著者
田原 英一 斉藤 大直 川上 義孝 荒川 龍夫 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.351-356, 2002-07-20
被引用文献数
2 1

療養型病床群で老人の夜間不隠行動に,酸棗仁湯が奏効した症例を経験した。症例1は97歳,女性。誤嚥性肺炎を繰り返し,夜間奇声を上げるようになり,当院へ転院。特に夜間病棟中に響きわたる奇声を上げ続けた。酸棗仁湯(TJ-103)7.5gを投与開始後,体位変換,オムツ交換などの際に短時間奇声を上げるだけとなった。その後嚥下訓練を行い,経口摂取が再開できた。症例2は80歳女性。脳出血後後遺症で当院へ転院。夜になると大声を上げるようになった。酸棗仁湯投与後,夜間睡眠が良好となり,日中はリハビリなどで過ごせるようになった。高齢者が増加し痴呆による問題行動に対して対応が苦慮される中で,高齢者の夜間せん妄の中に酸棗仁湯が適応となる病態が存在する可能性が示唆される。
著者
西澤 恒二 八田原 広大 大西 裕之 吉田 徹
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.53-57, 2021-04-20 (Released:2022-04-20)
参考文献数
10

(背景) 近年去勢抵抗性前立腺癌治療薬が複数登場し,予後の延長が期待される一方,治療は高額になる可能性がある.そこで,当院で行われた去勢抵抗性前立腺癌治療薬の費用を検討した. (対象と方法) 2014年から2017年に当院で診断された前立腺癌のうち,転移ありか前立腺特異抗原(PSA)が100ng/ml以上の進行性癌症例を中心に,手術か薬剤で去勢治療を行った.去勢抵抗性が確認されたのちはドセタキセル,カバジタキセル,アビラテロン,エンザルタミドによる治療を行い,治療経過と費用を検討した. (結果) 257例に前立腺癌が検出され,進行性癌は56例(21.8%)だった.81例(31.6%)に去勢治療が行われ,進行性前立腺癌の30例が中央値10カ月(範囲3~39)で去勢抵抗性癌となった.去勢抵抗性癌治療薬は,25例に中央値20カ月間(範囲3~50)投与された.診断からの観察期間中央値48カ月(範囲13~75)で,15例が前立腺癌で死亡した.薬剤による去勢治療のみの症例では,治療費は中央値で年間23.4万円(範囲5.0~31.5)だった.一方,去勢抵抗性癌症例では,去勢抵抗性癌治療のみでも中央値で年間204.1万円(範囲34.6~501.7)に達した. (結論) 去勢抵抗性癌治療の費用は非常に高額で,医療費抑制の観点から,去勢抵抗性癌に至りやすい進行性前立腺癌を減らすことは重要と考えられた.
著者
成清 勝博 井上 直紀 田原 光
出版者
独立行政法人 国立高等専門学校機構 広島商船高等専門学校
雑誌
広島商船高等専門学校紀要 (ISSN:18839908)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.83-86, 2012-03-31 (Released:2023-11-17)

The paper introduces a processing of the images of the baceball scoer book. Rules of the baseball look simple; pitching, catching, hitting, running, etc. However it is very complicated game in fact. Recording a game is done by writting a score book. It needs high skills for accurate records. Therefore undestanding the game from the written score book is also difficult. We started the analysis of the score book to get the average of each batter.
著者
五十嵐達也 塩浦 宏祐 谷 友太 小田原大昂 井上 和樹 星野 涼 松岡 秀典 三友 恵一
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.52-58, 2023 (Released:2023-03-31)
参考文献数
31

【目的】要支援・要介護高齢者を対象に,生活空間での移動性の広狭を判別する修正版5回椅子立ち座りテスト(modified SS-5)と片脚立位時間(OLS)のカットオフ値を明らかにすることを目的とした.【方法】要支援・要介護高齢者66名(年齢80.9±7.6歳,女性39名)をLife Space Assessmentの点数から2群に分類した.modified SS-5とOLSのカットオフ値と判別精度を,ROC曲線によるYouden IndexとAUCで算出した.【結果】AUCとカットオフ値は,modified SS-5が0.905(感度0.889,特異度0.754)と12.82秒,OLSが0.860(感度0.778,特異度0.842)と7.25秒であった.【結論】要支援・要介護高齢者の生活空間での移動性の広狭の判別には,下肢筋力とバランス能力が重要な指標であることが示唆された.本研究の結果は,社会参加の向上を目指した理学療法における目標設定や介入計画の意思決定に寄与する知見である.
著者
尾崎 良太郎 丸飯 虎太朗 門脇 一則 小田原 和史
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.6, 2022 (Released:2022-07-08)
参考文献数
2

