著者
米山 正敏 深田 聡 森川 美絵
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.407-417, 2014-08

近年,我が国では,保育所入所待機児童(調査日時点において入所申込が提出されており,入所要件に該当しているが入所していないもの.厚生労働省保育課が把握して「保育所関連状況取りまとめ」を作成する際に定義されている.保育所に空きがなくて入所できない児童,もしくは空きがあっても諸事情により入所していない児童を含む.以下,待機児童という.)の解消が大きな目標になっている.平成13年以降,保育所定員数も保育所数も全国レベルでは右肩上がりに増加しており,かつ,毎年保育所利用児童数は定員を下回っている.しかしながら,待機児童は依然として発生しているという現状がある.このことは,待機児童の地域偏在や,待機児童解消のための保育の受け皿整備等,自治体による取り組み方の違いに起因している可能性,そして,それらについての検証の必要性を示唆している.本報告では,待機児童と保育所整備に関する状況について既存のデータを整理し,有用と思われる新たな指標も追加することで現状の分析を行った.結果として,政令市・中核市レベルの待機児童と保育所整備に関する状況は,人口規模の類似した自治体であっても大きく異なっていることが明らかになった.また,自治体単位の5才以下人口に占める保育所定員数の割合が高いほど,5才以下人口に占める待機児童数の割合が低いという傾向が見出された.また,どのような受け皿により保育ニーズが吸収されているのか,地域の保育ニーズに応じるためにどの程度の地方単独保育施策が動員されているかについても,自治体によりかなりの相違があることも示された.なお,待機児童の解消を含めた保育所整備は,保育の受け皿の量的拡大のみならず,ケアの質の保障,地域の子育て支援能力の向上,雇用環境とマッチした環境整備といった多様な視点からなされることが重要である.それらを把握しモニタリングするための指標の開発,地域の施策立案への活用が,今後の課題として示された.
著者
森中 康弘 菰淵 寛仁
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.7-11, 2001-01-26
被引用文献数
2

高速撮像に適した8チャンネル並列読み出しCCDを開発した。撮像領域を短冊状の8つのブロックに分割し、各々のブロックをそれぞれ独立のアンプから読み出す。VCCDの隣にPD(フォトダイオード)のない領域を作り、VCCDの最終段に配置したHCCDにかけて絞り込む。そそて、VCCDの絞込みによって生じたスペースに読み出しアンプとその周辺回路を配置する。これによりアンプ間特性の均一化を図ることができる。VCCDの高速転送のために裏打ち配線構造を導入し、VCCDの折れ曲がり構造に対しては3次元のデバイスシミュレーションにより構造最適化を行った。セルサイズを11.5μm×11.5μmで設計し、またVCCDの絞込み構造によりアンプをFDAに最隣接させることで、高ダイナミックレンジを実現した。
著者
森川 茂
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.76-77, 2010

エボラ出血熱は、1976年にアフリカのスーダンとザイール(現コンゴ民主共和国)で初めて大流行したウイルス性出血熱で、原因ウイルスの名称はザイールのエボラ川に由来する。エボラウイルスは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)で特定1種病原体に指定されているため、日本でのウイルスの取扱いはBSL4となる。エボラウイルスと近縁なマールブルグウイルスは、ウイルス感染サルを介してヒトへ感染することが多いため、平成12年から動物検疫所により輸入サルの検疫が行われている。また、感染症新法で、獣医師はエボラ出血熱・マールブルグ病等に感染または感染した疑いがあると診断したときは、都道府県知事に届ける義務がある。これまで、エボラウイルスの感染はヒトや霊長類とアフリカの一部のレイヨウ類に限られていたが、近年フィリピンの豚飼育施設でレストンエボラウイルスの豚への感染が確認された。また、ザイールエボラウイルスとマールブルグウイルスの自然宿主がオオコウモリであることが明らかになった。
著者
栗原 トヨ子 澁井 実 森谷 陽一 長崎 重信 安永 雅美
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.32-42, 2014-06-25

我々は高齢障害者の作業療法(Occupational Therapy:以下OT)活動への参加とストレスとの関連について明らかにする目的で,客観的な指標として「唾液アミラーゼ活性モニター」を用いて,開始時と終了後に測定を試みた。その結果,参加者14人のうち,開始時よりも終了時の活性値が減少した人は10人(71.5%)で7割以上の人が減少していた。アミラーゼ活性値が減少した要因について挙げると,便秘薬服用者および編み物以外の作業種目をしている人が有意に減少していた。作業療法室および居室での主観的満足感を測る調査として用いたフェース・スケール得点は,アミラーゼ活性値の減少と負の相関を示した。編み物活動の人は他の活動の人よりも終了時のストレス値は減少しない傾向にあったが,編み物活動参加者の大半の人がOT室でのフェース・スケール点を「大変満足」と答えていた。したがって編み物をしている人たちにとって,適度な集中・緊張の持続は「難しい作業をこなしている」という満足感(充足感)につながっていると考えられた。
著者
植村 祐二 森勢 将雅 西浦 敬信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.56, pp.1-6, 2010-05-19

