著者
三浦 裕一 石川 正道 竹之内 武義 小林 礼人 大西 充 吉原 正一 桜井 誠人 本多 克也 松本 昌昭 河合 潤
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-100, 2005-03

1990 年代に行われた宇宙実験によって,ピストン効果は,臨界点近傍において普遍的に成立する臨界減速(critical slowing down)に桁違いの速さで熱を伝える効果をもち,結果的に熱輸送は臨界加速(critical speedingup)するメカニズムとして作用することが明確となった.その速さは音速によって規定され,対流,拡散,輻射とは異なる,第4 の熱輸送メカニズムとして認知されるに至った.宇宙実験と平行して発展したピストン効果の理論的検討は,ピストン波が加熱ヒーターの境界層で断熱膨張によって励起され,バルク流体中を高速に伝播することを明らかにした.このような研究の進展において,次の点がいまだ不十分であることが明らかとなった.(1)これまで行われたピストン波の観測は,高々ビデオ収録の時間分解能(1/30 秒)の範囲であり,音速(〜 100 m/s)から見積もられる進行速度と比較すると,実際に観測された現象は試料セル内を数100 往復した後の現象しか捉えていない.すなわち,ピストン波の素過程を直接見たとは言えず,平均化された間接的な効果しか見ていない.(2)実験的に実現された臨界温度への接近は,高々T - T_C 〜 30 mK であり十分臨界点に近いとは言えない.(3)小貫による精密な動的臨界現象理論によると,ピストン波に強い影響をもつ体積粘性係数(bulk viscosity)は,臨界温度T_C に十分近づいた場合に強く発散する.しかしながら,これまでのピストン効果の実験研究では,このような効果に関する観測事実は全く報告されていない.すなわち,理論と実験的事実とが食い違っている,あるいは実験が理論に追いついていない.そこで,我々の研究の目的は,上記の研究の不足を克服することを目的として,(1)音速で伝播するピストン波の素過程を直接観測する.(2)臨界温度への接近は,T - T_C 〜 1 mK を実現する.(3)ピストン波の直接観測により,ピストン波の熱輸送量をT - T_Cを関数として定量的に計測する.これによって,動的臨界現象理論が成り立つかどうかを検証する.このような高精度の実験を前提とした研究目的を実現するためには,微小重力環境を利用することは不可欠である.特に,理論と実験との食い違いを克服し,新規な動的臨界現象理論を実証するためには,重力効果による未知の効果を取り除き,不必要な可能性を排除することは極めて重要である.本研究では臨界流体を用いた欧州のフライト実験で観測されているピストン効果について,その素過程からの解明を目指した地上実験を実施してきた.我々が技術開発を進めた結果,多段の熱シールドからなる温度制御・測定系を構築し,常温において± 1 mK の精度で温度制御することが可能となり,マイクロ秒レベルのパルス加熱によって,臨界点近傍で相関距離に近い厚みの熱拡散層を励起できるようになった.さらに,マイケルソン干渉計とフォトマルを組み合わせた光学測定系を構築し,相対密度感度7 桁の精密測定によりマイクロ秒のオーダーでの高速現象の観測を可能にした.このような技術開発は,従来の実験技術を格段に上回るものであり,従来全く得ることができなかったピストン波の特性を定量的に測定することを可能とし,ピストン波の発信に伴うエネルギー輸送の効率計測,流体全体が音速で瞬時に均一に温度上昇する断熱昇温現象の観測,また,理論的にのみしか予想されていなかった臨界点に極めて近い領域における動的な輸送係数の発散を初めて観測するなど,極めて多くの知見を得ることに成功した.また,臨界点近傍のピストン効果ダイナミクスは重力に強く影響することも明らかにし,微小重力実験の有望性を実証した.このような技術開発の蓄積を踏まえ,ロケット実験を想定した実験装置の小型化およびリソースの軽減,臨界流体を扱う場合避けることのできない臨界タンパク光散乱によるSN 比の低下を回避するための宇宙用赤外干渉計の新規開発,試料充填時における臨界密度の設定誤差低減に関する試料取り扱い技術の向上,実験計画の作成など,宇宙実験実施に関わる中核技術の開発と運用構想を作成し,その有望性を評価した.
著者
瀬名波 出 小西 照子 平良 東紀 玉城 史郎 藤村 弘行 石川 正明 若井 謙介 大城 尚紀 小田 拓也 平岡 雅規 原田 周作
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では火力発電所や下水処理施設などから排出される二酸化炭素(CO2)を海藻を育てるための資源として再利用した。高濃度の CO2を海水に人工的に溶かし、それを海藻に与えることで藻類の光合成(成長速度)を飛躍的に高めた。通常の海水に比べて約 1.9 倍以上に成長が高まる結果を得た。また海藻を原料としたバイオエタノールの試作を成功させた。このようにCO2を減らし,また CO2を新たな資源として再利用する「炭素回生システム」研究開発を行った。
著者
梅崎 昌裕 石川 正敏
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.6-11, 2014 (Released:2014-03-28)
参考文献数
3

