著者
酒井 正樹
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.76-86, 2012-04-30 (Released:2012-10-17)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

今回は細胞の興奮をとりあげる。興奮とは,生理学では細胞が活動電位を発生することと同義である。生きている細胞は,すべて静止膜電位をもっているが,体をつくる多くの組織細胞,たとえば肝細胞や上皮細胞などは活動電位を発生しない。一方,神経細胞(ニューロン)や筋細胞などは活動電位を発生する。活動電位とは,細胞内電位が一定の値よりも浅くなったとき,それに続く一過性の大きな電位変化のことである。活動電位発生のしくみは,静止電位のしくみを理解しておれば,さほど難しいものではない。しかし,学生には静止電位のときと同じく,知識不足や誤解があり,また誤ったイメージをもっている者がいる。それらは,高校の「生物」によるところが大きく,ぜひ正しておかねばならない。では授業をはじめよう。5つのコラムは,必要のない方にはとばしていただいて結構である。
著者
酒井 利信
出版者
Japanese Academy of Budo
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.36-44, 1990

The thought that recognizes swords to be transcendent existed in the ancient times, and the swords had the character of ceremonial outfit. In the Middle Ages, common swords that were used as a practical weapon, also had this thought.<br>The purpose of this study is to consider a view of swords in the Middle Ages from &ldquo;GUNKIMONOGATARI&rdquo;, and to make it clear what existed in the bottom of people's consciousness that formed this view, and what is features of this view.<br>The results can be summarized as follows.<br>1. Image of the myth, that existed in the bottom of people's consciousness, formed a view of swords in the Middle Ages.<br>2. In the Middle Ages, swords themselves suggested the metaphorical God that existed behind.
著者
谷埜 予士次 福島 綾子 酒井 英謙 高崎 恭輔 米田 浩久 鈴木 俊明
出版者
関西医療大学
雑誌
関西医療大学紀要 (ISSN:18819184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.32-37, 2008

レッグエクステンションによって、膝伸筋群を効率よく強化するための基礎的研究として、骨盤肢位の変化と大腿四頭筋の筋活動について検討した。健常成人10名を対象とし、膝60°屈曲位での膝伸展を最大の30%強度で行わせた。骨盤肢位は「骨盤前傾位」、「骨盤中間位」、「骨盤軽度後傾位」、「骨盤最大後傾位」の4種類に規定し、各々の骨盤肢位を維持した状態で膝伸展保持を行わせた。そして、伸展トルク発揮中に大腿直筋(RF)、外側広筋(VL)、内側広筋斜走線維(VMO)から筋電図を記録した。VMOの筋電図積分値(iEMG)は、「骨盤前傾位」で、他の3種類の骨盤肢位のときと比較して有意な増大が認められた。また、VMOのiEMGは「骨盤最大後傾位」と比較して「骨盤中間位」でも有意に増大した。RF、VLのiEMGについては、骨盤肢位の変化に関わらず有意な差を認めなかった。本結果より、臨床への示唆として、膝60。屈曲位でのレッグエクステンションにおいて、VMOの筋活動を優位にしたい場合は骨盤を後傾位にすることなく、可及的に腰椎の生理的前弯に伴った骨盤の肢位にて、レッグエクステンションを行うことを推奨する。
著者
倉本 惠生 酒井 敦 酒井 武 田淵 隆一
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.107-111, 2000-03-20 (Released:2018-01-16)
被引用文献数
1

