著者
木津 暢彦 金濱 晋 鎌田 浩嗣 上野 圭介 長井 勝栄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.35-94, 2007-03-28

この報告は,第43次南極地域観測隊気象部門が,2002年2月1日から2003年1月31日まで,昭和基地を中心に行った気象観測結果をまとめたものである.観測方法,測器,統計方法等は,第42次隊とほぼ同様である. 越冬期間中,特記される気象現象として,次のものが挙げられる.1) 地上気象観測では,5月から10月にかけて気温が平年より高く,月平均気温の高い方,日最高気温の月平均の高い方,日最低気温の月平均の高い方の極値の更新があった.また9月中旬にあったA級ブリザードは,最大瞬間風速57.9m/s, 最大10分間平均風速45.4m/sであった.これは9月として1位,通年の統計でも3位の強風であった.2) 高層気象観測では,成層圏突然昇温が例年より早く発現(7月上旬)し,9月末には,南半球では初めて観測された極渦の2分離を伴う成層圏大突然昇温が起こった.3) オゾン全量観測においては,8月上旬から10月中旬にかけてオゾンホールを観測したが,10月下旬以降はこの20年間の平均よりも多い値で推移した.
著者
小金丸 正明 池田 徹 宮崎 則幸 友景 肇
出版者
社団法人エレクトロニクス実装学会
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.208-220, 2009-05-01
被引用文献数
2 3

実装応力に起因するnMOSFETのDC特性変動を,ドリフト拡散デバイスシミュレーションにより評価する手法を検討した。応力効果をデバイスシミュレーション上で取り扱うための電子移動度モデルを検討し,実験結果との比較からその妥当性を検証した。この移動度モデルでは,応力によるSi伝導帯エネルギ変化,および伝導帯エネルギ変化によって引き起こされる電子存在確率と散乱確率の変化を考慮した。このシミュレーション手法を用いて,QFP樹脂封止にともなうnMOSFETのDC特性変動を評価した。その結果,実験で得られたドレイン電流の変動,しきい値電圧の挙動および相互コンダクタンスの変動を再現することができた。
著者
金岡 晃 勝野 恭治 岡本 栄司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.682-690, 2010-03-15

電子メールを通じて感染するマスメール型ワームは数多い種類のワームの中で多くの割合を占め,さらに繁殖性や生存力の強さから社会的な問題になっている.現在ワームに焦点を当てた研究が多く行われているが,マスメール型ワームの感染の特徴であるメーリングリストを経由した感染を扱った研究はほとんど行われていないため,マスメール型ワームの感染プロセスの特徴がいまだ詳細に解析されていない.本論文では,メーリングリストの効果を包含したマスメール型ワームの感染数理モデルを提案する.提案モデルは,メーリングリストの効果に加えて,現実社会に沿った電子メールによる社会ネットワーク構造を反映することが可能である.さらに本論文では提案モデルに基づいてシミュレーションを行い,従来研究では分からなかった,メーリングリストの影響効果が感染初期で強く働いていることを解明することができた.
著者
金子 孝夫 大室 仲 間野 一則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1196-1208, 2000-11-25

新聞や広報誌などの最新情報や地域情報を朗読した音声を, 音声符号化技術により情報圧縮してPCサーバのディスクに蓄積し, ISDN回線を使って視覚障害者の家庭の受信装置に配信する朗読配信システムを開発した.朗読音声の圧縮には, 低ビットレート音声符号化技術DualSpeechを開発して導入し, 朗読音声の品質をほとんど劣化させることなく, 情報量を約1/18に削減して高速に配信できるようにした.また, 受信装置に内蔵した1メガバイトのメモリに, 約90分間の朗読音声をコンパクトに蓄積でき, しかも蓄積した情報内容は, インデックス検索機能によって瞬時に検索できる.これらの特長によって, 配信に要する時間と通信料を削減するとともに, 視覚障害者の知りたい情報をいつでも繰り返し聴ける魅力ある朗読配信サービスを実現した.この朗読配信システムの性能を評価した結果, 朗読音声データは再生時間の約1/8の短時間で受信でき, 再生音声はパーソナルハンディホンシステム(PHS)と同等の高い品質が得られた.また, 約50名の視覚障害者を対象に, 音声圧縮による朗読配信システムを使ったサービス実験を行った.その結果, 視覚障害者が自ら選択できる身近な情報を充実すること, 情報内容の更新頻度を高くすること, 受信装置の操作性をいっそう向上することなどの課題が, アンケート結果から明らかとなった.
著者
金 鉱敏 官路 史明 小久保 正 中村 孝志
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi (ISSN:18821022)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1218, pp.111-116, 1997-02-01
被引用文献数
13 132

