著者
渡辺 武郎 永瀬 英司
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.17-32, 1989-10-31 (Released:2016-11-11)
被引用文献数
1

A number of studies on mechanism of an illusory contour and related experiments are reviewed. The critical evaluation suggests that no theory may be adequate which assumes the only one process for perception of the illusory contour. Even the multi-process-theory is not adequate as far as it assumes the illusory contour as a mere result of other processes such as depth-processing and brigntness contrast. Rather, we suggest that the illusory contour itself influences depth-perception and brightness enhancement.
著者
藤田 真帆 波留 健一郎 岩松 友里香 小濱 顕士 志戸岡 茜 渡辺 將平 髙田 和真 川元 大輔 長津 秀文 横山 尚宏
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0851, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】握力は容易に測定できる上肢機能の重要な指標の一つである。先行研究で高齢者の体力測定の結果から,握力と大腿四頭筋の筋力との関連や,スポーツ選手は握力と下肢筋力に相関があるとの報告をしている。四肢周径は骨格筋の肥大や萎縮を簡易に評価でき,筋力との関係性があると述べている。InBody570を用いた身体組成計は骨格筋量や脂肪量などを簡便に計測することが可能であり,測定器の妥当性や信頼性に関する報告は散見される。しかし,握力と四肢周径,骨格筋量との関係性は一定の見解が得られていない。我々は運動習慣のない若年者を対象に3者の関連性を分析し,臨床的意義があるか検討した。【方法】対象は運動習慣のない健常成人男性20名(年齢:20.8±1.7歳,身長:169.5±5.5cm,体重:62.9±12.6kg,利き側:右)とした。全対象にInBody570(BIOSPACE社製)を用い,右腕(RA),左腕(LA),右脚(RL),左脚(LL)の筋肉量を測定した。握力はデジタル握力計(竹井機器工業社製)を使用した。肢位は立位で,左右の上肢を体側に下垂させた状態で最大握力を測定。四肢周径はメジャーを使用,仰臥位で計測した。前腕周径は最大膨隆部(FC),上腕周径は肘屈曲位で最大膨隆部(AC),大腿周径は膝蓋骨上縁10cm(TC),下腿は最大膨隆部(CC)を測定した。統計処理は左右別に握力と四肢周径,部位別筋肉量との関連についてピアソンの相関係数を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。【結果】左握力(39.7±6.5kg)はLA(2.6±0.4kg),LL(8.2±0.9kg),左FC(25.3±2.4cm),左AC(28.2±3.9cm),左TC(44.6±4.4cm),左CC(35.7±2.8cm)とすべての項目で有意な相関を示さなかった。右に関しては握力(41.4±6.5kg)と右FC(25.6±2.1cm)(r=0.45,P<0.05),握力と右AC(29.0±3.8cm)(r=0.45,P<0.05),握力とRA(2.6±0.5kg)(r=0.47,P<0.05),握力とRL(8.2±0.9kg)(r=0.58,P<0.01)に有意な相関が認められた。握力と右TC(45.1±4.4cm),握力と右CC(35.9±2.9cm)において,有意な相関が見られなかった。【結論】右握力は,右FC,右AC,RA,RLで相関を認めた。周径は筋肥大の指標となることが知られており,利き手に関しては握力で上肢の筋量と筋力を予測できる可能性が示された。右TC,右CCとは相関を認めなかった。これは握力が下肢の筋肥大に必ずしも反映されない事が考えられた。さらに先行研究では,筋量よりも筋力の方が相対的に低下するとの報告があり,右握力はRLとの相関を認めたが,右TC,右CCと相関がなかったと考える。左の握力は全項目で相関がなかった。利き手に関する研究で,握力は上肢周径など軟部または機能的測度では利き手優位の傾向が現れやすいと報告しており,そのため相関がなかったと考える。これらの結果から,運動習慣のない若年者は握力が下肢筋力を測る指標になりえない事が示唆された。
著者
渡辺 幸一
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.153-161, 2011-11-10 (Released:2015-01-06)
参考文献数
21
被引用文献数
4 6

何世紀にも渡ってモンゴルの遊牧民は非常に多種の伝統的発酵食品を作り続けている。モンゴルの伝統的なアイラグ(馬乳酒)は、馬乳を原料に固有の乳酸菌による発酵と酵母によるアルコール発酵とによって作られる。アイラグばかりでなくタラグ(ウシ、ヤク、ヤギあるいはラクダなどの家畜の乳で作られたヨーグルト)は古来からモンゴル人の栄養源として重要な役割を演じてきた。これまで、モンゴルの伝統的発酵乳のプロバイオティクスとしての有用性を評価する目的で多くの研究がある。本稿ではモンゴルの伝統的発酵乳のアイラグとタラグにおける乳酸菌と酵母の多様性について概説する。
著者
鈴木 圭 岩崎 仁史 渡辺 文亮 大森 教成 石倉 健 畑田 剛 鈴木 秀謙
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.756-762, 2007-11-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