The latest population projection for Japan showed that during the next 50 years, the dependency ratio will drastically increase from 0.58 (2010) to 0.94 (2060) and that the population will decrease from 128 million (2010) to 87 million (2060). There is concern that burdens placed upon the working-age population will increase and that the social security system of the nation might eventually collapse. We report here the results of population projections under four scenarios of changes in vital statistics rates that reflect the current demographic policies in Japan. These four scenarios assume that specific vital statistics rates change as follows. Scenario 1 : The total fertility rate will increase to 2.1 (replacement level) in 2010. Scenario 2 : The in-migration rate at 18 years of age will increase to 0.1. Scenario 3 : The start of old age is redefined as 70 years. Scenario 4 : Age-specific mortality at age 65 years or older will double. Scenarios 1 and 2 mitigate the population decrease, but Scenario 1 increases the dependency ratio for the initial 40 years. Scenario 3 drastically decreases the dependency ratio without affecting the population size or structure. Scenario 4 suppresses the increase in the dependency ratio, but decreases the population size. If all four scenarios occurred simultaneously, the dependency ratio in 2060 would remain at the level observed in 2005.
著者
木崎 昂裕 並木 明夫 脇屋 慎一 石川 正俊 野波 健蔵
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.924-931, 2012 (Released:2012-12-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Humans can perform fast and skillful manipulations using various parts of the body by effectively utilizing the dynamics of the targets. Visual sensation is the most important human sense used for such manipulations. It is obviously preferable that robot can perform various tasks using same end effectors like a human hand and using visual information. Juggling is one such example involving skillful and dynamic manipulations, and visual information is essential for it to be successful. Previously, there have been several studies about robotic juggling. However, none of these studies have considered cases in which a human-like multifingered hand-arm is used for the robotic juggling. The purpose of this study is to achieve two-ball juggling using our robotic hand-arm, which has three general purpose fingers, and stereo vision. The trajectory of the robotic hand-arm is generated based on the ball's estimated dropping position and moment, and the robot catches the ball. The juggling motion is achieved by repeating this cycle.
著者
末石 智大 奥村 光平 奥 寛雅 石川 正俊
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.181-190, 2013

In this paper, we propose a stereo measurement system to observe continuously an object which moves and deforms quickly and irregularly, and to reconstruct its high-resolution 3D shape. The system is a stereo vision system using two gaze controllers by rotational mirrors. Each gaze controller tracking a quickly moving object, the system captures stereo images, and temporally continuous 3D shapes of the object are reconstructed from the stereo images. We discuss settings of the system considering characteristics of a gaze controller by rotational mirrors. The experimental results show that the system can capture stereo images tracking a quickly and irregularly moving object, and can reconstruct temporally continuous high-resolution 3D shapes of the object.
著者
石川 正恒
出版者
(財)田附興風会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1) 脳エネルギー代謝への影響ラットを用いた実験で、single spredding depresion(SD)の負荷では5分以内に刺激局所の大脳皮質にalkalosisを認め、続いて同側大脳皮質全域に広がるacidosisの波が観察された。これらは約20分で回復した。ATPはacidosisの発生回復と一致して枯渇回復を示した。120分間の繰り返しSD刺激ではacidosisとATP枯渇が認められたが、45分以後はこの変化が減弱し、60分以後はほとんどみられなくなった。その後にSDの負荷をおこなっても6時間まではacidosisとAPT枯渇は観察されなかった。2) アポトーシスとの関連SDをあらかじめ負荷しておくことにより、脳虚血負荷による大脳皮質での神経細胞の脱落が抑制された。ネクローシスの割合は負荷群と非負荷群で有意差は認めなかった。3) カルシウムホメオスターシスSD負荷によるカルシウムホメオスターシスの変化は組織化学的には認められなかった。以上より、SDは脳虚血による大脳皮質神経細胞の脱落を防止し、このSDによる虚血耐性はアポトーシス防止によるもとと考えられた。
著者
奥村 光平 奥 寛雅 石川 正俊
出版者
The Institute of Image Information and Television Engineers
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.J204-J211, 2013
被引用文献数
2

Recently, augmented reality (AR) by using a projector, which is often called projection-based AR, has been focused on and widely studied. We propose a projection-based AR system, named "Lumipen" for a high-speed or high-frequency object, using a 1000-fps vision sensor and a high-speed optical axis controller. Conventional research on projection-based AR has mainly focused on static objects or circumstances. In our system, the projected direction and projected image can be controlled based on the dynamic object behavior detected by a 1000-fps vision sensor. Instead of a rotational basement, the high-speed optical axis controller is an essential subsystem to catch up with the speed of the 1000-fps vision sensor. Lumipen is expected to provide high-quality visual information addition even in dynamic live content (e.g. a play, sport game, music concert) similar to CG in video content.
著者
大脇 崇史 中坊 嘉宏 並木 明夫 石井 抱 石川 正俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.918-924, 1998-05-25
被引用文献数
18

