著者
前田 奎 大山卞 圭悟 加藤 忠彦 水島 淳 山本 大輔 梶谷 亮輔 広瀬 健一 尾縣 貢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.206_3, 2018

<p> 円盤投の指導現場において、投てき動作前半の局面で円盤あるいは円盤を保持する腕を積極的に加速させる動作について、「円盤を走らせる」という表現が用いられている。この「円盤を走らせる」動作は、効率の良い投てき動作を遂行させる上で重要であると指導現場では認識されているが、実際に競技力の高い円盤投競技者ほど「円盤を走らせている」のか、という疑問が生じる。そこで本研究では、「円盤を走らせる」動作に関連すると考えられるパラメータとパフォーマンスとの関係について明らかにすることを目的とした。国内一般レベルから世界トップレベルまでの記録を有する男子円盤投競技者62名(記録:38.05 – 68.94m)を対象に、競技会での投てき動作を撮影し、3次元動作分析を行った。円盤の速度について確認したところ、第一両脚支持局面の変化量および右足離地時点について、対象者全体で見た場合、投てき距離との間に有意な正の相関関係が認められた。しかし、競技レベルごとに見ると、世界トップレベル競技者12名については、有意な負の相関関係が認められたのに対して、国内競技者50名については、有意な正の相関関係が認められた。</p>
著者
高部 直紀 升屋 勇人 梶村 恒
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第52回大会
巻号頁・発行日
pp.27, 2008 (Released:2008-07-21)

オトシブミ類は,植物の葉を裁断,巻き上げて幼虫の食料兼シェルター(揺籃)を作製し,その中に産卵する甲虫の一群である.このうちルリオトシブミ属(Euops)は,雌成虫の体内に菌類を保持,運搬するための器官(mycangia)が存在すること,産卵直後の揺籃にmycangia内の菌類と形態の類似した菌類が多く観察されることなどから,菌類と密接な関係にあると考えられている.しかし,実際に菌類を分離,同定した研究例はほとんど無く,共生菌類がどのような働きをしているのかについても未知の部分が多い.本講演では,イタドリ(Reynoutria japonica)を利用するカシルリオトシブミ(E. splendidus,以下,カシルリ)について,(1)主要な共生菌を明らかにするために,成虫および揺籃からの菌類の分離培養実験,(2)共生菌類による餌資源の質的改善の可能性を探るために,同所的にイタドリで繁殖する共生菌を持たないヒゲナガオトシブミ(Paratrachelophorus longicornis,以下,ヒゲナガ)に注目して,植物資源利用様式の種間比較調査,を行った結果を中心に紹介する.(1)の実験によって,親成虫がmycangia内に保持している優占菌は,2種のPenicillium属菌のどちらか1種であることが判明した.また,同じ菌種が揺籃に定着し,新成虫のmycangia内にも獲得されていたことから,主要な共生菌であると考えられた.なお,分子系統解析の結果,分離された2種のPenicillium属菌は系統的に近縁ではなかった.(2)の調査では,揺籃作製に利用する葉の週齢を,葉の諸形質の経時変化とあわせて追跡した.その結果,カシルリはヒゲナガが利用している葉よりも新しく,水分や窒素分を多く含む葉を選んで利用していることが明らかとなった.また,ほぼ同じ週齢の葉で作製された揺籃を用いて,摂食量と成長量の関係を査定すると,カシルリはヒゲナガよりも食物利用効率が高いことが示唆された.共生菌の存在によって,揺籃の餌資源としての質が高まっているものと推察される.
著者
三橋 秀基 梶山 浩 野島 美久
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症 (ISSN:03894290)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.137-142, 1999-05-31 (Released:2010-04-12)
参考文献数
16

Sulfite is a major air pollutant which can cause inflammatory reactions in the respiratory tract characterized by an influx of neutrophils. In addition, sulfating agents are widely used in the food and beverages industries as antimicrobials or antioxidants. Sulfite is also an important intermediatory compound in the metabolic pathway from sulfur containing amino acids to sulfate in mammalians. Human serum contains some amounts of sulfite. But the production and physiological role of sulfite in mammalians are still unclear. We have recently shown that human neutro-phils produced significant amounts of sulfite in vitro in response to lipopolysaccharide (LPS) stimulation. In a rat model of sepsis induced by in vivo injection of LPS, sulfite concentration in serum was significantly increased. These results suggest that sulfite can be actively generated by mammalian cells in vivo and in vitro. In this brief review article, we discuss a potential role of sulfite as an endogenous mediator of inflammation.
著者
梶田 孝道 野口 裕二
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.318-321, 2004-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
4
被引用文献数
2
著者
菊崎 泰枝 梶原 えり子 橘 ゆかり 中谷 延二
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.35, 2004

