著者
阿比留 友樹 藤原 和志 則竹 賢人 浅原 亮太 新野尾 嘉孝 友田 秀紀 小泉 幸毅 森山 雅志 梅津 祐一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48102062, 2013 (Released:2013-06-20)

【目的】アメリカスポーツ医学会は、健常者の体力改善には高度の運動強度で20~25分以上、週3回以上の実施を推奨している。また少なくとも10分以上の運動を断続的に実施し、1日の合計運動が推奨時間に達するものは同様の効果があるとしている。そこで今回、少量・頻回のトレーニングによる全身持久力への効果を検証することを目的とした。【方法】対象は、健常成人男性10名(年齢23.3±0.9歳、BMI22.5±3.2kg/m²)とし、日本光電社製自転車エルゴメータを用い直線的漸増負荷試験を行った。負荷方法は、3分間の安静後、回転数は50~60rpmとし、20wattで3分間のウォームアップ後、20watt/分で漸増負荷を実施した。中止基準は予測最大心拍数(以下予測HRmax)に達するか、自覚的に運動継続が困難となるまでとした。運動負荷試験はアニマ社製AT-1100を用いbreath by breath方式で酸素摂取量(以下V(dot)O2)、最高酸素摂取量(以下peak V(dot)O2)、無酸素性作業閾値(以下AT)、分時換気量(以下VE)、心拍数(以下HR)等を算出した。またBorg Scaleにより1分毎の自覚症状を測定した。運動負荷試験終了後、アークレイ社製ラクテート・プロ2を用い乳酸値を測定した。筋力は、アニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターを用い膝伸展筋力を測定した。トレーニングは、自転車エルゴメータ駆動を1日に10分間を3セット、週3回、1ヶ月間実施し、運動強度は運動負荷試験より酸素摂取予備能の80%とした。トレーニング終了後、同様の運動負荷試験、筋力測定を行った。またV(dot)O2-HR関係式と予測HRmaxから予測最大酸素摂取量(以下予測V(dot)O2max)を算出した。さらに漸増負荷中の仕事率に対する相対HRの増加率を回帰直線で示し、相対HR/仕事率係数を算出した。解析方法として、Wilcoxon符号順位検定を用いトレーニング前後で比較、分析し、有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究の各被験者には、ヘルシンキ宣言に基づき研究内容の趣旨を説明し本人の承諾および署名を得た。【結果】トレーニング前後の予測V(dot)O2maxは前34.5±6.8、後36.3±5.4ml/min/kgで、有意差は認めなかったが、向上傾向にあった。また、peak V(dot)O2の時間(前483±88.8、後539.5±94.6sec)、ATの時間(前328±152.8、後423.8±134.4sec)、症候限界時間(前548.4±109.1、後681.6±160.1sec)に有意差を認めた(P<0.05)。相対HR/仕事率係数(前0.6326±0.0927、後0.5994±0.1184)は、有意差は認めなかったが、傾きが緩やかになる傾向にあった。膝伸展筋力、peak V(dot)O2、AT時のV(dot)O2、VEに有意差は認めなかった。また、全対象者で乳酸値データから最大努力を示していたことが確認された。【考察】 一般的にV(dot)O2maxに影響する要因は肺の換気機能、肺拡散機能、心臓の循環機能、末梢組織での代謝機能であり、今回の結果では予測V(dot)O2max やpeak V(dot)O2時のVE、AT時のVEに有意差を認めず、肺機能の改善には至らなかったが、予測V(dot)O2maxが向上傾向にあり、少なからず全身持久力は向上したと考えられる。また、相対HR/仕事率係数は緩やかになる傾向にあり、漸増負荷中の同一仕事量におけるHRは減少したことが示唆された。一方、Clausenらは「全身持久力トレーニングは、筋血管拡張機能の向上や毛細血管網の発達により活動筋最高血流を高める」と報告しており、本研究でもATや症候限界時間の延長から、末梢の活動筋血流量が向上し、代謝機能が改善したと推測される。以上より、今回の少量・頻回のトレーニングは、全身持久力の改善に一定の効果があり、特に末梢組織での代謝機能改善に寄与すると思われた。【理学療法学研究としての意義】少量・頻回のトレーニングは末梢組織での代謝機能改善に有効であることが示唆された。したがって、長時間の運動継続が困難なものや持久力向上を目的としたアプローチを実施する際の一手段として有用であると思われる。
著者
森田 美琴 木村 昭夫 畑岸 悦子 宮島 衛 佐野 哲孝 宮内 雅人 冨岡 譲二
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.103-106, 2004-03-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
8

