著者
森 直樹
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

本研究では,計算機はストーリーを創作することが可能なのか? という問い基づき,4コマ漫画に焦点を当てて,人工知能用データセットの構築を視野に入れたストーリー分類手法を提案する.4 コマ漫画はしっかりとしたストーリー構造を持ち,各ストーリーの長さが決まっているため,定量的な解析に向いている.近年,人工知能研究を対象とした世界初の独自 4 コマ漫画データセットも提案されており,今後データセットの独自構築が活発化していく可能性が高い.既存の漫画ではなく独自にデータセットを構築する場合,商用の漫画では困難である表現も可能であるという利点がある反面,自由度が高いためデータの何に着眼しているかが見えにくくなるという問題点も顕在化している.そこで本稿では,機械学習を前提とした 4 コマ漫画データセットの表現方法および着眼すべき特徴について可能な限り定量的にまとめ,同時に創作視点に基づく具体例を示すことで創作と人工知能に関する分野の発展に寄与することを目的とする.
著者
寺内 光 森 直樹 上野 未貴
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1H2J1305, 2019 (Released:2019-06-01)

人工知能(AI)に人間の創作物を理解させようとする研究が盛んである.しかし,それらは依然として難しいタスクである.本研究では,人間の創作物の中でも特に4コマ漫画を扱い,AIに理解させることを目的とする.この挑戦のために我々は「4コマ漫画ストーリデータセット」と呼ばれる新しい漫画データセットを用いる.このデータセットはAI創作の開発のために研究者と漫画家によって作られた世界初のデータセットである.本研究ではコマ画像のタッチ識別をするが,方法としてはオートエンコーダモデルを用いてコマ画像を分散表現化し,その分散表現を用いて識別タスクを解き,テスト画像がいずれのタッチであるか判断する.そのタッチ識別タスクの識別率によって分散表現の間接的な評価を行うこととする.また,顔のパーツ等を抜いた画像に対して同様の実験を行うことにより,提案した手法の有効性を確認する.
著者
森田 良成
出版者
白山人類学研究会
雑誌
白山人類学 = Hakusan Review of Anthropology (ISSN:13415980)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.57-78, 2017-03

