著者
濱 侃 田中 圭 望月 篤 鶴岡 康夫 近藤 昭彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<b>Ⅰ</b><b> はじめに</b><br> 現在,農地を小労力,低コスト,低環境負荷で適切に管理するための作物の生育に関するデータの取得方法として,Unmanned Aerial Vehicle(UAV)を利用した近接リモートセンシングの活用が検討されている。そこで,衛星(特に光学衛星)を用いたバイオマス計測をはじめとした植生モニタリングの知見が応用され,施肥量の調整といった実利用を目的とした研究が進められている。これらのUAVを用いた観測データは,農家にとっては生育調整などに利用でき,同時に,搭載するセンサー次第で任意のデータを高頻度に取得可能なオンデマンド型リモートセンシングとして植生モニタリングに利用することができる。<br>本研究では,水稲を対象にUAVを用いた植生モニタリングを行い,高い時間および空間分解能の画像の取得に基づくフェノロジー観測,生育量の推定を試みた。<br><b><br> Ⅱ</b><b> 研究手法</b><br><b>☐</b><b> </b><b>フィールド観測</b><br> 千葉県農林総合研究センターの水稲試験場において,2014年,2015年の2年間,水稲の生育期間を中心におおむね週1回間隔で観測を行った。試験圃場は,2筆の水田を48区画に細分し,移植時期(全4期),品種(コシヒカリ,ふさおとめ,ふさこがね),施肥量(3~10gN/m&sup2;)を変えている。観測には,小型UAV(電動マルチコプター),可視光撮影用と近赤外撮影用のデジタルカメラ(可視画像:RICOH社 GR,近赤外画像:BIZWORKS社 Yubaflex)を用いて対地高度50mから空撮を行った。水稲の生育状況の実測データは,千葉県農林総合研究センターの観測値を使用した。<br><b>☐</b><b> </b><b>画像解析</b><br> オルソモザイク画像,3次元地表面モデルは,複数枚の重なり合う画像から自動でオルソモザイク画像,3次元地表面モデルを作成可能なSfM/MVSソフトウェアPhotoScan<br>Professional v1.2(Agisoft社)を用いて作成した。なお,近赤外撮影用カメラで撮影した画像は専用ソフト(Yubaflex2.0)で放射輝度に変換後,SfM/MVSソフトウェアを使用した。その後,植生指数(正規化差植生指数(NDVI)など)を計算し,植生活性度の計測および生育パラメーターの推定に使用した。なお,これらの情報をGIS(地理情報システム)上に集積し,時空間変化の解析を行った。<br><br><b>Ⅲ</b><b> 結果・考察</b><br> NDVIpvの時系列変化は,移植から出穂にかけて値が上昇し,その後登熟にかけて下降を示し,ピークの時期はほぼ出穂期と一致する。また,移植時期の差によるフェノロジーの差も,時系列変化に表れた。移植時期が遅いほど,出穂までの生育期間が高温になることで生育速度が早くなり,移植からNDVIpvのピークまでの期間が短くなった。移植時期が4月初旬と6月初旬で,その差は最大で24日となった。また,移植時期が遅いほどNDVIpvの最大値も高くなり,植生の活性度は高くなった。しかし,収量は増加せず,それらの区画では,重度の倒伏が確認され,過剰な生育の影響が示唆された。<br> 植生指標を用いて,出穂前(追肥の適期)の水稲の生育パラメーター(草丈,LAI)の推定を行った結果,草丈では特に推定精度が高く,平均二乗誤差は約5cmとなった。また,3次元地表面モデルから求めた草丈と実測した草丈を比較した結果,決定係数(R<sup>2</sup>)は0.82と高く,3次元地表面モデルを草丈の計測に使用できることがわかった。これらの草丈計測・推定手法の応用としてコシヒカリにおける倒伏予測を行った結果,予測エリアと実際の倒伏エリアは概ね一致した。
著者
富田 昌平 近藤 彩乃 TOMITA Shohei KONDO Ayano
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.235-244, 2018-01-04

