著者
加藤 菊也 石井 信
出版者
地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所)
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

研究代表者のグループは大阪大学医学部病態制御外科及び腫瘍外科、京都大学医学部脳神経外科、大阪府立成人病センターのグループと共同で固形癌の遺伝子発現プロファイル解析を行ってきた。対象とした固形癌は乳癌、大腸癌、肝細胞癌、胃癌、食道癌、甲状腺癌、神経膠腫、肺癌である。測定遺伝子数は1500-3500個で、1500症例以上癌組織の解析を行った。本研究ではこのデータベースについて改良と更新を行った。Cancer Gene Expression Database (CGED, http://cged.hgc.jp)は、検索機能とデータ表示方法に特徴がある。データ検索は、通常の遺伝子名やGenBank accession numberなどのID番号のほか、同一機能グループに属する遺伝子をまとめて検索できるように、Gene Ontology termとSwissProtの機能アノテーション中のキーワードで検索できるようにした。また、遺伝子発現量は赤から緑のグラジエントで、臨床データはそれ以外の色を使ってモザイクプロットで表示した。異なる遺伝子の発現パターンを並べて表示できるだけではなく、発現パターンの類似した遺伝子を検索して表示できるようにもしている。さらに、発現パターンの表示を特定の遺伝子の発現量や臨床パラメータでソートして再表示する機能も備えている。これまでのCGEDには、乳癌(予後関連遺伝子探索用のデータ)、大腸癌、肝細胞癌、食道癌のデータが収納されているが、収録していないデータの標準化を肺癌以外のデータで終了し、データベースに収録した。
著者
光定 誠 石井 信一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.56-61, 2014

<b>【要約】</b>高齢者施設の訪問診療医による適正な救急搬送を目的としたトリアージ基準を考案し,実施した。二次救急適応と医師が判断した場合には,搬送要請前に収容病院をできる限り選定した。12 施設,252 名を対象とした10 カ月間の救急搬送は46 例で,トリアージを行った 41 例は全例二次救急適応と判断した。うち39 例について収容病院を要請前に選定した。5 例は訪問医を介さず搬送され,うち2 例が三次搬送となった。本トリアージを包括的判断に基づき行うことで,本人や家族が望まない三次搬送や高度な処置をある程度回避できる可能性があると考えられた。地域の医療資源を熟知した訪問医が,患者全体像を把握したうえで収容先を搬送要請前に選定できれば,患者側および救急にも有益であると思われたが,困難なことも多かった。また急変時には訪問医を介さずに患者が搬送されうることも想定し,家族等との密なコミュニケーションをもとにスタッフに明瞭な指示を出しておくことが必要である。
著者
石田 健 宮下 直 服部 正策 山田 文雄 石井 信夫 前園 泰徳 亘 悠哉 川崎 菜実
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

多様な固有種のいる生態系に、国際自然保護連合が「最も危険な外来種100種」に指定しているジャワマングースによる被害の出ていた奄美大島において、マングースの餌ともなる外来種クマネズミ、両種に捕食される鳥類とイシカワガエル、動物個体群に大きく影響するスダジイ堅果結実量、の動態を調べ、生態系管理の基礎情報を得た。研究成果をふまえ、国内外で外来種管理の重要性と可能性を説明した。
著者
兼村 厚範 福田 航 前田 新一 石井 信
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.181-192, 2008-09-05 (Released:2009-01-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

超解像は,複数枚の観測画像を利用することで高解像度の原画像を推定する 画像処理手法である.超解像においては,高次元変数の推定という計算コストの 問題があったが,近年の計算機の発達と変分ベイズなどの近似手法の開発によって それが克服されつつある.本稿では,我々が行ったベイズ統計の枠組みに基づいた 超解像アルゴリズムについて述べる.
著者
田中 芳明 升井 大介 石井 信二 朝川 貴博
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.279-285, 2017 (Released:2018-05-14)
参考文献数
33

長期に消化管が使用不可能な場合には中心静脈栄養が選択される.中心静脈栄養は中心静脈カテーテル挿入時,長期栄養管理中にさまざまなリスクを伴う.栄養療法の適応,方法を誤れば患者の安全と健康を脅かす可能性があることを常に念頭におく必要があり,どのような合併症が起こりうるか,起こさないようにすればよいか,合併症が発生した場合の適切な対応を熟知していることが重要である.
著者
望月 仁志 中里 雅光 塩見 一剛 十枝内 厚次 石井 信之
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

