著者
横山 隆明 ヨコヤマ タカアキ Takaaki YOKOYAMA
巻号頁・発行日
(Released:2010-02-22)

本研究では、レゴリスといわれる細かい砂に覆われている月や惑星表面への着陸時の<br />着陸衝撃力および沈下量を事前に算定する方法に関する研究を行った。<br /> レゴリスのような細かい砂で覆われた地盤から受ける反力や沈下量を求めようとする<br />時、砂のような粉粒体は変形時に連続体的挙動から非連続体的挙動を示すため、解析的<br />に解くのは難しい。そのため地盤と機械との相互作用について研究しているテラメカニ<br />ックス分野では、解析対象を模擬した実験を行い、得られた実験結果から地盤をモデル<br />化し半経験式を導き、地盤の変形および抵抗を求める方法が良く用いられる。<br /> まず既存の研究の調査を行った結果、テラメカニックス分野で、砂地盤への着陸現象<br />を扱っている研究は見当たらなかったが、着陸と似たような現象を取り扱っている研究<br />として、重錘落下による地盤の締め固め効果に関する研究があった。これらの研究では、<br />衝撃加速度および沈下量は落下速度に比例すること、地盤密度が密な場合は衝撃加速度<br />波形が1つのピークを持つこと、緩い場合は2つのピークを持つこと、質量が大きい場<br />合は衝撃加速度ピーク値が小さくなることなどが実験から明らかにされていることがわ<br />かった。<br /> そこで本研究においても、まずはテラメカニックス分野で行われている方法と同じく、<br />実験から着陸衝撃力および沈下量を求める事を試みた。実験の対象は月面への着陸とし、<br />月面の高真空環境を模擬するため実験は真空槽の中で行い、月面の1/6G環境を模擬する<br />ため1/6G相似則に基づき1/6スケールの試験体を使用した。試験体は平成14年度に提<br />案されたSELENE-Bの着陸パットの諸元に基づき作成した。実験結果から、テラメカニッ<br />クス分野の重錘落下実験結果と同じく、衝撃加速度および沈下量は落下速度に比例する<br />ことがわかったが、月面環境を模擬するための真空引きの際に制御できない地盤密度の<br />変化が発生し、落下質量の影響が明確に現れない、既存の実験では密度が低い場合に現<br />れる2つのピークを持つ衝撃加速度形状が、密な地盤に対する実験でも現れるなどの真<br />空を模擬した実験特有の難点があることがわかった。<br /> そのため、アポロ計画で使われた地盤モデル中のパラメータを本研究で行ったフット<br />パット試験体の直径に合わせ変更して数値解析をおこない衝撃加速度および沈下量の予<br />測を行った。この結果、衝撃加速度および沈下量は速度に比例し、また、実験は表せな<br />かった落下質量の影響も表すことができることがわかった。しかしアポロ計画で使われ<br />たモデルでは、実験結果に見られた2つのピークを持つ衝撃加速度を再現できない、沈<br />下量がピーク値を示した後急激に減少してしまうなど、実験値と良く合わない点もあり<br />注意が必要であることが明らかになった。その結果、アポロの地盤モデルの適用性とし<br />ては、衝撃加速度、沈下量ともにピーク値までの予測であれば充分に使用可能であるこ<br />とがわかった。<br /> 次に、圧縮性流体の解析法として開発された連続体から非連続体まで解析できるSPH<br />法を砂地盤への衝突問題へ適用することを試みた。SPH法は圧縮性流体の解析法として<br />銀河系の形成など天体物理の問題解決のため開発された方法で、その後、非圧縮性流体<br />解析、構造解析など適用範囲が広がっているが、砂地盤への衝突題にSPH法を適用した<br />例は未だなく本研究が世界初である。本研究では地盤をモール・クーロンの破壊基準を<br />降伏条件として持つビンガム流体と仮定し解析を行った。その結果、実験と同様に衝撃<br />加速度および沈下量は衝突速度に比例し、実験では明らかにならなかった衝突質量の影<br />響、アポロモデルでは実験値と大きく異なったピーク後の沈下量の推移、およびアポロ<br />地盤モデルで表せなかった2つのピークをもつ衝撃加速度形状を表せることが明らかに<br />なった。そしてSPH法による解析結果を分析することで第2番目のピークの発生原因も<br />特定された。すなわち、実験の制約により制限せざるを得なかった地盤厚さをSPH法に<br />より任意に変化させ解析を行った解析結果、衝突中の地盤の密度変化の状態のモニター<br />結果から、地盤底面からの反射波および地盤密度の増加が原因であることが確かめられ<br />た。<br /> 以上の検討からSPH法は実験を充分に補える解析法であることが確かめられ、本研究<br />成果は月面上のみならず他の惑星上への着陸にも適用可能であることが示された。<br />最後に、これまでに得られた知見を用い、SELEM-B月探査機の月面着陸時の衝撃加速<br />度および沈下量の予測をSPH法を用いて行った。垂直方向のみ3mの衝突速度がある場合<br />を計算した結果、最大衝撃加速度は約21G程度(4脚接地の場合)、最大沈下量は約7.4<br />cm程度(1脚接地の場合)であることがわかった。<br /> 本研究では、月および惑星上への着陸時の衝撃加速度の予測法として、月面を対象と<br />した実験、地盤モデルによる数値計算、SPH法による解析の3つの方法を試みた。その<br />結果、月面環境を模擬しなければならない実験には多くの制限があり、アポロの際用い<br />られた地盤モデルによる数値計算ではピーク値までしか信頼性がないことがわかった。<br />反面、SPH法での解析は、実験で見られた特徴を良く表しているため、実験を補える手<br />段として信頼性が高いことが示され、月惑星上砂地盤への着陸衝撃力算定方法として信<br />頼性が高い方法であることがわかった。<br /> SPH法は現在様々な現象に対して適用範囲が広がりつつある方法であり、その特徴と<br />して連続体的挙動から非連続体的挙動まで表すことができるため、例えば着陸機が月お<br />よび惑星上の砂地盤に対して斜めに衝突する際の機体の安定性から砂の飛散範囲までの<br />解析などにも幅広く適用可能である。また、例えば今後活発になると思われる月の利用<br />に係わる問題に関しても、月の砂の掘削、運搬方法など月の砂に係わる問題は数多い。<br />SPH法を用いた砂の解析は、今回適用性が示された衝突問題以外にも幅広い適用性を持<br />つと考えられ、今後の発展が期待される手法と言える。<br />
著者
横山 徳爾
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.75-90, 2005-03-31