四国西南部,四万十川流域において,暖温帯性針広混交林のリターフォールの季節変化と年間リターフォール量を調べた。1997年12月から1998年11月までのリターフォール量には明瞭な季節変化がみられ,1月,5月,および10-11月にピークがみられた。組成別にみると,広葉では,5月と9月に落下が集中し,枝と樹皮は10月の集中落下と1月の小ピークが観察された。その他の細片の落下は10-11月に激増しており,そのほとんどが針葉であった。年間リターフォール量は,3.94ton・ha^<-1>であり,うち33.5%が広葉で占められていた。また, 16.9, 6.0および43.6%は,それぞれ,枝,樹皮,および,その他の細片で占められていた。広葉のリターフォール量は,尾根部より斜面部で多く,針葉では逆に,尾根部で斜面部よりも多かった。これらの違いは,地形に対応した上木樹種組成の違いを反映していると考えられる。
著者
園山 繁樹 下山 真衣 濱口 佳和 松下 浩之 江口 めぐみ 酒井 貴庸 関口 雄一 奥村 真衣子 趙 成河
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究1「幼・小・中学校への質問紙調査」を平成28年度に実施し、結果の概要を平成29年9月開催の日本特殊教育学会第55回大会において発表した。結果の詳細については学術雑誌に投稿中である。選択性緘黙児の在籍率と学校での困難状況を明らかにした。研究2「選択性緘黙児童生徒の事例研究」を平成28年度に引き続き、研究代表者と研究分担者が教育相談室において実施し、2つの事例研究(中学1年、及び幼稚園年少)が「筑波大学発達臨床心理学研究」第29巻に掲載された。他の1事例研究(小学1年)については、日本特殊教育学会第55回大会において発表した。3事例とも刺激フェイディング法を中核としつつ、各事例の状態に応じて支援方法を工夫することで、一定の効果がもたらされた。研究3「選択性緘黙経験者に対する質問紙調査・面接調査」を実施し、データを収集し、現在分析中である。また関係する調査研究の結果をまとめ、「障害科学研究」第42巻に掲載された。研究4「先進的実践・研究の実地調査のまとめ」については、平成28年度に実施したカナダ・McMaster大学への訪問調査の結果をまとめ、「山梨障害児教育学研究紀要」第12号に掲載された。年長者に対する認知行動療法による支援、並びに、広範な地域における専門的支援の在り方をまとめた。その他、有病率に関する内外の先行研究をレビューし、「障害科学研究」第42巻に掲載された。先行研究における有病率は0.02~1.89%の範囲にあった。また、大学生における選択性緘黙への認識に関する調査を行い、「立正大学臨床心理学研究」第16巻に掲載された。
著者
酒井 貴広
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、高知県西部の幡多地方を中心に、県下に今なお存在する民俗事象「犬神」について考察した。高知県下の「犬神」は、歴史的に様々な「強制力」からの働きかけを受け、今日では特異な変容を遂げている。さらに、戦後の高知県における「犬神」は、学術研究・生活世界・フィクション作品の三者の間で結び付き、時に相互作用を発生させながら今日の変容に至ったと結論付けられる。
著者
村上 恵 吹山 遥香 岩井 律子 酒井 真奈未 吉良 ひとみ MURAKAMI Megumi HUKIYAMA Haruka IWAI Ritsuko SAKAI Manami KIRA Hitomi
出版者
京都
雑誌
同志社女子大学生活科学 = DWCLA human life and science (ISSN:13451391)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.30-35, 2020-02-20

The purpose of this study was to investigate the effects of water hardness on the physical properties of boiled beef and to clarify whether hard water is suitable for stewed dishes. Using sensory evaluation, we found that beef boiled in hard water(Ca : 300 mg/L)was evaluated more highly than beef boiled in soft water(Ca : 50 mg/L); this was true of both the odor and taste of the beef.When beef was boiled in hard water, the protein on the surface of the beef rapidly solidified, preventing the release of components from the inside even when heated for a long time.These results suggest that hard water is more suitable for beef stew than soft water.
著者
酒井 武則 古川 慎哉 三宅 映己 上田 晃久 小西 一郎 横田 智行 阿部 雅則 日浅 陽一 松浦 文三 恩地 森一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.301-303, 2009-04-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
9

症例は57歳,女性.主訴は口渇.1995(平成7)年より高血圧,高脂血症で外来通院中.2002(平成14)年10月の健診でFPG 220 mg/dlを指摘され,精査目的で受診した.普段から毎朝4単位程度の果物を摂取していたが,加えてみかんを10個から15個程度連日摂取していた.外来受診時には空腹時血糖値が198 mg/dlであったが,尿中ケトン体は陽性で,ケトーシスを伴った2型糖尿病と診断した.果物の大量摂取がケトーシスを伴う糖尿病の原因となった報告は極めて少ない.みかんはショ糖が多いことや水分の含有量が多いなどの特徴があるため,ソフトドリンクケトーシスと類似した機序でケトーシスを呈したものと考えられる.果物過剰摂取によって発症したケトーシスを合併した2型糖尿病の特徴を明らかにすることは非常に重要であると考えて報告する.
著者
酒井 啓子
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.189, pp.189_17-189_32, 2017-10-23 (Released:2018-12-19)
参考文献数
71

