著者
柏瀬 淳 阿久澤 智恵子 青柳 千春 今井 彩 金泉 志保美
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.101-108, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
17

本研究は、内服薬を必要とする小児の服薬管理に関する国内の研究動向を明らかにし、今後の研究課題について検討することを目的とした。医学中央雑誌Web (Ver. 5) を用いて文献を検索し、19件を対象に分析した。研究対象は小児の保護者が多く、看護師を対象とした研究は少なかった。対象疾患は慢性疾患の中でも気管支喘息やてんかんが主であり、長期内服管理を必要とする慢性腎疾患や小児がんなどを対象とした研究はみられなかった。対象文献の研究内容をコード化し、類似性に従って分類した結果、研究内容を表す7つのカテゴリが形成された。認知発達に応じた働きかけにより服薬行動の必要性を意識化すること、患者教育の重要性などが明らかにされていた。今後はより幅広い小児の疾患を対象とした服薬管理に関する研究、看護師を対象とした小児の服薬管理指導に関する研究を進めていく必要がある。
著者
金井 理紗 山里 將仁 玉城 昭彦 大城 健誠 上原 忠司 真栄城 兼誉
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.889-894, 2017-06-20 (Released:2017-06-20)
参考文献数
18

【目的】原発性自然気胸は思春期以降の長身の痩せた男性に好発する疾患であり,15歳以下の小児では比較的稀である.今回は当科の経験症例を基に,小児症例での臨床像を後方視的に検討した.【方法】2006年4月から2011年12月までに,小児外科が関係した15歳以下の小児自然気胸症例7例11側(異時性両側4例)を対象とした.検討項目は臨床像,身体的特徴,既往歴,CT所見,手術所見,術後経過とした.また対側発症については同時期に治療した成人症例と比較検討した.【結果】症例の内訳は男児6例,女児1例で,7例中6例が15歳であり平均14歳7か月であった.同時両側発症症例はなく初発時は右側3例,左側4例であった.肺虚脱度は軽度2例,中等度4例,高度1例で,中等度以上の4例に胸腔ドレーンを挿入し,2例で手術まで空気漏れが持続した.患児の身体的特徴はBMIやRohrer指数から痩せ型であることが分かった.特に既往歴や家族歴は認めなかった.全例がCT所見で明らかな責任囊胞のある手術適応症例と判断し,video-assisted thoracic surgery(以下VATS)を行った.手術では病変部の肺部分切除を行い,胸膜補強を追加した.患側部位の術後再発例はなかったが,術後早期の対側発症を4例に認めた.小児症例での対側発症は成人症例より有意に高かった(p=0.0002).【結論】自験例では男女比や体型は成人症例と同様の傾向が見られた.術後同側の再発は認めず,VATSによる肺部分切除と胸膜補強は小児症例でも有用であった.しかし術後早期の対側発症は成人症例より有意に多く,十分留意すべきだと考えられた.
著者
金澤 忠博 井﨑 基博
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平均8歳の極・超低出生体重児220名のうち、自閉スペクトラム症(ASD)15.9%、注意欠如多動症(ADHD)が20.5%、限局性学習症(LD)が23.2%、知的障害は9.5%、境界知能は9.1%であった。重症のIVHとIUGR、CLD、ROPがIQを低下させ、重症のIVHは、ASD、ADH、LDの増悪にも関わり、IUGRもADHDやLDの発症に影響を与えていることが示された。一卵性双胎24組48名と二卵性双胎21組42名について、遺伝率と共有環境、非共有環境の寄与率を調べると、ASDや不注意に関しては遺伝率より周産期を含む共有環境の寄与率の方が大きいという特徴が確認された。
著者
藤原 帰一 久保 文明 加藤 淳子 苅部 直 飯田 敬輔 平野 聡 川人 貞史 川出 良枝 田邊 國昭 金井 利之 城山 英明 谷口 将紀 塩川 伸明 高原 明生 大串 和雄 中山 洋平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