【目的】カレーリーフはナンヨウザンショウ(<i>Murraya koenigii</i>)の葉で、香辛料としてインド料理や東南アジア料理の香り付けに利用されている。演者らはこれまでにカレーリーフの塩化メチレン抽出物から強い抗酸化活性を有するカルバゾール類を単離・構造決定してきた。本研究では、カルバゾール類よりも高極性の抗酸化成分の解明を目的とした。<br>【方法および結果】カレーリーフの乾燥葉を溶媒抽出し、塩化メチレン抽出物、酢酸エチル可溶部および水溶部を得た。各画分のDPPHラジカルに対する捕捉活性およびリノール酸メチルの加熱通気酸化に対する抑制活性(Oil Stability Index(OSI)法)を測定したところ、酢酸エチル可溶部に塩化メチレン抽出物に匹敵するDPPHラジカル捕捉活性および塩化メチレン抽出物の約50%の抗酸化活性を認めた。酢酸エチル可溶部を繰り返しカラムクロマトグラフィに供して精製した結果、2種の安息香酸類、4種のケイ皮酸類、kaempferol、quercetinの他5種のフラボノイド配糖体を単離した。このうち3種はkaempferol、 quercetinおよびmyricetinの3-<i>O</i>-β-D-glucosideであった。また、2種はグルコースの6位がアシル化されたkaempferol 3-<i>O</i>-(6-<i>O</i>-acetyl)-β-D-glucosideおよびquercetin 3-<i>O</i>-(6-<i>O</i>-<i>p</i>-coumaroyl)-β-D-glucosideと決定した。得られた化合物のDPPHラジカル捕捉活性はオルトジフェノール構造をもつ化合物の活性が強く、OSI法ではcaffeic acid、 protocatechuic acid、quercetinが強い活性を示した。また、OSI法により塩化メチレン抽出物と酢酸エチル可溶部の抗酸化活性の相互作用を測定したところ、相加作用を示した。
著者
半沢 伸治 梶 和彦
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.42, pp.27-30, 1991

人工接種の種子を用いて苗腐敗症の育苗箱内での発生状況と二次感染による発病を調査した。また, 発病苗を本田に移植し, その生育状況を調査した。苗腐敗は接種種子を中心に発生し, 次第に周縁の苗に拡大してすり鉢状の発生となった。発生程度は伝染源の量に比例して激しくなった。重症の発病苗は, 大部分が本田移植後まもなく枯死あるいは消失し, 軽症の発病苗も枯死する割合が高かった。また, 発病苗を移植前にカスミン製剤に浸漬したが, 治療効果は認められなかった。
著者
池田 昌絵 竹本 俊二 梶川 隆
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.1136-1140, 2009 (Released:2013-07-24)
参考文献数
7

三心房心は, 先天性心疾患中, 比較的稀な心奇形とされている. 成人で無症状の古典的三心房心を指摘された症例を経験したので報告する. 症例は67歳, 男性. 13年前より拡張型心筋症として当院にて加療を受けている. 年1~2回の心エコーにて経過観察を行っていたところ, 2008年5月(今回の画像診断より1カ月前) の心エコー時, 左房内に異常隔壁を指摘され, 経食道心エコー, 経胸壁3D心エコー, CTにて精査を行った. 心房中隔欠損症(ASD)・肺静脈還流異常は指摘されず, 中心に大きな交通孔を持つ古典的三心房心と診断された. 3D心エコーでは, 異常隔壁には中心に大きな交通孔があるほかに小さな交通孔があることが指摘され, 異常隔壁の形態と, 左房内の血流を立体的に観察することができた.
著者
岸田 俊二 内田 晴久 磯村 雅夫 佐山 和弘 山田 明 岡田 至崇 笠井 秀明 坂上 護 梶川 武信 内海 和明 高田 俊和 木村 英樹 江部 広治 首藤 直樹 加藤 芳秀 上松 敬禧 佐藤 理夫 小原 宏之 須田 不二夫 原 一広 和泉 茂一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
應用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.741-743, 2010-08-10
参考文献数
5

<p>温暖化と資源の枯渇を克服し,持続可能な社会を築くことが人類喫緊の課題である.持続可能な具体的社会像と,今後10〜20年に開発すべき技術群を描いた.自然エネルギーへの大胆な転換と画期的な省エネルギー技術の普及が必須で,特に,太陽光からの燃料の直接生産の実現がキーとなる.これらの産業技術は新たな経済発展のテコになると期待される.</p>
著者
関山 剛 梶野 瑞王
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.1089-1098, 2021 (Released:2021-08-27)
参考文献数
36
被引用文献数
3