近年,音声認識技術の飛躍的な発達に伴い,音声認識を活用した音声情報案内システム等が利用されるようになりつつある.しかし,騒音環境下での音声認識性能は,十分なSNRが確保できないことや,ロンバード効果と呼ばれる発話変形により低下するという問題がある.ロンバード効果とは,十分な聴覚フィードバックが確保できないときに生じ,基本周波数やフォルマント周波数等,音声認識に用いる特徴量に変化が生じる現象を示す.このロンバード効果により,騒音環境下での音声認識性能が静環境下での音声認識性能に比べ著しく低下するという問題がある.そのため,騒音環境下における音声認識性能の改善には,ロンバード効果の抑圧が必要となる.しかし,ロンバード効果の抑圧には大量のロンバード音声と平常音声が必要となるが,データが不足しているのが現状である.そこでまず,ロンバード効果を含むロンバード音声コーパスを構築した.構築したコーパスから,ロンバード効果による特徴の変化を詳細に分析し,ロンバード音声と平常音声の識別実験を実施した,識別実験は主観評価とマハラノビス距離による客観評価にて行った.その結果,主観客観評価ともに平均80%を超える識別率が確認できた.次いで,分析したロンバード音声の特徴をリサンプリング処理を施し平常音声の特徴に変換することで,ロンバード音声の音声認識性能の改善を試みた.その結果,ロンバード音声の特徴を平常音声の特徴に変換することによって,女声約10%,男声約4%の音声認識性能の改善が確認できた.
著者
玉森 豊 西口 幸雄
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.959-963, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
7

PEGは経腸栄養の重要性の認識とともに認知度が高まってきている.PEG造設法には Pull/Push法と Introducer法がありそれぞれに利点・欠点があるが,最近はIntroducer法の欠点を補った Introducer変法によるキットが多用されるようになってきた.Introducer法では胃壁固定は必須でありPull/Push法では固定なしでも可能であるが事故抜去の可能性などを考えると固定が望ましい.交換法については瘻孔損傷をしないように愛護的におこなう必要があり,ガイドワイヤーやスタイレット同梱のキットであればそれを利用するのもよい.確認には内視鏡等の観察下におこなう直接確認法と,交換後のカテーテルから造影したり内容液を吸引したりする間接確認法があり,間接確認法の場合は内部バンパーの瘻孔内留置を見落とす可能性があることを留意すべきである.最近超細径内視鏡を経胃瘻的に胃内に挿入する確認法もされつつあり,低侵襲で確実な確認法であることから今後の普及が待たれる.
著者
張 セイ 森本 康彦 宮寺 庸造
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.177-180, 2012
参考文献数
9

近年,自己調整学習を支援するシステムが開発されているが,初歩の自己調整者に特化した支援が不十分なため,自己調整学習に不慣れな学習者には扱いにくいシステムとなっていた.そこで,本研究では,この問題点を解決するため,初歩の自己調整者の学習プロセスを通して自己調整学習を支援するシステムを開発した.本システムは,足場かけ/足場外しを半自動化することで自己調整者の上達を促すことを特徴とする.評価の結果,本システムは,自己調整学習を効果的に支援することが示され,問題点の解決の可能性が示された.
著者
敷島 良也 髙津 哲也 高橋 豊美 二宮 正光 坂井 伸司 一ノ瀬 寛之 森岡 泰三 佐々木 正義
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.1170-1175, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
21

えりも岬以東海域で刺網と定置網,桁網で採集したマツカワの成長特性を明らかにした。無眼側耳石の外縁は,4~7 月には不透明帯を持つ個体の割合が増加し,8~12 月には減少していた。透明帯外縁を指標として年齢群に分けたところ,夏季に全長が著しく増加したが,11~5 月にはほとんど成長しないことが判った。4 月 1 日を年齢起算日とし,全長を von Bertalanffy 式に当てはめた。えりも岬以西海域に比べて本海域の方が成長が速い要因として,夏季に成長に適した 20℃ 以下の水温に保たれることが考えられた。