著者
橋本 正樹 藤澤 一樹 宮本 久仁男 金 美羅 辻 秀典 田中 英彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.71, pp.393-400, 2007-07-20
参考文献数
16
被引用文献数
1

分散システムは、単一システムと比較して経済性、速度、冗長性、拡張性、柔軟性といった面で優れているため、その実現に向けて従来より多くの研究が行われてきた。しかしながら、それらの諸研究における実装の多くはミドルウェアやアプリケーションのような上位層で実現されているために権限管理の粒度が粗くなり、システム全体に対する適切な安全性確保を困難にしている。このため本研究では、ディペンダブルな分散システムの構築を目的としたシステムソフトウェアによる細粒度の権限管理方式を検討する。また、その実装としてCapabilityを利用した手法について検討する。This paper describes the use of operating system for the realization of distributed secure computing infrastructure. In particular, it describes a few resource management schemes for distributed environment, addressing the fine-grained protection and the principle of least privilege. These are compared each other in terms of the features they offer in the context of secure computing: Reference monitor concept, secure channel, authorization and naming. Finally, we suggest a prototype of our system and the future plan.
著者
伊東 励 金 晧 久保 博英 金子 政則 小林 繁 富 成志 張 庭〓 王 文奎
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州齒科學會雜誌 : Kyushu-Shika-Gakkai-zasshi (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.947-956, 1996-12-25
被引用文献数
12

In August to September of 1995 the authors conducted an anthropometry of the head and face and measurement of the dental arch on Chinese Liao-Ning (66 males and 83 females), and the results were discussed. Furthermore, the correlations between the measurements of head and face, and those of dental arches and palate height were studied. The main results obtained are as follows : 1) Head length : the mean value for the male is 181.0mm and for the female 170.4mm. Both belong to Middle type. 2) Head breadth : the mean value for the male is 155.3mm and for the female 151.6mm. Male belong to Middle type and females belong to Wide type. 3) Bizygomatic breadth : the mean value for the male is 140.3mm and for the female 133.5mm. Both belong to Middle type. 4) Morphological face height : the mean value for the male is 124.0mm and for the female 114.6mm. Both belong to High type. 5) The head-type of the Chinese Liao-Ning belongs to Hyperbrachycephalic type and the face-type to Leptoprosopic type. 6) Correlation : The significant positive correlation is noted between the morphological face height and lower dental arch length only in the male, while that between morphological face height and palate heght is noted in both male and female.
著者
金 昌柱 河村 善也
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.315-330, 1996-07-25
被引用文献数
4

この論文では中国東北部の後期更新世哺乳動物化石とその産出層に関する文献のデータをまとめて,この地域の後期更新世の動物相の特徴を明らかにした.この地域では,それらの化石にしばしば旧石器時代の人工遺物が伴い,後期更新世のユーラシア北部に栄えたマンモス動物群の典型的な要素であるマンモスとケサイが見られる.この地域の後期更新世の動物群には,(1)中期更新世の動物群より現生種が増え,絶滅種が減っている,(2)絶滅種の中には中期更新世やそれ以前の古型の要素はわずかしか含まれず,かわってユーラシアの寒冷地や乾燥地の要素が多い,(3)絶滅種には大型のものが多い,(4)現生種の中には現在の中国東北部に見られるものが多いほか,主にモンゴルやその西方の地域に分布する種も多い,(5)現在北方の寒冷地に分布する種が含まれている,といった特徴が見られる.この地域の動物群を,マンモス動物群としては典型的なシベリア東部の後期更新世動物群と比較すると,シベリア東部で代表的な種が中国東北部にも見られるが,シベリア東部の動物群の中で高度に寒冷地適応した種の中には,中国東北部で見られないものもある.中国北部の同時期の動物群と比較すると,中国東北部の動物群にはそれと共通する種が多いが,中国北部のものにはマンモス動物群の要素はほとんど見られない.日本で後期更新世の化石記録が豊富な本州・四国・九州地域の動物群と比較すると,本州・四国・九州地域のものでは固有種や森林要素が多いこと,マンモス動物群の要素が少ないことで中国東北部のものと明らかに異なっている.中国東北部の動物群は,後期更新世になってより現在のものに近づいた土着の動物群に寒冷地や乾燥地の要素が加わったものと考えられる.後期更新世以降の気候や植生の変化により,寒冷地や乾燥地の要素は,絶滅したり,北方や西方に分布域を移すことになったものと思われる.^<14>C年代の測定されている化石産地のデータにもとづいて,この地域でのマンモスやケサイの分布について考察した.マンモスやケサイはこの地域で21,000yrs.B.P.頃までは広く分布しており,マンモスは12,000yrs.B.P.頃,ケサイは10,000yrs.B.P.頃絶滅したようである.
著者
石川 博 久保田 和己 金政 泰彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.201, pp.19-23, 1999-07-21

