 梶原 佳則 有田 和徳 栗栖 薫
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.783-788, 2001-12-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
19

1977年10月-2000年9月までの間に広島大学脳神経外科で入院・治療を行った脳幹グリオーマ12症例について検討した.内訳は男性5例, 女性7例で, 診断時の平均年齢は27歳であった.腫瘍の局在は橋が10例, 延髄が2例であり, 6例で手術が, 全例で放射線療法, 化学療法が行われた.全体の再発期間中央値は26週で, 生存期間中央値(median survival time ; MST)は71週であった.調査時点で11/12例が死亡していた.死亡例について, MSTより長期にわたり生存したもの(long-term survivors ; LTS), MST以下の生存期間のもの(short-term survivors ; STS)に分けて各群の特徴について検討した.成人は小児よりLTSが多い傾向にあり, 診断時のCTもしくはMRIにて造影効果の認められるものではSTSが多い傾向にあった.また, 診断に至るまでの初発症状の継続期間が1カ月以下のものではSTSが多い傾向にあった.

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著者
梶田半古 (錠次郎) 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
vol.第1-3, 1903
著者
梶井 直親
出版者
法政大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of graduate studies = 大学院紀要 = Bulletin of graduate studies (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.87-94, 2017-10-31

物語を提示するメディアは様々な種類がある。物語理解過程の研究はそのメディアごとに検討されている。そのため,メディアの枠を超えた統一的な物語理解過程モデルは検討されていない。本研究ではメディアの類似性を視聴者がどのように主観的に認識しているかについて調査した。本調査では7 つのメディアを採用した。具体的には,小説,絵本,漫画,アニメーション,実写映画,芝居,ミュージカルの7 つであった。参加者は21 対のメディア同士の類似度について評定する質問紙に回答した。この評定値はクラスター分析と多次元尺度構成法(MDS)で分析された。クラスター分析の結果,2 つのグループにまとまった。1 つは小説と絵本,漫画,アニメーションのグループであり,もう一方は実写映画と芝居,ミュージカルのグループであった。多次元尺度構成法では,アニメーションは小説や絵本,漫画の近くに配置された。つまり,アニメーションは視聴覚のメディアであるが,視聴者はアニメーションを視覚的メディアに近いと認識していると考えられる。本研究の結果から,アニメーションや絵本,漫画の理解過程には,文章の理解過程モデルを応用することができると提案する。
著者
福嶌 陽 太田 久稔 梶 亮太 津田 直人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.439-444, 2015 (Released:2015-10-29)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

東北地域の飼料用水稲品種においては,育苗の際に種子の発芽・出芽が不良となることが問題となっている.その原因を解明することを目的として,飼料用を含む20の水稲品種・系統を用いて,温湯消毒および低温浸種が発芽に及ぼす影響を調査した.60℃・30分の長期間の温湯消毒によって,発芽率は低下した.その低下程度は,主食用品種よりも飼料用品種,糯品種,インド型品種で大きかった.東北地域の主な飼料用品種の中では,「べこごのみ」,「べこあおば」,「いわいだわら」,「うしゆたか」,「夢あおば」で発芽率が特に低下した.また,穂発芽状態の種子は,温湯消毒によって発芽率が顕著に低下したことから,穂発芽性が“易”の飼料用品種は,種子が穂発芽状態にあり,温湯消毒によって発芽率が低下する危険性があると推察された.12℃の低温および5℃の極低温の浸種試験においては,東北地域の主要な飼料用品種の中で「べこごのみ」,「べこあおば」,「いわいだわら」が5℃の極低温によって発芽率が低下した.以上の結果から,東北地域の飼料用水稲品種の一部においては,長時間の温湯消毒や極低温の浸種によって,発芽率が低下する危険性があると推察された.
著者
坂口 達馬 梶山 徹 三宅 麻文 片山 俊郎
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.43-49, 2022 (Released:2022-04-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】ヒドロモルフォン持続皮下投与法によるタイトレーション(以下,本法)の有効性と安全性を検討した.【方法】2020年2月から2021年10月まで,中等度から高度のがん疼痛に対して本法を適応した症例を後方視的に解析した.【結果】計37例中,オピオイド・ナイーブは1例(2.7%).タイトレーション開始時,完了時のヒドロモルフォン投与量は各1.92 mg/日,2.40 mg/日(いずれも中央値),3日以内のタイトレーション完了は33例(89%).著効(Numerical Rating Scale [NRS]≥66%改善)は33例(89%),有効(NRS≥33%改善)は3例(8.1%),無効(NRS<33%改善)は1例(2.7%)であった.有害事象は眠気が3例(8.1%),血圧低下が1例(2.7%)であった.【考察】本法は簡便かつ安全で,中程度から高度のがん疼痛に迅速かつ効果的な鎮痛が得られた.
著者
梶谷 義雄 多々納 裕一 岡田 憲夫 松田 曜子
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.772, pp.143-151, 2004-10-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
17
被引用文献数
1

災害後の復興過程は様々な空間スケールにおける複雑な事象の影響を受けており, このことが復興政策を決定する上で困難な点となっている. そこで, 本研究では様々な空間スケールにおける影響因子を分析するため, 空間回帰モデルと時系列モデルを融合した時空間統計モデルによるアプローチに着目した. この際, 社会・経済データが同一の時空間スケールで整備されていないことに配慮し, 時空間統計モデル適用のための方法を整理した. ケーススタディとして阪神大震災後の神戸市長田区における人口復興過程を取り上げ, 地域の環境要因などの局所変数とより広域的な経済状況などの広域変数の影響について分析を行った. その結果, 広域・局所的空間スケール双方における復興政策の重要性が定量的に明らかとなった.
著者
宮本 大資 梶原 逸朗 細矢 直基 西留 千晶
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.777, pp.1760-1771, 2011 (Released:2011-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

This paper proposes a vibration testing and health monitoring system based on an impulse response excited by a laser ablation. High power YAG pulse laser is used in this system for producing an ideal impulse force on structural surface. It is possible to measure high frequency vibration responses in this system. A health monitoring system is constructed by this vibration testing system and a damage detecting algorithm. A microscopic damage of structures can be extracted by detecting fluctuations of high frequency vibration response with the present health monitoring system. In this study, loosening of bolt tightening torques is defined as the damage of the system. The damage is detected and identified by statistical evaluations of measured frequency response data with Recognition-Taguchi method.
著者
田中 亮 戸梶 亜紀彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.157-163, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

〔目的〕本研究の目的は,運動療法に取り組む外来患者の顧客満足と運動に対する動機づけの関連性を明らかにすることである。〔対象〕対象は,運動療法に取り組んでいる外来患者189名とした。〔方法〕顧客満足の測定には,Customer Satisfaction Scale based on Need Satisfaction(CSSNS)を使用した。運動に対する動機づけの測定には,Behavioral Regulation in Exercise Questionnaire-2(BREQ-2)を使用した。〔結果〕相関係数の算出およびカテゴリカル回帰分析の結果,顧客満足全体や顧客満足の下位概念は,運動に対する自己決定的な動機づけと有意に関連することが認められた。〔結語〕運動療法に取り組む外来患者の顧客満足は,運動に対する自己決定的な動機づけと関連するといえる。