本研究では2種類の水平解像度(3kmおよび250m)を使って、2011年福島原子力事故下の汚染源近傍(距離3.2kmおよび17.5km)沿岸の2観測地点での移流拡散場再現におけるオイラーモデルの性能を検証した。250m格子シミュレーションはこの検証のために新たに実施され、複雑地形上における詳細な風速場と濃度場の再現に成功した。3km格子モデルは福島第一原子力発電所付近の風とプルームの詳細な再現には失敗したが、見逃し率が低いために時折250m格子モデルよりも高い性能を示すことがあった。これは3km格子モデルの数値拡散が大きいことが原因である。オイラー移流拡散モデルの欠点は発生源近くでの人工的な数値拡散だと考えられている。この人工的な数値拡散は空振り率を増加させる代わりに見逃し率を減少させる。この特徴は環境緊急対応(EER)システムにはむしろ好都合となる。その上で、250m格子モデルの結果はプルーム拡大処理(マックスプーリング)によって確実に改善させることができた。この処理はプルームの幅を拡大させることにより、短時間のラグやプルームの小さな位置ずれを目立たなくした。プルーム拡大処理は統計スコアを改善させることで高解像度モデルに有益であり、EERシステムに役立つものである。
著者
青山 敏之 阿江 数通 相馬 寛人 宮田 一弘 梶田 和宏 奈良 隆章 川村 卓
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.91-100, 2021
被引用文献数
2

<p>The yips represent a disorder that makes it challenging for an individual to perform automatic and coordinated movements in sports activities. The cause of the yips is not sufficiently clarified, and limited information is available regarding throwing yips in baseball. Therefore, this study was designed to clarify the incidence and characteristics of the throwing yips among college baseball players. Total 107 players of the college baseball team participated in the study and completed the questionnaire by answering questions about their experience of the yips (loss of control to throw the ball accurately for more than 1 month), the symptom intensity, and changes observed in the symptoms in different situations. The 47.1% of players met the definition of throwing yips. The symptoms of the yips were more pronounced with short-distances and low intensity of throwing. Moreover, there were various subjective symptoms, such as the issue about co-contraction of the upper limb, sensory function, body ownership, and movement planning. Various physical symptoms associated with throwing yips suggest that the yips are not only a disorder of motor skills, but result from movement disorders. The present results show that the occurrence of the yips depends on the throwing condition; this finding provides useful insights into the mechanism and the treatment of the yips. Interdisciplinary studies that aim to elucidate the cause of the yips and develop effective intervention are necessary.</p>
著者
宮野 竜太朗 住江 玲奈 菅谷 文人 林 京子 武内 嵩幸 福岡 友梨江 脇坂 長興 井上 肇 梶川 明義
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.137-145, 2018 (Released:2018-11-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1

(序論)多血小板血漿(PRP)の育毛への効果を検討するためにPRPがヒト培養毛乳頭細胞に及ぼす影響を分子生物学的に検討した。(方法)培養毛乳頭細胞にPRPを添加し,一定時間培養後に線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor; FGF)-2,血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor; VEGF),骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Protein; BMP)-2,Wnt5a,Ephrin(EFN)A3の遺伝子発現を定量PCRで測定した。また,エクソソーム除去PRPが前記遺伝子群の発現に及ぼす影響を同様に測定した。(結果)PRPは毛乳頭細胞のFGF-2,VEGF,BMP-2の遺伝子発現を2時間で無添加対照に比較して有意に増加させた。FGF-2,Wnt5aは24時間後で有意に増加したが,VEGFは有意差を認めなかった。BMP-2は有意に発現が低下した。EFNA3は変化なかった。エクソソーム除去PRPも,これら遺伝子群の発現に変化を認めなかった。(考察)毛乳頭細胞への発毛関連遺伝子群の発現増強が退行期の毛包の活性化を促しているものと推察された。特に持続的Wnt5aの発現と,BMP-2の短期的強発現とその後の消退は,毛乳頭の分化誘導と萎縮を抑制している可能性を示唆した。(結論)PRPは,萎縮毛包の再生ではなく,遺残する毛包に作用し育毛に関与すると結論された。
著者
涌井 架奈子 松井 成明 安田 政実 伊藤 仁 平林 健一 梶原 博 村上 優 佐藤 慎吉 長村 義之
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 = THE JOURNAL OF THE JAPANESE SOCIETY OF CLINICAL CYTOLOGY (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.269-274, 2008-07-22
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