症例は79歳の男性。受診数時間前からの増悪する嘔気, 腹痛, 左背部痛, 意識障害のために当院搬送となった。来院時ショックの状態で, 血液検査では急性腎不全, 肝機能障害, 血清アミラーゼ値の上昇がみられ, 出血傾向を伴う著しい代謝性アシドーシスが認められた。画像検査では軽度の肺炎像が認められたが, 下大静脈の虚脱がみられた他にはショックの原因となる疾患を指摘できなかった。ショックに対する初期治療の後, 集中治療室へ入室となった。腹痛の病歴と採血検査所見より, 急性膵炎に準じ治療を行った。補液及び人工呼吸管理により利尿がつき始め, 肺炎球菌尿中抗原検査 (NOW Streptococcus pneumoniae, Binax Inc., USA以下尿中抗原検査と略す) を施行したところ陽性を呈した。膵炎に準じ既に抗菌薬投与を行っていたことから同様の治療を継続したが, 多臓器不全が進行, 播種性血管内凝固症候群を併発し, 入院後8時間あまりの激烈な経過で死亡した。血液及び喀痰培養検査では有意細菌を検出できなかったが, 尿中抗原検査は偽陽性がきわめて少なく, 自験例の病態の根本は劇症型肺炎球菌感染症による敗血症性ショックとすることが妥当であると考えられる。劇症型肺炎球菌感染症は, 発症時に必ずしも肺炎像を呈するとは限らず, 原因不明の劇症型感染症の鑑別診断として重要である。このような症例の診断は血液培養の結果に依存せざるを得ないが, 迅速性に欠け, 感度も高いとはいえない。原因不明のショックの症例においては, 肺炎像が明らかでなくとも, 積極的に尿中抗原検査を用いた診断を行うことは, 自験例の如く血液培養が陽性とならない敗血症例ではとくに大きな意義があると考えられ, 今後の症例の蓄積が必要である。また, 尿中抗原検査で陽性を呈するショック症例は, 劇症型の経過をたどることが危惧され, いかに有効な治療手段を講じるかが今後の検討課題となると考えられる。
著者
Paul Pfleiderer Terry Marsh 渡辺 泰明
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.41-59, 2012-03-31 (Released:2018-12-07)
参考文献数
5

本稿では,金融危機の下でリスクとリスク回避姿勢の双方が顕著に高まった状況において需要と供給という基本的な経済理論がどのように作用するかを検証した.我々はこれを行うにあたり,非常に簡易的なモデルを構築し状況の変化に応じて投資家は,投資家間でどのように取引をすべきかをそのモデルにおいて検討した.第2節では,本稿の「基本シナリオ」を説明することとする.状況が変化する中でリスクプレミアムがどのように決定されるかを説明し,また投資家が危機対応の為の調整を実行するときに生じる取引を検証する.第3節では,本稿の基本シナリオにかかる種々のバリエーションを検討し,そうした異なるシナリオにおいても,基本シナリオから導き出した全般的な結論が成立することを示す.そして第4節では検証結果の要約を行い,全体のまとめを提示する.
著者
渡辺 信三
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1963

博士論文
著者
田中 聡 山本 一徹 権藤 学司 渡辺 剛史 堀田 和子 田中 貴大 田中 雅彦
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.312-315, 2021 (Released:2021-12-28)
参考文献数
13