真珠の構造色は、表面の真珠結晶層内のアラゴナイト結晶層とコンキオリン層で発生する光の干渉によって発色することが知られている。一般的な構造色では、反射光の干渉が色彩を決めることが多いが、アコヤ真珠の場合は、特に透過の干渉色が重要であることを小松氏は指摘している。我々は、透過の干渉色と反射の干渉色のメカニズムを光学の視点から考え、そのモデル化に成功した。真珠の光学特性は、透過と反射と散乱の組み合わせである。真珠核および真珠結晶層での多重散乱は Kubelka-Munk 理論で計算し、アラゴナイト結晶層とコンキオリン層での干渉は、 Transfer Matrix 法で計算した。計算で得られたスペクトルを色情報に変換し、その色情報に基づき OpenGL シェーディング言語で作成したプログラムで可視化した。図 1 は、コンキオリン層を 20 nm として、アラゴナイト結晶層が 360 nm のときの結果である。上段が写真であり、下段がコンピュータグラフィックス(CG)であるが、撮影角度に伴う干渉色のグラデーションの変化をよく再現できている。また、アラゴナイト結晶層を300 nm、 360 nm、 400 nm としたときの結果を図 2 に示す。結晶層厚の変化に伴う、干渉色のグラデーションの変化も再現可能である。今後は、 CG の更なる高度化を目指し開発を進める予定である。【謝辞】本研究は農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち先導プロジェクト)」の支援を受けて行われたものです。
著者
大石 恭子 足立 里穂 米田 千恵 大田原 美保 香西 みどり
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.360-367, 2020-10-15 (Released:2020-11-02)
参考文献数
30

1.コシヒカリおよびあさひの夢を試料とし,マイタケ抽出液を用いて飯を調製した.官能評価では,水で炊飯した飯に比べてコシヒカリのマイタケ飯は粘りが強く,あさひの夢では軟らかく,つやおよび粘りが強いと評価された.物性測定ではいずれの品種においても粒全体の硬さが低下した.コシヒカリを試料とし,浸漬のみのマイタケ抽出液の利用でも飯の物性向上が見られ,浸漬および加熱の両方でマイタケ抽出液を用いることで冷蔵後の物性も改善した.2.米をマイタケ抽出液に50℃で1時間浸漬すると,米からの溶出タンパク質量が増加し,プロテアーゼ阻害剤のぺプスタチン添加により溶出が抑えられた.浸漬液のSDS-PAGE分析では,マイタケの金属プロテアーゼによるグルテリン酸性サブユニットの部分分解が認められた.さらに遊離アミノ酸の分析において疎水性アミノ酸が多く遊離していたことから,エンド型,エキソ型両方の金属プロテアーゼが炊飯時の米のタンパク質を分解し,飯の物性変化に関与していることが示唆された.
著者
田原 加奈子 Tabaru Kanako
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2023

早大学位記番号:新9324
著者
田原 洋樹 敷田 麻実
出版者
一般社団法人 日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.49-64, 2023 (Released:2023-10-01)
参考文献数
70

関係人口は、人口減少時代の新たな地域づくりの担い手として期待されているが、交流人口や定住人口との境界は曖昧である。そこで本研究では、関係人口の概念を整理し、交流人口が関係人口に変容するための要件やプロセスを明らかにした。仮説モデルを構築し、Webモニター調査のデータから、多重指標モデルによる共分散構造分析を行った。その結果、観光経験の自己拡大と現地交流が、地域関与意識の自己表現と利他心を醸成させ、地域への積極的な関わり意向を高めることを明らかにした。この結果から関係人口は地域関係者と協働し地域づくり活動にかかわることで、地域にとっての新たな主体になりえる存在であるとの見解を示した。
著者
中井 大貴 河南 壮太 田原 映理 山本 有貴 福山 尚 五味 文 角所 考 岡留 剛
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.8, pp.419-430, 2023-08-01