<b>目的</b>: 子宮体部明細胞腺癌 (以下, 体部明細胞腺癌)における腫瘍細胞の出現パターンについて検討を行った.<br><b>方法</b>: 当院で組織診, 細胞診のいずれからも体部明細胞腺癌と診断された 6 例 (純粋型 3 例, 混合型 3 例) を対象とした. 細胞材料は全例エンドサイトで採取されたものを用い, 1) 細胞集団の出現パターン, 2) 散在性裸核細胞に着目した検討を行った.<br><b>成績</b>: 腫瘍細胞は大型乳頭状集団, 11.4%; 小型乳頭状集団, 41.8%; シート状集団, 38.0%; 重積性集団, 8.9%の出現率を示していた. ミラーボール集団はみられず, 基底膜様物質の出現はわずかであった. 一方, 類内膜腺癌においては小型乳頭状集団, 重積性集団が比較的高い頻度で認められた. 散在性裸核細胞は明細胞腺癌 6 例すべてに認められ, 平均 10 個, 核面積は平均 138.1&mu;m<sup>2</sup>を示していた. また, これらを類内膜腺癌に出現する散在性裸核細胞と比較した場合, 出現数, 核形態に相違を認めた.<br><b>結論</b>: 子宮体部明細胞腺癌は主だった 5 つの出現パターンを示す腫瘍細胞が混在し, 特に小型乳頭状集団, シート状集団, 散在性裸核細胞に留意することが重要と考えられた. また, 散在性裸核細胞は類内膜腺癌と比較して, 出現数, 核形態に相違があり, 両者の鑑別に有用な情報を与えるものと考えられた.
著者
奥野 達矢 岩田 哲 早川 浩史 宮尾 康太郎 梶口 智弘
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.184-190, 2019 (Released:2019-05-08)
参考文献数
13

血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)は稀な節外性B細胞リンパ腫であり,特異的な所見に乏しいため診断に苦慮することが多いが,急速な経過を辿るため診断の遅れは致命的となる。IVLBCLの診断に有用な所見を検索することを目的に,当院で診断されたIVLBCL患者10例について臨床像を検討した。最多の症状は発熱で8例にみられ,次いで呼吸器症状(咳嗽,喀痰,呼吸困難感)が7例にみられた。血液検査所見では血球減少を10/10例,高LDH血症を9/10例に認め,動脈血液ガス分析ではPaO2低下を6/7例に認めた。画像検査所見上は7例に肝脾腫がみられ,9例に胸部異常陰影がみられた。これらの所見は治療により改善した。IVLBCLにおける肺病変の合併頻度はこれまでに報告されている以上に高い可能性が示唆される結果であり,原因不明の呼吸器症状,低酸素血症でもIVLBCLを鑑別に挙げる必要があると考えられる。
著者
津田 曜 小栗 卓也 櫻井 圭太 梶口 智弘 加藤 秀紀 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.504-508, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
4

71歳男性.異常言動と全身性痙攣にて入院.高次脳機能障害を認めたが初回頭部MRIは異常がなかった.血中LDH・可溶性IL-2受容体高値より悪性リンパ腫を疑ったが,初回骨髄穿刺と皮膚生検では腫瘍細胞を認めなかった.10日後の頭部MRI磁化率強調画像(susceptibility-weighted image; SWI)で大脳皮質・皮質直下に異常低信号域が出現,ステロイドパルス療法を行うも無効であった.後に胸部単純CTで両肺にスリガラス影が出現,経気管支肺生検と骨髄穿刺再検にて血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B cell lymphoma; IVLBCL)と診断した.本疾患では脳梗塞様変化を呈することが多いが,本例ではむしろ大脳のSWI低信号域が主たる所見であり,中枢神経病変による出血性変化と推測された.
著者
清田 恭平 藤原 有佳 足立 和人 亀田 誠 阿久津 和彦 梶村 計志
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.787-793, 2014

【背景・目的】2012年5月,大阪府内において特定原材料「乳」を原材料として使用していないはずの学校給食揚げパンを喫食した児童のうち,乳アレルギーを有する2名がアレルギー症状を呈した.当該パンの製造工程において乳成分が混入した可能性が疑われ,その混入経路を検証することとした.【方法】乳を含むパンを製造し,生地分割機を除く製造ラインを改訂した手順に従い清掃後,乳を含まないパン生地を投入してパンを製造し,事例当時のパン製造を再現した.乳の主要アレルゲンであるカゼインを指標に製造ロットごとに濃度を測定した.【結果】初期の製造ロットのパンには1000ppm以上のカゼインが含まれていた.その後ロット数増加に伴い徐々にカゼイン含有量は減少した.また,揚げ調理によってカゼイン含有量がより低下する傾向が見られた.【結語】初期の製造ロットのパンに多量のカゼインが含まれ,次第に含有量が減少したことから,前に製造した乳成分を含むパン生地が製造機器中に残存し,後に製造した乳成分を含まないパン生地に混入したことが示唆された.