This paper looks into two interrelated processes staged in a rural community in West Timor, Indonesia, a community that has been largely left behind by development projects. One is the process of rapid spread of mobile phones and expansion of their use. Another is the process of development (involving many twists and turns) of enterprises trying to create the electric infrastructure needed to charge mobile phones, a process that has recently suffered a serious setback. The author describes the two processes and analyzes how villagers proactively purchase new products, incorporate them into their daily lives, and master the ways to use them to fit their environment, at the same time letting the chances of "development", chances that are right there in front of their eyes, slip by. The purpose of the analysis is to highlight the "electroscape", an indispensable condition expected to just be there for the processes of development and modernization, a condition, without which everyday lives of us, researchers, and the countries we come from, would not have been possible, but one which still goes unnoticed by those whose very lives depend on it. This analysis of a rural community in Indonesia shall help us see how consumption and the desire to consume operate on a deeper level, a level unseen with such simple classifications as the "(pseudo-)middle class" and the "poor."
著者
祝 広孝 大通 恵美 大城 広幸 猿渡 勇 森川 綾子 野中 昭宏 古野 信宏 近藤 真喜子 坂田 光弘
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0480, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 我々は第44回学術大会において骨格筋の筋腱移行部に軽い圧迫刺激を加えることにより筋緊張抑制効果が得られることを報告した.同様の効果が腱骨移行部への刺激によっても得られることが確認され,それらを組み合わせて「筋腱移行部及び腱骨移行部刺激:Muscle tendon junction and Enthesis stimulation」(以下,MES)と称し臨床に用いている.MESは速効性に優れ,評価や治療場面で広く応用できる手技である.そこで今回,MESの実施方法を紹介すると共に足関節背屈可動域と肩関節外旋可動域及び屈曲可動域に対し前者は腱骨移行部,後者は筋腱移行部を刺激部位としてMESの効果を検証し,MESの臨床における有用性について報告したい.【方法】 MESの実施方法骨格筋の筋腱移行部もしくは腱骨移行部に対し,軽い圧迫刺激(圧迫力は筋腱移行部で1kg-3kg,腱骨移行部では0.5kg程度)を加える.筋緊張抑制に必要とする刺激時間は1秒-5秒程度であるが,関節可動域練習や筋力増強練習時においては刺激を持続しながら行うと効果的である. 対象検証1:足関節背屈可動域では成人15名(男性8名,女性7名,年齢31.9±9.0歳)30肢を対象に,検証2:肩屈曲・外旋可動域では成人17名(男性10名,女性7名,年齢31.6±8.7歳)のなかで,肩屈曲制限があり尚且つ外旋可動域に制限を有した24肢(右11肢,左13肢)を対象とし,各々MESを行うMES群とMESを行わないControl群(以下C群)に分けた(検証1:MES群15肢,C群15肢/検証2: MES群12肢,C群12肢).方法検証1)足関節背屈可動域へのMES効果(腱骨移行部を刺激部位に選択):MES実施肢位は仰臥位,下肢伸展安静位にて後脛骨筋停止腱の腱骨移行部(舟状骨後縁)及び短腓骨筋停止腱の腱骨移行部(第5中足骨底後縁)に対し,触れる程度の触圧刺激を同時に5秒間加え,MES実施前後で股・膝関節90°屈曲位での自動背屈可動域を1°単位で測定.C群についてはMES実施時の肢位にて5秒間の休憩を入れ休憩前後の角度を測定した.検証2)肩屈曲及び外旋可動域へのMES効果(筋腱移行部を刺激部位に選択):MES群における刺激肢位は仰臥位.肩屈曲120°-130°位で大円筋線維が広背筋停止腱に停止する筋腱移行部(腋窩後壁前面)に対し軽い圧迫刺激を5秒間実施.MES前後で端坐位での肩屈曲可動域を,仰臥位にて肩外転90°,肘屈曲90°での肩外旋可動域を1°単位で各々測定した.C群に関しては検証1と同様.統計処理には検証1,検証2共にMES(C群:休憩)前後の角度変化の比較にはWilcoxonの符号付順位和検定を,MES群とC群の角度改善率の比較にはWilcoxonの順位和検定を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 全ての対象者には事前に本研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た上で実施した.【結果】 検証1)C群においては休憩前後の背屈角度に有意な差は認められなかったが,MES群においては,MES前24.8±7.4°,MES後28.4±6.4°と有意な差を認めた(P<0.01).またC群との角度改善率の比較においてもMES群で有意な差(P<0.01)が認められた.検証2)C群においては休憩前後の肩外旋可動域及び屈曲可動域の角度に有意な差は認められなかったが,MES群においては,肩外旋可動域でMES前74.3±7.8°,MES後86.6±7.0°,肩屈曲可動域でMES前144.8±6.9°,MES後154.5±7.3°と両可動域で有意な差を認めた(P<0.01).またC群との角度改善率の比較においても外旋・屈曲可動域各々でMES群に有意な差が認められた.【考察】 ストレッチングの筋緊張抑制効果として知られるIb抑制は筋腱移行部に存在するゴルジ腱器官(以下GTO)からのインパルス発射に起因する.GTOはその発射機序より筋腱移行部の圧迫刺激による変形によってもインパルスを発射する可能性があり,大円筋の筋腱移行部への刺激による可動域改善にはIb抑制の関与が推測される.腱骨移行部刺激による効果については,多くの筋が腱骨移行部またはその間近まで筋線維を有することが知られており,それらの筋においてはGTOの働きが関与していると思われる.しかし今回刺激部位とした後脛骨筋や短腓骨筋停止腱の腱骨移行部については筋線維の存在は確認されておらず,今後その機序の解明に努めていきたい.【理学療法学研究としての意義】 MESは解剖学的知識と触察技術を用いて触れる行為そのものに目的を持たせた手技であり,本研究によって理学療法士の技術向上に寄与できればと考える.
著者
森石 みどり
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.386-391, 2015-09-01