危機管理の政策決定と、それが政治社会にもたらす効果について、多角的な実地調査とデータ収集を行うとともに、三つの理論的視点、すなわちセキュリタイゼーション研究、危機管理研究、そして平和構築から分析を進めた。本作業の国際的パートナーがオレ・ウィーバー、イークワン・ヘン、そして、ジョンアイケンベリーであり、この三名を含む内外の研究者と共に2015年1月30日に大規模な国際研究集会を東京にて開催し研究成果の報告を行った。本会議においては理論研究とより具体的国際動向の分析を行う研究者との間の連絡に注意し、実務家との意見交換にも留意した。
著者
金井 雅之
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.83-91, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
16
被引用文献数
4

どのような社会構造をもつ温泉地でまちづくりへの取組みが盛んであるかを,「橋渡し型」と「結束型」の違いという社会関係資本論の枠組みに依拠しつつ,質問紙調査のデータによって計量的に分析した. まちづくりへの取組みを時間の経過とともに進展していく過程として操作化し,質的比較分析によって分析した結果,つぎの2つの知見が得られた.① まちづくりの初発段階において重要なのは結束型社会関係資本である.② まちづくりの完成段階において重要なのは橋渡し型社会関係資本である. これは,まちづくりの各段階において必要となる社会関係資本の種類が異なることを意味しており,橋渡し型と結束型との関係が単なる二項対立ではなく,時間の経過の中で複雑に交叉しながら創発的にまちづくり活動を促進している可能性を示唆している.
著者
金井 隆典 渡辺 守 日比 紀文
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.39-45, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
34

最近,潰瘍性大腸炎とクローン病の分子免疫学的な病態メカニズムが徐々に明らかにされるにつれ,従来の治療法とは異なった,より病態に特異的な治療法,サイトカインや免疫担当細胞に着目した治療法が開発,研究されるようになった.特に,抗TNF抗体によるクローン病治療に代表されるように,実際の臨床現場に応用され,優れた成績が報告されつつある.潰瘍性大腸炎とクローン病といった生涯にわたり治療を余儀なくされる疾患に対して,副作用が問題となる長期副腎皮質ステロイド投与に替わる,より効果的な治療法の開発は本病が若年で発症することを考え合わせ,社会的にも重要な問題である.免疫学の進歩の恩恵を受け,数年後の炎症性腸疾患治療は従来とは全く異なった新たな局面からの治療法が開発されることも考えられている.本稿では,現在までに明らかとされた炎症性腸疾患の免疫学的病態と,サイトカインに関連した知見に基づいた治療法の開発状況について概説した.
著者
金 悠進
出版者
カルチュラル・スタディーズ学会
雑誌
年報カルチュラル・スタディーズ (ISSN:21879222)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.47-71, 2019 (Released:2019-10-21)
参考文献数
35
被引用文献数
1

1955年、アジア・アフリカ会議がインドネシアのバンドンで開催された。植民地主義に反旗を翻す舞台となった「バンドン」は、しばしば第三世界の連帯の象徴的記号として捉えられる。本稿は、このような反植民地主義の連帯としての「バンドン」イメージを相対化し、よりローカルな文脈から、異なる都市イメージの構築を目指す。具体的には、バンドンの若者たちによる文化実践がなぜ植民地主義の残影を引きずり、いかにしてナショナル・アイデンティティを喪失しつつも西洋の模倣から脱却していったのかを論じる。主にポピュラー音楽を中心に、近代美術やイスラームなどバンドンのローカルな日常の文化実践における特殊性/多様性に着目しつつ、アジア・アフリカ会議の「裏」舞台を描く。上記分析過程を通じて、「インターアジア」におけるカルチュラル・スタディーズの分析枠組みを提示する。 脱植民地主義を掲げる戦後最大の歴史的出来事として、アジア・アフリカ会議が植民地都市バンドンで開催されたという文脈は、現在に至るまで当該都市の文化実践を規定してきた。にもかかわらず、国家の共産主義化、脱植民地主義化と乖離するかのように、バンドンの若者たちが脱イデオロギー的な西洋志向の文化実践に傾注し続ける背景を、近代美術を事例に論じる。さらに、西洋模倣型の実践形態が都市における庶民的・国民的文化の周縁化、ひいては新たな植民地主義への構造的加担に帰結する背景を1970 年代のポピュラー音楽における対抗文化的実践から明らかにする。最後に、イスラームが新たな文化実践の代替的イデオロギーとして台頭することによる「新たな連帯」の萌芽を提示する。
著者
金子 玲大 山中 英生 真田 純子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.94-102, 2022 (Released:2022-09-20)
参考文献数
18