In order to analyse contemporary global crises, it is necessary for scholars of International Relations and Area Studies to overcome two limitations: Area Studies’ tendency to focus only on the substance of certain states or areas and the state-centric understanding of International Relations. Contemporary conflicts and faultlines that intermingle and interlock from the local level to the global level cannot be explained simply by unilineal causal relations among the existing actors but rather are complicated by their reciprocal interaction. In order to grasp the widespread networks of co-relationship among various actors, a new analytical framework should be introduced which frames current affairs as the product of a web of interconnections, and as a result of the transformation of those relationships, rather than on the actors’ essential qualities.As a case study of the above new framework, this paper analyses sectarian “faultlines” in post-war Iraq. Since 2003, violent clashes have occurred in Iraq, which Western media and policy-makers considered to be “sectarian conflicts.” As most of the Western policy-makers assume an essentialist understanding of sectarian relations in Iraq, they consider the sectarian factor as an explanatory and independent valuable. However, in order to propose an alternative approach to the perception of sectarian groups as cohesive actors, this paper avoids substantial “sectarian factors” for explanations of conflict in post-2003 Iraq, and focuses instead on the transformation of the various kinds of relationships that led to political and social strife. It sees how sectarian factors emerge as a result of mobilisation of rhetoric and legitimisation of fighting parties.This paper analyses media narratives in Iraq and surrounding states. It discloses that pro-government Iraqi media and Iranian media consider IS as inhuman terrorists while Arab and Turkish media as a reflection of anti-government ideology and sentiments in Iraqi society. In the regional power struggle between Iran, Saudi Arabia and Turkey, each media, domestic or regional, focuses on the victimhood of their side, and a sectarian narrative further legitimatises the appeal of the victims for their rights. For each side it is not “us” but “others” that discriminate us and exclude us from the Iraqi nation or from the religion of Islam; each side uses sectarian terms to demonise the others, with each insisting that it is “us” who pursue the unity of the community. This paper concludes that the conflicts in post-war Iraq are caused by the competition among the fighting actors over the right to claim the injustice of marginalisation, which often relies on sectarian legitimisation.
著者
末武 康弘[訳] 木村 喜美代[訳] 酒井 茂樹[訳] 小田 友理恵[訳] 大迫 久美恵[訳] 宮尾 一憲[訳] 宮田 はる子[訳] 瀬戸 恵理[訳] 吉森 丹衣子[訳]
出版者
法政大学現代福祉学部現代福祉研究編集委員会
雑誌
現代福祉研究 = THE BULLETIN OF THE FACULTY OF SOCIAL POLICY AND ADMINISTRATION : Reviewing Research and Practice for Human and Social Well-being : GENDAIFUKUSHI KENKYU (ISSN:13463349)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.81-100, 2019-03-01

本稿は、Thinking Beyond Patterns: Body, Language, and Situation. (Gendlin, 1991) の日本語訳を試みるものである。原著については、The Presence of Feeling in Thought. (Ouden & Moen, 1991, New York: Peter Lang) の中に収録されていたジェンドリン執筆の同タイトルの章が抜粋され、The International Focusing Instituteより本の形で頒布されている。今回の訳出のテキストとして用いたのは、このThe International Focusing Instituteから頒布されている版である。心理臨床家としても哲学者としても名高いジェンドリン(1926~2017)は、2017年5月1日に90歳で亡くなったが、その哲学的な業績は多くの人に注目されながらも、まだ十分な解明が行われていない。私たちが訳出を試みる Thinking Beyond Patterns: Body, Language, and Situation. は、彼の哲学における初期の主著 Experiencing and the Creation of Meaning. (Gendllin, 1962/1997) と後期の代表作 A Process Model. (Gendlin, 1997/2018, この2冊はいずれもEvanston: Northwestern University Pressより新装版が出版されている) の中間に執筆された、これらに並ぶ重要な著作であり、特に彼が開発した理論構築法TAE (thinking at the edge) の哲学的な基礎を形成していると考えられるものである。A、Bのセクションと全11チャプター、計131頁(pp.21~151)からなる原著のうち、本稿ではセクションAのチャプターA-1の中の1~7節(pp.21~32)を訳出した。翻訳の作業は、法政大学大学院人間社会研究科末武研究室の博士後期課程ゼミの中で行った。初訳の担当を決め、その訳文をゼミにおいて全員で検討した。今回の初訳の担当者は、木村喜美代(1節、2節、3節)、酒井茂樹(4節)、小田友理恵(5節、6節)、大迫久美恵(7節)である。