2 0 0 0 OA 褐色細胞腫

著者
竹原 浩介 酒井 英樹
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.175-179, 2014 (Released:2014-10-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2

褐色細胞腫はカテコールアミンを産生する神経内分泌腫瘍であり,高血圧を中心とした様々な臨床症状を呈する。手術にて治癒可能な疾患であるが,約10%が悪性であり,また病理組織学的な良悪性の鑑別が困難なため,良性と判断されても,術後に再発する症例もある。厚生労働省難治性疾患克服研究事業研究班により褐色細胞腫および悪性褐色細胞腫の診断基準および診療アルゴニズムが作成され,指針に準じた診療が一般的となっている。褐色細胞腫の術前には十分量のα遮断薬の投与が必要であり,術後24時間は低血圧や低血糖に注意する必要がある。また悪性の可能性を念頭においた長期の経過観察が必要である。悪性褐色細胞腫に関しては確立された有効な治療方法がなく,手術,CVD療法やMIBG照射を組み合わせた治療が施行されている。
著者
市川 康夫 平田 一成 新井 寿枝 酒井 正雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.801-806, 1959-11-15

Ⅰ.まえおき わが国の過去の脳炎流行を振返つてみると,まず1918年のいわゆるスペイン風邪の世界的流行に引続いて起つたEconomo型類似脳炎の多発が挙げられる。文献によると,それは,若年者に多く発病し,経過は緩慢または潜在性で,多くは嗜眠状を呈し,複視が認められ,脳膜症状は軽度であつた1)2)3)4)。それらは,「嗜眠性脳炎」の流行として記載されたが,その病原体に関しては不明のままである。また周知のように1948年には,東京を中心として日本脳炎の全国的流行がみられた5)。ところで日本脳炎とEconomo型脳炎との異同については,Economo型脳炎の病原が不明であり,その後この型の脳炎の流行をみないので,今日未解決のままである。しかしいずれにしても臨床的には両者の病像はかなり異つているとされている5)6)。すなわち流行期によつて多少の差はあるが,Economo型脳炎が成年者を侵すのに対して日本脳炎は小児と老人に好発し,経過は遙かに急激で,1週間前後の高熱期を有し,意識溷濁がより強く,譫妄と昏睡が認められる。またEconomo型脳炎と異つて眼症状は軽度で,複視はまれであつて,脳膜症状が比較的著明である。流行状態は,Economo型が小流行であるのに対し,日本脳炎はしばしば大流行を示す。以上がわが国の流行性脳炎のおもなものであるが,その他に地域的な日本脳炎の流行,季節はずれの日本脳炎の散発,ポリオヴィルスによる脳炎の発生,また冬季の脳炎の散発7)などが報告されている。ところが独逸でも最近インフルエンザ流行に一致して多発した脳炎の臨床報告8)があつたが,それはわれわれの経験に甚だ近いものであることは面白い。 さて,周知のように1957年の春から秋にかけてA57型インフルエンザの全国的流行があつた。この流行と時を同じくして脳炎の疑いのおかれる患者が多数発生したとみられるが,われわれはこの時期にかなり著明な精神症状を呈する患者を少なからず診察する機会をえた。これら患者の多くは,急性期にはインフルエンザと診断され内科的に治療されたにもかかわらず,月余にわたつて精神神経症状が治癒せず,当科を訪れるにいたつたものである。これら患者のある者では,長期間にわたつて,幻聴,幻視,妄想などが前景に出て,自閉的で寡言,顔貌は硬く,支離滅裂で一見精神分裂病を想わせるほどであつた。こうした極端な例はそれほど数多くはなかつたが,これらの患者とインフルエンザ流行との関連は,われわれのヴィルス学的追求が満足とは言えないながら,多くの示唆を含んでいた。われわれは,これらの経験を過去の流行性脳炎の臨床と比較しながら,二,三の考察を加えてここに報告する次第である。
著者
水谷 淳 酒井 裕規
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.173-180, 2019 (Released:2020-04-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

