著者
松浦 弘幸 小井出 一晴 野田 信雄 根本 哲也 伊藤 安海 中野 正博 福田 吉治 今井 博久
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集 : BMFSA
巻号頁・発行日
no.20, pp.147-150, 2007-08-02

我々は,衛生統計データを用いて離婚率の社会的要因を重回帰分析した.従属変数は,離婚率である.説明変数は,個人家庭的要因,経済的要因,社会的要因,文化的要因,そして,要因の5つの領域で,30個の変数を用意した.個々のデータの正規分布性を確認した後,変数減少法と分散分析を行い,説明変数の絞込み最終的な重回帰式を決定した.離婚を促進する要因として,完全失業率,年間平均気温,共稼ぎ,核家族,貯金高が大きく作用し,逆に離婚を抑制する要因は,持ち家,年間雪日,学歴,所得が関与している.持ち家政策の推進と,所得の増加は,勤労青少年婦人福祉施設数,3次活動平均時間も増加よりも効果が大である.
著者
桐山 隆哉 野田 幹雄 藤井 明彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.431-438, 2001-12-20
参考文献数
9
被引用文献数
22

藻食性魚類7種(メジナ,ブダイ,アイゴ,ニザダイ,ウマヅラハギ,カワハギ,イスズミ)にクロメを投与し,摂食状況を観察したところ,ブダイ,アイゴ,イスズミの3種がクロメをよく摂食した。<BR>これら3種の摂食痕は,口器の形状を示す弧状の痕跡の形や大きさ,中央葉部や茎部等の厚みのある部位の縁辺や摂食面に残る痕跡に相違があり,魚種による特徴が認められた。<BR>これらのことから,海中林において葉状部が消失する現象が発生した場合,残された痕跡が新しければその特徴を比較検討することで,魚類の摂食の有無や摂食した魚種の推定が可能であると考えられた。
著者
永田 勝也 小野田 弘士 切川 卓也 大川 慶太 吉岡 英輔
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会研究発表会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.79-79, 2007

近年,作業現場において,安全未確認など運転員のヒューマンエラー等による人身事故が多発しており,運転員への安全教育が不可欠である.本研究ではVR技術を活用した体感型運転員教育支援システムの開発を検討した.まず,運転員の人身事故事例を約1,000件収集し、人間工学の視点から分析を行った.その結果,安全未確認による手や指のはさまれ・巻き込まれ事故が最も多いことがわかった.そこで,そのような事故を疑似体感することのできる手をモデルとした試作機を製作した.その結果,指の上下に振動モーターを設置し,強くて短い振動と電気を右手の全ての指先に与えると効果的に挟まれた感覚を再現できることが判明した.さらに,運転員教育システムとしての効果も得られた.
著者
井ノ上 寛人 小野田 望 佐藤 美恵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.753-761, 2013-03-01

文字のデザインは,ICT技術の発達に伴い,自動化及び多様化しつつある.視覚的効果を考慮して文字をデザインすることをレタリングなどというが,そのデザインには,線の太さなど,フォントを種別する基本要素の他に,遠近法や絵画的奥行手掛りに基づいた高次の要素がある.しかし,奥行表現を伴うレタリング文字のデザイン要素は多い上,専門のデザイナがどのような観点や原則に基づいて文字に装飾を施しているかは十分に検討されていない.そのため,奥行表現を活用するなど,構造が複雑なレタリング文字を工学的にデザインする上で必要とされる知見は非常に乏しいのが現状である.これらの背景から,本研究は,奥行表現を伴うレタリング文字のデザイン原則について整理することを目的に,印刷メディアから収集した文字試料を特徴分類した.調査の結果,収集した試料は12パターンに分類されるとともに.「陰」と「影」を組み合わせた表現は禁則的であることなどが示された.また,これらの原則は,映像やWebコンテンツなど,他の情報通信メディアにおいても成り立つと考えられた.
著者
岡田 忠司 杉下 朋子 村上 太郎 村井 弘道 三枝 貴代 堀野 俊郎 小野田 明彦 梶本 修身 高橋 励 高橋 丈夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.596-603, 2000-08-15
被引用文献数
29 194 25

