著者
伊藤 大幸 浜田 恵 村山 恭朗 髙柳 伸哉 野村 和代 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.451-465, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
37
被引用文献数
5 9

クラスサイズ(学級の人数)が学業成績および情緒的・行動的問題に及ぼす影響について,要因の交絡とデータの階層性という2つの方法論的問題に対処した上で検証した。第1に,学年ごとの人数によってのみクラスサイズが決定されている学校を調査対象とする自然実験デザインにより,学校の裁量に起因する要因の交絡や逆方向の影響の発生を防いだ。第2に,マルチレベルモデルの一種である交差分類(cross-classified)モデルを用いて,データの特殊な階層性を適切にモデル化した。第3に,学校内中心化によって学校間変動を除外することで,クラスサイズの純粋な学校内効果を検証するとともに,学校規模との交絡を回避した。9回の縦断調査で得られた小学4年生から中学3年生のデータ(11,702名,のべ45,694名,1,308クラス)に基づく分析の結果,クラスサイズの拡大は,(a)学業成績を低下させること,(b)教師からのサポートを減少させること,(c)友人からのサポートや向社会的行動の減少をもたらすこと,(d)抑うつを高めることが示された。こうした影響の広さから,クラスサイズは学級運営上,重大な意味を持つ変数であることが示された。
著者
佐川 尚子 鶴谷 悠也 野村 和至 奥山 朋子 近藤 真衣 佐田 晶 宮尾 益理子 水野 有三
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.581-585, 2014-11-25 (Released:2015-02-26)
参考文献数
14
被引用文献数
8 10

症例は83歳男性.29年来の2型糖尿病で当院通院中であり,グリメピリド0.5 mg内服にてHbA1c 6.0%前後,腎症1期で推移し,入院7日前の採血結果では,血清Cre 0.8 mg/dl(eGFR 69.67 ml/分/1.73 m2)であった.入院5日前に右眼瞼および結膜の炎症にて近医眼科を受診し,帯状疱疹が疑われ,バラシクロビル3,000 mgが処方され,頭痛が出現したため2日前にロキソプロフェン180 mgが処方された.入院前日より,構音障害,徘徊,食欲不振が出現し,Japan Coma Scale II-20程度の意識障害が進行したため2013年2月に入院となった.入院時,血清Cre 5.11 mg/dl(eGFR 9.16 ml/分/1.73 m2)と腎機能障害の進展を認め,頭部MRIや髄液検査では意識障害の原因となる有意な所見を認めなかった.多彩な中枢神経症状や内服歴から,バラシクロビルによるアシクロビル脳症を発症したと考え,血液透析を導入し,速やかな意識障害の改善を認めた.入院時の血中アシクロビル濃度が9.25 μg/mlと高値だった.アシクロビル脳症は腎機能障害者で発症することが多いが,高齢者では腎機能障害の指摘のなかった患者に発症した報告もある.バラシクロビルは帯状疱疹など高齢者で使用されることが少なくない薬剤であるが,それ自体により腎機能障害を引き起こし,中毒域まで血中濃度が上昇する危険があるため,高齢者に投与する際には十分な注意が必要である.
著者
野村 和之 望月 貴子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.1-15, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
29

点数至上主義の競争文化で学歴が社会的威信に直結する香港では,学校が強い影響力を持ち,学校での競争で優位に立てない青少年は抑圧や劣等感に晒される。本稿はエスノグラフィーの手法で香港人青少年の日本語学習を社会文化的文脈に絡めて分析し,青少年学習者にとって,日本語学習が学校での抑圧から逃れるための「心の拠り所」 (safe house) として機能していることを明らかにする。香港において日本語は大学入学資格試験の選択科目になるなど十分な威信を持ち,学校内外での日本語学習は青少年が学校からの抑圧への「対抗的アイデンティティ」 (subversive identity) を構築する基盤となっている。その反面,心の拠り所となるはずの日本語学習も香港の競争文化と無縁ではない。香港で広く普及するSNS を媒介した青少年学習者同士の繋がりの中にも,言語能力・文化的知識・新情報の入手速度などをめぐり,学校での競争と共通した優越感と劣等感のせめぎ合いが存在している。
著者
野村 和孝 嶋田 洋徳 神村 栄一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.121-131, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
30

