著者
緒方 康介
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.15-25, 2019

<p>The aim of the current analyses was to examine the possibilities of sustainable contributions in Japanese criminal psychologists after detached from their practices. This study analyzed bibliometric data of Japanese criminal psychologists who had worked at practical fields as scientist-practitioners. Final data were identified under the three conditions: the researchers have (1) attributed to the Japanese Association of Criminal Psychology, (2) published scientific papers in Japanese Journal of Criminal Psychology, and (3) changed their job to academicians. The number of their published papers was the target variable. Wilcoxon signed-rank tests showed that the Japanese criminal psychologists increased the number of the published papers after detached from their practical fields. Multidimensional scaling for the journals in which the papers accepted and text-mining methods for the title of the papers revealed that research theme after job change diverged from the original one as induced in their practical fields. In conclusion, findings suggest that Japanese criminal psychologists can continue their researches after detached from their practices although their research theme could not be sustainable.</p>
著者
緒方 美湖 森 いつか 松岡 達司 河崎 靖範 槌田 義美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ea0368, 2012

【はじめに、目的】 回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)の役割は、ADL能力向上による寝たきり防止と家庭復帰である。先行研究では、退院後の環境変化によって患者のADLが低下しやすいとの報告があるが、回復期病棟のセラピストが患者の退院後の生活に関わる機会は少ない。そこで、在宅患者のADLの確認・指導と、患者の在宅復帰後の生活を把握する為のセラピスト教育を目的に、H21年度から退院後訪問指導を導入した。今回、在宅復帰した患者の環境調整状況と満足度、活動範囲、セラピストの意識調査を行い、入院から在宅までの在宅復帰支援システム構築の一助となったので報告する。【方法】 (1)H21年4月~H23年5月までに退院後訪問指導を実施した脳血管障害患者57名(年齢69±14歳、男性30名、女性27名)を対象に、家屋改修や福祉用具導入などの環境調整状況の確認と満足度、Life-Space-Assessment(LSA)を調査し、χ2検定を用いた。(2)退院後訪問指導を実施した当院セラピストPT・OT・STの50名(経験年数6.8±4.3年)を対象に、セラピストの訓練内容の変化、訪問時に指導した内容、感じたこと等に関するアンケート調査を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はデータ抽出後、集計分析した後は個人情報を除去し、施設内の倫理委員会の審査を経て承認を得た。【結果】 環境調整調査:環境調整場所としては玄関、寝室、トイレ、浴室、屋外の順で多く、満足している患者が77%、不必要だと感じた患者が10%、要改善と感じた患者が12%であり、有意な差を認めた(P <0.01)。不必要な調整内容として、ベッドのL字バーは使用していない、玄関のベストポジションバーは使用せず勝手口から出入りしている等があった。要改善内容として、シャワー浴時の手すりが必要、2階への昇降の為の手すりが必要、夜間移動時に廊下の電気が必要等があった。LSA:活動範囲として、町外への外出が37%、町内までの外出が53%、隣近所までの外出が10%、自宅周辺や自宅内活動は0%であり、有意な差を認めた(P <0.01)。外出先として、通所系サービス+通院が46%、通所系サービス+それ以外の外出が35%、通院のみが7%であった。セラピストアンケート:家屋改修後の環境を意識した訓練を行うようになった、家族から詳細に患者の生活背景や家屋の情報収集をするようになった、リハビリテーション(リハ)効果の確認や患者への動作再指導が行えた、家族指導の重要性を感じた等の意見が得られた。【考察】 環境調整に関しては、80%弱の患者が満足していると感じており、適切な環境調整が施されていることが明らかになった。しかし、20%強の患者では不必要、または改善が必要と感じており、環境調整施行における課題が残った。課題解決の為には、患者の在宅復帰後の身体能力やADL能力の予後予測、在宅復帰後の活動範囲や活動内容の把握、発症前の生活様式の理解など在宅生活を十分に予測し、環境調整に活かす必要がある。活動範囲に関しては、町内外への外出がほとんどを占めており、外出先として通所系サービスが多い事から、退院後の社会参加への取り組みとして通所系サービスへの介入が施されている事が分かった。しかし、疾患管理を中心とした通所系サービスの外出だけでなく、在宅生活の経過と共に、本人の望む外出や活動につながるアプローチが必要である。退院後訪問指導では、患者の在宅生活における環境調整の満足度や社会参加を知る手がかりになると考えられる。これらの調査結果から、個々の患者の在宅生活を見据えたアプローチの必要性が明らかになった。アンケート結果からも、退院後訪問指導を通して、セラピスト自身がそれらを認識し、アプローチの視点が在宅へも向くようなった。退院はリハのゴールではなく、在宅生活へのスタートである。退院後訪問指導は、環境調整後の動作確認や指導、相談、アドバイスなど在宅生活のフォローの機会となる。またセラピストが患者の生活期を見る機会でもあり、セラピストが予測、計画した退院後の生活を実際に確認し、在宅で生じた問題の修正の場となる。この経験の繰り返しが、リハや家族指導の再考の機会となり、在宅を見据えたリハの提供につながると考えた。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果は、回復期病棟に勤務するセラピストにとって退院後訪問指導が、在宅生活フォローや、在宅生活を見据えたアプローチを行う上で、その糸口となる事を示唆するものと考える。
著者
緒方 南奈 徳田 智代 原口 雅浩
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 : 久留米大学文学部心理学科・大学院心理学研究科紀要 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
no.15, pp.9-16, 2016

