著者
金箱 淳一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.19, no.19, pp.10-15, 2014-03-31

本作品は、楽器を叩いた時の振動をお互いに伝え合う打楽器「Vibracion Cajon」に、LEDによる視覚表現のシステムを付加することにより、音楽を耳以外の感覚器(視覚・触覚)で楽しむものである。本研究は「共用品」の概念を楽器にも応用すべく、ユニバーサルデザインの視点で聴覚障害者にも配慮し、ハンディを持った人も含めてできるだけ多くの人々が音楽への参加を可能にする楽器の開発を目標としている。音楽の楽しみ方の一つとして、他人と一緒に演奏行為に参加している感覚「一体感」が挙げられるが、この一体感を向上させるためのアプローチとして(1)互いの発した音を直接振動として伝え合う「Vibracion Cajon」(2)音を視覚情報(光)に変換して伝え合う機能を持つ打楽器「Vibracion Cajon2.5」のデザイン、開発を行った。
著者
倉島 研 金地美知彦 畑山 俊輝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.111, pp.125-130, 2004-11-06

被験者は同一の楽曲を様々なテンポで聴取した。被験者はそれぞれについて印象評定を行い、同時にテンポの好みの程度を判断した。印象評定に用いた44形容語について因子分析を行ったところ、「明るさ」「速さ」「くつろぎ」の3因子が抽出された。これらの因子は80bpmから240bpmのすべてのテンポ条件で抽出された。また被験者に最も好まれたテンポは160bpmから180bpmであった。これらのテンポの時、3つの因子の平均評定値は高い順に「明るさ」、「くつろぎ」、「速さ」となった。各因子の平均評定値がこのような順番となる時に好みのテンポという印象が生じると考えられる。Subjects listened to a musical piece with different conditions of tempos. They rated musical impression and preference every condition. We analyzed the data by factor analysis: we extracted three factors named as "Brightness", "Speed", and "Relaxation". These factors were extracted from all tempo conditions. The most favorite tempos were 160bpm and 180bpm. In these tempos, the three factors of "Brightness", "Relaxation", and "Speed" were plotted in decreasing order of the averages of rated scores. We suggested that the order of these factors would play an important role in producing feelings of favorite tempos.
著者
飯島 綾 石川 均 後関 利明 清水 公也 金井 昭文
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.331-335, 2014-09-25 (Released:2014-12-17)
参考文献数
14

うっ血乳頭を合併した脳脊髄液減少症の1例を経験した.症例は60歳男性.自転車で転倒した後より,頭痛・めまい・吐気・耳鳴りが出現した.脳神経外科で画像上,慢性硬膜下血腫を認め,臨床症状からは脳脊髄液減少症の診断となり,硬膜外自家血注入を施行した.頭痛・めまい・吐気などの症状は改善したが,治療後1か月後に「焦点が合わない,歪む」との主訴で眼科を受診した.初診時両眼のうっ血乳頭を認めた.経過観察のみで徐々に乳頭腫脹および網膜出血は改善したが,硬膜外自家血注入は脳圧を上昇させる可能性も指摘されているため,今後,硬膜外自家血注入療法の際には,前後での眼科の診察が必要であると考えられた.
著者
山口 雄仁 鈴木 昌和 川根 深 駒田 智彦 金堀 利洋
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