本研究では,空石積みの修復活動のオーガナイザーに半構造化インタビューを行い,参加者がいかにしてオーガナイザーになるのかを把握し,さらに継続的に活動を続ける可能性が高まる場のマネジメントの在り方について考察した.その結果,オーガナイザーに共通する前提として類似する石積みに対する思いと活動を取り巻く環境を有していることなどが分かった.また,活動を実践することによる変化の特徴として様々な役割を果たさざるを得ない実践を経験したこと,即興的なコーディネート,ルールの原則の理解,修復作業のアレンジという4つの特徴が見られた.これらより活動のマネジメントとして,役割分担を固定しない,ルールの優先順位の伝達,雑談を促すの3つを示した.
著者
金子 祐樹 Yuuki Kaneko
雑誌
国際文化論集 = INTERCULTURAL STUDIES (ISSN:09170219)
巻号頁・発行日
no.32, pp.151-195, 2005-06-15

In Korea, a traditional kneeling bow, called jeol (_), is performed duringceremonies of ancestor worship, jaisa (__). The purpose of this paper is toinvestigate the origin of jeol and the background to how it came to be performedin Korean Confucian ancestral rites.Should jeol be performed in jaisa? Strictly speaking, it should not. The correctritual for jaisa was laid down in the chapter titled "Ancestral Rites" in theFamily Rituals of Chu Hsi (朱熹), and stipulated that participants should bowwhile kneeling with a straight back. Although jeol is a prostration of Koreanorigin, in coming to be accepted as a form of Confucian bow it became a Koreanvariant of traditional Confucian rites. In this phenomenon we can find thenatural energy that transformed jeol from a Korean folkway to a Confucian ritualprostration.To clarify how this came about, I examined the vicissitudes of movementtechniques in Korean ritual ceremonies from ancient times to the period of theJoseon dynasty.From the era before unification by Silla, dance accompanied by singing wasthe centre of Korean religious ceremonies. It remained popular after Buddhismwas introduced to Korea, perhaps because, as a means of appeasing andcommunicating with the spirits, it was considered to be superior to previousforms. However, dance was rejected in the Joseon period because of theJoseon dynasty's policy of indoctrination with Neo-Confucian ideology, includingthe holding of ancestor worship ceremonies according to Chu Hsi's FamilyRituals. Nevertheless, jeol, being a kneeling bow intended to express respectfor elders or superiors, came to be performed in ancestral rites because it wasadmitted as implying respect for ancestors.Korean Confucianists had to solve this problem. First came the techniquefor the kneeling bow developed by Jeong Gyeong-sai, which eventually led toKim Jang-saeng's coining of the term jeonbae to denote jeol defined and carriedout as a Confucian bow. In this way jeol was finally admitted as being a Confucianbow, and has continued to be performed in Korea up to the present.
著者
山口 奈保美 金田 幸司 木本 美由起 末永 裕子 大野 絵梨 内田 英司 福長 直也 柴田 洋孝
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.465-470, 2021 (Released:2021-09-28)
参考文献数
16

症例は65歳男性.糖尿病性腎症による末期腎不全に対して腹膜透析を導入した.導入から半年後にESA(erythropoiesis stimulating agent)低反応性貧血を呈するようになり,精査にて胃に生じたangiodysplasiaからの出血を認めた.内視鏡的止血術後,貧血コントロールは改善していたが,加療から8か月後に再度胃のangiodysplasiaからの出血を生じ貧血の進行を認めた.内視鏡的止血術を行い,数日後のフォローアップにて,胃の他部位にangiodysplasiaからの出血を認め再度止血術を要した.それから4か月後に真菌感染が疑われた難治性腹膜炎を発症し血液透析へ移行したところ,以降は消化管出血を起こさずに経過している.末期腎不全患者において,消化管のangiodysplasiaからの出血は療法別では腹膜透析より血液透析症例の割合のほうが多いが,本症例においては腹膜透析から血液透析へ移行したことがangiodysplasiaからの再出血を防ぐことに繋がった可能性がある.
著者
西尾 麻里沙 長谷田 真帆 金森 万里子 荒川 裕貴 近藤 尚己
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.338-356, 2022-05-15 (Released:2022-05-24)
参考文献数
41