実環境にある物体の視覚情報をリアルタイムに触覚情報に変換することにより, 物体に仮想的に触れることができるシステムを構築した.このシステムは, アクティブビジョンによって実環境にある対象物の局所的な視覚情報を得て, 高速並列画像処理システムで処理した後DSPシステムを介して視覚情報を対象物からの仮想的な反力に変換し, 触覚提示装置を用いて指先に反力を与えることで仮想的な接触を実現するものである.本システムでは, 独自に開発した高速画像処理システムを用いることにより, 視覚情報のセンシングから触覚提示までのループが約200Hzで動作する.本論文では, モダリティ変換の基本構造を述べた上で, システムの構成を示し, 最後にシステムの動作を確認するために4種類の2次元物体について行った形状をなぞる実験について, その結果を述べる.
著者
篠原 孝司 馬場 護 石川 正男
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

燃焼プラズマの物理の理解に必要な高速イオン輸送研究のために、2.45 及び14MeV 中性子の同時計測可能なシステムの研究開発を行った。開発では、これまでの実績による課題を念頭に、ゲイン変動と呼ばれる波高変動の特性の把握、シンチレータ検出器の特性の把握、パルス波形最適化のための高速パルス波形処理用機器や解析ソフトの開発、処理用機器の試験を行い、改良に向けた指針を得た。指針にもとづき、多段式の検出システムを考案した。試験の結果、多段式検出システムが有望であることが確認できた。
著者
渡邉 学 石川 正美
出版者
千葉県農林総合研究センター
雑誌
千葉県農林総合研究センター研究報告 = Annual research bulletin of the Chiba Prefectural Agriculture and Forestry Research Center (ISSN:18835295)
巻号頁・発行日
no.1, pp.55-58, 2009-03 (Released:2011-03-05)

1.白花系イチゴで開発された25種類のCAPSマーカーのうち、13マーカーが赤花系イチゴ品種の識別に適用可能であることを確認した。2.千葉県が育成した新品種「紅香」及び「桜香」を含む10品種・系統の赤花系イチゴのDNA品種識別技術を確立した。
著者
石川 正弘 大槻 憲四郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.96, no.9, pp.719-730, 1990-09-15
被引用文献数
2 9
著者
武井 典子 藤本 篤士 木本 恵美子 竹中 彰治 福島 正義 奥瀬 敏之 岩久 正明 石川 正夫 高田 康二
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.384-396, 2009-03-31 (Released:2011-02-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

近年, 軽度の要介護高齢者の増加が厚生労働省より指摘され, 平成18年度の介護保険制度の改正では, 介護予防として口腔機能の向上が位置づけられた。また, 平成20年度の「後期高齢者医療制度」では, 食べる・話す・笑う機能を低下させないために「口腔機能の評価と管理」が位置づけられた。しかし, どちらも総合的な評価法や具体的な管理方法は, 社会科学的施策として確立されていない。このような現状から, 著者らは, 自立から要介護までのすべての高齢者のための介護状態の予防・軽減, QOLの向上などを目指した安全で有効な口腔機能の評価と管理のシステムの開発を試行し, 広く社会科学的に合理的な施策として実現すべく検討を試みてきた。今回はその第1報として, 自立高齢者を対象に, 口腔機能の総合的な検査法, その結果に基づいた改善法, その実施の有効性についての評価法を試行検討した。対象者は, 札幌市の某ケアハウスに入所している自立高齢者91名である。口腔機能を総合的に評価するために, 口腔の周り, 口腔の入り口 (咀嚼), 口腔の奥 (嚥下), 口腔の清潔度の4つのカテゴリーに分けて行った。その結果を活用して改善法を提案・実施・評価を行った。その結果, 咀嚼力の判定, 唾液湿潤度検査, 反復唾液嚥下テスト, オーラルデイアドコキネシス, カンジダ検査が有意に改善したことにより, 今回試作したシステムは, 自立高齢者の口腔機能の評価と向上に役立つ可能性が示唆された。
著者
石川 正俊
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.15, pp.27-32, 1997-02-03