米国の大学図書館では,拡大するアクティブ・ラーニング・スペースを確保する手段の一つとして,シェアード・プリントが進められている。電子リソースの普及により利用の少なくなった冊子体資料を,共有の蔵書として保存する取り組みである。本稿ではシェアード・プリントについて,用語の整理やシェアード・ストレージとの比較を通じ,その特徴を示す。また,複数のシェアード・プリント・プログラムに共通する運用ポリシーをまとめ,日本におけるシェアード・プリント実施の必要性や,実施の際に検討すべき点を考察する。
著者
加藤 亜由美 深澤 佑介 森 武俊
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.216-228, 2015-01-06 (Released:2015-01-06)
参考文献数
39
被引用文献数
2

Onomatopoeia appears much frequently in the word-of-mouth restaurant search site. In this paper, we first analyzed the relationship between food categories and onomatopoeias on the word-of-mouth restaurant search site. From the analysis, we found that the appearance of onomatopoeias and food categories are highly correlated. This fact indicates that na?ve way of using onomatopoeia as feature of restaurant makes the recommendation similar to food category based recommendation. This motivate us to develop sense related onomatopoeia based recommendation as senses plays an important role to enjoy food in restaurant. For the purpose, we propose an algorithm to collect sense related onomatopoeias from the web and produce serendipitous restaurant recommendation using sense related onomatopoeias as feature. We have conducted user test and the result shows that the recommendation using sense related onomatopoeia based recommendation satisfies 14 subjects from the viewpoint of serendipity, which is much larger than 3 subjects of food category based recommendation.
著者
森口 尚史 三原 誠
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.685-688, 2011-10-10 (Released:2012-01-18)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
森口 眞衣
出版者
北海道生命倫理研究会
雑誌
北海道生命倫理研究 (ISSN:2187834X)
巻号頁・発行日
pp.15-28, 2015-10

At the center of the academic discipline known as thanatology (death-and-life studies) is the major current of the foundation of Western thought. However, the views on life and death of the Japanese have been deeply affected by Eastern thought, religion, and culture, such as Buddhism. Therefore, it has been noted that in Japanese thanatology, there is a samsara (the cycle of reincarnation) in ancient Indian society as providing one perspective from the area of religious studies on dealing with "death." Two different perspectives for the positioning of death have been established. The first is the perspective of "the inserted death," and the second is the perspective of "death that continues to support life." The former is a Christian attitude toward death and is a philosophy that can be described as the foundation of Western thanatology. The latter is a philosophy from ancient Indian society, of the notion of completing samsara after passing through several stages, and it also formed the background to the formation of Buddhism that has had an enormous impact on Japanese culture. In this paper, along with the flow of how were death and life respectively positioned in the establishment stage of the notion of samsara, the structure and characteristics of "death that continues to support life" are considered.
著者
高澤 円 須澤 満 奥脇 淳夫 中川 優子 永嶋 康夫 笹森 斉 笹森 典雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.602-607, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
12

目的:血管迷走神経反応(vaso-vagal reaction:以下,VVR)は,採血副作用のなかでは発症頻度が高いため,採血現場では万全な予防対策や適正な事後処置が求められる.今回,我々は,当健診センターで経験したVVR症例の現状を調査した.方法:2012年12月~2014年9月の期間中,当施設で採血を行った男性41,076人(45.7±11.3歳),女性22,217人(44.0±12.3歳)のうち,VVRを発症した男性29人(34.8±10.2歳),女性18人(33.4±11.8歳)を対象とし,年齢,性差,BMI,睡眠時間,VVR重症度,回復までの対応について調査した.結果:29歳以下の若年層で発症したVVRは19例(発症頻度0.30%)であった.また,VVRは女性や低体重者に多く発症し,睡眠時間が短い受診者がリスクとして認められた.VVR重症度は,軽症例が多かったため,回復までの対応は安静臥床・下肢拳上で改善が可能であった.結論:VVR発症低減に向け採血環境の整備は重要であり,さらに,睡眠不足を含む高リスク群の受診者には特に注意を払い,臥床採血を勧め,積極的に不安を取り除くような声掛けが必要である.
著者
山崎 貴子 伊藤 直子 大島 一郎 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.176-183, 2008-06-20