慢性砒素中毒は多臓器にまたがる障害を生じ、近年多くの国において健康被害の脅威となっている。宮崎県土呂久地区では、1920年から1962年に高濃度慢性砒素中毒患者が生じた 。住民検診において、多くは温痛覚性末梢神経障害を呈し、重症例では深部感覚障害を併発した。体性感覚誘発電位では重症例において中枢伝導時間の遅延が認められた。低濃度の飲料水砒素汚染が広がっているミャンマー国における住民検診にて、神経学的評価を実施した。50ug/Lを越えた飲料水摂取群では振動覚性末梢神経障害と中枢神経障害を呈した。これらの結果は、初めての知見であり、世界に数千万人と言われる砒素中毒患者の診療に重要な情報となる。
著者
吉永 敦史 諸角 誠人 吉田 宗一郎 大野 玲奈 石井 信行 寺尾 俊哉 鎌田 成芳 林 哲夫 山田 拓己
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.30-33, 2007-01-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
9

症例は2歳男児. 子宮内胎児発育遅延にて当院母子周産期総合医療センターへ母体搬送され, 在胎39週3日, 帝王切開にて2200gで出生した. 生下時外性器異常を認めたが, 電解質は正常であった. 染色体検査では, 45X/46X, idic (Y) (q11.2) を呈していた. 腹部超音波検査において子宮及び卵巣は認められなかった. 当科紹介受診となり, 陰嚢型の尿道下裂及び右鼠径ヘルニア, 右非触知停留精巣の診断となった. また左陰嚢内容は触診上正常組織であった. 1歳時右鼠径ヘルニア修復術及び右停留精巣手術施行するも, 右精索及び精巣上体様の構造物は認められたが, 右精巣は認められなかった. さらに2歳時尿道形成術を施行したが, 術後瘻孔形成あり, 瘻孔閉鎖術を追加施行した. 現在, 瘻孔なく, 経過良好である.
著者
石井 信 柴田 和久
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.467-472, 2006-12-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。研究会報告
著者
天川 丹 林 都美香 石井 信之
出版者
The Japanese Society of Conservative Dentistry
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.381-390, 2015

目的 : 垂直歯根破折歯の保存治療はきわめて困難で, 歯科医療において最も解決すべき問題と考えられている. 垂直歯根破折の早期診断が可能になることで, 長期に経過する歯内療法や感染による広範囲な歯槽骨吸収を回避することが可能である. 本研究は, 根管充塡後の垂直歯根破折歯を対象として歯根破折と臨床所見の相関関係を解析し, 歯根破折の早期診断法確立と破折を防止することを目的とした. <br> 材料と方法 : 八ケ岳歯科に来院した患者420名 (27~84歳), 459症例の垂直歯根破折歯を対象とした. 対象歯は根管充塡後の定期検診時に歯根破折と診断され, 臨床症状, エックス線所見, 支台築造形態と性状を臨床的に精査して歯根破折との関連性を調査した. なお, 歯根破折の確定診断は歯科用実体顕微鏡所見と外科治療時の直接観察で行った. <br> 結果 : 歯根破折は50歳代に最も好発し, 歯種別では下顎大臼歯が最も多かった. 歯根破折歯は打診反応が共通して認められた. 歯根破折の特徴的エックス線所見 (Perilateral radiolucency, "Halo" radiolucency) は全体の20%を示したが, ほかの症例は歯周病変および根尖病変との鑑別診断を必要とした. 歯科用実体顕微鏡による確定診断は有用であった. 歯根破折歯の80%は, 歯冠部限局のコアおよび根管長1/4以下のポストコア症例であった. <br> 結論 : 歯根破折の早期診断には定期検診による打診反応と規格エックス線所見が有用であり, 確定診断には歯科用実体顕微鏡所見がきわめて有用であった. 根管充塡後の垂直歯根破折防止には, 根管長1/2以上のポストコアが有用であることが示唆された.
著者
石井 信生
出版者
広島大学
雑誌
音楽文化教育学研究紀要 (ISSN:13470205)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-12, 2004-03-25

