著者
金 甲鉉
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科 : 都市文化研究センター
雑誌
都市文化研究 = Studies in urban cultures (ISSN:13483293)
巻号頁・発行日
no.22, pp.75-80, 2020-03

はじめに : 中国書院研究は早く1920年代から始まり, 2000年代に入ってからその数が爆発的に増加し, 2005年以降毎年200件程度の研究が発表されている。その動向について簡単にまとめると, (1)多くの書院関連資料の整理による研究土台の構築, (2)書院の教育機能への関心が高く, 特に書院の官学化についての論議が多いこと, (3)2000年以降, 書院研究数が顕著に増加するが, その内容においては既存研究の成果を踏襲するものが多いこと, (4)研究分野の多様化(文学, 娯楽面など), (5)既存研究の再検討(地域社会や仏教との関係)などの特徴があるといえる。その中で現今までの書院研究は大きく2つの問題を抱えている。すなわち, 第一は研究対象に関する問題, 第二は扱っている史料に関する問題である。……
著者
川道 美枝子 川道 武男 山本 憲一 八尋 由佳 間 恭子 金田 正人 加藤 卓也
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.633-641, 2013-06

アライグマ(Procyon lotor)は北米原産の食肉目アライグマ科に属する中型の哺乳類である。日本での最初の野生化は,1962年岐阜県犬山市の施設で飼育されていた個体からと言われる(環境省,2011)。1970年代末に放映された連続テレビアニメ「あらいぐまラスカル」が人気を呼んだのも一因と考えられるが,ペットとして多数が北米から輸入されるようになった。その後,各地でのアライグマの拡大で,農作物の被害もあり,1994年に狩猟獣に指定され,有害駆除が容易となった。しかしながら,アライグマの拡大は進み,1998年には日本哺乳類学会が対策を求める決議を採択した(哺乳類保護管理専門委員会,1999)。アライグマが原産地で狂犬病を媒介することから,2000年に狂犬病予防法による動物検疫対象に指定されて輸入規制されるまでに(神山,2008),日本に多数が輸入されたが,輸入の実数は不明である。アライグマなどの侵略的外来生物の輸入や日本国内での増加を抑制するために2004年,「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(以降外来生物法とする)」が成立し,2005年に施行され,アライグマは輸入,販売,飼養,運搬が規制される特定外来生物に指定された。しかし,法律施行までにすでに日本各地にアライグマは広がっていた。狩猟統計によると(環境省HP),2004年には22道府県で3,287頭のアライグマ捕獲が記録されている。2010年には狩猟,有害駆除,外来生物法に基づく捕獲で24,091頭が捕獲された(狩猟統計)。2010年に全47都道府県に分布することが確認された(国立環境研究所侵入種データベース,2010)。アライグマのもたらす被害としては,自然生態系への被害,農作物や養魚への被害,民家や社寺などへの侵入による汚損・破壊の被害,病気の伝搬の可能性が挙げられる。日本各地に分布するアライグマは主にペット由来とみなされる。アライグマは成獣になると飼育困難になり,野外に放されたり,器用な手先を使って檻から逃走して,各地で野生化したと考えられる。外来生物法が施行されるまでは,捕獲されたアライグマを奥山放獣するようにという行政指導も行われた。また,有害駆除が農作物被害のみに対応している場合も多く,家屋侵入被害は駆除対象とされなかったため,市民による違法捕獲後に山などに放されるケースも多かったようである。そうした事情がアライグマの急速な拡大に拍車をかけたと考えられる。
著者
三浦 春水 金本 東学 森田 達志 柵木 利明
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.701-705, 2001-09-20
参考文献数
9
被引用文献数
2