2015年3月の北陸新幹線延伸によって東京-金沢間が80分短縮されて2時間半となり、羽田-小松線・富山線の航空旅客数は両路線とも4割減となった。本稿は、北陸新幹線の金沢延伸の影響について、航空旅客属性と航空運賃の視点から考察した。その結果、属性に関しては、延伸後に観光客のシェアが増大した一方でビジネス客のシェアが減少したこと、運賃に関しては、延伸直後に富山線の運賃が大きく低下したものの、2年後には低下に歯止めがかかっていること、小松線では延伸直後には富山線ほどの大きな運賃低下はなかったものの、2年後もさらに低下が進んでいることが明らかとなった。
著者
横川 宗雄 吉村 裕之 金田 丞亮 鈴木 太郎 高相 豊太郎 吉田 貞利 門馬 良吉 酒井 章 寺畑 嘉朔 田崎 喜昭
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.516-522, 1963-03-28

The first case ; Male, 26 years old, employee. Shimizu city, Shizuoka prefecture. Chief complaints : stomachache, nausea, anorexia and slight fever since a few years ago. The general condition was rather good. The results of examinations of both urine and blood were almost normal. No helminth ova were found, but occult blood was positive in the fecal examination. Gastrectomy was carried out under the diagnosis of gastric ulcer. A cherry-sized and localized tumor was found at Pylorus of the stomach. Eosinophilic abscess surrounded with eosinophilic granulation in submucosa of the stomach, and two or three transverse sections of the parasite in the center of this abscess were observed histophathologically. The worm sections were examined morphologically. From the morphological characters of the cuticular spines, intestine and the other organs of this parasite, it was identified as the larva of 4-5 mm in length of Gnathostoma spinigerum Owen, 1836. The second case ; Male, 31 years old, employee. Kanazawa city, Ishikawa prefecture. The occult blood of gastric juice and feees were strong positive, but the results of examinetions of urine and pepipheral blood were normal and no helminth ova were found in feces. Gastrectomy was carried out under the diagnosis of gastric ulcer, like as the first case. A grapesized tumor was found in the ventral site of the greater curvature of the stomach. Histopathological finding was eosinophilic granulation with two transverse sections of the worm. Morphological observations of the cuticule, oesophagus, lateral lines, intestine on the transverse sections of the worm were carried out, and the worm was identified as the immature worm of 30〜35 mm in length of Ascaris lumbricoides.
著者
大野 勉 小田 隆晴 田中 栄一 酒井 安子
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.451-455, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1

子宮脱や子宮下垂は, 骨盤底筋群のが筋力低下や各靱帯組織の弛緩延長が原因と言われているが, これに対する治療法は, ほとんどが手術療法である。保存的治療法としては, ペッサリーリングと漢方薬が知られているが, 漢方薬の中では, 升堤作用を有する補中益気湯が主に使われている。今回38例の子宮脱・子宮下垂に対して補中益気湯を投与しその効果をみた。自覚症状が改善したのは39%で, 改善までの期間は2週間から4ヵ目であった。そのうち72%は膣内1/2ないし腔内3/4下降例であった。また40%が内服継続中であり, 53%が途中で来院を中止していた。自覚症状が悪化したのは16%で, このうち83%が手術し, 残りは来院を中止している。残り44%は不変例であった。他覚所見に対してはほとんどが不変であった。主に子宮下垂に対しては補中益気湯は有用であると思われた。
著者
木下 奈緒子 大月 友 酒井 美枝 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.225-236, 2012-09-30 (Released:2019-04-06)
参考文献数
11