本研究では,母親に対する甘えが大学生の精神的自立に及ぼす影響について,母親の養育態度を踏まえて検討する。研究 1 では,大学生と大学院生89名を対象に質問紙調査を行った。その結果,現在の「相互依存的甘え」は精神的自立の「適切な対人関係」にプラスの影響を及ぼし,現在の「屈折した甘え」は,精神的自立の 「価値判断・実行」にマイナスの影響を及ぼしていた。特に,母親に対して素直に甘えを表現し,うらみすねみといった気持ちを持たない人は,精神的自立ができることが分かった。また,母親の過保護な養育態度は,精神的自立にマイナスの影響を及ぼしていた。研究 2 では,大学生と大学院生108名を対象に,甘えと精神的自立について自由記述式の質問紙調査を行った。その結果,子どもの甘えに対して,母親が一貫して子どもの甘えを受け入れる態度をとることが,「 自立できる甘え」にとって重要であることが示唆された。This study will examine how university students' Amae toward their mothers affect their psychological independence, based on the mothers' bonding. In Study 1, a questionnaire survey was administered to 89 undergraduate and graduate school students. As a result, we found that current" mutually-dependent Amae" has a positive effect on the "appropriate interpersonal relationships" factor of psychological independence. However, "distorted Amae"was found to have a negative effect on the "value judgment and execution" factor of psychological independence. In particular, people who honestly express Amae toward their mother without feelings of resentment or peevishness are able to be psychologically independent. In addition, overprotective bonding by the mother was found to have a negative effect on psychological independence. In Study 2, an open-ended questionnaire survey on Amae and psychological independence was administered to 108 undergraduate and graduate school students. The results suggested that it is critical for mothers to provide a consistent positive response to their child's Amae for the child to develop "independent Amae."
著者
八幡(谷口) 彩子 宮崎 晶子 ?島 亜希子 緒方 美智子 隅田 博美
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育実践研究
巻号頁・発行日
vol.23, pp.73-82, 2006-02-28
被引用文献数
1

本研究では、①中学校技術・家庭科向けに開発した家族の予算計画に関する教材「お金の使い方の選択ゲーム」について、パソコンを使った指導方法を開発すること、②中学校技術・家庭科向けに開発した収入を視野に入れた消費行動に関する教材「買い物ゲーム」と「支出をより少なくする方法」を、高等学校家庭科(家庭基礎)に導入する方法について検討すること、の2点を目的とし、それぞれの有効性について、実地授業を通して検証することとした。The purposes of this paper are 1) to devise a teaching method using the WebCT for family life planning based on the "card game: family finance" which we produced last year for junior high school students, and 2) to consider a method for introducing teaching materials targeting consumer skills, labelled the "shopping game" and one called, "activity: ways to spend less" which we produced two year ago for junior high school students, into the homemaking education in high schools in Japan.

1 0 0 0 緒方洪庵伝

著者
緒方富雄著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1977
著者
緒方 宏泰
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.461-466, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
1

The clinical significance of the changing of plasma protein binding of drug was discussed. Blood concentration of free drug equilibrated with that at the site of action can be used as a useful tool for monitoring pharmacotherapy. The significant increase of blood concentration of free drug may be produced in a very restricted case which is described in detail in this article. However, it should be emphasized that the changing of concentration of total drug in blood does not parallel with that of free drug. Although the changing of plasma protein binding seems to be a minor factor in most of clinical cases, we should notice the role of protein binding which covers the changing of free drug when the monitoring using total drug concentration is performed.
著者
緒方 克己
出版者
金原出版
雑誌
皮膚科の臨床 (ISSN:00181404)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.p545-556, 1982-05
被引用文献数
4
著者
劔 陽子 池田 洋一郎 稲田 知久 緒方 敬子 木脇 弘二 小宮 智 長野 俊郎 服部 希世子 林田 由美 渕上 史
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.755-768, 2018-12-15 (Released:2018-12-27)
参考文献数
7