印刷ないしPDFの理数系文書をアクセシブルな電子書籍形式であるDAISYに変換するOCR技術の改良,理数系DAISY編集・閲覧ソフトウェアの開発,日本語理数系教材をきちんと取り扱えるようにDAISY形式を拡張・改良する研究などを行った。その結果,全盲・重度弱視・発達性読字障害など様々な形で視覚に障害を持つ生徒が,インクルーシブな教育環境で晴眼者と同じ科学教材を共有するための基礎が確立できた。
著者
山口 雄仁 藤芳 明生 渡辺 哲也 鈴木 昌和 相澤 彰子 川根 深 駒田 智彦 金堀 利洋
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,全盲・重度弱視・発達性読字障害など様々な形で視覚に障害を持つ児童・生徒が,インクルーシブな教育環境でデジタル教科書を容易に利用できるようにするため,電子書籍の国際標準規格EPUB3(DAISY4)に準拠するアクセシブルなデジタル教科書の標準モデルを確立した。それに基づいて既存のデジタル教科書に含まれる数式・化学式や図・グラフ・表・地図など特殊表記・2次元情報を,バリアフリー化するためのコンテンツ制作・編集システムと,多言語でそうしたコンテンツを利用するための閲覧システムなどを開発するとともに,わかりやすい触読図製作ツール,理数系文書理解支援技術などを研究した。
著者
奥村 誠 塚井 誠人 金子 雄一郎 日比野 直彦 大窪 和明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

都市間旅客交通には、交通発生の非日常性、情報の不完備性、ネットワーク性などの固有の特性がある。本研究は,このような特性を考慮した調査方法・分析方法の開発・整理を行った。1990-2005年の4回の国土交通省全国幹線旅客純流動調査のデータと追加調査・計測結果の分析を通じて、サンプリング段階のデータの補正方法、観光統計等との統合利用方法の提案を行った。さらに、企業・事業所の立地データと業務トリップの関連性に基づく国土構造分析を行った。
著者
長谷川 修 森島 繁生 金子 正秀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2047-2065, 1997-08-25
被引用文献数
68

「顔」は人間にとって非常に身近な存在であると共に, 顔の持ち主である一人一人の人間における個人的な情報, コミュニケーションに係わる情報を始めとした, 言語的手段では表現しにくいようなさまざまな情報を担っている. 近年, 工学分野では主としてコミュニケーションメディアやヒューマンインタフェースへの応用の観点から,「顔」の工学的取扱いに対する研究が活発に行われている. 具体的には, ユーザである人間を対象とした視覚機能をコンピュータにもたせるための顔の認識技術と, コンピュータあるいはコミュニケーションメディアに表現力豊かな顔をもたせるための顔の合成技術である. これらの研究成果は, 従来個別に検討が行われていた顔関連の心理学, 人類学, 美容, 歯科等さまざまな分野においても活用されつつある. 本論文では, このような観点からコンピュータによる顔情報処理に焦点を当て, まず要素技術としての顔画像合成と表情認識について最近の技術動向を概観する. 次に,「顔」の諸特性について考察した後に, 人と人との対面コミュニケーションの支援, 人と機械との間の顔情報を介したコミュニケーションという二つの立場から「顔」の工学的応用について述べる. また,「顔」情報処理の研究のためのツールやデータベース等についても紹介する.
著者
本間 香貴 中川 博視 堀江 武 大西 宏明 金 漢龍 大西 政夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.137-145, 1999-03-05
参考文献数
27
被引用文献数
4