本研究の目的は、木下ら(2012)の実験手続きに新たな刺激を加え、複数の範例を用いた分化強化の手続きが、刺激の物理的特徴にもとづく刺激機能の変換に対する文脈制御の般化に与える影響を再検討することであった。9名の大学生を対象として、4つのメンバー(線形、円形、三角形、四角形といった異なる物理的特徴を有する図形で構成される)からなる3種類の刺激クラスを形成した。そして、複数の範例を用いて、特定の物理的特徴をもつ刺激のもとで、刺激機能の変換にもとづく反応を分化強化した。その結果、分析対象となった7名の実験参加者に、刺激の物理的特徴にもとづく刺激機能の変換に対する文脈制御が示された。その後、新奇刺激を用いて新たな3種類の等価クラスを形成した。その結果、4名に文脈制御の般化が示され、先行研究と同様に、複数の範例を用いた訓練によって、刺激の物理的特徴にもとづく文脈制御の般化が示されることが確認された。
著者
原田 秀樹 酒井 紀行 松山 普一 飯島 正広 白間 英樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第33回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.195, 2022 (Released:2022-11-30)

太陽光発電システムは、再生可能エネルギーの旗手として2010年以降急速に普及し、さらに最近ではカーボンニュートラル政策が後押しとなり、導入に拍車がかかっている。一方でその保証年数である20年を過ぎる2030年頃から廃棄モジュールが大量発生することに対する懸念が社会問題となっている。それに対し我々はモジュール内の重量比で大部分を占めるガラスに対するマテリアルリサイクルの研究を行った。モジュールはガラスと樹脂および太陽電池セルが密着積層された構造となっており、ガラスを割らずにモジュールから回収する「パネルセパレータ」を開発した。またガラスに付着する樹脂残渣量をリサイクル可能なレベルで抑制し、さらにそれを維持する研究を行った。一方、回収したガラスの組成を分析し、含有する元素の把握とそれらに適合する用途の検討を行い、水平リサイクル用途、リユース用途の開拓を行った。
著者
村井 邦彦 酒井 大輔 中村 嘉彦 中井 知子 鈴木 英雄 五十嵐 孝 竹内 護 村上 孝 持田 讓治
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-8, 2012 (Released:2012-03-07)
参考文献数
49

椎間板ヘルニアに伴う神経痛の病態には,神経根の炎症機序が関与している.その一因に,椎間板髄核が自己の組織として認識されない隔絶抗原であるので,髄核の脱出に伴い自己免疫性炎症が惹起されることが考えられる.一部の髄核細胞の細胞表面には,眼房細胞などの隔絶抗原にみられる膜タンパクFasリガンドが存在し,Fas陽性の免疫細胞のアポトーシスが惹起され,自己免疫反応は抑制されるが,二次的に好中球の浸潤が惹起され,炎症を来す可能性がある.近年,われわれはマクロファージやナチュラルキラー細胞などの細胞免疫反応が,椎間板ヘルニアに伴う痛みの発現に関与することを示した.Fasリガンドや,細胞免疫の初期に発現するToll 様受容体に着目すれば,坐骨神経痛の新たな治療法が開発できる可能性がある.
著者
酒井 由紀子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.71-85, 2014-09-05 (Released:2017-10-31)

大学図書館の機能・役割の高度化・多様化に伴い,専門性を有した大学図書館員の人材確保はより重要なものとなっている。本稿では,そのために必要な人材養成・育成の現状と強化の取組みを幅広く概観し,大学図書館員の専門職制度を目指して今後とるべき関係者の方策を探る。
著者
酒井 英樹
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.1554-1560, 2019 (Released:2019-11-25)
参考文献数
24

平面2自由度運動とロール運動から成る3自由度モデルを用いて,速度を変化させたときの根軌跡を考察した.そのパラメータスタディの結果,2つの根軌跡が重根になる場合があることを指摘した.重根が生じる車速よりも低速側では,ヨー共振周波数は,平面2自由度モデルのそれよりも30%程度大きくなった.そこで,この車速域のヨー共振周波数の近似式を提案した.
著者
酒井 麻依子
出版者
日本メルロ=ポンティ・サークル
雑誌
メルロ=ポンティ研究 (ISSN:18845479)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-15, 2015-09-27 (Released:2015-09-26)
参考文献数
21