目的 2016年4月に発生した熊本地震における熊本県内各保健所の災害対応を振り返り,今後の災害時における保健所・保健医療行政の役割・あり方について考察する。方法 2016年8~9月にかけて,県内各保健所長が発災後超急性期~亜急性期における自分が勤務する保健所の対応について,また県保健所長会長が同時期における所長会としての活動について,記述的にまとめた。これらを「所長会の活動」,「被害が大きかった地域を管轄する保健所の活動」,「被害が比較的小さかった地域を管轄する保健所の活動」に分けてまとめ,KJ法により課題や反省点を抽出した。活動内容 所長会は県の医療救護対策本部における「コーディネーター連絡会議」に参画し,全県的な対応が必要な事項について調整する等の活動を行った。被害が大きかった地域を管轄する保健所は,支援者・団体の調整,市町村支援として避難所の衛生管理や感染症対応支援等の活動を行った。保健所内の指揮命令系統がうまく動かなかった,市町村や外部支援団体に保健所の機能が知られていなかった,県本部との意思疎通が困難であった,などが課題として挙げられた。被害が比較的小さかった地域を管轄する保健所は,職員の安否や管内の被害状況を確認後,待機体制をとった。その後,県本部からの指示により職種別に職員を被災地域の保健所に応援派遣し,また二次避難者を管内に受け入れた。保健所「チーム」としての応援派遣はなかった。長期間の待機による職員の疲弊,ニーズと実際の応援のミスマッチ,被害が小さかった地域にも開設された避難所への対応が保健所により異なっていたこと等が課題として挙げられた。結論 次の災害に備え,災害時の保健医療部局における一本化した指揮命令系統の確立,管理職のマネジメント能力の強化,市町村や関係団体との平時よりの連携強化,災害時保健所活動についてのマニュアルの整備,被災地域を管轄する保健所への人員補強計画の作成等に取り組む必要がある。
著者
緒方 敦子 川平 和美
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.204-211, 2012-06-30 (Released:2013-07-01)
参考文献数
23

観念失行の定義, 発生メカニズムについての議論は続いている。一方, 道具使用や随意運動にいたるメカニズムが解明されつつある。我々は, 観念失行を有する失語症患者を対象に道具の認知や使用法と手順の知識について, 道具の写真の並び替えなど非言語的課題を用いて検討したところ, 単一物品の使用法理解は全例で保たれていたが, 複数物品の使用については誤りがあった。ADL への影響では観念失行例は観念失行のない例に比べて入院時, 退院時とも ADL は低かったが, その向上の程度は差が無かった。失語と観念失行を有する右片麻痺例への調理訓練も検討し, 頻回に調理実習を繰り返すと, 多くの例が調理可能となった。観念失行の効果的なリハビリテーションは確立されていないが, 観念失行を道具使用の運動プログラムの立ち上げに至る神経回路の障害と考えると, 誤りのない道具使用を実現する神経回路の興奮水準を高める刺激の多い環境で, 繰り返して行うことが必要である。
著者
菅井 和子 木村 博一 宮地 裕美子 吉原 重美 緒方 裕光 岡山 吉道
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.22-27, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
22

乳幼児期のウイルス感染に伴う下気道感染症では喘鳴発症が多く, それが反復喘鳴や喘息発症の一因であることが多く報告されている. 特に, RSV, HRVは喘鳴のおもな起因ウイルスであり, アトピー-素因, 吸入抗原感作等と関連し, 喘息発症と関連するとの報告も多い. 低月齢児では肺機能等客観的な評価は困難だが, 非侵襲的に反復喘鳴予測ができれば, 喘息管理において, より早期の介入が可能となる. 喘息患者で気道上皮由来のTSLP, IL-25, IL-33やTh2サイトカイン等が注目されているが, 喘息発症前の初回喘鳴時のより強力な気道炎症誘導因子の存在も考えられる. われわれは, ウイルス感染に伴い初回喘鳴を呈した乳幼児対象の研究で, MIP-1αによりその後の反復喘鳴が予測可能となる研究結果を得た. 簡便に採取可能な鼻汁検体からの反復喘鳴予測の可能性が示唆された. パリビズマブの早産児におけるRSV感染後の反復喘鳴予防の有効性や, ワクチンの研究もあるが, 実用化には至っていない. ウイルス感染後の喘息発症予防において, 感染予防とともに発症予測因子に関する研究も今後さらに必要と考える.
著者
田中 宏太佳 緒方 甫 蜂須賀 研二 合志 勝子 丸山 泉
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.459-463, 1990-11-18
被引用文献数
5