本研究では、魔術的結果の実現可能性が示唆されるような状況下における、幼児の想像と現実との揺らぎについて検討した。具体的には、従来行われてきた空箱課題(Harris, Brown, Marriott, Whittall, & Harmer, 1991)、または、恐竜の卵課題を幼児(4-5 歳児26 名)に実施し、想像した事柄(箱の中に想像した赤ちゃん恐竜/恐竜の卵)に対する幼児の現実性判断を言語面と行動面から探った。実験の結果、事前の段階では大部分の幼児が恐竜について何らかの知識を持ち、それを少なくとも身近な場所にはいないものとして位置づけていたにもかかわらず、恐竜誕生という魔術的結果の実現可能性を示唆するような状況に置かれると、少なからぬ幼児が信じない方向から信じる方向へと自らの立場を変化させた。そのことは空箱条件よりも恐竜の卵条件において顕著であった。恐竜の卵条件では7割以上の幼児が「本物」と判断し、部屋に1人で残されると半数の幼児が複数の実践のバリエーションで魔術的結果の実現を試みた。これらの結果は、物語と実在物との結び付き及び想像を支える実在物という2つの観点から考察された。
著者
植田 真司 築地 由貴 近藤 邦男 山室 真澄
出版者
The Japanese Society of Limnology
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.197-206, 2005
被引用文献数
3

青森県下北半島の太平洋側中央部に位置する汽水湖尾駮沼におけるベントスの出現特性を2001年から2003年に至る期間,8地点において調査した。ベントスの個体密度は淡水河川の河口部と沼の沿岸部が湖心部と比較して多く出現した。出現が確認されたベントスの分類群は53種であり,大部分は軟体動物,環形動物および節足動物の分類群で構成されていた。優占種はヤマトスピオ,スピオ科のPolydorasp.,カワグチツボ,ホトトギスガイ,タカホコシラトリガイ,イソコツブムシであった。本研究の結果から,尾駮沼におけるベントスの歴史的変遷をみると,過去50年間において種構成の変化は小さかったが,近年環形動物のイトゴカイ,軟体動物のムラサキイガイやオオノガイなどの増加が示唆された。
著者
坂野 昌志 間瀬 広樹 島田 泉 伊藤 由紀 中村 卓巨 青田 真理子 中村 桂 近藤 祥子 堀端 志保 中野 良美 五家 邦子 鈴木 末廣 井端 英憲
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.920-924, 2007 (Released:2009-09-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

In the treatment of cancer,radiotherapy is equally important to chemotherapy,and the pain arising from the adverse reactions of esophagitis and stomatis is treated with sodium aliginate (AL-Na).We decided to try cooling AL-Na because it was felt that doing this would enhance the analgesic effect.When cooled,the time of adhesion to the affected part was longer than that for AL-Na at room temperature and the pain relieving effect was greatly enhanced.
著者
近藤 英明 神林 崇 清水 徹男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.748-755, 2006-04-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

覚醒機構と摂食行動とは密接に関わっている. オレキシンは両者に関わる神経ペプチドである. 1998年桜井らにより発見され食欲を増進させることよりorexinと命名された. ほぼ同時期にde Leceaらは視床下部に特異的に産生されるペプチドとして同じペプチドを発見しhypocretinと命名した. 2000年にはオレキシン神経系の脱落がヒトのナルコレプシーで確認され, ナルコレプシーに特徴的なREM関連症状とオレキシン神経系との関わりについて明らかにされてきた. その後ナルコレプシー以外の神経疾患でも視床下部の障害によりナルコレプシー類似の症状をきたす症例が報告されるようになった. オレキシンがエネルギーバランス, ストレスと関連することより内分泌代謝, ストレス関連領域でもオレキシンに注目した研究がすすめられてきている. 本稿ではオレキシン神経系の生理的な役割とナルコレプシーの病態への関わりについて概説する.
著者
楊 金峰 菅 晃一 近藤 孝文 室岡 義栄 成瀬 延康 吉田 陽一 谷村 克己 浦川 順治
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
Journal of the Vacuum Society of Japan (ISSN:18822398)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.42-49, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
24
被引用文献数
2 5

