著者
菅沼 俊哉 松島 純一 酒井 昇
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.1531-1536, 1993-11-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
25

A five-year-old boy received treatment for ALL (acute lymphoblastic leukemia) for six months in the Pediatric Department of Hokkaido University Hospital.Following mild upper respiratory infection, aphtous stomatitis and dizziness, horizontal nystagmus was noted in the primary eye position and he was sent to the ENT clinic for neurootological examination.The findings of nystagmus varied from day to day and it was suggested that the brainstem and cerebellar vermis were damaged, but CT scan and magnetic resonance imaging (MRI) did not reveal any significant lesion. The symptoms were considered most likely due to herpetic encephalitis, therefore, a ten-day course of acyclovir 180 mg/day was initiated.Shortly after administration was begun, herpes simplex virus genomes were detected in the patient's cerebrospinal fluid (CSF) by polymerase chain reaction (PCR). This case, therefore, was finally diagnosed as herpes simplex encephalitis.Three months later, neurological examination showed that the child had almost returned to normal, and he was discharged.
著者
鈴木 真美子 酒井 博子 福田 吉治
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.247-255, 2019-11-20 (Released:2019-11-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的:医療機関の受診が必要であるにも関わらず,健診結果に基づく再検査,精密検査等を受けていない現状がある.そこで,本研究は,健診結果に基づく事業場労働者の医療機関受診につながる要因を明らかにし,受診率向上に必要な産業保健活動を検討することを目的とした.方法:東京都と埼玉県の1,000人規模以上の企業で働く労働者20才以上の男女を対象に横断的質問紙調査を実施した.これまでの定期健康診断で再検査,要精密検査,要治療の判定を受けたことがあると答えた453名(男性389名,女性64名)を対象とした.医療機関の受診の有無で2群に区分し,受診に関連する要因についてロジスティック回帰分析モデルを用いて検証した.結果:勤務年数10年以上に対して,勤務年数5年未満の医療機関受診に対するオッズ比は2.9(95%CI: 1.6-5.2)であった.同じく有意な関連が認められたものは,相談者がいることで,オッズ比は2.4(95%CI: 1.4–4.3),定期的受診経験があることで,オッズ比は1.8(95%CI: 1.2–2.7)であった.年齢,性別,雇用形態,1年間の残業,健康感,職場制度の利用,具体的相談者は有意な差を認めなかった.結論:本研究集団における健診結果に基づく医療機関受診につながる要因は,健康上の相談をできる人がいることや定期的受診経験があることであった.また,勤務年数5年未満の人ほど要受診判定を受けた場合,その結果に従い受診する傾向が明らかとなった.確実な受診に結びつけるためには,専門家による相談体制づくりを進めることや勤務年数の各層に応じた働きかけが必要である.
著者
ホルトイス L. B. 酒井 勝司
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.15-18, 1987
被引用文献数
1

この小論文は故酒井恒博士に捧げるものである。博士は日本甲殻類研究界での重鎮であり,そのカニの業績は他に類を見ないものである。また世界に先駆けて日本に甲殻研究学会を設立されたことは意味深い。ここでは博士が存命でおられたならば関心をもたれたであろうカニの命名上の問題を提起したい。コノハガニMaja(Huenia) proteusはドゥ・ハーン(1839)によってクモガニ科コノハガニ亜属に属する唯一の種として発表されたが,それ以後はこのコノハガニは属名Huenia DE HAAN1839の模式種とされている。しかし,コノハガニについてはそれより古い二つの有効名があり,属名の発表年月日は1839年ではなく1837とすべきものである。ドゥ・ハーンの日本動物誌の第23図版は第3分冊に含まれ,これが1837年に発表されたものであることはホルトイス・酒井(1970)の著書「シーボルトと日本動物誌」の中で明示した通りであるが,この第23図版第4-6図には2種のカニが記されている。すなわち第4図はMaja(Huenia) elongata,第5図はその変種,第6図はMaja(Huenia) heraldicaである。また,この2種の口器は別の第G図版にみられる。図G版は亜属Hueniaに関する記載(78,83,95,96頁)と同じく,1837年ではなくて1839年に発行されたものである。ドゥ・ハーンは1839年の記載の中で,1837年に発表したM.(H.) elongataとM.(H.) heraldicaはそれぞれ同種の♂と♀であると述べ,この2種をしりぞけ,その代りとしてM.(H.) proteusを使っている。その後コノハガニの種名はドゥ・ハーンに従ってproteusとして使用されているが,H.heraldicaとH.elongataに代えて単に新しい種名のproteusを使用するのは正当ではない。2つのより古い種名は図版と共に1931年以前に発表されたものであり,命名規約からして有効といえるからである(動物命名規約第3版12条b7)。すなわちこの2種はM.(H.) proteusに対して2年の優先権priorityをもつ。そこでelongataとheraldicaの名称のうちどちらの名称が有効性を持つかと云えば,命名規約上から最初の改訂者の原則に従うことになる。すなわち,改訂者は1837年以後これら2種を同時に扱った上で,どの種が他方の種に対して優先するのかを明確にしなくてはならないのである(国際命名規約第3版(1985)第24条b)。私の知るかぎりこのような指摘はこれまでに行なわれていない。ドゥ・ハーンは1839年に2種の名称を挙げたが両種を無効名とせず,しかも2種のどれに優先するかも述べていない。それ以後コノハガニが引用される場合古い2種の名称を無視するか,間違って無効名の同物異名であるHuenia proteusとして扱っているにすぎない。以上のことから,私は最初の改訂者としてコノハガニの学名についてMaja(Huenia) heraldica DE HAAN, 1837をMaja(Huenia) elongata DE HAAN, 1837に対して優先することを位置付けるものである。これまでコノハガニの学名はHuenia proteus(DE HAAN, 1839)とされてきたが,Huenia heraldica(DE HAAN, 1837)と訂正される。この種は応用科学の分野,漁業または一般の生物学者にも知名度の高い種ではないのでproteusという種名が無効でありheraldicaを使用するとしても国際命名規約に提議すべきものであるとは思われない。属名Hueniaはドゥ・ハーンの日本動物誌第23図版の出版年から1837年と決定される。また,ミアー(1839)がHuenia属の模式種としてHuenia proteusを挙げたことは無効となる。従って,私が初めてHueniaの模式種をMaja(Huenia) heraldica DE HAAN, 1837と確立することになる。
著者
酒井 勝司
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ : 日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
no.15, pp.13-30, 2003-08-20
被引用文献数
2