A 68-year-old man was carried by an ambulance presenting with partial traumatic amputation of both legs as a result of a railway accident. The hypovolemic shocked patient arrived at the hospital, with potential right tension pneumothorax. Immediate decompression by tube thoracotomy was performed, however the shock state did not improve. Repeated focused assessment with sonography for trauma (FAST) and careful physical examination of the patient revealed no abdominal injuries. Pelvic fracture was not identified with the pelvic X-ray. The partially amputated legs were removed in the emergency department. In spite of these procedures, the hypovolemic shock persisted. However, a wound in the region of the right humerus, which was not bleeding during the initial examination, developed hemorrhage upon later investigation. The circulatory status of the patient stabilized after the wound was packed with gauze packing for hemostasis. Polytetrafluoroethylene (PTFE) graft inter-position of the injured artery and fasciotomy of the right forearm were subsequently performed. The postoperative course was uneventful, and rehabilitation was begun on the 15th post-operative day. Thus, even in a patient with blunt trauma, arterial injuries of the extremities should never be underestimated during the initial assessment.
著者
石森 綱行 渡辺 大介 新井 幸三
出版者
一般社団法人 繊維学会
雑誌
Journal of Fiber Science and Technology
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.72-92, 2019
被引用文献数
2

<p>The hair straightening method applying heat-treatment with glyoxylic acid (GA) at about 180 ̊C was studied. Straightening effect was estimated by shampooing test. The stress-strain relationship of GA/heattreated hair was also studied. It was revealed that from the WAXS, DSC study and stress-strain characteristics of treated sample, new crosslinking is introduced into the rod region of the intermediate filament (IF), a slight decrease in the degree of crystallinity but an increase in the thermal stability of the α-crystallites. The initial modulus and extensional work of the treated sample were markedly increased as compared to untreated sample. It was demonstrated that such large internal stress accumulated in the keratin network chain disappeared by relaxation treatment in water at 52 ̊C for 1 h. A part of the new cross-linking is destroyed when the treated hair is extended, but residual stable cross-linking to extension contributes to increase of initial modulus of the hair. Study of SAXS showed that the interspace distance between IFs increased about twice as much as the value of untreated sample. SEM observation shows that oblateness of the hair decreased by 10%, and cross-sectional shape changed from elliptical shape to circular shape which followed by increase of cross-sectional area. This phenomenon was considered to be due to the stress relaxation occurring in shampooing process throughout the cleavage of SS bonds located interfacial region between hard IF and soft KAP materials in water. Shampooing test of GA/heat-treated sample showed excellent set-ability. It was concluded that introduction of GA crosslinks into IF rod region resulted in a modified IF with higher modulus of elasticity than that of untreated hair, which means that the increase of resilience maintains the straight conformation exhibiting excellent straightening effect.</p>
著者
本多 克宏 大森 正博 生方 誠希 野津 亮
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.130-135, 2016-03-15 (Released:2016-06-15)
参考文献数
14

Privacy preservation is an important issue in such personal information analysis as crowd movement analysis with face image recognition. This paper proposes a novel framework for estimating crowd movement characteristics without exactly distinguishing each person, in which personal authentication is performed in eigen-face spaces after fuzzy k-member clustering-based k-anonymization of feature vectors. An experimental result demonstrates that, supported by fuzzy partitioning, the novel framework can improve not only the noise sensitivity and anonymization quality of the conventional k-member clustering but also the reproducibility of crowd movement.
著者
森 梓 濱 龍太郎 原田 篤 高久 由香里 橋本 敦史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.2J3J1304, 2019 (Released:2019-06-01)

本報は、調理動画を対象とした深層学習による物体検出の応用と時系列データの分析に関するものである。私たちの最終目標はパーソナライズされたキッチンの提案であり、そのためにこれまでは目視観察とスプレッドシートソフトウェアを用いた分析を行ってきた。しかし、この従来の手法は十分な精密さと被験者数を得るために膨大な工数がかかった。然して分析視点も限定的にならざるを得なかった。そこで私たちは自動化ツールとして深層学習による物体検出を導入した。約90種類の物体を含む一連の調理動画に対して物体検出を適用し、Pythonを用いてデータ抽出と分析を行い、シンクエリアにおける物体検出数の時系列データが3パターンに分類されることを発見した。この発見は、パーソナライズされたキッチンの提案に向けた調理パターンの理解に貢献する。
著者
西谷 陽志 坂井 瑠実 申 曽洙 森上 辰哉 清水 康 稲田 紘
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.287-295, 2010-03-28 (Released:2010-04-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1 6