両後肢不全麻痺を呈する猫が来院後, 時間経過とともに後弓反張を呈し, 昏睡状態に陥った.血液検査, ウイルス検査, X線検査, CT検査などの各種検査および対症療法を実施したが, 原因不明のまま死亡した.剖検において, 脳底部に長さ13cmの虫体1隻, ならびに三尖弁の腱索に絡み付いた長さ9.5cmの虫体1隻が認められた.また, 病理組織検査において左側脳室から側頭葉を経て髄膜下にいたる虫道が確認された.検出された2隻の虫体は, ともに雄の犬糸状虫<I>Dirofilam immitis</I>であり, 総排泄腔より交接刺が突出していることから未成熟虫から成虫のステージの虫体であると同定された.以上ヒの所見より, 後弓反張を呈した神経症状は犬糸状虫の脳内迷入が原因であると考えられた.
著者
金安 顕一
出版者
Cukr編集部
雑誌
ツックル
巻号頁・発行日
no.1, pp.34-37, 2005-03
著者
金子 幸裕
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.102-108, 2013-05-01 (Released:2013-06-03)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

低出生体重(LBW)は心臓手術成績を悪化させる因子である.わが国では先天性心疾患(CHD)を有する児の1/3 がLBW であり,LBW 児の治療成績はCHD 全体の治療成績を左右する.LBW 児の心疾患に対して,正常出生体重児と同じ時期に手術を施行するのが望ましいとされているが,実際には半数程度の例で手術を遅らせる判断がなされており,手術を遅らせない症例と成績はほぼ変らない.姑息術より心内修復術が望ましいとされているが,超低体重児や合併疾患を有する例ではハイブリッド手術や経皮的カテーテル介入なども行われている.LBW が治療成績に与える影響は心疾患の種類によって異なるので,体重,心疾患の種類,合併疾患などに応じて症例ごとに治療方針を立てることが望ましい.
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 尾前 千寿 大塚 彰 沖 貞明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A1031, 2005