"Crabs of Japan" from the Expert Center for Taxonomic Identification (ETI), University of Amsterdam is going to be published from ETI. The information of this CD-ROM is based on "Crabs of Japan and the adjacent Sea by Tune Sakai (1976). The section of the true crabs is now extensively revised and extended by the extended carcinologist; Dr. Daniel Guinot, Museum national d' Histoire naturelle, Paris, Dr. Peter Davie, Queensland Museum, Brisbane, and the Dr. Michael Ttirkay, Forschungsinstitut Senckenberg, Frankfurt am Main. Some 1250 species of Brachyuran crabs from Japan and adjacent sea are recognized, and information on genera, families and etc is also provided. Herewith the Japanese common names of crabs are added for the Japanese users (http://www2.shikokuu.ac.jp/people/crabs/).
著者
酒井 正樹
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.26-32, 2012-01-31
参考文献数
8
被引用文献数
3

私は,ながらく岡山大学で教鞭をとり,退職後も現在特命教授として教育に従事している。しかし,それもそろそろ終わりになりつつある。それで,これまで自分がやってきた講義のなかで,学生からよく出た質問や学生が陥りやすい誤りなどについて,書き残しておきたいと思っていた。かって十数年前,私が本誌編集長をしていたとき,大学での講義について,指導方法や教材などを紹介してもらう欄を企画したことがあった。そういうものを復活してもらえないかと考えていた折も折,私たちの学会で教育の向上をはかるための議論がおこってきた。そこで,黒川編集長と相談のうえ,ここに書かせて頂くことになった。
著者
鈴木 信哉 中林 和彦 大河内 啓史 畑田 淳一 川口 真平 酒井 正雄 佐々木 徳久 伊藤 敦之
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.61-66, 1997-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
19

閉鎖環境の条件が厳しい潜水艦において感染性が低い結核患者の周囲の乗員に結核感染が疑われた例を経験した. 本症例は艦艇の環境と感染性及びその対策を考える上で貴重な症例と考えられたので, 考察を加えて報告した. 症例は35歳男性の潜水艦乗員. 定期健康診断の間接胸部X線で異常陰影を指摘され精査した. 咳嗽なく喀痰塗抹陰性であったが,胃液検査にて塗抹陽性であった. 定期外集団検診時のツベルクリン皮内反応 (ツ反) では強陽性者が, 発見2ヵ月のツ反では陽転者が発生源の周囲に多くみられた. 発生源と離れた場所に居住し接触があまりない乗員にも感染が疑われたので, 閉鎖循環方式の空調が関与した可能性も示唆された. 閉鎖環境における結核発生例に対しては環境の的確な把握が必要であり, 化学予防は積極的に行うべきで環境の除染には薬品による消毒よりも換気及び紫外線照射が有効であり, 艦艇には防疫対策として標準装備されることが推奨される.
著者
門岡 幸男 小川 哲弘 高野 義彦 守屋 智博 酒井 史彦 西平 順 宮崎 忠昭 土田 隆 佐藤 匡央
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.79-83, 2019 (Released:2019-04-23)
参考文献数
19