The essential requirement for an artificial material to bond to living bone is the formation of bonelike apatite layer on its surface in the living body. This apatite layer can be reproduced on its surface even in a simulated body fluid (SBF) with ion concentrations nearly equal to those of human blood plasma. In the present study, Ti metal was treated with various NaOH aqueous solutions, and apatite formation on the resultant metals were examined in SBF. A sodium titanate hydrogel layer was formed on the surface of Ti metal, when it was treated with NaOH solutions with concentrations higher than 0.5 M at 60℃ for periods longer than 24h. Thus treated metals exchanged Na^+ ion in the surface layer for H_3O^+ ion in SBF to produce a hydrated titania on their surfaces and to increase the degree of supersaturation with respect to the apatite of SBF. The hydrated titania induced the apatite nucleation and the increased supersaturation accelerated the apatite nucleation. Thus formed apatite nuclei spontaneously grow by consuming calcium and phosphate ions from SBF. These results indicate that bioactive metal can be obtained by a simple alkali treatment.
著者
金子 満 中嶋 正之
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1288-1295, 1995-10-20
被引用文献数
7 1

コンピュータによる, セルアニメタッチの映像表現を行うための新しい手法について述べる.セルアニメは, 映画の基本的な表現方法のひとつとして幅広く使われており, その人気は高い.セルアニメ制作は, 手作業により1枚1枚絵を描き, 色を塗り, カメラで撮影する.そのため1970年代には, まずアメリカにおいて制作産業そのものが空洞化し, 80年代には日本でも同じ現象が始まった.これに対応するために, 色塗りと撮影の部分をコンピュータ化した, ディジタルインクアンドペイントシステムが実用化された.しかし, コンピュータが代替できる工程が少ないため, 日本ではあまり利用されていない.本論文では, セルアニメ制作の基幹部分である原画および動画制作のコンピュータ化に, 3次元コンピュータグラフィックス技術を利用するアルゴリズムについて提案する.これまで, 2次元CG技術のみの利用にとどまっていたセルアニメタッチ映像制作を大きく変革させるものであるが, 本論文では, 3次元CG技術を2次元アニメ制作に利用する際に必要なアルゴリズムを考察し, 次世代アニメ制作システムの構築の第1段階としたい.
著者
加藤 みゆき 田村 朝子 水落 由美子 大森 正司 難波 敦子 宮川 金二郎
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.561-565, 1993-07-15
被引用文献数
5

Awa-bancha, a kind of post-heating fermented tea, is produced locally at remote and secluded place in the mountains of Tokushima prefecture in Japan. The present study was undertaken to investigate the changes of the components in Awa-bancha during the manufacturing process. Optical density of the tea infusion at 380 nm increased, but amounts of catechins and amino acids in the infusion decreased with the proceeding of the process. The presence of organic acid such as oxalic and citric acids were found before the fermentation. In addition to the above acids, lactic and acetic acids were identified after the fermentation, which were thought to be products of microbiological fermentation. Content of caffeine did not change during the process.
著者
上路 雅子 金沢 純 岩撫 才次郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.371-377, 1978-11-20
被引用文献数
1

殺虫剤, BPMC (2-sec-Butylphenyl N-Methylcarbamate)の, キュウリおよびコマツナにおける根からの吸収と, 植物体への移行について検討した.微粒剤あるいは粉剤として土壌に施用した場合, 土壌中のBPMCは根から吸収され, 地上部に移行が認められたが, キュウリではおもに根に検出され茎, 葉, 実には少なく, コマツナにおいては根, 茎葉部でのBPMCの分布はほとんど同じで, 吸収, 移行が植物によって異なる結果を得た.さらに, 吸収, 移行は微粒剤を処理したときのほうが粉剤の場合よりも多く, コマツナでは処理後11日から21日後に吸収, 移行は最高となり, その後減少した.また, 処理した土壌が火山灰土壌の場合, 沖積土壌と比かくして, 根への吸収が極端に少なく, 茎, 葉, 実にはBPMCは検出されなかった.処理されたBPMCは土壌中で漸減したが, 粉剤で処理した土壌のほうが, 消失速度が早かった.処理後41日では土壌中の残留は, 両剤型によって大きな差は認められなかった.アセトン抽出後の土壌を0.5N HClで処理することにより抽出される土壌に吸着されたBPMCは, 微粒剤で処理された場合に多く検出された.
著者
松本 俊之 志田 敬介 金沢 孝
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.332-343, 2002-02-15
被引用文献数
4