ソールズベリー女伯マーガレット・ポール(1473-1541)は、クラレンス公ジョージとイザベル・ネヴィルの娘として1473年8月14日にウィルトシャーのファーリー城で生まれた。1487年にバッキンガムシャーのジェントルマンであるリチャード・ポールと結婚した。弟のウォリック伯エドワードは1499年にヘンリー七世によって処刑されていたので、マーガレットが1512年にヘンリー八世によってソールズベリー伯位を回復された。彼女はメアリー王女(のちのメアリー一世)の養育係に任命されたが、ヘンリー八世がアン・ブリンとの結婚を意図したとき、この結婚に反対して、キャサリン・オヴ・アラゴンとメアリーに味方し、ヘンリーの敵意をまねいた。宮廷から追われ、ハンプシャーのウォーブリントンへ引退したが、1536年にアンが没落したのちに、復帰した。息子のレジナルド・ポールがヘンリーを批判する論文を発表したとき、ヘンリーはポール一族を絶滅させることを決意した。マーガレットは1541年5月27日にロンドン塔内で斬首された。
著者
原田 隆郎 横山 功一
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

橋梁の各種振動によって人体が受ける影響度の定量化手法を提案するため,本研究では歩道橋の振動問題に着目し,歩道橋横断時に利用者が感じる不快な揺れを生体脈波で評価するための実験的検討を行った.実験では,歩道橋の振動を実測するとともに,歩道橋利用者の歩行時の振動を同時計測し,両者の振動特性と人間の生体脈波の関係を把握した.その結果,歩道橋の振動変位が大きくなればなるほど不快感も大きくなるとともに,利用者の歩調が歩道橋の固有振動数と一致する場合に利用者の生体脈波が大きく変化することを確認した.
著者
石田 茂 高坂 定 横山 完 瀬戸 洋一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.285, pp.171-176, 2011-11-07
参考文献数
7

個人情報の電子化が進み,情報の取り扱いに関して,より注意を払う必要がでてきた.このため,個人情報保護に関する法整備が各国で進んだ.一部の国では,情報システムの構築にあたりプライバシー影響評価(Privacy Impact Assessment)が実施されている.PIAは,個人情報の収集を伴うシステムの導入または改修の際に,プライバシー問題の回避または緩和のために,プライバシーへの影響を「事前」に評価するリスクコミュニケーション手法である.PIAを有効に実施するには,プライバシーコミッショナーなどの実施体制の整備が必要である.本報告では,各国の実施体制の分析を行い,日本でPIAを実施する場合の実施体制について提案する.
著者
間野 勉 大井 徹 横山 真弓 山崎 晃司 釣賀 一二三 高柳 敦 山中 正実
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.39-41, 2008-06-30