マイタケに含まれるプロテアーゼの作用と低温スチーミング調理の併用による牛肉軟化について検討した。マイタケ抽出液は50-70℃で最もカゼイン分解活性が高く,70℃で8h反応させたあとでも30-40%の活性が残っており,熱安定性が高かった。マイタケ抽出液とともに牛モモ肉を低温スチーミングすると,茹でた場合や,水またはしょうが抽出液を使った場合に比べて,溶出するタンパク量が多かった。しかしうま味に関係するグルタミン酸は特に溶出は増えておらず,むしろマイタケとともにスチーミングした肉で有意に増加していた。組織観察の結果,マイタケ抽出液で処理したものはタンパクが分解されている様子が観察された。破断測定および官能評価では,マイタケ抽出液とともにスチーミングしたものは有意に散らかく,噛み切りやすいという結果となった。マイタケと低温スチーミング調理を併用すると,効果的に食肉を軟化できることが示唆された。
著者
芦沢 真五 森 利枝 花田 真吾 米澤 彰純 太田 浩 関山 健 新見 有紀子 吉川 裕美子
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

29年度は研究会を連続しておこなった。11月18日(土)に実施した公開研究会では、文部科学省の進藤和澄国際企画室長(高等教育局高等教育企画課)に加えて、毛受敏浩(公益財団法人日本国際交流センター執行理事)、Chris Burgess(津田塾大学教授)、吉本圭一(九州大学主幹教授、第三段階教育研究センター長)の各氏による講演を行い、意見交換をおこなった。定住外国人、高度人材を受け入れていくプロセスに、NQFやFCEなどのシステムが整備されていく必要があることが提言された。12月7日(木)に実施したセミナーでは、「日本におけるFCE発展の可能性をさぐる」と題して、太田浩(一橋大学国際教育センター教授)、森利枝(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 研究開発部教授)両氏による講演を行い、12月5日に閣議決定で参加が決定した東京規約に関連して、FCEの運用にかかわる議論を深めた。さらに、3月には1週間にわたって欧州のFCE機関を訪問し、各国におけるFCEの運用と実務にかかわる調査をおこなった。まず、英国における外国成績評価(FCE)の公式な認証機関であるUK-NARICを訪問し、Cloud Bai-Yun (UK-NARIC 代表)をはじめ担当部門スタッフと面会した。FCEの実務、運用、評価ガイドライン、スタッフ職能開発などについて調査をおこなった。FCE評価実務とUK-NARICのリソースをどう活用しているかを分析した。次にアムステルダム自由大学を訪問し、入学審査部で外国成績をどのように判定しているかのヒアリングをおこなった。オランダにおけるFCE専門機関であるNUFFICを訪問し、NUFFICとしてのFCE業務、大学への情報提供のプロセス、他のFCE機関との国際連携、ワークショップ等の運営などの実情をヒアリングした。同様にドイツにおいてもFCE機関でのヒアリングを実施した。
著者
松田 武美 マツダ タケミ Matsuda Takemi 森 由香子 モリ ユカコ Mori Yukako 柴田 絹子 シバタ キヌコ Shibata Kinuko
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.43-51, 2015-03