透析患者に対し,治療を円滑に行うために必要なシャントの日常管理のうちでも,特に狭窄の診断は極めて重要である.シャント音の聴診はシャント狭窄を簡便に診断する方法として日常的に用いられている.臨床経験上,狭窄の進行に伴って高調なシャント音が聴診されることが知られているが,この診断には客観的な基準がなく,聴診者の主観に頼っているのが現状である.そこでわれわれはこの診断基準の確立に向けた基礎的研究として,シャント音を周波数解析し,狭窄度と周波数スペクトルの関係について解明することを試みた.方法としては,まず患者のシャント(動静脈吻合)の吻合部より中枢部に向けて3~6箇所の部位で複数のシャント音を記録し,短時間フーリエ変換により周波数スペクトルを算出した.次にシャント狭窄度とシャント音の周波数スペクトルとの関係をスペクトルの平均値の有意差により解析した.その結果,吻合部(シャント狭窄部より上流域)および狭窄部上では,狭窄の進行に伴い高周波数帯域のスペクトルの割合が有意に大きいことが確認された.一方,中央部(狭窄部より下流域)では基本的に狭窄度と周波数帯域との間に有意差は確認できなかったが,狭窄部直後の部位については中間周波数帯域のスペクトルを中心に有意に大きくなることが確認された.流体力学理論上,特に吻合部,狭窄部,また,狭窄部直後の中央部では狭窄の進行に伴って乱流が発生し,その影響で高周波数帯域のスペクトルが上昇するものと考えられる.以上の結果から,シャント音による客観的な狭窄度診断のアルゴリズムが確立できることが期待された.
著者
宮島 芙美佳 小野沢 栄里 生野 佐織 石井 聡子 後藤 杏依 小田 民美 森 昭博 左向 敏紀
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.20-26, 2018-04-10 (Released:2018-05-18)
参考文献数
19

本研究では、中鎖トリグリセリド(MCT)が健常猫にどのような影響を与えるか検討するため、MCTを豊富に含むココナッツ油を添加した食事、および長鎖脂肪酸脂肪(LCT)を含むラード、大豆油を添加した食事を給与した場合の糖、脂質代謝の変化を比較した。健常猫6頭を用いて、3種の異なる脂肪を添加した食事を給与した。3種の脂肪添加食をそれぞれ14日間ずつ給与し、体重および体脂肪率の測定、臨床症状の有無の評価、血液検査を実施した。全ての食事において試験期間中、全頭で嗜好性に問題はなく副作用も認められなかったため、脂肪添加食は安全に給与できた。さらに、血液検査項目の血糖値、インスリン濃度、GIP濃度、GLP-1濃度、中性脂肪(TG)、遊離脂肪酸(NEFA)濃度を測定した所、全ての検査項目において3種の食事間で有意な違いは認められなかった。ヒトにおいてMCTは代謝が速く効率の良いエネルギー源とされ、また脂肪蓄積抑制効果なども認められているが、猫においては今後さらに検討が必要である。
著者
森松 博史 内野 滋彦
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-8, 2003-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1

1983年にPeter A. Stewartが提唱した酸塩基平衡に関する新しいアプローチは近年さまざまな分野に応用され始めている。彼のコンセプトのなかでは,(1)水素イオンは水の電離状態によって容易に変化し,(2)これを決定するのはPaCO2, strong ion difference (SID), total weak acidの3つである。水素イオンや重炭酸イオンはこれら3つの因子のバランスによって決定される。アルブミンは酸性化因子として働き,塩素イオンはSIDを変化させることにより酸塩基平衡に重要な役割を果たす。このアプローチを用いることにより,これまで理解が困難であった生理食塩水による代謝性アシドーシスや人工心肺中のアシドーシスがより容易にまた正確に理解できる。Stewart approachによりわれわれの酸塩基平衡に対する理解が深まると信じる。
著者
稲井 眞彌 三木 哲郎 森山 剛
出版者
大阪医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