将来のチップ間自由空間光インターコネクションの実現を目指して、面発光レーザーを光源として、位相変調タイプの液晶空間光変調素子上に書き込まれた最適化された計算機ホログラムによる再構成可能な光インターコネクション実現方法並びに具体的なシステムを示す.このシステムの特徴は、コンパクトなプロセッシングエレメントをを設計することにより、並列処理回路を集積化し、面発光レーザーと組み合わせたモジュールによりフレキシブルな処理を実現している点にある.また、実際のシステム動作を実現している点にも特徴がある.本論文では、最近の進展も交えて、具体的な構造と動作について述べる.As a first step of free-space optical interconnection among chips in future, a reconfigurable optical interconnection system using computer generated hologram optimized by simulated annealing and written on a phase modulation type liquid spatial light modulator is shown. A combination of a VCSEL array as a light source and originally designed compact processing element array makes a parallel processing module as aa building block. In this paper the architecture of the system and system behavior are described.
著者
椛澤 由博 石川 正美 岡松 孝男
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.1104-1109, 1996
被引用文献数
6

腸回転異常症に対する手術の緊急性は,腸軸捻転の程度によって左右される.上部あるいは下部消化管造影検査は,腸回転異常症の診断には欠かせないものではあるが,特に腸軸捻転が強く存在する際には,その診断に難渋し,いたずらに被曝線量を多くしてしまうことがある.すなわち消化管造影のみでは,腸回転異常症と診断されても,腸軸捻転の有無やその程度については十分に判断できないことがある.一方,腹部超音波検査およびカラードップラー検査では,腸軸捻転が存在する場合には,whirlpool sign といわれる上腸間膜動脈を腸管,腸間膜,上腸間膜静脈が取り囲む像をとらえることができた.われわれは,これらの所見は,腸回転異常症における緊急手術の指標になると考える.
著者
小室 孝 鈴木 伸介 石井 抱 石川 正俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-1, 情報・システム 1-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.70-76, 1998-02
被引用文献数
57

本論文では汎用のプロセッシングエレメント(PE)を用いた新しいビジョンチップアーキテクチャを提案する.本アーキテクチャはロボットビジョンなどのさまざまな応用にも対応可能な十分な汎用性を保ちつつ, 多数のPEを1チップ上に集積するために非常にシンプルな構造をもっている.また, 視覚フイードバックに必要とされる1msのオーダでさまざまな視覚処理を行うことが可能であることをシュミレーションによって示した.更に, このアーキテクチャに基づいた試作チップをFPGAを用いて製作し, 動作を確認した.また, フォトディテクタ(PD)を含むフルカスタム回路の設計を行った.
著者
植村 俊亮 波多野 賢治 天笠 俊之 吉川 正俊 渡邉 正裕 前田 亮 石川 正敏
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

インターネット時代を迎えて,地球規模の情報資源が現出しつつあると言われる.WWW(World Wide Web)は,その典型的な例である.しかし,WWWは,ばらばらに構築された,言語も文化も異なるホームページが互いに接続されて,利用可能になっているだけであって,そこから真に必要な知識を発掘する方式はまだ確立されていない.本研究では,WWWに代表される知識資源の大海から,必要な知識を発掘する方式を,とくにその多言語処理面から追求する.具体的には,次の多言語機能をもつ知識発掘システムの実現を目指す.1.ある言語で表現された情報資源に対して,それとは別の言語を使って問い合わせることができる.例えば,英語のホームページの集まりに対して,日本語で質問を出すことを可能にする.2.複数の異なる言語で表現された情報資源の集まりに対して,自分の一番使いやすい言語を使って,問合せを出し,必要な情報を発掘することができる、例えば,さまざまの言語を使ったホームページの集まりに対して,だれでも母国語を使って問い合わせ,知識を発掘することを可能にする.多言語知識発掘システムのため本研究では以下の項目について研究を実践した.1)対訳辞書を用いた検索語の翻訳手法,および並列コーパスによる統計的手法などを用いた効果的な多義性の除去手法,2)フォント埋め込み型HTML/XML文書による多言語文書のブラウジングシステムの実現,3)大量の多言語HTML/XML文書格納のためのHTML/XML文書データベースの開発.
著者
常田 文彦 石川 正夫 渋谷 耕司 輿水 正樹 阿部 龍二
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.585-589, 1984 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
3 14

銅クロロフィリンナトリウム(SCC)より消臭力が優れていて,口腔に利用できる消臭剤を探索するためにメチルメルカプタンを用いた消臭力試験法を設定し,生薬,スパイス等植物のメタノール抽出物の効果を測定した.その結果次の点が明らかになった. (1)消臭作用を示した植物(消臭率60%以上のもの)は65科167種中23科40種,このうちシソ科に属する植物14種はすべてが有効であった. (2) SCC程度以上の消臭力を示したものは6種あり,そのうちスナウ,ホオノキ,クコは過去に消臭作用をもつ植物として発表されたことはない.またセージ,ローズマリー,タイムはその精油に魚臭抑制作用があることが知られているが,本研究では非精油画分にメチルメルカプタン捕捉作用が認められ,新規の消臭成分め存在が示唆された.