Calcification of ligamentum flavum (CLF) is a degenerative spinal disease in which calcium crystals deposit in the ligamentum flavum. The CLF may cause spinal cord compression, and the patient may need decompressive surgery. However, CLF can spontaneously regress with some medications as well as no treatment. Here, the authors reported a case in which small CLF remaining after cervical decompression surgery markedly enlarged during the follow-up period and spontaneously regressed after pregabalin administration. Therefore, pregabalin might be involved in the spontaneous regression of CLF.  A 66-year-old female complaining of right upper limb pain and numbness was diagnosed with CLF at C5/6 and C6/7 by computed tomography (CT) and magnetic resonance imaging (MRI). The symptoms improved after removal of the CLF at C5/6 with C5 laminectomy and C4, C6 laminoplasty. Postoperative CT showed small residual CLF at C6/7. Six years after surgery, she suffered pain and numbness in her right arm. Her cervical MRI showed a marked increase of CLF at C6/7. The pain disappeared after the administration of pregabalin. Six months later, a marked reduction of CLF was observed on MRI.  It has been reported that the administration of cimetidine or etidronate resulted in the regression of CLF. Cimetidine affects calcium metabolism via parathyroid hormone (PTH), and etidronate has an inhibitory effect on calcification. It was reported that the serum PTH was markedly reduced in a uremic patient after the administration of pregabalin. The efficacy of pregabalin was also reported for a case with refractory paroxysmal kinesigenic choreoathetosis whose parathyroid glands were removed. It is presumed that pregabalin was involved in calcification regression via PTH metabolism in this case.
著者
藤原 佳典 天野 秀紀 熊谷 修 吉田 裕人 藤田 幸司 内藤 隆宏 渡辺 直紀 西 真理子 森 節子 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.77-91, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
32
被引用文献数
4

目的 在宅自立高齢者が初回介護保険認定を受ける関連要因を,要介護認定レベル別に明らかにする。方法 新潟県与板町在住の65歳以上全高齢者1,673人を対象にした面接聞き取り調査(2000年11月実施,初回調査と称す)に1,544人が応答した。ベースライン調査時の総合的移動能力尺度でレベル 1(交通機関を利用し一人で外出可能)に相当し,未だ要介護認定を受けていない1,225人をその後 3 年 4 か月間追跡した。この間,介護保険を申請し要支援・要介護 1 と認定された者を軽度要介護認定群,要介護 2~5 の者を重度要介護認定群,未申請で生存した群(以降,イベント未発生群と称す)に分類し,男女別にイベント未発生群と軽度あるいは重度要介護認定群との間で初回調査時の特性を比較した。つぎに Cox 比例ハザードモデル(年齢,老研式活動能力指標の手段的自立,慢性疾患の既往は強制投入し,単変量分析で有意差のみられた変数すべてをモデルに投入したステップワイズ法)を用いて,要介護認定に関連する予知因子を抽出した。成績 追跡対象者のうち初回調査時に BADL 障害がなく,かつ申請前の死亡者を除く1,151人を分析対象とした。うちイベント未発生群は1,055人,軽度要介護認定群は49人,重度要介護認定群は47人であった。男女とも共通して在宅自立高齢者の軽度要介護認定に関連する予知因子として高年齢と歩行能力低下(男は「1 km 連続歩行または階段昇降のいずれかができないまたは難儀する」のハザード比が7.22[95%CI 1.56-33.52] P=0.012;女は「1 km 連続歩行・階段昇降ともにできないまたは難儀する」のハザード比は3.28[95%CI 1.28-8.42] P=0.014)が,また重度要介護認定の予知因子として高年齢と手段的自立における非自立(4 点以下のハザード比は男で3.74[95%CI 1.59-8.76] P=0.002;女で3.90[95%CI 1.32-11.54] P=0.014)が抽出された。また,男性のみ重度要介護認定に重度認知機能低下が,女性のみ軽度要介護認定に入院歴と咀嚼力低下が抽出された。結論 在宅自立高齢者の要介護認定の予知因子は,高年齢を除き,大半は介護予防事業により制御可能であろう。今後,これら介護予防事業の効果が学術的に評価されることが期待される。
著者
渡辺 剛史 権藤 学司 田中 雅彦 山本 一徹 堀田 和子 玉井 洋太郎 田中 聡
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.170-174, 2019 (Released:2019-09-10)
参考文献数
12