【はじめに】<BR>足底圧(以下COP)や足底圧軌跡(以下COP軌跡)に関する研究は計測機器の発展により容易に可能になった.中村らによると裸足歩行では立脚期におけるCOPは踵部中央から出発して足底のやや外側に片寄って小趾球に達し,ここから内側に向かって母趾球を通り母趾に抜けるとされている.さらにCOPやCOP軌跡は杖の使用や,靴の着用により変化する事が多く報告されている.しかし,健常人の裸足歩行におけるCOPの研究においても,正常パターンから逸脱したものを散見する.そこで本研究では,健常人のCOPに影響を及ぼす因子を検討する.第一報として足趾機能および歩行速度がCOP,特に母趾荷重量に及ぼす影響を報告する.<BR>【方法】<BR>対象は足趾や足部に既往の無い健常成人12名とした.足趾機能の評価には足趾によるジャンケン(グー=全趾屈曲・チョキ=母趾と他趾の独立した運動・パー=外転)を指標として用い,全て可能なものをN群,一つでも不可能なものをP群とした.10mの歩行路を通常速・高速にて歩行させ,Nitta社製F-scanを使用しCOPの計測を行った.母趾部分のCOPピーク値を計測し,歩行速度およびN群P群における比較を行った.また歩行中の重複歩距離,歩行速度,歩数をデジタルビデオカメラにより計測し,各群間における比較を行った。<BR>【結果】<BR>N群における母趾荷重量は通常速時9.69±4.78kgf,高速時15.4±7.64kgfとなり,P群における母趾荷重量は通常速時10.07±3.67kgf,高速時11.53±4.71kgfとなった.歩行速度の上昇に伴いN群における母趾荷重量に有意な増加を認めた.P群における有意差は認められなかった.N群およびP群における比較では有意差は見られなかったが,高速時における母趾荷重量に増加傾向を認めた.重複歩距離は通常速時に比べN群では平均130%,P群では平均107%増加した.歩数および歩行速度における有意差は認められなかった.<BR>【考察・まとめ】<BR>P群では歩行速度が増加しても母趾荷重量はわずかな増加しか認められなかったが,N群では顕著な増加が認められた.母趾荷重量のピーク値はいずれも踵離地以降に計測されており,母趾荷重が蹴り出しに影響を及ぼす可能性が示唆された.加えて,母趾荷重量の増減が重複歩距離に影響を及ぼす可能性が考えられた.牧川らは蹴り出し時の母趾の重要性を指摘しており,今回の実験においても同様の結果が得られたと考えられる.N群では母趾荷重量に増加傾向を認めており,その結果大幅な重複歩距離の延長につながったと考えられる.一方,P群では蹴り出し期の母趾荷重が不十分な為に,強い蹴り出しが行えずN群より重複歩距離の伸び率が少ないと考えられた.足趾機能が踏み返し期の母趾荷重量を通して重複歩距離に影響を与えるというメカニズムが考えられた.
著者
玉盛 令子 金澤 寿久 末吉 美紀 木村 佳代 与儀 哲弘 仲田 千賀子 湧川 尚子 貞松 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.699, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】今回、退院前訪問指導実施後、理学療法士(以下PT)が問題点としてアプローチを行った住宅改修箇所が日常生活上有効利用されているか、又、介護者への指導が適切であったのかについて調査を行ったので報告する。【対象及び方法】退院前訪問指導実施後に自宅復帰した脳血管障害症例45名を対象とした。方法は、退院前訪問指導実施時、PTが行った指導内容や住宅改修箇所が的確であったか、又、退院後有効利用されているかを再訪問し調査した。退院後自宅生活に適応し、しているADLが行えている対象者を指導適切群、退院後住宅改修箇所が未使用であったり、住宅改修そのものに不備な点が見られたり、介護者の介助方法の理解不足が認められた対象者を指導不適切群と群分けを行った。そしてADL変化に対しFIM、本人の意欲に対し意欲の指標、介護力に対し介護力スケールと過剰介護度スケールを使用し両群を比較した。【結果】指導適切群は24名で、(FIM平均70. 6点、意欲指標9.3点、介護力スケール17.1点、過剰介護度スケール:過剰であるが5名、過剰でないが19名)であり、指導不適切群は21名で(FIM平均60.1点、意欲指標8点、介護力スケール15.4点、過剰介護度スケール:過剰であるが15名、過剰でないが6名)であった。マンホイットニーの検定の結果、FIMでは有意差が認められなかったが、意欲の指標、介護力スケール、過剰介護度スケールにおいて有意差が認められた。【考察】今回の調査より、指導適切群では、住宅改修箇所が有効利用され、介護度スケールにおいても[過剰でない]を示し、介護者のADL面に対する理解が高く、又、意欲の指標や、介護力スケールの平均値が指導不適切群に比べ高値を示していた。指導不適切群では、住宅改修不足、過剰改修、介助者に対してのセルフケア指導不足があげられた。又、意欲、過剰介護、介護力スケールに有意差が認められ、過剰介護度スケールにおいても[過剰である]を示し、介護者のADL面の理解が低く、結果指導適切群に比べ低値となった。調査より、PT・業者・家族間の改修箇所に関する意見が相違したまま改修工事を着工した例や、病棟内で実際に「しているADL」をそのまま患者の住環境に適応できるものと予測し、PTの住環境に対する確認が不十分なままに自宅退院した結果、家族の過剰介護やADL能力低下を招いていると推測された。【終わりに】今回、退院前訪問指導実施後自宅復帰した症例45名に対し、PTが指導した住環境設定が有効利用されているか調査を行った。結果、PTが病棟生活遂行レベルと自宅生活とを同一化し指導、改修を施行したケースが多くあげられた。今後これらの問題点を再度見直し退院時訪問時に住環境における日常生活にどれだけ適応出来るかについての視点向上が必要だと考えられた。
著者
金井 静香
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.p339-371, 1995-05