Lactobacillus gasseri SBT2055株 (LG2055) の摂取による消化管を介した保健機能に関する研究を行った。内臓脂肪蓄積抑制作用については, はじめに, LG2055を含む高脂肪飼料を摂取したラットで腸間膜脂肪の脂肪細胞の肥大化が抑制されることを見出した。さらに, この知見を基にヒト介入試験を実施し, 有効性探索, 用量設定および最終製品での確認という一連の試験において, LG2055の摂取による内臓脂肪蓄積抑制作用を確認した。免疫調節作用については, マウスにおける小腸免疫グロブリンA産生促進作用およびインフルエンザウイルス感染防御作用を確認し, さらに, ヒト介入試験においてインフルエンザワクチン特異的抗体価およびナチュラルキラー細胞活性の亢進を確かめた。以上の成果の活用例として, 内臓脂肪蓄積低減作用に関する知見に基づいた特定保健用食品の許可取得および機能性表示食品としての届出があげられ, 実際の商品への保健機能表示が可能となった。
著者
小野 譲司 酒井 麻衣子 神田 晴彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.6-18, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
26

サービス分野におけるカスタマイゼーションは,従来は人間が行っていたサービス活動をテクノロジーに代替する動きが進みつつある。人間による柔軟性とテクノロジーによる標準化のバランスをどう取るかは,現代のサービス設計における重要な課題である。本研究では,人間によるサービスとテクノロジーベースのサービスの経験が,顧客のサービス品質評価に与える影響について実証研究を行った。その結果,どちらのサービス経験を選択するかによって,顧客期待が品質評価に与える影響と,接客サービスが品質評価に与える影響が異なること,顧客の経験値の違いによって効果が異なることも明らかになった。最後にサービス・カスタマイゼーションに関する実務的示唆と今後の課題を示した。
著者
大上 研二 戎本 浩史 槇 大輔 酒井 昭博 飯島 宏章 山内 麻由
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.81-85, 2019 (Released:2020-06-10)
参考文献数
22

頭頸部癌の発がん因子として新たに注目されているヒト乳頭腫ウイルス(HPV)は,国内外でHPV癌の関連中咽頭癌の頻度は急増している.治療法にかかわらず予後良好であるため,TNM分類もHPV関連の有無で分けられている.本稿では外科的治療を中心に治療法の低侵襲化と予後について,現在進行中の観察試験や臨床試験を踏まえて概説する.
著者
海老田 大五朗 酒井 りさ子 嶋津 祐輝
出版者
新潟青陵学会
雑誌
新潟青陵学会誌 (ISSN:1883759X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.25-35, 2019-03

本研究の目的は、自己覚知を自己理解と同一視することによって生じる「実習教育の死角」を顕在化させることである。同時に、ソーシャルワーク実習教育において、実習生の気付きを言語化することの重要性を示す。本研究では2つの実習指導ケースを用いて、2つの考察をした。1つは「自己覚知」から「倫理的葛藤の解消」へと結びついたケースを記述した。もう1つは、「自己覚知」から、実践で共有される方法論の記述と結びついたケースを記述した。実践で共有される方法論を記述することの意義を述べ、実習生の自己覚知を促すことによって記述の精度を上げるべきポイントを特定し、「気付き」そのものを実習指導教育に生かす方法を例示した。
著者
酒井 憲二
雑誌
調布日本文化 = The Chofu's Japanese culture
巻号頁・発行日
vol.9, pp.六五-八三, 1999-03-25
著者
植松 光俊 新垣 盛宏 梶原 史恵 酒井 美園 大森 圭貢 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.201-206, 2005-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
12
被引用文献数
3

障害を持った人の運動, 動作分析や評価のプロフェッショナルである理学療法士(PT)にとって, 日常生活動作のあらゆる動作について自立度判定を的確にできる能力を有していることは必要最低限の資質というべきである。自立度判定というと「ある動作について自立, 監視, 介助レベルの動作方法を特定し, 各段階での介助度, 条件および適応環境条件(使用する介助支持用具や福祉機器等の提示)を評価する」とある。しかし, 今回のワークショップでは, 「歩行自立」に限定して明らかにするための判定要因, 基準および手順を明確にすることに拘ることにした。歩行自立度序説 1. 歩行自立度判定の必要性 1)なぜ自立判定が必要か? 自立している動作, 自立可能な方法, 自立できる生活範囲をできるだけ正確に早期に把握し, その情報を生活に密着したリハビリチームスタッフである看護, 介護職に提供し, 実際に「自立生活」を日常的に取り入れることができると, 患者さんが理学療法(以下, PT)場面だけで得られる動作量よりはるかにその動作機会は多くなり, そのことによる全身調整能力, 他の体力指標の改善効果は大きいといえる。