Entre 1951 et 1952 à la Sorbonne, Merleau-Ponty donnait un cours intitulé « L’expérience d’autrui » dans lequel on trouve le croisement de deux thèmes très importants, Autrui et L’expression. Son argumentation sur autrui nous permet de discuter l’individualité d’autrui, qui peut être l’obstacle pour celui qui se fonde sur la coexistence originelle et corporelle, dans le cadre merleau-pontien.Dans l’argumentation de « l’experience d’autrui », il est dit qu’autrui apparaît en tant que « sens » de « l’expression de soi ». Ceci est l’expression supérieure par les expressions variées en moyens (par exemple, le langage, la création, la conduite etc.) ; le sujet de l’expression y transparaît comme sens vivant. Examinée telle expression, la « signification oblique » fonctionne. Cette signification, qui s’inspire de la théorie linguistique, consiste en la configuration des signes et au « dépassement » du signe vers le sens.Mais en même temps que son apparition, autrui « peut disparaître et ne laisser que son rôle ». Pour une part, l’expressivité d’autrui s’affaiblie et est capturée dans la signification déjà faite. D’autre part, autrui est englouti par le stéréotype qui rend possible son expression même. C’est pourquoi certains hommes nous apparaissent comme individu et d’autres comme humain d'une certaine catégorie.
著者
酒井 明子 渥美 公秀
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.74-88, 2020 (Released:2020-03-10)
参考文献数
37
被引用文献数
3 1

本研究は,災害という大きな困難に直面した被災者が新たな安定状態を回復する過程に着目した質的研究である。災害時の心理的ストレスは,単線的な心理的回復過程が暗黙のうちに前提とされている。しかし,今日の大規模な災害による被害の甚大さや避難所・応急仮設住宅の設置期間の長期化等は,大切な家族や住み慣れた家を失い生きる意欲を失った人々や自力で生活展望を考えることが困難な高齢者の孤立死や自殺,閉じこもり問題を加速化させており,心理的回復過程も長期化し複雑さを増していると考える。そこで,本研究では,東日本大震災後7年間の心理的回復過程を被災者の語りから分析した。その結果,被災者の心理的変化の特徴は6つのパターンに分類された。また,心理的回復過程には,潜在的な要因及びストレスを慢性化させる要因が影響していた。そして,個々の被災者の心理的変化ラインの時間軸を重ね合わせた結果,1年目,4年目,7年目の回復過程には調査回によって異なる特徴が見出せた。これらの結果を踏まえ,慢性化する可能性のあるストレスを抱えた被災者の長期的な心理的変化と影響要因について論じた。
著者
前川 要 天野 哲也 酒井 英男 千田 嘉博 斉藤 利男 玉井 哲雄 深澤 百合子 辻 誠一郎 MORRIS Martin
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、ロシア連邦サハリン州を中心として、北東日本海域における古代から中世の交流の実態を考古学的に明らかにすることを目的とした。そのために中世陶器の流通の問題、北東アジアにおける在地土器生産の問題、北海道の中世チャシや東北北部の防御性集落、ロシア沿海州の土城について考古学的な調査を進めた。また関連分野では、建築史学、植生史、言語学、文献史学、炭素同位体年代測定法の各研究者をそろえ、学際的な研究組織を構成した。そして年2回の研究会議を開催し、研究成果の発表と検討を行った。2001年度より3年間にわたって、サハリン白主土城の測量調査および発掘調査を行った。初年度は測量調査を中心に行い、2・3年目に本格的な発掘調査を行った。その結果、土塁と堀に関して、版築を行っていること、金後半から元にかけて使われた1尺=31.6cmの基準尺度が使用されていたことが判明した。これは、在地勢力によって構築されたとは考え難く、大陸からの土木・設計技術である可能性が高いことが明らかとなった。また土城内部から出土したパクロフカ陶器片から成立時期を9〜11世紀頃の年代が想定できるが、版築技術などからは、土城内部の利用時期と土塁・堀の構築時期には、時間差があると考えられた。調査研究の成果を公表するために、最終年度に2月26・27日に北海道大学学術交流会館において北東アジア国際シンポジウムを開催した。シンポジウムは、1・白主土城の諸問題、2・北東アジアの古代から中世の土器様相、3・北東アジアの流通の諸様相の三部構成で、北東アジアにおける古代から中世にかけての交流の実態について発表が行われた。考古学だけではなく、文献史学・建築史学・自然科学など関連諸分野の研究報告が行われ、また国外からも7名の研究者を招聘した。白主土城の歴史的な位置づけのほか、北東アジアにおける土器様相、交易の様相について検討された。
著者
酒井 麻千子
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2012-EIP-58, no.7, pp.1-6, 2012-11-09