C9完全欠損症はわが国では高頻度で日本全国で発見されることが明らかになっている. このC9欠損症のC9遺伝子は健常者のC9遺伝子に比較してどのような異常が存在するのかを検討した.1.C9完全欠損症15例より採血した血液から末梢白血球を分離し, これらの症例の白血球より高分子DNAを調整した. 一部の症例の白血球は, EBウィルスで株化することにより, 貴重なDNA材料を持続的に利用できる体制を整えた.2.個々の症例から得られた高分子DNAをEcoRI, BglII, HindIII, PstI, BamHIなどの制限酵素で処理し, アガロース・ゲル電気泳動により切断フラグメントを分離した. これらDNA断片をサザン・ブロティング法により, ナイロン・メンブレンに転写した. このフィルターとアイソトープで標識したC9cDNAとをハイブリダイズさせ, オートラジオグラフィーによりプローブと相補的な塩基配列をもつDNA断片を検出し, DNA断片の長さの多型性(RFLPs法)を検討した. その結果, C9欠損症のC9の構造遺伝子には健常者のそれと差異を認めず, 構造遺伝子内には大きな塩素の脱落などは生じていないと考えられる結果が得られた.3.C9に対するモノクロナール抗体を作製し, C9aを認識する抗体はX195をはじめ14クローン, またC9bを認識する抗体がX197とP40の2クローン得られた. さらにX197はC9をトリプシン分解して得られるC9a', C9b'のうちC9b'を認識したが, P40はC9a', C9b'のいずれとも反応しなかった. このような抗C9モノクロナール抗体は酵素免疫測定法によるC9の蛋白の微量定量法の開発に応用することができる.
著者
小川 美奈恵 森本 康彦 北澤 武 宮寺 庸造
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.265-275, 2017-02-20 (Released:2017-03-23)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究の目的は,ICT活用指導力の向上のための学習モデルを開発することである.教育の情報化の進展に伴い,求められているICT活用指導力の向上のために,多様なICT活用について気づきを与えられる「間違い探し」動画教材の作成と閲覧による学習モデルを開発し,その効果を明らかにするために,教員養成課程に在籍する学生と,教職大学院の現職教員に対して実践,評価を行った.評価の結果,「間違い探し」動画教材作成・閲覧前後でICT活用に関するマインドマップの有意な上昇,ICT活用指導力チェックリストの領域Bの全項目で得点の有意な上昇が認められた.また,自由記述から,教員養成課程の学生における「間違い探し」動画教材作成・閲覧だけでなく,現職教員においても「間違い探し」動画教材の閲覧を行うことで,客観的に指導について考察でき,ICT活用に関する知識を身につけさせることが可能であることが示唆された.
著者
森 裕城
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.2_42-2_64, 2012 (Released:2016-02-24)
参考文献数
82

A succession of books is being published that depicts changes in Japanese society based on the keyword of neoliberalism. This trend is particularly noticeable in fields that address the issues of workers, the elderly, people with disabilities, women, young people, and children. Expressed in more general terms, interest in neoliberalism appears to be growing in fields that study groups that are in weak positions within society. For this reason, this article focuses on the issue of educational reforms in order to identify the spread of neoliberalism in Japan, and it also discusses the development thereof. Viewed from the point of view of the intents of the elite, the development of educational reforms in Japan involves a variety of intermingled factors, and in some aspects these cannot be described as simply neoliberal reforms. However, when viewed at the real - world level of impact on society, school education clearly has been swept in a tide of neoliberalism, and those involved in education see this as problematic. It is the author's belief that this difference in recognition itself generates the current poor prospects on the subject of educational issues. It can be said that there is a pressing need to build an analytical framework for ascertaining comprehensively trends among the elite who institute reforms and trends among the people in weak positions who feel the effects of reforms.
著者
森本 信明
出版者
日本住宅会議
雑誌
住宅会議
巻号頁・発行日
no.90, pp.17-23, 2014-02
著者
樋口 由美子 森嶋 隆文
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.7, pp.721, 1988 (Released:2014-08-08)

帯状疱疹患者61例に髄液検査を行ない,髄膜炎現象とその臨床症状との相関や髄液所見の特徴,殊に,髄液細胞数や髄液中varicella zoster virus(VZV)CF抗体価の経時的変動について検索し,次の興味ある知見を得た.1)帯状疱疹患者の66%に髄膜炎現象がみられ,このうち,髄膜刺激症状を呈したのは30%にすぎなかった.2)髄膜炎現象を伴う症例の罹患部位は脳神経領域に限らず,約半数か脊髄神経領域であった.3)髄膜炎現象は汎発疹の有無や基礎疾患の合併とは相関しなかった.4)髄膜炎現象をみる症例の髄液所見に関し,髄液細胞増多は軽度~中等度であり,外観は水様透明,総蛋白は正常~上昇,Clや糖はほぼ正常で,ウイルス性髄膜炎の所見に一致していた.トリプトファン反応がしばしば陽性を示した.5)髄液細胞増多の程度と汎発疹や髄膜刺激症状の出現頻度とは必ずしも相関しなかった.6)症例の38%が急性8期に髄液細胞増多を示した.中等度以上の細胞増多群における髄液細胞数の経時的変動に関し,症例の80%で,髄液細胞数が1~2病週に最高値を示し,その1週後に急激に数を減じるが,その後の減少度は緩徐である.7)髄液中VZV CF抗体は急性期には出現せず,回復期には細胞増多群の63%が有意の上昇を示した.中等度以上の細胞増多群では,その出現頻度は88%と高率であった.髄液中VZVCF抗体価の経時的変動に関し,症例の70%が髄液細胞数の変動とほぼ同様のパターンを示し,第1~2病週に最高値を示し,第4病週には1倍未満となった.8)初回検査時の髄液細胞数は抗ヘルペスウイルス剤投与群では非投与群に比して有意の低値を示していた.
著者
古森厚孝 編
巻号頁・発行日
vol.[7], 1837