医薬品として販売されているγ-アミノ酪酸製剤(合成GABA製剤)は,脳代謝促進作用があり,脳梗塞・脳出血後遺症等,脳血管障害の諸症状の改善や血圧上昇抑制効果が認められている.また最近の医学分野の研究では,更年期障害や初老期の自律神経障害にみられる精神的症状の緩和にも効果があると報告されている.<br>本試験では,コメぬかから分別製造した「GABA蓄積脱脂コメ胚芽」を用いて,更年期及び初老期の被験者20名に対する効果をプラセボとの比較にて検討した.<br>その結果,更年期及び初老期に見られる抑うつ,不眠,イライラ,不定愁訴の自律神経障害の改善に,GABA蓄積脱脂コメ胚芽が高い効果を示すことが明らかになった.またこのほかに,高血圧症や肝機能の改善作用も示され,服用に伴う副作用も全く見られなかったことから,毎日摂取できる機能性食品素材として高い利用価値を有していることも明らかになった.
著者
野田 政樹 山下 照仁 二藤 彰 田村 正人 川口 奈奈子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本基盤研究においては、骨粗鬆症の病態生理学の基礎となる骨芽細胞・破骨細胞の研究を展開した.その結果、本研究による現在までの骨吸収に関する研究領域の成果としては,カルシウム向性制御因子である副甲状腺ホルモン、ビタミンDやTGFβを含むホルモンおよびサイトカインによって制御されるオステオポンチンのノックアウトマウスを作成し(Journal of Bone and Mineral Research,1998)、このマウスにおいては、閉経後骨粗鬆症モデルを作成すると、骨吸収が明らかに抑制されることから、オステオポンチンが骨粗鬆症の成立の上で重要な促進的役割を持つ分子であることを発見した(Proceedings of the National Academy of Sciences U.S.A.,1999).更に、骨形成領域の研究の成果としては,骨芽細胞機能の制御の分子機構を解析し、新しいBMP制御分子TOBが、特異的に成体の動物の加齢後期において骨の形成の制御に関わることをin vivoで明らかにし(Cell,2000)、Smadの下流におけるCbfaの発現制御の機構(Journal of Biological Chemistry(JBC)1998)、ビタミンDによる抑制性の転写制御因子Idの発現阻害のメカニズム(JBC,1997a)、helix-loop-helix型転写因子Scleraxisの機能の制御(JBC,1997b)、骨・軟骨系の分化に際してのHMG型の転写因子の制御メカニズム(JBC,2000)を発見した。骨粗鬆症において重要な上記のような骨吸収および骨形成に関わる破骨細胞ならびに骨芽細胞の機能の平衡維持のメカニズムの研究領域の成果としては、老化に関わる制御分子、Klothoの機能(Endocrinology,2000;Journal of Endocrinology,2000)、ウィルスの発現系によるKlothoの遺伝子の制御機構(Journal of Gene Medicine,2000)を解明した。さらに本研究の成果として、この重力などのメカニカルストレスがオステオポンチンとKlotho遺伝子がを介する制御(Journal of Experimental Medicine,2001)(Journalof Endocrinology,2001を明らかにした。本基盤研究A(2)の遂行により、骨粗鬆症においてて骨形成・吸収・平衡バランスと老化の3つの主要な局面において中枢的な役割を持つ遺伝子を現在までの研究で解明し、個々の遺伝子の機能の解析に成果を上げた(英文原著39件,国際学会発表57件,受賞13件)。
著者
野田悠介 阿原正弥 杉浦稜介 横井優斗 濱川礼
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.927-929, 2012-03-06