日本におけるクマ類の調査研究や特定鳥獣保護管理計画の発展に寄与することを目指して,この特集を企画した.本特集は,日本哺乳類学会2007年度大会で開催されたクマに関する3つの自由集会の成果をまとめたものであり,特定鳥獣保護管理計画の実施状況や,新たな手法として注目されるヘア・トラップ法によるクマ類の密度推定の問題点などを概観する11編の報告と,2編のコメントから構成される.<br>

1 0 0 0 鎌倉通信

著者
横山隆一著
出版者
高知新聞企業 (発売)
巻号頁・発行日
1995
著者
日下部 裕美 横山 真一郎
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.89-92, 2005

プロジェクトには多くの不確実性,すなわちリスクが存在する.そのため,リスクマネジメントがプロジェクト成功にとって重要な役割を担っている.プロジェクトのリスクは「不確実性」,「損失」,「時間的要素」の3つの特性を持っている.ここで,「時間的要素」はプロジェクトのリスクが有期的であるということを指している.しかし,現在,「時間的要素」を考慮し,リスクマネジメントを行うための具体的な手法がない.一方,信頼性工学の手法の1つにFTA(Fault TreeAnalysis)がある.FTAは,故障の結果から原因に遡るトップダウン型の手法により故障が発生する因果関係を明確にし,視覚的,演繹的な解析が可能である.そこで,本研究では,FTAを用いたリスクマネジメントについての提案を行うことを目的とした.本稿では,リスク事象抽出と同時にFT図を作成する手順および,FT図の活用方法についての提案を行った.
著者
横山 亜紀子
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2008-2010
著者
潮見 佳男 橋本 佳幸 コツィオール ガブリエーレ 松岡 久和 愛知 靖之 木村 敦子 山本 豊 長野 史寛 山本 敬三 横山 美夏 佐久間 毅 和田 勝行 天野 佳洋 吉永 一行 栗田 昌裕 松尾 健一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、①信託を中心とする事業財産権モデル、②知的財産の完全な自由利用を保障するタイプと対価徴収権を中核とするタイプの複合モデルを基礎とする情報財産権モデル、③景観利益や環境利益の侵害に対する救済および原子力損害からの被害者救済に適合した環境財産権モデル、④パブリシティーや個人情報の財産化、ヒト由来物質や身体の譲渡・利用可能性に照準を合わせた人格財産権モデルを提示した。そのうえで、これらの研究成果を踏まえ、共同研究メンバーが、物権法、債権法、契約法の各領域の再編を企図した体系書を刊行したほか、2015年度の日本私法学会シンポジウムで「不法行為法の立法的課題」を担当した。
著者
金丸 仁 横山 日出太郎 白川 元昭 橋本 治光 吉野 吾朗 高津 光 杉山 高 秋山 敏一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.1369-1376, 2002-08-01
被引用文献数
34

門脈ガス血症(以下,本症と略記)は予後不良で緊急開腹術が必要と考えられてきたが,最近自然軽快する例の報告も多く,手術適応の判断が難しい.われわれの12例の経験と文献報告例から本症の手術適応につき考察した.方法:腸管壊死があり開腹術の適応であった5例(A群)と,腸管壊死が無く経過観察可能であった7例(B群)を比較した.結果:A群は全身状態不良で,5例全例に腹膜刺激徴候を認めた.B群では全身状態は良好で,2例を除き腹膜刺激徴候を認めなかった.A群では全例熱発を認めたがB群では4例で熱発を認めなかった.白血球数はA群5例,B群5例で10,000/mm^3以上であった。CRPは,不明例以外で,A群では4.3mg/dlと7.0mg/dlの2例のほか2例が20mg/dl以上であったがB群では全例20mg/dl以下でうち5例は1.1mg/dl以下であった.考察:本症の成因には,腸管壊死からの感染として,E.coliなどのガス産生菌が関与する場合と,非絞扼性腸閉塞の場合など,単に腸管内圧の上昇によって発生する場合があるが,後者の成因の場合は経過観察が可能と考えられる.手術適応は腸管壊死の有無にかかっているが,その判断は,全身状態,腹部所見,熱発の有無など,理学所見の正確な把握が重要で,一般の急性腹症の場合となんら変わるところはない.検査値としては白血球数よりもCRPが手術適応の参考になる.