著者
波夛 伴和 瀧井 正人 高倉 修 森田 千尋 河合 啓介 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.857-863, 2015-07-01 (Released:2017-08-01)

生活習慣や治療行動(食事や運動など)は糖尿病患者の病状を左右する重要な要素である.患者を適切な治療行動に導くために,従来,糖尿病治療者は教育・指導に注力してきた.近年では,患者の問題解決能力を尊重して,その能力の発揮を援助する考え方(糖尿病エンパワーメントなど)が紹介され,効果も報告されている.しかし,中には自身の能力を発揮するのが難しい患者も存在する.そのような患者を効果的に援助するためには,より深く患者を理解することが必要である.本稿では,糖尿病患者を理解するためのかかわりについて,筆者の学びの過程を示しながら考察した.患者の大きな変化につながるような言葉や,技法が明確な心理療法に注目が集まりやすいが,その前段階の土台作りの重要性についても強調したい.
著者
海浦 浩子 森 一郎
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.2053, 2019-11-30 (Released:2020-01-08)

国公私立大学図書館協力委員会は,長年,大学図書館での著作権を尊重しつつ著作物利用を簡便化するための活動を行ってきた。そのような中,「学校その他の教育機関における複製等」について定めた著作権法第35条が改正される流れを受け,法改正後に,大学内において教育資源の相当部分を管理する図書館が果たすべき役割を検討するため,1980年代から教育現場で著作物をブランケットライセンスにより利用しているイギリスを実地調査した。イギリスの大学における著作物の利用の状況及び調査前後の国公私立大学図書館協力委員会の活動について報告する。
著者
森田 亜矢子 蒲生 諒太
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.21-36, 2019-03-31

本稿は、情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)を活用したアクティブ・ラーニング授業の実践報告である。技術発展とグローバル化に伴い複雑に変化する今日の社会では、心理社会的リソースを活用しながら自律的に行動し問題解決を行うことができる人材の育成が求められている。他方で、大学のユニバーサル化が進み、学生の学力や学習習慣が多様化したことにより、一律の教育を施すことは困難になりつつある。様々な教育的ニーズを持つ入学者を、どのようにして専門的な学びへ導くかということは、初年次教育の課題である。本稿では、こうした背景をふまえて行った学習支援の取り組みと情報通信技術の活用について報告する。対象は、4年制大学の文系学部に所属する初年次生である。取り組みの内容は、次の5点である。1つめは、対話的で主体的な学習を促すための学生主導型の授業デザインの開発である。2つめは、オンデマンドな学習を質と量の両面から支援するための情報通信技術の活用である。3つめは、省察にもとづく自律的な学習の素材としてルーブリックを提示し、学習成果の可視化を試みたことである。4つめは、グループ学習とピア・レビューによる協調学習を組み入れて、社会的リソースを活用した連鎖型の学習を促したことである、5つめは、授業に対して学生がコミットしやすいよう、役割分担や教室内の配置に工夫をしたことである。結果、個別学習と協同学習を組み合わせた少人数ゼミナール形式の演習を実施し、情報通信技術を活用して授業内外の学習支援を行った。本稿では、取り組みの詳細を述べ、個々の取り組みについて考察を行う。
著者
森 順子
出版者
人間環境大学
雑誌
こころとことば (ISSN:13472895)
巻号頁・発行日
no.1, pp.51-63, 2002-03

作家、宇野千代の九十九年間の人生は、絶対的権力者としての父親の存在を抜きにしては語ることが出来ない。それは恐怖心として、彼女の精神の髄まで刻み込まれる。父親の言葉によって植え付けられた自信喪失に懊悩し続ける中で、宇野千代がいかにして生涯、自分自身であることを希求して生き抜いたかを探る。
著者
森本 兼曩 丸山 総一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.241-251, 2001-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
26