Two ultrashort electron-bunch photocathode RF guns in picosecond (ps) and femtosecond (fs) time region are reviewed. The ps gun was developed and used successfully to generate an ultralow-emittance and high-charge electron beam with normalized emittance of 1.2 mm-mrad at bunch charge of 1 nC. The low-emittance electron beam has been used successfully to produce a 100-fs high-charge electron single bunch with a booster linear accelerator and a magnetic bunch compressor. An ultrafast pulse radiolysis with time resolution of 240 fs was constructed using the fs electron beam for the study of ultrafast reactions in radiation chemistry and biology. The fs gun, developed under the KEK/Osaka University collaboration with a new structure cavity and many improvements, was succeeded in producing directly a near-relativistic 100-fs electron beam with energy of 1-3 MeV. Femtosecond time-resolved electron diffraction has been constructed using the fs RF gun for the study of photon-induced phase transition in materials. Some experimental results of pulse radiolysis and MeV electron diffraction in fs time region were reported and discussed.
著者
小川 知行 若尾 真治 近藤 圭一郎
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.126, no.12, pp.1690-1698, 2006 (Released:2007-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

In this paper, we study an optimal design for a hybrid power source railway vehicle as an alternative to diesel railway vehicles. The hybrid power source railway vehicle is assumed to be composed of the fuel cell and the electric double layer capacitor. We apply the multiobjective optimization based on the genetic algorithm for the vehicle design, aiming at reduction of both initial cost and energy consumption. The pareto optimal solutions are obtained using the multiobjective optimization.First we develop a simulation model of the hybrid power source railway vehicle and its electric power control methods. Next we derive the pareto optimal solutions as a result of the multiobjective optimization. Finally, we categorize the pareto optimal solutions to some groups, which enables us to elucidate characteristics of the pareto optimal solutions. Consequently, using the multiobjective optimization approach we effectively comprehend the problem characteristics and can obtain the plural valuable solutions.
著者
近藤 暁夫 鈴木 晶子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>1.</b><b> 研究の目的</b><br><br> 経済循環が,大きく生産分野,流通分野,消費分野の連携で成り立っている以上,経済地理学においても,この三者三態の空間的特徴の総体的な把握が望まれる。この中で,近年農業分野において六次産業化の掛け声のもと,生産・加工・流通・消費を一連のまとまりとして議論,実践する動きが顕在化していることが注目されよう。現実に,各地で生産者と消費者を架橋する施設として直売所が急増している。今回はその中でも既往研究のほとんどない「インショップ形式の農産物直売所」を取り上げる。<br> インショップ形式の農産物直売所とは,スーパー等の量販店や生協の店内に開設し,少量多品目の農産物やその加工品を周年販売する半独立のコーナーを指す。近年,全国的にインショップが急速に売上額を増やしているが,その小規模性と店舗内の一コーナーという位置から,インショップの全国的な実態や実績をまとめた資料は未整備で,売上額の調査などもなされていない。<br> 本研究は,静岡県磐田市内のJA系列のスーパーマーケット「A店」とその中に設置されているインショップ形式の農産物直売所を取り上げ,店舗,生産者,消費者の検討から,インショップの存立を支える地域的な基盤の抽出を目的とした。<br>&nbsp;<br><br><b>2.</b><b> 研究の方法</b><br><br> 生産者としてインショップへの農産物出荷者34名,流通者としてA店の関係者,消費者として来店者397名に聞き取りとアンケート調査を実施した。なお,生産者には営農の実態と直売組織に参加した理由,インショップに出荷する作物と他の流通形態の作物の使い分け等を,流通者にはインショップの設立背景や運営方法,店舗経営全体の中でのインショップの役割等を,消費者には購買実態とどのような時に競合店舗ではなくA店とインショップを選択・利用するのかを訪ねた。そして,これら3者の動向をもとに,インショップ型の農産物直売所の存立を可能とする地域的な基盤の検討を行った。<br><br> <br><b>3.</b><b> 研究の結果</b><br><br> A店内の直売所への農産物の納入者は,店舗から3㎞圏内に位置する農家である。このような圏的な囲い込みが成しえたのは,A店がJA系列の店舗であり,地域の農家とのつながりがもともとあったことと関係している。しかしながら,A店が属する地域農協に所属する農家自体は3㎞より遠方にも多く居住していることから,日常的に店舗まで農産物を納入可能な範囲として3㎞がひとつの目安になっているといえよう。多くの場合,彼らは,友人や農協等による勧誘をきっかけに,通常の農協への出荷以外の副次的な農業収入を得たいと考えて,産直に参加した。農家の多くは高齢層で,売れ残った商品は自家で処理する。また,農産物の納入等でA店に来訪する折に店内で購買を行うこともまれではない。<br> A店の側は,農産物直売所自体の収益は売り場面積の割に高くないものの,競合する店舗に対して絶対的に差別化できる商品であること,来店者が同時に食料品等の他の売り場の商品の購買を期待できることから,直売所の充実に積極的である。<br> 消費者は,店舗から半径2㎞程度の圏内を中心に来店している。その多くは,食料品全般の購入のために来店する主婦層であるが,多くの場合,インショップの商品も同時購入しており,直売所の存在が店舗選択において一定のウェイトを占めている。<br> このように,A店をめぐり,生産者は自家消費の余裕分を出荷することで無理なく副収入を得る道が開け,流通者は集客の目玉を得ながら売れ残りのリスクを回避できる。消費者は農家が食べるのと同じ新鮮で安心な野菜を手軽に入手できる。このような,インショップを中心としたごく近距離間の「地産池消」の構図により,当地の農産物直売所は存立している。これには,工業地帯に位置し,混住化が進行している磐田の地域的条件が大きく関係している。他地域においても,一律横並びの整備ではなく,インショップ,独立店,道の駅など,その地域性に最も合致するような,柔軟な農産物流通の形態を探る議論が求められる。
著者
北村 歳治 佐藤 次高 店田 廣文 近藤 二郎 桜井 啓子 高橋 謙三 長谷川 奏 吉村 作治 山崎 芳男 及川 靖広 岡野 智彦 鴨川 明子 北村 歳治 保坂 修司 加納 貞彦 深見 奈緒子 鈴木 孝典
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本調査研究は、歴史的系譜と地域的特性を念頭に置き、科学技術と東南アジア・中東等に焦点を当て今日的な視点で取り組んできた。具体的には、イスラーム諸地域の研究者等と直接的に連携し、天文・陶器・医薬・建築等の分野で斬新な調査活動を進め、非イスラームとの相互交流から生まれ出た歴史的なイスラーム文化の保存・育成の研究に成果をもたらした。他方、ICT利用・医療サービス・金融等の今日的な課題に取り組むイスラーム諸地域の動きに関する調査分析も行なった。これらの成果は、早稲田大学、インドネシア国立イスラーム大学等で行われた計6回のシンポジウム等で今日のイスラーム問題の躍動する建設的な側面を明らかにできた。
著者
近藤 忠義
出版者
法政大学
巻号頁・発行日
1960