健常中高年男性を対象に,万歩計での歩行量の測定と体部CTでの大腿中央部の筋横断面積の算出,それにCybex IIでの大腿四頭筋とハムストリンクスの筋ピーク・トルク値の計測を行った.日常生活の活動性中等度群(1日平均歩行量4.0×10^3以上8.0×10^3未満)の大腿四頭筋の筋ピーク・トルク値の平均は,軽度群(1日平均歩行量4.0×10^3未満)に比べて有意に大きかった.筋横断総面積やハムストリンクスの横断面積の値は,日常生活の活動性中等度群では軽度群に比べて有意に大きかった.したがって健常中高年者では廃用性筋萎縮を防ぐために,1日約4.0×10^3以上の日常生活の活動性を維持することが大切である.
著者
山田 一隆 緒方 俊二 佐伯 泰愼 高野 正太 岩本 一亜 福永 光子 田中 正文 野口 忠昭 高野 正博
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.513-520, 2016 (Released:2016-11-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

下部直腸・肛門管癌に対する括約筋間直腸切除術(ISR)に関しては,術後排便機能障害として便失禁が比較的高率であることが課題となっている.そこで,当施設において2001~2013年に下部直腸・肛門管癌に対してISR, partial ESRを施行した治癒切除178例を対象に,術後1年の排便機能について解析した.術後1年における排便機能に関しては,continent patients(Kirwan grade 1, 2)が64.9%であり,total ISR とpartial ESR症例では低い傾向であった.直腸肛門内圧検査と直腸肛門感覚検査を継時的(術前・術後3ヵ月・6ヵ月・1年)に施行し,肛門管最大静止圧,肛門管最大随意圧ならびに肛門管電流感覚閾値に術後3ヵ月に著明な悪化がみられ,その後の回復が比較的不良であった.これらの解析を基に,ISR術後の排便機能障害に対する対応について検討した.
著者
西野 一郎 緒方 公介 野見山 宏 安永 雅克 西嶋 幸司 藤原 明 山田 昌登嗣
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.1038-1040, 1993-09-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
3
被引用文献数
2

Accelerometric measurement of gait ananlysis is a simple, inexpensive and effective way to evaluate gait and was first introduced by Liberson and colleagues. Smidt applied accelerometry to the normal and abnormal patterns of gait. Ogata used accelerometry to quantitatively vevaluate the lateral thrust of the knee and investigated the dynamic effects of a wedged insole on the thrust of OA knees.In the present study, we used an accelerometer, strain gauge and goniometer to inveshgate the effects of accelerometry on heel strike in gait analysis. The acceleration placed on the calcaneal region on heel strike appeared faster than any other measurement. Our results suggest that an accelerometer placed on the calcaneal region provides the most useful information on the exact moment when the heel strikes the ground.
著者
安藤 徳彦 上田 敏 石崎 朝世 小野 浩 大井 通正 緒方 甫 後藤 浩 佐藤 久夫 調 一興 菅井 真 鈴木 清覚 蜂須賀 研二 山口 明
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.979-983, 1991-10-10