個人情報保護のため削除部分あり本稿では、中世における公家領安堵の実態を明らかにし、安堵が公家を編成する上で果たしてきた役割について分析を行った。鎌倉後期、本家や治天の君は、本主へ所領を返付するべく努めていたが、その実現には相当の困難を伴っていた。治天の君の安堵権能と本家のそれとが互いに拮抗する当時においては、安堵者間の相互交渉が、被安堵者を確定する上で重要な役割を果たしていた。また安堵にあたり、申請した公家と安堵者の間の主従制的関係は依然重視されたが、公家領相論が増加する中、安堵獲得のために申請者が満たすべき条件は一層厳しくなった。その結果、安堵が権門・諸家の間の相互関係を混乱させる事態も生じた。このような状況を大きく変化させたのが、建武新政期における後醍醐天皇の安堵政策である。この時期に、家門管領者の地位が安堵対象となり、家領の一括安堵が家門安堵と連動させて行われた。この家門・家領一括安堵の権能は、南北朝期には治天の君の行使するところとなり、それによって家門と家領の相関性が高められた。そして治天の君は、安堵によって公家を編成することが可能になった。
著者
大川 裕行 坂野 裕洋 梶原 史恵 江西 一成 田島 文博 金森 雅夫 緒方 甫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0782, 2005

【はじめに】車いすマラソンは障害者スポーツの中でも過酷な競技の一つである.選手のコンディションを把握できれば安全な競技運営に加え,高いパフォーマンスの発揮を可能にすることが考えられる.そこで,マラソン競技の前後で選手の疲労度とストレス,免疫機能を調査し若干の知見を得たので報告する.<BR>【方法】第23回大分国際車いすマラソン大会出場選手中,協力の得られた選手59名を対象とした.その中でデータの揃っている者46名(平均年齢37.3±10.4歳,フルマラソン出場選手22名,ハーフマラソン出場選手24名,男性44名,女性2名,クラス2;7名,クラス3;39名)の結果を検討した.調査項目は,心拍数,血圧,主観的疲労度,コルチゾール,免疫グロブリンA(IgA),競技順位とした.心拍数と血圧は競技前日に測定した.競技前日,競技開始直前,競技終了直後,競技翌日に主観的疲労度をvisual analog scaleで測定し,同時に採取した唾液からコルチゾール,IgAを測定した.調査実施に際しては十分な説明を行い,文書による同意を得て行った.<BR>【結果】測定期間中にコルチゾール,IgAともに正常範囲から逸脱した選手はいなかった.選手の競技前日の心拍数と競技順位,コルチゾールには有意な相関関係が認められた(p<0.05).競技前日を基準として競技直前,競技直後,競技翌日の変化率を求めたところ,主観的疲労度は45.6%,214.1%,58.7%,コルチゾールは73.5%,91.0%,30.0%,IgAは2.0%,5.0%,10.0%に変化していた.競技前日の主観的疲労度,血圧,IgAと競技順位には関係を認めなかった. <BR>【考察】選手の主観的疲労度は競技終了直後にピークを示し,競技翌日にも競技前日の値に戻っていなかった.選手は競技翌日にも中等度の疲労を感じていた.一方,ストレスホルモンであるコルチゾールは競技翌日に競技前日の値に戻っていた.選手の主観的疲労度と客観的なストレス指標には乖離があることが分かった.競技前日のコルチゾールが競技前日の心拍数と有意に相関し,競技順位と有意に相関したことは,トレーニングにより一回拍出量が増加し安静時心拍数が低下している選手,競技開始前に落ち着きを保っている選手は競技成績が優れているという結果を示すものである.IgAの値は競技翌日にピークを示した.選手の主観的疲労度とは異なり車いすマラソンにより高まった選手の免疫機能は運動後にさらに向上していた.選手にとって車いすマラソンは免疫機能を高める適度な運動強度である事が示唆された.さらに詳細な調査を続けることで選手の安全管理と競技力向上へ有益な情報が提供できる可能性がある.