本システムはTwitterのつぶやきを解析し,ユーザにバッジを付与する.それを元にデータベースを作成し利用する.バッジとは,特定の単語ごとに用意され,ユーザがそれに合致するつぶやきを行った際に付与する機能である。これは,自作の言語解析エンジンとサーバによるデータベース操作で行う.現在Twitterは1億人を超えるユーザが利用している.その中で自分が求めるユーザを探すことが困難である.そこで,バッジを利用することで効率よく条件に合致するユーザを見つけることを目的とする.また,ユーザ間のコミュニケーションの円滑化に繋がると想定する.
著者
野田兵一 著
出版者
文明社
巻号頁・発行日
1925
著者
伊藤 大幸 松本 かおり 髙柳 伸哉 原田 新 大嶽 さと子 望月 直人 中島 俊思 野田 航 田中 善大 辻井 正次
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.304-312, 2014
被引用文献数
13

We examined the psychometric properties of the Japanese version of the Autism Spectrum Screening Questionnaire (ASSQ) and developed a short-form. This study included 157 children with autism spectrum disorders (ASD, ages 7–18, 128 boys) and 4,101 healthy controls (ages 7–15, 3,344 boys) from a general population with a controlled male-female ratio. Four factors (Unusual Interests, Sociality, Peer Relations, and Repetitive Behaviors) were extracted by exploratory factor analysis of control group data. Confirmatory factor analysis revealed that the 4-factor model fit well with data for another sample of the control and ASD groups. Logistic analysis showed that the former 3 factors could significantly predict ASD diagnosis. Thus, a short form of the ASSQ was developed, consisting of 11 items for these 3 factors. This short form showed sufficient internal consistency and high discrimination power for ASD diagnosis that was comparable to that of the 22-item version. Receiver operating characteristic analysis indicated an optimal cut-off of 7 for the 22-item version (sensitivity .949, specificity .801) and 5 for the short-form (sensitivity .936, specificity .818).
著者
野田 敏郎 松浪 斉
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
ポリマー材料フォーラム講演要旨集 第13回ポリマー材料フォーラム
巻号頁・発行日
pp.230, 2004 (Released:2010-03-29)

プラスチックは軽量性や透明性に優れ、加工が容易で経済的なため幅広く用いられている反面、軟らかく傷付き易いため、表面にハードコート処理を施す必要性がある。しかしながら昨今の市場要求は、単純に硬さだけをもたせるのではなく、防汚性、帯電防止、防曇性といった機能性を付与したものが多く、弊社でもそれらの機能性を有するUV硬化型ハードコート剤の開発を鋭意検討している。本報では、防汚性コーティング剤の開発について報告する。日常生活のなかで、「汚れ」は避けられないものである。携帯電話やタッチパネルのディスプレイ、プラスチック成形物、壁紙等は、人の手に触れることで指紋や皮脂が付着する。また、時にはマジックインキなどの拭き取り難い汚れが付着することも考えられる。これらの汚れが付着すると美観を損ねるだけでなく、場合によっては機能の低下をもたらすこともある。これらの弊害を防ぐため、従来はハードコート剤にシリコーン系添加剤を添加するといった処方が用いられてきた。シリコーン系添加剤は、表面自由エネルギーが低いという特性も有するため、有効成分が表面にブリードした塗膜となる。その為、シリコーン系添加剤においては、繰り返し使用において効果が持続し難いといった防汚耐久性に問題点がある。我々は上記の課題に着目し、シリコーン成分をUV架橋オリゴマーに導入することで、防汚耐久性に優れた特性を有するUV硬化型の防汚性コーティング剤を開発した。本報では、弊社開発品に関する特性について紹介する。
著者
野田 耕平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.76, pp.95-102, 1998-05-23
被引用文献数
2