情報化社会, 高齢化社会の到来といった社会経済構造の変革, 疾病構造の変化などにより, われわれのライフスタイルは大きく変わろうとしている.このような現代社会において, 国民の健康意識は高く, 病気になって考えるのではなく, 健康な時期に将来発生するかもしれない疾病に対する一次予防の方法を積極的かつ科学的に考え, さらにQuality of Life(QOL)を高める具体的方策を追求していくことが, 緊急かつ重要な課題となっている.こうした問題に対するアプローチとして, われわれが必要と考えているのはストレスに強いライフスタイル, より健康的なライフスタイルへの変容に個々人が自主的, 自発的に取り組むことである.喫煙, 飲酒, 運動などのライフスタイルが, 心身の健康と関連性のあることをこれまでに報告してきた.われわれは, 勤労者, 地域住民, 高齢者, 阪神・淡路大震災被災者を対象に, 一般的健康質問票, 健診データ, 染色体変異, NK細胞活性, IgE, コルチゾールなどを調べた.われわれは, これまでの研究やBreslowの報告に基づき, 8つの健康習慣として, (1)喫煙しない, (2)適量飲酒, (3)定期的な運動, (4)7〜8時間の睡眠, (5)栄養バランスを考える, (6)労働時間10時間未満, (7)毎日朝食を食べる, (8)ストレスを適正に保つ, を抽出した.同時に, この8つの健康習慣をいくつ守るかによって健康習慣指数(HPI)を算出した.2, 148人の勤労者における6年間の追跡調査の結果からは, 不健康なライフスタイルの人は, 慢性疾患の発症の割合が有意に高いことを示した.一方, 癌免疫力の指標の一つであるNK細胞活性は, 良好なライフスタイルの人で有意に高いことも明らかにした.遺伝的健康度は, リンパ球染色体変異の頻度(姉妹染色分体;SCE, 小核;MN)で測定した.その結果, 良好なライフスタイルを多くもつ人ほど, 染色体変異の頻度が有意に低かった.また, 不健康なライフスタイルの人で異常にIgEが高くなっていることも明らかにした.震災の被災者を対象にした調査では, 不良なライフスタイルの人ほど, また心的外傷後ストレス傷害(PTSD)傾向の強い人ほど, NK細胞活性が有意に低く, コルチゾールは有意に高くなっていることを示した.勤労者や高齢者のデータからは, 良いライフスタイルの人やヒューマンサポートの多い人ほど, 高い職場ストレスや身体的健康状態が良くないにもかかわらず, 高いQOLを示していたことを報告した.以上の結果から, われわれがライフスタイルをより健康的なものに変容させようとするのも, 個々人のいわば短い生涯のうちで, なるたけ大きな自己実現に向けての活動が, 健康であればあるほど容易になるからである.そのような意味からは, より健康的なライフスタイルは, 将来のさまざまな健康破綻への負荷に対する防御力, 耐性力, 抵抗力を示す資料でもある.
著者
中川 智皓 森田 悠介 新谷 篤彦 伊藤 智博
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.82, no.838, pp.16-00052, 2016 (Released:2016-06-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

In recent years, personal mobility vehicles (PMVs) have attracted huge attentions and widely developed. Compact PMVs can move through narrow spaces and they are expected to be used in pedestrian spaces. In this study, we aim to develop a four-wheel stand-up-type personal mobility vehicle for people who cannot walk far distantly because of the pain of foot or waist although they are able to walk for a short distance. The coupled model of human and vehicle is constructed by using multibody dynamics. In the model, the vehicle is expressed by one rigid body. The wheels, body, and handle are considered as a rigid body together. A human is expressed by 8 rigid bodies (foot, lower leg, femoral, body, head, upper arm, lower arm, and hand). The vehicle of the coupled model is accelerated in the numerical simulations. The behaviors of the center of gravity of a human with and without handle constraint are analyzed. As the result of the parametric study, it is found that the center of gravity movement is smaller when the value of the maximum acceleration and the acceleration time are small. It is also found that as the angle of the upper arm becomes large, the movement of the center of gravity is decreased.
著者
大高 恵莉 大高 洋平 森田 光生 横山 明正 近藤 隆春 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.673-681, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
20
被引用文献数
2 8