地球環境変化に対する作物応答を明らかにするために, 高温・高CO_2濃度環境がイネ群落の蒸散とガス拡散抵抗に与える影響を調査した. CO_2濃度をそれぞれ365と700μL L^<-1>に設定した2棟の温度傾斜型CO_2濃度制御チャンバー(TGC)の各々に3温度区(実験期間内平均気温29.8, 30.4, 32.5℃)を設け, 水稲品種アキヒカリとIR36を栽培し, 実験に供試した. 各温度・CO_2濃度処理区で8月2日(幼穂形成期)から8月22日(出穂期)まで, 乾湿球温度, 群落表面温度(T_c)と純放射量を測定し, また, ミクロライシメータ法を利用して蒸発散量(E)も測定した. Eの測定値と微気象データをもとに得られた水蒸気と熱輸送に対する空気力学的拡散抵抗(r_a)は, 全処理区, 全計測期間を通じてほぼ一定値の11.7sm^<-1>で推移した. このr_a値とT_cおよび微気象データを熱収支式に代入し, Eおよび群落拡散抵抗(r_c)を求めたところ, Eの推定値とライシメータ法による実測値は, 両品種とも非常によく一致した. 両品種のr_cは全ての温度・CO_2濃度処理区において, 全天日射量が500W m^<-2>以上で最小値(r_<c,min>)に達した. 最も低い温度区では, 高CO_2濃度によって, 自然CO_2濃度環境下よりもr_<c,min>が40〜49%, T_cが1.4〜1.6℃増加し, Eが14〜16%減少した. しかし, この高CO_2濃度の影響は生育温度の上昇につれて減少した. このようなr_<c,min>の温度とCO_2濃度に対する反応は, イネのこれらの環境に対する長期の適応現象によるものと思われた。以上より, 地球の温暖化は, CO_2濃度の上昇によるイネの水利用効率の向上効果を減少させることが示唆された.
著者
金子 拓 黒嶋 敏 堀 新 黒嶋 敏 堀 新 岡田 正人 桐野 作人 杉崎 友美 矢部 健太郎 和田 裕弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、織田信長の家臣太田牛一が著述した『信長記』(別称「信長公記」「原本信長記」「安土記」など)自筆本・写本の史料学的検討を目的とした。国内各所蔵機関に伝来している『信長記』を調査し、その一覧表を作成するとともに、史料編纂所において未撮影の写真による撮影・紙焼写真購入を進め、それらをもとに内容を検討し書写伝来の系統を明らかにした。これらの成果は、研究代表者金子の単著『織田信長という歴史』、連携研究者堀新が編者となり、研究協力者桐野作人・矢部健太郎・和田裕弘が寄稿した『信長公記を読む』、研究協力者杉崎友美の論文「「信長記」の筆跡論」などとして公表した。
著者
小林 秀雄 浦川 理 金子 文俊 井上 正志
出版者
The Society of Rheology, Japan
雑誌
日本レオロジー学会誌 (ISSN:03871533)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.19-23, 2014
被引用文献数
4

The δ-cocrystal of syndiotactic polystyrene (sPS) can capsulate various small guest molecules in the cavity of the crystalline region. We examined the rotational motion of isolated polar guest molecule, benzonitrile (BN), caged in the crystalline cavities by dielectric spectroscopy and the results were compared with the previously reported data of sPS / methyl ethyl ketone (MEK) system. The relaxation of BN in the crystalline region was specified from the comparison with the dielectric data of atactic-PS / BN system in which only the amorphous phase exists. The rotational relaxation time of BN in the crystalline cavity was 6 orders of magnitude longer, and the activation energy of BN was twice larger than those of MEK. These results suggest that spatial restriction due to the small cavity size strongly retards the rotational dynamics of the larger guest molecule, BN. Two-site model could successfully describe the temperature dependence of the dielectric intensity for sPS / BN system, revealing that there exist two stable states of BN molecules with energy difference of 7.42 kJmol<sup><font size="-1">-1</font></sup> in the crystalline cavity.
著者
金野 美奈子
出版者
東京女子大学現代教養学部国際社会学科社会学専攻紀要編集委員会
雑誌
東京女子大学社会学年報 = Tokyo Women's Christian University annals of sociology (ISSN:21876401)
巻号頁・発行日
no.1, pp.32-48, 2013