The purpose of this article is to analyze the characteristics of spinal magnetic resonance images (MRI) in multiple myeloma patients. Two hundred and eighteen patients were diagnosed with multiple myelomas at the Shonan Kamakura General Hospital from January 2009 to April 2018. Spinal MRIs were evaluated in 66 cases. Initial symptoms, spinal MRI findings, and blood sample test findings at the time of diagnosis were investigated. There were 37 males and 29 females analyzed. Mean age at the time of diagnosis was 70.1 years (42 to 87 years). Main initial symptoms were low back pain (n=23), back pain (n=15), neck pain (n=1), lower limb weakness (n=6), lower limb pain/paresthesia (n=4), cranial nerve palsy (n=2), respiratory symptoms (n=6), renal failure (n=4), anemia (n=3) and asymptomatic (n=6). Spinal MRI revealed vertebral fracture (n=42), intravertebral tumor (n=35), epidural tumor (n=9), diffuse spotty signal (n=13), and diffuse low signal (n=4). There were only five cases where no abnormality was observed beyond the vertebral body fracture. Dural sac compression was observed in 16 cases, of which 12 cases were co-localized with the tumor and 4 cases were by a fractured bony fragment. The results of the blood sampling were confirmed in 65 patients. Anemia, decreased albumin/globulin ratio, hyperproteinemia, hypercalcemia, and increased alkaline phosphatase were observed in 57, 44, 29, 13, and 12 patients, respectively. Only 9 cases showed normal blood test results. The most common symptom of multiple myeloma was lower back pain. As such, half of the patients had visited an orthopedic or spinal surgery clinic. Spinal MRI findings were classified as intervertebral focal lesion, epidural mass, diffuse spotty signal, or diffuse low signal. The presence of an abnormal finding was observed in 92% of patients by spinal MRI and in 86% by blood sampling. Spinal MRI and blood sampling examination should be considered in cases of vertebral fracture in order to prevent the misdiagnosis of multiple myeloma as an osteoporotic vertebral fracture.
著者
渡辺 徹 稲田 厚 三浦 克己 吉田 暁 田中 敏春
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.523-527, 2018-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
6

急性左心不全による心原性肺水腫に対して救急隊員が実施可能な処置は,酸素投与とバッグバルブマスク(BVM)による補助呼吸である。今回,病院前救護においてBVMを用いて1名が両手でマスクを顔面に保持密着させ,もう1名がバッグを圧迫し換気を行う二人法補助呼吸によりSpO2値の改善を認めた疾患例を経験した。心原性肺水腫では呼気終末の気道内圧を高めることで低酸素血症を改善させることができるため,近年医療機関ではNPPVが実施されるようになっている。BVMのマスクを顔面に確実に密着させることができる二人法補助呼吸は,適切に実施すればNPPVに近い効果が期待できる。また,起坐呼吸や不穏状態の傷病者にも有効な換気が可能になる。病院前救護で呼吸困難感を訴え急性左心不全が疑われる例において,高流量酸素投与でもSpO2値が改善しない場合,呼吸原性心停止への移行を予防するためにBVMを用いた二人法補助呼吸を考慮してよいと思われる。
著者
内田 立身 河内 康憲 渡辺 礼香 西原 利男 三宅 隆明
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-128, 1996 (Released:2009-04-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

鉄欠乏性貧血に対する静注療法については,投与鉄量の計算式として,わが国では古くから中尾の式が用いられてきた。中尾の式は,日本人の循環血液量を80 ml/kg, 貯蔵鉄量を17 mg/kgとして計算するが,今回,51Cr法および血清フェリチン値からの検討で,循環血液量65 ml/kg, 貯蔵鉄量500 mgが妥当であると考えられ,これらに基づき鉄投与量を3.4×(16-X)/100×65×体重+500 mg(X: 治療前のヘモグロビン値)あるいは[2.2 (16-X)+10]×体重mgと設定した。現実にこれに基づいて治療を行ったところ,ヘモグロビンの回復も順調で,その後の減少も持続出血のない例では認められないことから,鉄剤の静脈内投与量は,少なめに見積もった上式が適当であると結論した。
著者
渡辺 浩 落合 浩暢 児玉 栄一 鈴木 修三 武田 功 渡部 則也 小野 重明 海瀬 俊治 西間木 友衛 粕川 禮司
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.385-390, 1992-08-31 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

症例は37歳の女性. 1986年11月日光過敏,蝶形紅斑,抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性から全身面エリテマトーデスと診断され, prednisolone投与を受けた。1989年10月から両下肢脱力感出現し精査加療目的に同年12月当科入院した.抗核抗体2,560倍,抗cardiolipin抗体陽性で,頭部CT上多発性脳梗塞が認められ, PSL 40mg/日の投与を開始した.症状改善傾向にあるも患者は服薬を中止し, 1990年4月退院した.同年5月,両下肢の対麻痺,胸椎11番以下の全知覚障害と膀胱直腸障害が出現し再入院した. aCLは高力価であり,抗リン脂質抗体が強く関与した横断性脊髄障害を合併したものと考え,血漿交換療法,副腎皮質ステロイド剤パルス療法,大量γ-globulin療法,免疫抑制剤投与を行い, aCL価は低下したが,神経症状はほとんど改善しなかった.早期の治療が横断性脊髄障害の諸症状の改善に重要である.

1 0 0 0 千秋歌集

著者
[渡辺千秋著] 渡辺昭編
出版者
渡辺昭
巻号頁・発行日
1923