非侵襲な検査を可能にする光干渉断層計(OCT: Optical Coherence Tomography)によるスキャン画像において,網膜の層の厚みと,視力や病状との関係性を捉えるためには,画像における網膜の層を抽出する必要がある.本研究では,網膜剥離を伴う眼科疾患におけるOCTスキャン画像で網膜の層を抽出する手法を提案する.その手法では,各層に対し,それぞれの特徴を反映したコスト関数の最小化により層の境界を決定し,とりわけ,治療後視力と相関があると考えられる厚みを求めるために必要な網膜剥離領域の輪郭線と内境界膜・外境界膜が抽出できる.その応用として,得られた境界から層の厚みに関する特徴量を算出し,中心性漿液性脈絡網膜症の治療後視力を予測するARDガウス過程回帰を構築し,予測に有意な特徴量が,中心窩における内境界膜から外境界膜までの長さと,外境界膜から網膜色素上皮までの長さの剥離前後での変化度であることを明らかにした.
著者
田原 洋樹
出版者
立命館アジア太平洋研究センター
雑誌
APU言語研究論叢 (ISSN:24321370)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.10, 2017 (Released:2022-03-23)
参考文献数
8

ベトナム語には、比較言語学上で語族が異なるフランス語を起源とする語彙群がある。その数は、フランス植民地時代に入ってきた語、さらにはフランスからの独立後に取り込んだ科学技術語彙を中心におおむね1000語と考えられている。戦中戦後の社会変化や世界『英語化』の流れの中で、フランス語起源語を取り巻く環境は激変して、消滅した語もある。 本稿では、旧ベトナム共和国時代の言語動態を記憶する人々へのインタビューと、印刷物の分析によってフランス語起源語を抽出してリスト化し、使用環境や用法を考察した。
著者
吉田 優太郎 林 亮 舛屋 賢 高木 賢太郎 有田 輝 田原 健二
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.573-576, 2023 (Released:2023-07-27)
参考文献数
8

A Straight Twisted Polymeric Fiber Actuator (STPFA) has attracted attention as a new rotational actuator because it is soft, lightweight, silent, and inexpensive. It can rotate when heating, and be back when cooling. However, it is difficult to improve the response, especially in the cooling phase when using natural cooling. In order to improve the response in natural cooling, antagonistical actuation is one of the effective methods. However, the diactivated-side actuator generates a disturbance-like torque when the other-side actuator is activated due to its passive torsional spring-like characteristics. In order to realize the antagonistical actuating module using a pair of rotational-type STPFA, in this paper, the models are constructed that can estimate the torque generated at both ends of an antagonistically arranged rotational STPFA from the change in heater resistance. A sensorless output torque control method is proposed for the total torque obtained as the difference between the torques at the two ends using the proposed STPFA models. The effectiveness of the proposed method is demonstrated through fundamental experiments using a prototype module.
著者
中川 裕 佐野 洋 鈴木 玲子 降幡 正志 上田 広美 匹田 剛 望月 源 田原 洋樹 原 真由子
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

聴覚・音響音声学的な事実と音韻論的構造との相互関係を理解するために、広範囲の言語事例を使い、言語横断的比較の手法を用いながら、聴覚実験や音響分析によって新知見をもたらした。さらにその新知見を音韻構造との関連で解釈した。解釈の過程で、音韻素性理論に聴覚・音響的特性をどう位置づけるかという理論的問題を探求するための、多くの具体的手がかりを得ることができた。それと同時に、このプロジェクトで蓄積した、聴覚音声学的な新手法と新知見を用いて、言語学習の過程における第2言語(L2)の発音の諸問題に取り組み、実り多い議論を発展させることができた。
著者
澤 隆雄 青木 太郎 大澤 弘敬 井上 朝哉 田原 順一郎 伊藤 和彰 吉田 弘 石橋 正二郎 渡辺 佳孝
出版者
特定非営利活動法人 海洋音響学会
雑誌
海洋音響学会誌 (ISSN:09165835)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.26-32, 2009 (Released:2009-08-18)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology is developing an automatic bottom inspection and sampling mobile (ABISMO), which is a full-depth rating ROV (Remotely Operated Vehicle) for reaching to the deepest sea bottom, observing it with a camera and sampling the bottom layer. ABISMO consists of a launcher and a vehicle. The launcher is a kind of depressor with many observation devices, and the vehicle is an underwater crawler to move on the sea bottom and inspect it. The mother ship can determine the vehicle's position directly with the ultra-deepwater transponder. The transponder is small and lightweight, with a release system, and it operates at about a 14-kHz frequency. The frequency is higher than that of a conventional full-depth transponder, and it features greater navigation accuracy in shallow water, where many ROV do most of their work. These advantages are emphasized when the transponder is loaded onto an ultra-deepwater vehicle, which needs to be small and lightweight.