本論文では、文章を読む過程そのものを外に見える形で取り出し操作する支援法を提案、その方法での読みが文章理解に与える効果を確かめた幾つかの実験を報告する。さらに、その結果を踏まえ開発したコンピュータ上の読解支援ツールの概要と評価の結果を報告する。文章を文または節の単位でカード化しそれを自由に配置しながら読むと、カードを文章順直列配置で読む場合に比べ、より広い範囲でカード同士の関連付けをし、文章の対比を捉えた理解などがされやすいことを実験で確かめた。その結果を踏まえ、読解支援ツールCArD(Card Arrangement Displayer)を開発、その評価を行っている。紙に比べカード作成が容易であり、複数のカードを一度に動かせる、などの利点がある。
著者
村井 祐一 桝田 修一郎 加藤 高清 諸角 建 野田 健一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.111-112, 1992-02-24

移動物体を発見したり,動きのパターンや形状の時間的変化を調べるために,テレビカメラにより速続して撮られた画像を高速に解析する技術が進んできている.この技術を利用して野球のピッチャーが投げるボール像を2台のテレビカメラで観測し,ボール位置変化の精密計測,ボールのバッター平面到達位置の予測,ロボット捕球,ロボット打球等の高度処理を行うシステムの構築が可能と考えられるようになった.また飛球の速度計測や,ストライク・ボールの判定などは既に実用化されているが,本研究ではより高度な機能を持つ詳細飛行軌跡の観測システムをステレオビジョン方式を基に構築し,最終的にはロボットキャッチャーに捕球させたり,ロボットバッターに打球させることをめざしている.
著者
村井 祐一 番匠 一雅 山本 和弥 野田 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.68, pp.1-8, 1995-07-20
被引用文献数
1

野球のピッチャーが投げ,バッター方向に飛来するボールの映像を2台のTVカメラでステレオ観測し,ボールの時々刻々の空間位置の精密計測,ボールのバッター平面到達位置の予測,ロボット捕球,ロボット打球等の高度処理をさせる技術のアルゴリズムを開発した.従来技術の飛球速度計測,ストライクやボールの判定から踏み出して,カーブやシュート,落ちる球や浮き上がる球などの変化球に対する詳細かつ正確な飛跡の客観的計測データを得たり,ロボットキャッチャーによる捕球,ロボットバッターによる打球をも可能とした.ボールを構成している画素の連続性に基づくボール中心点決定方法,ボール到達座標予測を使用してボール探索領域の限定を行うアルゴリズムなどを考案し,各種ボール到達位置予測アルゴリズムの実験および比較検討による最適方式の決定を行った.さらに連続して得られた3次元ボール移動軌跡からボール最終到達点の予測を行い広汎な環境条件において,投手が投げたボールを追跡し,到達点を予測するシステムのアルゴリズムを開発し,実験によって動作の確認が得られたので報告する.Pursuiting algorithm of linear prediction and a color grade stressed integration for a flying baseball image is utilized to real-time measuremet of its trajectory. After the ball image of video screen on each TV monitor of stereo cameras is enhanced by cancelling background scene image in specified limited area, the true ball image is searched on the screen and their coordinates are located. In searching process, searching area on the TV screen area is limited within less than one thousandth of the TV screen area at the least, by using the linear prediction. Ball arriving point forecast algorithm on batter plane are experimentally demonstrated by usin parabolic equation approximation, and forecast accuracy less than a few millimeters is estimated.
著者
高清水 直美 野田 哲夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.363, pp.53-56, 2011-12-10

島根大学におけるRuby教育は,プログラミング知識の習得だけでなく,Rubyを中心とした最新のITビジネスや技術動向について広く学ぶことを目標としている。プログラミング言語Rubyおよび開発フレームワークであるRuby on Railsは,その生産性の高さが注目され,近年のWebアプリケーション開発市場におけるニーズが拡大している。本稿では,本学における教養科目としてのRuby教育の実践と課題について報告する.
著者
野田 正彰
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