博士論文

1 0 0 0 OA 憲教類典

著者
近藤守重 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.[43],

1 0 0 0 OA 憲教類典

著者
近藤守重 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.[20],
著者
廣川 豊 近藤 哲理 太田 保世 金沢 修
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.940-946, 1995-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
21

誘発によらない自然発症時の過換気症候群 (HVS) の病態を解析する目的で, 過去11年間に当院を受診したHVS患者508名の病歴を検討し, さらに, 質問票を郵送して緩解期の症状と予後の調査を行った. 急性HVSは10歳代女性に多かったが, 5~85歳と幅広く分布していた. 主症状は呼吸困難やしびれが多く, 誘発試験の症状 (胸痛, 動悸等) と異なっていた. 誘因の多くは不安や悩み, 発熱, 嘔気・嘔吐で, 約20%の患者が不安神経症を併発していた. 約半数の症例は, 疾患の説明のみで症状の軽快を得ていた. 以上の結果は血液ガスを確認した群と臨床所見のみで診断した群で大きな差はなかった. 慢性HVSの頻度は約2%で, 中年女性に多かった. 急性・慢性のHVSの約半数で発作を反復しており, 約10%で反復期間は3年以上であった. 長期間急性発作を反復する症例では, 緩解期に空気飢餓感やため息を認めた. 以上より, HVSの診断における臨床所見の重要性を強調したい.