本稿では,著作物としていかなる性質の製作物を著作権で保護するのか,という点につき重要な要素である 「創作性」 の解釈につき,日本及びドイツにおける現在の議論を参照する.合わせて旧著作権法下における映画・写真の保護のあり方を検討することで,これらの問題に関する示唆を求めたい.
著者
酒井 良忠
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

RA滑膜細胞ではミトコンドリア生合成が低下しており、その改善はRA滑膜細胞のアポトーシスを亢進させ、細胞増殖能およびMMP3/RANKL分泌を低下させた。CIAマウスへのAICARの投与は、手足の厚さ、関節炎スコアを有意に低下させ、滑膜炎症細胞浸潤、滑膜増殖、軟骨変性及び破骨細胞増勢を抑制し、骨破壊の抑制とともに、関節破壊抑制の効果をin vivoでも証明した。RA滑膜でのミトコンドリア低下は、炎症時のミトコンドリアのアポトーシスを低下させ、滑膜細胞の増殖を亢進させ、関節破壊の引き金となっている可能性があり、ミトコンドリアをターゲットにした治療の可能性が示唆された。
著者
柳井 徳磨 酒井 洋樹 後藤 俊二 村田 浩一 柵木 利昭
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.45-51, 2002 (Released:2018-05-04)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

近年,動物園では飼育技術の向上に伴い,動物の長期生存が可能になり様々な腫瘍性病変に遭遇する機会が増えた。これらの腫瘍性病変を検索し,情報を蓄積することは,ヒトの同様な腫瘍の発生原因を解明するうえで有用である。我々は,ヒト腫瘍との比較のために,ヒトに類縁なサル類の様々な腫瘍,アジア産クマ類の胆嚢癌に着目して症例を蓄積し,データベース化を試みている。以下に概要を紹介する。1) サル類の腫瘍:サル類における腫瘍発生の報告は極めて少ない。動物園で飼育した各種のサル約600例を検索して,13例に腫瘍性病変が認められた。神経系では,カニクイザルの大脳に星状膠細胞腫,消化器系では,ニホンザルの下顎にエナメル上皮歯芽腫,ブラッザグエノンに胃癌,シロテテナガザルおよびボウシラングールの大腸に腺癌が認められた。内分泌系では,ワタボウシタマリンの副腎に骨髄脂肪腫,オオガラゴの膵臓に内分泌腺癌が認められた。造血系では,ニホンザル2例の脾臓にリンパ腫,ハナジログエノンのリンパ節にリンパ腫が認められた。その他,ムーアモンキーの卵巣に顆粒膜細胞腫,ニホンザルの皮膚に基底細胞腫が認められた。これらサルの腫瘍の形態学的特徴は,ヒトの同種のものと酷似していた。2) クマ類の胆嚢癌:動物園で飼育されているナマケグマとマレーグマに,胆嚢癌が好発することが知られている。7例のクマ類に発生した胆嚢癌を検索し,その病理学的特徴を調べた。組織学的には管状腺癌の浸潤と線維化が高度である。クマ類の胆嚢癌はヒト胆嚢癌の有用なモデルとなりうると考える。