目的:動的バランス機能の評価法であるMini-Balance Evaluation Systems Test(Mini-BESTest)の日本語版を作成し,その妥当性を検証した.方法:Guilleminらのガイドラインに準じ日本語版Mini-BESTestを作成した.バランス障害群20 名(平均年齢65.4±18.7 歳)及び健常群7 名(平均年齢69±5.9 歳)に日本語版Mini-BESTest,Berg Balance Scale(BBS),国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I),Activities-specific Balance Confidence Scale(ABC Scale)を実施し,Spearmanの順位相関係数を求めた.結果:日本語版Mini-BESTestの平均施行時間は20.0 分で,BBS(r=0.82,p<0.01),FES-I(r=-0.72,p<0.01),ABC Scale(r=0.80,p<0.01)と有意な相関を認めた.分布の非対称性を示す指標である歪度(skewness)はそれぞれBBS -1.3,日本語版Mini-BESTest -0.47であった.結論:日本語版Mini-BESTestは既存のバランス評価法との併存的妥当性を示し,かつBBSのような天井効果を認めない点で優れていると考えられた.
著者
森泰樹著
出版者
杉並郷土史会
巻号頁・発行日
1974
著者
松本 一弥 笹川 七三子 川森 正夫
出版者
社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.81-93, 1978 (Released:2011-03-04)
参考文献数
36
被引用文献数
7 5

A survey was made on nurses working in a certain university hospital, with regard to night shifts and short off-duty period incorporated in the system. Of the 115 nurses working in the wards studied, 84 were working a three-shift system, 18 a two-shift system and 7 a permanent night shift system. The three-shift system consisted of a day shift (8.30-16.30), an evening shift (16.30-0.30) and a night shift (0.30-8.30), which was performed in a very irregular way with no fixed cycle of rotation. The number of night shifts averaged 10 per month for nurses working by the three-shift system, and 20 for nurses in permanent night duty. According to the rotation schedule, each nurse was obliged to have off-duty periods of about 8 hours about 5 times a month on the average and to work two consecutive night duties once or more a month, while nurses working the permanent night duty had two consecutive services 10.7 times a month. Results of time study of nurses revealed that a large portion of time was spent for contact with patients, either directly looking after them or indirectly assisting medical treatments, and that during most of the duty hours the working posture was either standing, walking, or forward bending. The frequency of fatigue complaints after a shift was higher in the order of day shift < evening shift < night shift. Especially after the night duty, symptoms of drowsiness and dullness and symptoms of difficulty in concentration increased markedly. It was shown that the drowsiness-dullness symptoms were always higher in frequency after a day shift following an off-duty period of 8-hour than that following off-duty hours of 16 or more hours. In the case of a night duty, the fatigue complaints were more frequent after a shift following an 8-hour or 16-hour off-duty period. As for flicker fusion frequency (CFF) and body temperature changes in different shifts, they remained at extremely low levels during a night shift, and especially low between 4.00-6.00 a.m., both CFF and body temperature being elevated afterwards. At the end of a night duty, however, CFF was 2-3 Hz lower than before a day shift. The decrease of the CFF level in the late afternoon of a day-shift was more marked after a shift following an off-duty period of 8-hour than after a shift following longer off-duty hours. In the case of night duty, the lowering rate was in the descending order of 8, 16 and 24 hours of the off-duty period, the CFF level being the lowest between 4.00-6.00 a.m. When the nurses had to take the next shift after a short off-duty period of 8 hours, they were in debt of sleeping hours, which otherwise could be paid off by a following night sleep. Further the meal time of shift workers was very irregular on days of evening- or night-shift, reduction in frequency of meals per day being frequent among them. On the basis of the results obtained, it is concluded that nurses are adversely affected by the frequent short off-duty period and consecutive night shifts and that their shift system should be corrected so as to avoid these conditions.
著者
鈴木 亮子 遠藤 智子 中山 俊秀 横森 大輔 土屋 智行 柴崎 礼士郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-07-18