わが国の司法・犯罪分野・嗜癖問題の認知行動療法(CBT)の実践として、2017年に創設された公認心理師がその職責を果たすためには、CBTの実践を精査し今後の課題を明らかにすることが必要である。本稿ではわが国における司法・犯罪分野の心理に関する支援を要する者の特徴と支援の枠組みを網羅的に概観し、CBTの実践における課題を検討した。そこで、プロセス指標の評価、グループワークの展開方法、抵抗や否認への対応、認知的介入、レスポンデント条件づけ、および施設内処遇と社会内処遇との連携に基づく介入の六つについて、知見を蓄積していくことが提案された。いずれの課題についても、司法・犯罪分野・嗜癖問題における支援効果を高めるために、個人と環境の相互作用の観点を持つCBTの理解の枠組みで取り組み知見を蓄積していくことが期待される。
著者
田中 佑樹 嶋田 洋徳 岡島 義 石井 美穂 野村 和孝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-021, (Released:2021-06-17)
参考文献数
33

本研究においては、ユーザーからの入力データに基づく自動化された個別フィードバックによって、ストレッサーに応じたコーピングの実行と睡眠の質の改善を促すストレスマネジメントのためのスマートフォンアプリケーションを開発し、労働者を対象としてその有効性を検討することを目的とした。効果検証は、コーピングレパートリー、睡眠の質、心理的ストレス反応を指標として、アプリケーション群、ワークシート群、個別面接群の3群における介入前後の比較が行われた。計63名分のデータを分析した結果、コーピングレパートリーおよび心理的ストレス反応には、アプリケーション群とほかの2群の間に有意な効果の差異は見られなかったものの、睡眠の質は、むしろ個別面接群のみにおいて有意な改善が認められた。したがって、開発されたスマートフォンアプリケーションのコンテンツには改良の余地が残されていることが示唆され、今後の展望に関して考察された。
著者
野村 和孝 山本 哲也 林 響子 津村 秀樹 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.143-155, 2011-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、性加害行為経験者を対象とした認知行動療法的治療プログラムを構成する心理社会的要因が、性加害行為抑止効果に及ぼす影響についてメタ分析を用いた検討を行うことであった。性加害行為抑止を目的とした認知行動療法的治療プログラムを心理社会的要因の構成に基づき分類したところ、セルフ・マネジメントの有無に基づく分類がなされた。セルフ・マネジメントの有無が性加害行為抑止に及ぼす影響についてメタ分析を行った結果、性的嗜好、歪んだ態度、社会感情的機能、リラプス・プリベンションから構成される治療プログラムの性加害行為抑止効果が確認された一方で、ストレスマネジメントなどのセルフ・マネジメントの向上を目的としたアプローチの手続き上の工夫の必要性が示唆された。
著者
増田 賢嗣 奥 宏海 野村 和晴 照屋 和久 田中 秀樹
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
no.2, pp.99-104, 2010 (Released:2011-07-26)

サメ卵主体液状飼料の開発と改良はシラスウナギまでの飼育を可能とし、研究の焦点はシラスウナギの大量生産法の確立に移っている。そのためには、大量生産への応用が困難な現行の給餌法を改良する必要があり、特に中層で給餌できる方法の開発が求められている。飼料が飼育水全体に拡散したコロイド型飼料はこの要請に応えられる可能性がある。本研究では、コロイド型飼料のモデルである海水希釈牛乳で満たされた水槽中では、牛乳が一定濃度以上で、十分な摂餌時間があればウナギ仔魚は摂餌でき、また一定期間生存できることを明らかにした。
著者
野村 和博
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア (ISSN:18815707)
巻号頁・発行日
no.233, pp.68-71, 2009-03