職場と家族の歴史的関係をめぐる従来の議論では,男性ホワイトカラーに関しては戦前から近代家族モデルが前提とされており,戦後のライフステージ対応賃金の画期性はそのような前提を取り込んだ処遇の論理がブルーカラーにも広く適用されたことにあると主張されてきた.しかし,〈生活の論理〉としての近代家族モデルと〈処遇の論理〉としての近代家族モデルを区別して歴史的な流れを検討すると,従来の見方は必ずしも支持されない. たしかに戦前の男性ホワイトカラーにとって,その階層意識と相まって近代家族モデルは暗黙の社会的前提であったが,組織からの処遇の論理はそのようなモデルを基礎に組み立てられていたわけではなかった.職場からの処遇はあくまでも,基本的には仕事上の評価に基づくものとされ,近代家族的な生活の理想は組織成員としての処遇に応じて,現実には異なった程度に実現されたりされなかったりするものにすぎなかった.戦後,ライフステージ対応賃金という形で〈生活の論理〉を基礎とした〈処遇の論理〉が一定の成立をみたことは,次第に「標準的」生活の概念を具体化していった戦間期,「国民生活」の概念によって〈生活の論理〉を決定的に立ち上がらせた戦時期を経て,初めて可能となった.
著者
金野 美奈子
出版者
神戸大学大学院国際文化学研究科
雑誌
国際文化学研究 (ISSN:13405217)
巻号頁・発行日
no.28, pp.1-33, 2007-07

Is 'gender' still a useful concept for social analysis? This paper answers positively to this question by reconceptualizing gender for a more open understanding. From an interdisciplinary perspective it takes up several important contributions in the last decade to determine a major theoretical problem they faced. Recent theoretical attempts can be categorized in three distinctive approaches by the analytical concepts mainly used in these attempts: the action approach, the social structure approach, and the power approach. This paper examines representative theories from each of these approaches. The theory of Judith Butler (literally criticism) and West and Zimmerman (sociology) from the action approach, Iris Marion Young (political philosophy) from the social structure approach, Ehara Yumiko (sociology) from the power approach. Focusing on different aspects of gender, these theorists commonly faced the problem of subjectivity and objectivity. Although they try to theorize gender as part of objective structure of society, their arguments lead them to a point where they have to confront the fact that the social is fundamentally constituted by the subjective. Yet they have so far failed to fully explore its implication so that they remain unable to grasp the whole spectrum of the gendered social reality, which is inherently pluralistic. This paper draws on the theory of social institution by Seiyama Kazuo, one of the most sophisticated theoretical statements within the tradition of interpretative sociology, and apply it to the theorizing of gender. Although Seiyama does not focus on gender, analytical concepts he provides are nonetheless useful. His main theoretical contribution is that he establishes the centrality of the subjective within the social, as well as that he shows a clear understanding of how the social reality takes on such powerful objectivity for social actors. He distinguishes two components in the social reality, namely, purely 'empirical existence' and 'ideal existence.' Ideal existence exists only in the social reality, which is ultimately constituted by the actors' meaning-endowing subjectivity, but nonetheless forms a fundamental component of the social reality. 'Woman' and 'man' can be understood as primary examples of such ideal existence. Thus understood, the concept of gender will enable us to relate to the centrality of subjectivity in the constitution of the gendered social reality. This also opens up new horizons for the gender analysis that have tended to narrowly focus on identifying injustice suffered by women, to fully incorporate the enabling as well as constraining construction of gender in a variety of contexts and contents into both empirical and normative analysis of the social.
著者
荻野 雅宏 川本 俊樹 金 彪
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.96-103, 2004-02-20
被引用文献数
7

本邦はスポーツに関連する神経外傷の統計に乏しく,発生頻度や種目別好発病型についての解析は困難であるが,報告されている重症頭部外傷は多くが急性硬膜下血腫で,アメリカンフットボール,ラグビー,柔道などに多い.米国からはアイスホッケー,アメリカンフットボール,サッカーに脳震盪が好発するとの報告がある.脊椎脊髄損傷は年間約数百例と推察される.種目としては水泳,スキー,ラグビー(アメリカンフットボール,サッカーを含む)に多い.軽症神経外傷(いわゆる脳震盪)の診断と受傷後の復帰の判断は. American Academy of NeurologyやConcussion in Sports Group などにより提唱された基準のもとに行うべきである.