本研究の目的は、保育園児の音楽享受において生起する情動的意味を客観的に測定するための表情画評定尺度を新たに構成し、実際にそれを保育園児に適用して音楽享受における情動的意味の生起のしかたを客観的に測定して観察することであった。研究のストラテジーは次のとおりであった。1)保育園児の音楽享受によって生起する情動的意味を測定するための、6つの表情画評定尺度が、新たに構成された。 2)70名の保育園児を被験児として6楽曲の音楽享受をさせ、そのときに生起した情動的意味を表情画評定尺度上に指さし評定させることによって評定させた。3)被験児の指さし評定によって得られた評定結果が験者によって記録され、その数値化されたデータに基づいてセマンティックプロフィール、レリーフマップ、デンドログラムが描かれ、被験児たちの音楽享受によって生起した情動的意味が客観的に分析され、観察された。以上の結果、新たに構成された表情画評定尺度の保育園児への適用の有効性が明らかとなり、保育園児の音楽享受における情動的意味に関して、次のことが明らかとなった。1)保育園児の音楽享受によって生起した情動的意味は、男児被験児群と女児被験児群との間に相違が見られた。2)保育園児の音楽享受によって生起した情動的意味の強さは、女児被験児群のほうが男児被験児群よりも強かった。3)保育園児の音楽享受によって生起した情動的意味の質的内容は、男児被験児群のほうが女児被験児群よりも変化に富んでいた。
著者
久田 正樹 作村 勇一 石井 信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.687, pp.63-70, 2001-03-15
被引用文献数
2

シナプス前細胞と後細胞の発火のタイミングに依存してシナプスの伝達効率が変化することが明らかになってきた。さらに近年、大脳皮質錐体細胞間シナプスへの連続した入力によってシナプスの伝達効率が指数関数的に減衰する現象が発見された。TsodyksとMarkramは減衰シナプス (Depressing Synapse)と呼ばれるこの現象を伝達物質の放出回収過程によってモデル化し、放出された伝達物質の回収の遅延がシナプス伝達の減衰の原因となることを示した。このモデルは生理学的な実験によって得られたシナプス後細胞の膜電位の平均的な応答をうまく近似できることが分かっている。本報告では、シナプス伝達物質がシナプス小胞によって量子化されている事実に基づき、シナプス小胞の放出回収過程による減衰シナプスモデルを示す。このモデルではシナプス小胞の放出は確率的事象であり、それにより試行ごとにばらつく膜電位の挙動が再現できる。また、シナプス小胞の放出確率の変化に伴なぅニューロンの情報処理の変化について議論する。
著者
新妻 弘崇 石井 信 伊藤 実
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.2375-2384, 1999-12-25
被引用文献数
2

本研究では,ニューラルネットワークに基づく新しい組合せ最適化問題の解法を提案する.特に2次割当て問題に対して適用する.本手法は,順列のλ個の要素を同時に入れ替えるλ-optヒューリスティックスのアナログ版とみなすことができる.λの値として中程度の値を使うことができるため,中距離サーチを実現できる.この中距離サーチは,浅い局所最適解を乗り越えることができる.比較的大きな(N=80&sim;150)2次割当て問題に対してこの手法の計算機実験を行った結果,我々の新しい手法は今までのチャンピオンのアルゴリズムと同程度に良い近似解を計算できることがわかった.また,二つのべンチマークについては,現在のチャンピオンのアルゴリズムよりも良い解が計算できることがわかった.
著者
吉田 和子 石井 信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.154, pp.41-48, 2001-06-22
被引用文献数
2

強化学習とは、試行錯誤を通じて環境に適応する学習制御の枠組であり、エージェントは環境との相互作用によって学習を行なう。モデル同定強化学習法は、環境のモデルに基づいて価値関数を計算する手法であり、複雑な環境を扱うのに適している。本研究では、環境のモデル、すなわち状態遷移確率の近似にベイズ推定を用いる手法を提案する。強化学習における重要なトピックに、より良いポリシーを得るために行動を試すexploration(探索)と、より効率的に報酬を得るためのexploitation(搾取)のバランスの問題がある。本研究では、この2つの相反する制御を効果的に行なうために、エージェントの行動選択に逆温度メタパラメータの制御機構、すなわちメタ制御と、explorationボーナスを導入する。本手法を2次元迷路探索問題に適用し、逆温度の制御を行なわない手法と比較した。実験の結果、我々の手法は環境の変動にうまく適応できることが分かった。