はじめに 障害者が健常者と同様に働く権利を持っていることは現在は当然のこととされている.国連の「障害者の権利に関する宣言」(1975年12月9日)第7条には「障害者は,その能力に従い,保障を受け,雇用され,また有益で生産的かつ十分な報酬を受け取る職業に従事し,労働組合に参加する権利を有する」と述べられている.また国際障害者年(1981年),国連障害者の10年(1983~1992年)などの「完全参加と平等」の目標を実現するための行動綱領などにも常に働く権利が一つ重要なポイントとして掲げられている. また現実にも,障害者,特に重度の障害者の働く場はかなり拡大してきている.障害者の働く場は大きく分けて①一般雇用,②福祉工場,授産施設など,身体障害者福祉法,精神薄弱者福祉法,精神保健法などの法的裏づけのある施設での就労(福祉工場では雇用),③法的裏づけを欠くが,地域の必要から生まれた小規模作業所での就労,の3種となる.このうち小規模作業所は,共同作業所全国連絡会(以下,共作連)の調査によれば,全国に約3,000か所,対象障害者約3万人以上に及んでおり,この数は現在の授産施設数およびそこに働く障害者数のいずれをも上回っている.小規模作業所で働いている障害者は,一般雇用はもとより,授産施設に働く障害者よりも障害が重度であったり,重複障害を持っている場合が多い.その多くは養護学校高等部を卒業しても,その後に進路が開けなかった人々であり,彼らの就労の場として小規模作業所が開設されたわけであるが,それは親たちや養護学校の教師たちの運動で自主的につくられてきた施設が多い.また最近まで就労の道が開かれていなかった精神障害者に対し,以前から広く門戸を開いてきたのも小規模作業所であり,その社会的役割は非常に大きい. しかし,障害者が働くことに関しては,医学的側面から見て種々の未解決の問題が存在している.現在もっとも重要視されていることの一つは,重度の身体障害者,特に脳性麻痺者における障害の二次的増悪である.すなわち,以前から存在する運動障害が,ある時期を境として一層悪化し始める場合もあれば,感覚障害(しびれ,痛みなど)が新たに加わる場合も多い.そして,その結果,労働能力が一層低下するだけでなく,日常生活の自立度まで低下し,日常生活に著しい介助を必要とする状態に陥る者も少なくない. すでに成人脳性麻痺者,特にアテトーゼ型には二次的な頸椎症が起こり,頸髄そのものの圧迫または頸髄神経根の圧迫により種々の症状を生ずることが知られている.しかし,二次的な障害増悪がすべてこの頸椎症で説明できるものではないようであり,さらに詳細な研究が必要である. また逆に,働くことがこのような二次障害の発生を助長しているのかどうかという問題も検討する必要がある.廃用症候群の重要性が再認識されつつある現在,たとえ重度障害者であっても働くことには心身にプラスの意味があるに違いない.しかし一方,働きすぎ(過用,過労)がいけないことも当然である.問題は重度障害者における労働が心身の健康を増進するものであって,わずかなりともそれにマイナスとなるものでないように,作業の種類,作業姿勢,労働時間,労働密度,休憩時間,休憩の在り方などを定めることであり,それには労働医学的な研究が十分なされなければならない. 以上のような問題意識をもって,1990年,共作連の調査研究事業の一部として障害者労働医療研究会が結成された.同研究会には脳性麻痺部会と精神障害部会を置き,前者においては主として上述の二次障害問題を,後者においては精神障害者にとっての共同作業所の機能・役割,また障害に視点を当てた処遇上の医療的な配慮などについての研究を進めている. そして,障害者労働医療研究会の最初の仕事として,以上のような問題意識に基づいて脳性麻痺者の二次障害の実態調査を行った.その詳細は報告書としてまとめられているが,ここではその概要を紹介する.なお,この研究では小規模作業所と授産施設との間の差を見る目的もあって,前者の全国的連合体である共作連と授産施設の全国連合体である社団法人全国コロニー協会(以下,ゼンコロ)との協力を得て行った.
著者
奥村 正雄 緒方 あゆみ 川本 哲郎 洲見 光男
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究課題の比較法研究に欠かせないと判断したイギリス刑法の教科書(Andrew Ashworth and Jeremy Horder, Principles of Criminal Law 7thed., Oxford University Press 2013)を協力者を得て翻訳作業を行い、同志社法学に7号に分けて14本の原稿が掲載中である。この作業を通して、本研究課題のイギリスにおける背景事情と刑事法との関係等の理解が、本研究を実行している者だけではなく、読者にも一層深まるであろう。各人の研究成果として、奥村正雄「少年法の適用年齢の引下げを巡る議論ー犯罪被害者等への配慮の視点を中心にー」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.833-867は、本研究課題との直接的関連はないが、保護処分の妥当性の問題、是非善悪の弁別能力の有無・程度の問題の検討は、未成年の精神障害ないし知的障害を有する加害者の非行と社会復帰支援、それらの傷害を有する少年加害者の被害者支援のあり方を考えるうえで、重要である。川本哲郎「犯罪被害者の人権と被害者支援」同志社法学396Ⅱ号(2018年) pp.813-832は、犯罪被害者支援のあり方について、2004年の犯罪被害者等基本法及び2005年の犯罪被害者等基本計画によって、精神障害や知的障害に起因する犯罪の被害者に対する支援も同等の支援を受けるべき権利があることを主張する。洲見光男「アメリカにおける取調べの規制―自白の証拠能力の制限―」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.870-889は、知的障害を有する被疑者の取調べにおける捜査官の誘導等による自白の証拠能力の問題点を検討する。緒方あゆみ「摂食障害と万引きに関する一考察」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.1148-1187は、万引き事犯における摂食障害との関係性を分析している。