A介護老人保健施設での介護事故反復事例を使い,介護事故防止に対する研修を行った.その結果,研修開始時,参加者が関連させた情報から生活状態を解釈する力と研修終了時のアセスメント力及び研修後の理解度と研修後の変化について確認した.研修終了時の記録から根拠の記載があり,利用者の健康状態→心身機能・身体構造→活動に目を向けていること,次に起こることを予測している表現が見られること,根拠をもって実践を行う必要性が理解できていた.研修終了後の自己の変化について,「情報収集の必要性」「アセスメントの必要性」「介護の基本の大切さ」「連携」「学ぶ必要性」「仕事の心構え」「自身の意識の変化」について7つの学びの変化が見られた.
著者
吉田 信也 松崎 太郎 大下 美奈 坂下 茉以 堀 健太郎 森 和浩 細 正博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0775, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに】関節可動域制限の原因の一つとして神経系の可動性や柔軟性の低下が関与していることが考えられており,我々は先行研究においてラット膝関節拘縮モデルにおける坐骨神経周膜の肥厚および坐骨神経束と神経周膜の密着(神経周囲腔の消失)を報告し,これが神経の滑走を妨げている可能性を示した。また膝関節不動化期間中に拘縮予防目的に関節可動域運動(以下,ROM-ex)を行った結果,神経周膜と神経束の間に神経周囲腔が観察され,神経の滑走が神経周膜と神経束との間で生じている可能性を報告した。そこで今回,ラット膝関節拘縮モデルに拘縮治療目的でROM-exを施行し,それが坐骨神経周囲組織に与える影響について病理組織学的に検討することを目的に実験を行った。【方法】対象には9週齢のWistar系雄ラット28匹を用い,それを無作為にコントロール群(n=7),拘縮群(n=14),実験群(n=7)の3群に分けた。拘縮群および実験群は麻酔後,右膝関節をキルシュナー鋼線と長ねじを使用した創外固定を用いて膝関節屈曲120°にて不動化した。この際,股関節,足関節に影響が及ばないように留意し,ラットはケージ内を自由に移動でき,水,餌は自由に摂取可能とした。コントロール群は自由飼育とした。実験群は不動化処置の2週間後より腹腔内にペントバルビタールナトリウム溶液(40mg/kg)を注射して深麻酔下で膝関節に対しROM-exを2週間行い,ROM-ex時以外の期間は不動化を維持した。ROM-exはラットの体幹を固定した状態で行い,まず膝関節屈曲位を5秒間保持し,次にバネばかりを使用して右後肢を坐骨神経に伸張ストレスが加わるように体幹より120°腹頭側方向へ約1Nで牽引し5秒間保持する運動を3分間繰り返した。ROM-exは1日1回,週6回,2週間施行した。拘縮群の半数(n=7)は不動化2週間後にジエチルエーテルにて安楽死させ,可及的速やかに右後肢を股関節より離断し標本を採取した。実験期間終了後,同様に残りのラットを安楽死させ,右後肢を標本として採取した。採取した右後肢は10%中性緩衝ホルマリン溶液にて組織固定を行い,次いで脱灰液を用いて脱灰を4℃にて72時間行った。その後,大腿骨の中間部にて大腿骨に垂直に切断し大腿部断面標本を採取した。5%硫酸ナトリウム溶液で72時間の中和後,パラフィン包埋して組織標本を作製した。作製したパラフィンブロックをミクロトームにて約3μmにて薄切した。薄切した組織切片はスライドガラスに貼付し,乾燥後にヘマトキシリン・エオジン染色を行い封入した。観察部位は大腿中央部の坐骨神経周囲組織とし,光学顕微鏡下に病理組織学的に観察した。【倫理的配慮】本実験は所属機関の動物実験委員会の承認を受けて行われたものである。【結果】コントロール群は全例で坐骨神経束は神経周膜と遊離しており,神経周囲腔が観察された。実験群においては7例中6例で神経周囲腔を認めた。一方,拘縮群では全例で坐骨神経内の各神経束は神経周膜と密着しており,神経周囲腔の消失が観察された。また拘縮群および実験群では神経周膜の線維性肥厚が全例で観察された。【考察】今回,ラット膝関節拘縮に対してROM-exを行った結果,坐骨神経の神経束と神経周膜の間に神経周囲腔が観察された。これは神経の滑走が神経周膜と神経束との間で生じている可能性を示唆するものであると考えられる。また,一度拘縮を生じた膝関節にROM-exを行うことで,坐骨神経の神経周囲腔に関しては可逆的な組織学的変化が生じ,コントロール群に類似した組織像が観察されたと考えられる。一方で,神経周膜の線維性肥厚は拘縮群と同様に実験群全例で観察されており,ROM-exは神経周膜には影響を及ぼさないものと思われた。【理学療法学研究としての意義】臨床場面において使用頻度の高い治療手段であると思われるROM-exが坐骨神経周囲組織に与える影響について病理組織学的に観察・検討することにより,神経滑走性に対するROM-exの治療効果やその運動方法などの妥当性に対して示唆を与えうると考えられる。
著者
森松 慶子
出版者
日本電子キーボード音楽学会
雑誌
電子キーボード音楽研究 (ISSN:21899339)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.24-31, 2015 (Released:2017-04-10)
参考文献数
1