太平洋戦争が終わって半世紀になる。今日の富裕社会・日本の歪みは、敗戦のときに多くの日本人のとった精神病理に遠因するのではないだろうか。天皇制イデオロギーで精神を硬直させていた戦時下の日本人も、死が日常化した暮らしのなかで臨死体験を繰り返し、家族を喪い、人を殺し、家や地域社会を失い、軍隊内の暴力にさらされることによって、深く精神的に傷ついていた。人は受け入れがたい苦悩に直面すると「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)になる。悲惨な事件が意識のなかに反復して侵入し、あるいは事件にかかわる悪夢にうなされる。他人から孤立しているという想いが強くなり、精神の集中は困難になり、抑うつ的となる。さらに、多くの人々が死んでゆくなかで生き残ると、「生き残り症候群」とよばれる精神障害を残す。慢性的な不安、現実感の喪失、情緒の不安定、意欲の減退、社会的な不適応などがあげられている。とりわけ、他の人が死んでいったのに、自分だけが生き残ったことについての罪の意識、あるいは他の人を助けることができず、生き残るために自分がとった行動についての罪責感が、彼らを苦しめる。戦場で、引き揚げて、捕虜収容所で、ほとんどの日本人が心的外傷後ストレス障害、生き残り症候群になったに違いない。死別による病的悲哀も体験したであろう。このような心的障害に対し、戦後の日本人がとった反応は三つあったと考えられる。ひとつは、極めて少数であったが心の傷や罪の意識を大切にしようとした人がいた。戦友の遺品や手紙を遺族のもとに黙々と届け続ける帰還兵の生きざま。「わだつみの声」の編集。敵、あるいは物としてしか見ていなかった中国人が、人間として見えるようになった時の加害者としての罪の意識の自覚…。しかし、それらは結局、周囲の人々がとるに足りないこと、めめしいこと、生存していくためには害になることとして抑圧していったのである。第二の反応は、戦争の加担者も被害者もひっくるめて「無罰化」し、勝っても敗けても戦争は悲惨なものだからと捉え、平和運動に流れ込んでいく動きである。戦後の反戦平和運動には、純粋無罰化の心理から絶対平和を主張するグループと、なおも反戦勢力(社会主義圏)と好戦勢力(アメリカ)を分けて考えるべきだと主張するイデオロギー的無罰化のグループがいた。いずれのグループも、心の傷を大切にしようとした第一の人々を切って捨てた。第三の反応は、心の傷を抑圧し、再び唯物的な価値観によって踏みにじり、物量によってアメリカに負けたのだから、経済的復興、工業の再建、アメリカの経済力に追いつき追いこすことによって立ち直れると身構えたのであった。それは富国強兵の軍国主義イデオロギーを、経済成長中心の資本主義イデオロギーに置き換えたものであり、力と物の豊かさがすべてだと思い込んでいた。これは朝鮮特需、高度経済成長、土木・建設業を軸とする地方の補助金経済、東京集中、産業構造転換の進行する過程で、ますます強化され、日本人の心?の本流になってしまっている。このような敗戦を物質的に過剰代償しようとする構えこそが、心の傷を否認する今日の日本の文化を作ってきたのであった。私は本研究において、「やむをえなかった戦争」でも「させられた戦争」でもなく、自分が行った侵略戦争の責任を問い続けている老人たちを訪ね、長時間の面接と内面の分析を行っていった。さらに元憲兵であった三尾豊さん(85歳)、元731部隊軍属(少年隊員)であった篠塚民雄さん(72歳)にお願いし、彼らの健康管理を行いながら、中華人民共和国のハルピン、済陽を訪ね、彼らが戦争犯罪あるいは中国人抑制にかかわった現地で、過去を追想し、内面を分析していく作業を行った。さらに中国・南京を訪問し、日本軍の大虐殺について現地を見てまわった。今後、三〇人をこえる膨大な聞き取り記録を整理していくつもりである。