立位姿勢・3次元作業域における動力式ドライバーを用いたタッピンねじ締め作業において, 作業方向と作業位置による作業者の作業姿勢が締結品質や作業負荷に影響すると考えられる.このことを確かめるための実証的研究を行った.実験結果から, 作業可能と思われている作業方向と作業位置でも締めつけトルクが許容範囲を下回ることがあり, 不良締結となる場合があり, 不良締結となる作業方向と作業位置は, 左方向では身体の右側の作業位置, 前方向では身体の前方の遠い作業位置, 下方向では身体の高い位置であることが判明した.また, 作業方向と作業位置によって, 最大押圧力と最大傾き力は一様でなく, 力をかけすぎる作業方向と作業位置は, 左方向では身体の正面の作業位置, 前方向ではほとんどの作業位置である, 傾き力が大きい作業方向と作業位置は, 左方向ではほとんどの作業位置, 前方向では低い作業位置であることが判明した.作業設計と製品設計において, これらのことを考慮する必要がある.
著者
金谷 さとみ
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.285-287, 2005-06-20

社会情勢と臨床教育 地域で暮らす要介護高齢者, 障害者およびその家族は保健, 医療, 福祉にまたがるサービスニーズを持っており, 地域での関係機関, 職種間の連携は非常に重要なものとなる。介護保険制度の導入で要介護(支援)高齢者におけるものはかなり整備されたが, 介護保険対象外の障害者においても同様の整備がすすんでいる。現在, 保健, 医療, 福祉の方向性は, 入院期間の短縮と在宅ケアの推進へ, そして中央機関から地方機関へと大きく流れを変え, 理学療法は理学療法士の数が圧倒的に少ない現状と, 増加を見込まれる将来を踏まえ, 前述のような社会変化とともに, その役割も少なからず変化していくものと考えられる(図1)。生活支援系での理学療法は, 医療施設で一時的に提供される機能回復とは異なり, 長期的な経過の中で提供される機能回復, 機能維持(または低下の予防), 機能低下への適切な対応と捉えることができる。そして, その目的は対象者の生活全体を支援し, (本人の望む)社会参加や社会活動を促すことにあり, つまり, それは保健, 医療, 福祉のみならず, 教育, 雇用, 都市計画などを包括するノーマライゼーション(normalization)を目的とする考え方に到達する。
著者
金子 雄 春本 要 福村 真哉 下條 真司 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.18, pp.1-15, 2005-12-15
被引用文献数
17

近年,携帯端末の普及やセンサ技術の発展にともない,場所や時間に依存せずに遍在する情報を利用できるユビキタス環境が整いつつある.ユビキタス環境では,場所や時間などの状況を自動的に考慮して人々の意思決定を支援するコンテキストアウェアサービスが実現できる.多くの場合,人々は行動を起こす際に自分や各種施設の位置を考慮するため,コンテキストアウェアサービスでは任意の位置に存在する情報資源を効率良く検索できる機構が重要となる.そこで本研究では端末の位置情報に基づくP2P ネットワークであるLL-Net(Location-based Logical Network)を提案する.LL-Net では緯度,経度によって物理領域を格子状のエリアに分割する.各端末はエリア内でネットワークを構築し,またエリアを階層的にとらえてエリア間にリンクを構築する.これにより,LL-Netはクエリをフラッディングする範囲を任意の領域のみに制限できる.また本研究ではシミュレーションによって,LL-Net が任意の領域へ効率良くクエリを転送できることを示す.With the popularization of mobile devices and the development of advanced sensor devices, it is becoming feasible to realize a ubiquitous environment that enables us to publish and utilize information independent of location and time. In a ubiquitous environment, a number of context-aware services will be developed which provide services depending on various contexts such as location and time. It is indispensable for such services to retrieve locationdependent information efficiently. In this paper, we propose a location-based P2P network called the LL-Net (Location-based Logical Network). The LL-Net divides the world into areas by latitude and longitude. Terminals in each area construct an intra-area network, and each terminal establishes inter-area links hierarchically. By constructing such a network, the LL-Net can limit the message flooding range only to a specified region. The simulation results show that the LL-Net can efficiently propagate a query to a specified region compared to the existing P2P networks.
著者
金井 清昌
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.407-412, 1981-05-01

人工衛星ランドサットは, リモートセンシングによって地球の資源探査や, 環境状況の調査などを目的として打上げられた.その宇宙から地球を観測した画像データは, 広範な研究機関で応用し活用されている.NHKは, 去る1月4日(再放送1月10日)総合テレビジョンにおいて, このランドサット衛星を骨子にした番組「地球接写」(宇宙からみた新春)を放送した.