「言語の定型性」という、従来の言語研究では殆ど顧みられてこなかった側面が、実際の言語使用では広汎に見られることが近年指摘されてきている。定型性の理解に向けて、実際の人々の言語使用を記録したデータをもとに観察・分析・記述を蓄積しつつ、言語の定型性を中軸に据えた文法理論の構築を試みることが、私たちのもつ言語知識の全体像の理解に不可欠であると考え、本研究では日中英3言語の会話をはじめとするデータの分析に取り組んでいる。定型性の分析に向けての情報収集を行った初年度に続き、2018年度はデータと向き合い個々のメンバーの専門性を生かした研究活動を進めることができた(業績参照)。2018年5月に年間活動予定を定め二通りのデータセッションを行った。まず同じ動画データ(大学生の会話)を見ながらメンバーそれぞれの定型性と言語使用に関する気付きを共有し合った後、個々のメンバーが日・中・英語のデータから短いセグメントを持ち寄り議論をした。定型性を分析する上でポイントになるリサーチクエスチョンのリストを作成した。これらが研究をまとめる際の糸口になる。9月には国際学会(Referentiality Workshop)などに複数のメンバーが研究発表を行い海外の学者との研究交流を深めた。2018年12月に海外研究協力者のHongyin Tao氏(UCLA)と大野剛氏(U of Alberta)を招聘し東京外国語大学で国際ワークショップを開催し、言語の定型性を中心に据えた理論化を見据えた発表を聞くことができた。2019年3月6日から7日にかけて九州大学で行った第3回目の会合ではこれまでの研究会合を振り返り今後の方向性を議論した。相互行為分析からは少し離れた立場の方々を招いて言語の定型性に関する議論を深める案などが出された。2020年3月には定型性研究の先鞭をつけたAlison Wray氏をイギリスから招いて国際ワークショップを開催する方向で動き出している。
著者
田崎 民和 西村 治夫 薬師寺 道明 松村 隆 東島 博 森崎 秀富
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.353-359, 1990
被引用文献数
3

特異的な卵巣間質の増殖で特徴づけられるKrukenberg腫瘍の腫瘍形成までの過程を明らかにする目的で, ほとんど卵巣の腫大を認めない10例のKrukenberg腫瘍を転移の初期病巣と考えて病理組織学的に検討し, 以下の結論を得た. 1) 初期転移巣の組織形態としては, リンパ管侵襲のみの像, 充実性胞巣像, びまん性浸潤像の3種の基本形態に分類された. 2) 全例に卵巣門部のリンパ管侵襲がみられた. 3) びまん性浸潤型では, 印環細胞がリンパ管を介して卵巣門部より皮質に向かって, びまん性放射状に広がる像がみられ, さらに末梢においてリンパ管より間質に腫瘍細胞が漏出し浸潤していく所見が確認された. この時期では卵巣間質の反応は比較的軽度で, 浸潤の末端部において印環細胞がより豊富に存在していた. 4) 充実性胞巣を示すものでも, 充実性胞巣の中に間質の介在がみられ, 腫瘍の未分化な性格が示唆された. 5) 対側の腫大卵巣の組織形態は, 著明な卵巣間質の増生を伴う肉腫様像, 硬性癌像を呈するものがほとんどであった. 6) ABC法によるCEA染色では, 一見腫瘍細胞の存在が不明瞭な, 増生した間質の中にもCEA陽性の腫瘍細胞が多数存在していた. 以上の結果からKrukenberg腫瘍の腫瘍形成過程を考察すると, 転移経路は卵巣門部より侵入するリンパ行性転移であり, 門部から均等に卵巣全体への腫瘍細胞の浸潤がまずおこり, その後印環細胞の破綻による粘液の間質内漏出が引金となって間質の浮腫と増生が始まると考えられた. 卵巣腫大の大きな因子はこの卵巣間質の増生と浮腫であり, 卵巣間質のsarcomatousな変化は, そこに埋もれるように存在する未分化で上皮性性格に乏しい腫瘍細胞と, 増殖した卵巣間質によって形成されると考えられた.