目的 健康格差の縮小が公衆衛生上の課題となっている。世界保健機関の「健康の社会的決定要因に関する委員会(CSDH)」は,1. 生活環境の改善,2. 権力・資金・資源の不公正な分配への対応と多部門連携,3. 課題の評価(健康格差のモニタリング)と活動のインパクトアセスメントの3項目の実行を推奨し,「健康の公正性サーベイランスの枠組み」の中でモニタリング項目を提案した。日本と諸外国のヘルスプロモーション施策を分析し,CSDHの提言との適合性を検討するとともに,日本のヘルスプロモーション施策に資する社会環境を整備するための提言を行うことを目的とした。方法 日本,アメリカ,イングランド,スウェーデン,タイのヘルスプロモーション施策に関する文書をレビューした。健康格差の定義とそのヘルスプロモーション施策における位置付け,評価指標を抄出し,CSDHが推奨する上記3項目と「健康の公正性サーベイランスの枠組み」に基づき各文書の内容を分類し,それぞれの内容について各国間の類似点と相違点を分析した。結果 健康格差の定義は,日本,アメリカ,イングランド,スウェーデンで概ね類似していたが,日本では健康格差対策がなぜ必要であるかといった具体的な記述が少なかった。生活環境の改善に向けたアプローチの位置づけや重視する点は各国で異なっていた。日本は社会参加の機会と社会資源へのアクセスの確保,アメリカは客観的指標による評価,イングランドは社会的に恵まれない個人や地区への重点支援,スウェーデンはライフコースにわたるユニバーサルな介入,タイは多部門連携を計画していた。すべての国が権力・資金・資源の不公正な分配への対応と多部門連携に関する活動の実施を計画していた。アメリカはレビューした国の中で最多である187項目の社会的要因をモニタリングしており,所得や障害などの健康格差に関する幅広い視点や,保健分野以外の情報を用いた評価,個人,地域,国の政策など多様なレベルの評価項目が含まれていた。結論 上記レビュー結果より,日本における健康格差縮小に向けた社会環境整備とその評価の充実に向けて次の3つを提案する。すなわち(1)健康格差をより多面的に捉え,対策の必要性を訴求し推進すること,(2)健康の決定要因の構造とその多面性を考慮して目標を設定すること,(3)保健分野以外の組織と協働した取り組みや指標の活用を行うことである。
著者
金子 弘真 高塚 純 柴 忠明 竹内 節夫 斉藤 徹 五十嵐 紀子 浅田 敏雄
出版者
The Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis
雑誌
血液と脈管 (ISSN:03869717)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.274-276, 1984-06-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7

(Multiple organ failure) MOF or (Disseminated intravascular coagulation) DIC often becomes a fatal complication for the patients suffering from endotoxin shock. And it is also pointed out that MOF and DIC share many common or simiar clinical features. To clarify the relationship between these two, we surveyed the changes in haematological indices of organ failure patient.DIC was complicated in 10 of 14 patients with endotoxin shock and 9 of these were victimized. In the latter 9 cases, failure of more than three organs occured concomitantly. DIC observed in patients with organ failure is as follows: 10 in 13 cases of lung failure, 3 in 5 cases of heart failure, 10 in 12 cases of renal failure, 3 in 5 cases of liver failure and 3 in 4 cases of gastro-intestinal bleeding. Both organ failure and DIC usually began at the lung in endotoxin shock patients. From the viewpoint of haematology, hypercoagulable tendency preceded the lung failure. For example, decrease in antithrombin III and plasminogen level was observed prior to that in platelet.In endotoxin shock patients, MOF and DIC have close relationship, which suggests that hypercoagulable state induced by endotoxin triggers an organ failure and results in MOF through chain reactions.