EPAによって、外国人の看護師・介護士候補者が日本で働くことが可能になった。受け入れるには、施設内で教育体制を整備しなければならず、初期投資などの負担は小さくない。受け入れ先の病院や介護施設では、コミュニケーションの問題を克服するために様々な工夫を凝らしている。
著者
野村 和広
雑誌
二松 : 大学院紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.C1-233, 2003-03-31
著者
勅使河原 彩織 茂木 義輝 阿部 真也 松井 洸 山口 浩 吉町 昌子 野村 和彦 富澤 明子 成井 浩二
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.61-71, 2021-08-31 (Released:2021-09-25)
参考文献数
6

Objective: There have been reports of health hazards caused by medical devices, cosmetics, quasi-drugs, daily necessities, hygiene products, etc. (health-related products) sold in pharmacies and drugstores. However, the role pharmacists play in dealing with the health hazards caused by health-related products has not been clarified. Therefore, we conducted a survey on the cases of health hazards related to health-related products and the views of pharmacists.Methods: A questionnaire was administered anonymously by email to 601 pharmacists working in community pharmacies or drugstores between December 11 and 20, 2019.Results: The number of valid responses was 585. The breakdown of health hazard cases where pharmacists counseled customers were 60 for medical devices, 31 for cosmetics, 18 for quasi-drugs, 9 for hygiene products, and 20 for daily necessities and others. Of those 138 cases, 19 cases of medical devices were estimated to have an intermediate risk as a health hazard, and the other 119 cases were all classified as low. Of the cases that the pharmacists were not approached for help, but were aware of, 57 were medical devices (21 high, 31 intermediate, 5 low), 44 were cosmetics (12 intermediate, 32 low), 12 were quasi-drugs (7 intermediate, 5 low), 7 were hygiene products (7 low), and 64 were daily necessities and others (26 high, 34 intermediate, 4 low). With regard to health-related products, 95% of the respondents indicated that they had responded to customer questions with advice.Conclusion: Our results show that there are various cases that could develop into health hazards due to health-related products, and most respondents felt a need to alert the public. As such, pharmacists and other staffs in drugstores will continue to provide health support functions to their customers by advising them on not only pharmaceuticals but also these health-related products.
著者
浅見 祐香 野村 和孝 嶋田 洋徳 大石 裕代 大石 雅之
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.19053, (Released:2021-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
2

The present study aimed to clarify the cognitive and behavioral features of the process from the onset of stealing to the development of kleptomania. We also analyzed the differences between kleptomania and shoplifting for personal gain. Semi-structured interviews were conducted with 25 participants (15 patients with kleptomania, 4 shoplifters, and 6 with other addictions). An analysis based on a modified grounded theory approach (M-GTA) revealed 24 concepts and 5 categories. We identified four stages of the process of kleptomania. The stages were “first theft,” “increasing frequency of stealing,” “pathological stealing” where the act of stealing was more beneficial than the stolen goods, followed by “automatic stealing” whenever they steal automatically in their favorite stores. We identified “breaking dependence on stealing” as the fifth category. In contrast, shoplifters for personal gain did not move into “pathological stealing.” Thus, it is assumed that the development of kleptomania involves a series of processes from starting to steal to addiction, then, it is assumed to enter a dependent stage from the stage of “pathological stealing.”
著者
友田 努 黒木 洋明 岡内 正典 鴨志田 正晃 今泉 均 神保 忠雄 野村 和晴 古板 博文 田中 秀樹
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.715-721, 2015 (Released:2015-08-15)
参考文献数
25
被引用文献数
12

マリンスノーの供給源となる可能性のある餌料生物を培養し,それらの産生物質を含んだ培養水について,ふ化後 5-28 日齢ウナギ仔魚に対する給与効果を観察した。微細藻類 4 種を用いた事例では,10-28 日齢仔魚が藻体とともに増殖過程で産出される透明細胞外重合体粒子(TEP)を摂取することを確認した。一方,尾虫類を用いた事例においても,9 日齢仔魚が発生段階初期の幼生と放棄ハウスを摂取することを確認した。これにより,飼育条件下の人工仔魚が天然仔魚と同様にマリンスノーの起源物質を摂取することを追認できた。