要旨 電子楽器から音を出すためにスピーカーは不可欠であるが、スピーカーから出る音は、アコースティック楽器の音とは出方、減衰の仕方が異なる。そのため、電子楽器と PA を使用しないアコースティック楽器でアンサンブルする際は、音量バランスをとるのに工夫が必要である。その場合、音響学的な基礎知識や機材のノウハウとともに、人間の音の聞き方や感じ方に対する想像力が大切である。また、そうしたことを電子楽器奏者が心得ておくだけでは不十分である。共演者に、機械的な話としてではなく、音楽的な事柄として理解してもらい、より良い結果を得るために積極的に関与してもらう努力も必要である。電子楽器が音楽の世界で一般的な市民権を得るためには、重要な過程の一つである。 本論では、基礎的な音響学の用語を整理しながらスピーカーからの音の出方を理解し、実際の演奏の場でどのような工夫が有効か、筆者自身が演奏の現場で経験してきたことと、理論的な知識を随時照らし合わせながら記述する。
著者
森 久美子
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大學教育學部紀要. 教育心理学科 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.65-78, 1994-12

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
高山 レイ子 牧内 洋子 松葉 美佐子 森田 耕司 志賀 鑑時
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-19, 1978-03-30 (Released:2017-02-13)

日常よく用いられる15種の培地について,酸化還元電位(Eh)と浸透圧を測定した結果次のような成績を得た。細菌を接種せず培養条件を変えたとき,培地の種類に関係なく,Ehは好気条件では+0.3V前後を示し,嫌気条件では低下を示したが,いずれの培地でもマイナスのEhは測定されなかった。細菌を接種した後では培地の種類,培養条件・菌の増殖によりEhの変動に一定の傾向が認められた。また各培地の浸透圧はTCBS, BTBティポール,スタヒロ110培地でそれぞれ,700,900,2300mOsm/lと高い値を示したが,その他の培地ではヒトの体液に近い250〜300mOsm/lの浸透圧を示した。
著者
森 友哉 宇都宮 陽一 田 学軍 奥田 隆史
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.139, no.5, pp.648-657, 2019

<p>Fog-Cloud computing system has recently attracted much attention. This system has a simple three-tiered hierarchy: Network edge, Fog, and Cloud. Network edge includes IoT (Internet of Things) devices. Fog is localized computing facilities including network devices such as an edge router, a switch and any other. In this system, Fog handles various data processing, which are sensitive to delay, to shorten WAN propagation latency arising from the location of Cloud. However, if the data processing is concentrated on Fog, the delay of the processing and power consumption of the network edge may increase rather than Cloud computing. The reason why is because Fog has more limited resources than Cloud. Therefore, we should decide an appropriate allocation of roles between Fog and Cloud taking the latency of the processing and the power consumption of the network edge into account. In this paper, we consider the design of Fog-Cloud computing taking the latency and cost resulted from the power consumption into account by using a mixed integer linear programming.</p>