XMLデータはWeb情報システムやEC/EDI応用で広く使われていくことが予想されるが、そのような応用では大量のXMLデータを通常対象とする。そのためには利用者がサーチ条件を指定できるようにして本当に必要なXMLデータのみを検索できるようにすることと、複数のXMLデータソースを統合利用できるようにすることが必要である。このためにXQLというXMLデータの問い合わせ言語を提案する。XQLは従来のデータベース標準(SQLやOQL)との整合性を考慮して設計されている。本稿ではXMLデータの問い合わせ言語の要件と機能について説明し、XML問い合わせ処理システムxQuesのためのXQLの実装について触れる。
著者
生田 祐介 村松 常司 森 勇示 金子 修己 金子 恵一 大河内 信之
出版者
愛知教育大学保健体育講座
雑誌
愛知教育大学保健体育講座研究紀要 (ISSN:13468359)
巻号頁・発行日
no.28, pp.27-36, 2003

愛知県三河地区の高等学校に在籍する1年生の保健体育授業「柔道」を受講した男子39名を対象として,生徒によるアンケート調査や感想文の分析をすること,柔道のイメージの変化を明らかにするとともに,その要因をつきとめるための柔道授業における授業分析を行った,今回の研究を通して以下のことが明らかになった。(1)生徒の学習活動時間分析から本単元には柔道の知識・技能に関する内容が多く含まれていることがわかった。効果別にみた教師発言からは肯定的発言が矯正的発言より多く,良い雰囲気で授業が行われていると言える。内容別にみた教師発言は学習活動時間と対応する結果が得られた。② 授業前アンケート調査から生徒は柔道授業に「体力の向上」を期待している。柔道授業後では「痛い」というイメージは低くなり,「おもしろさがある」「体力の向上に役立つ」は高くなった。本単元を受けたことで柔道は体力・精神面ともによい影響を与えると感じるようになった。授業後の調査ですべての生徒が「授業が楽しかった」と答え,授業を高く評価しており,特に教師に対する満足は高い。生徒の授業理解「試合のおもしろさがわかった」が最も高かった。 以上のことから,柔道の経験者と未経験者の混在する高等学校の柔道授業の中で,どのように授業が進められるとそれまでの経験に関係なく授業を楽しめるようになるかが示唆された。柔道授業を対象とした分析方法として,今回は一単元を対象として分析を試みたが,対象を増やすなど知見を増やしていくことなどの課題がある。本研究が今後の学校体育における柔道授業の発展のための手がかりの一つとなることを期待したい。
著者
石井 幹 三塚 あけみ 安部 直重 高崎 宏寿 大宮 正博 金子 香代子
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.93-105, 1981-03-15

屈斜路酪農研修施設において, 1979年5月と7月の2回に分けて, それぞれ15頭づつ導入したホルスタイン種去勢牛29頭に異性双児の雌1頭を含む30頭の間に行われた角突きと, 最高位牛を中心とする社会的順位の決定について, 春に1回, 夏に5回, 計6回調査して, 次のような結果をえた。1.第1回調査〔春期導入牛15頭(去勢牛14頭と雌1頭)〕1)新しく編成のうえ放牧した牛群は, 1日目には激しく闘ったが, 3日目には落着いた。放牧牛1頭1時間当りの角突き回数は1日目が1.3回, 2日目が0.8回, 3日目が0.08回であった。2)角突きでは体重の重い牛が全組み合わせの83%を勝ち, かつ社会的順位が上位の牛はいずれも平均体重より大きかった。3)最高位牛は最も大きい牛であった。4)異性双児の雌牛は10頭の去勢牛と闘い全敗して, 社会的順位は最下位となった。5)最高位牛が群のリーダーになった。6)最上位牛4頭には二つの三角関係があり, 順位型態は直線的, 絶対的ではなかった。2.第2回調査(春期導入牛15頭)1)春期導入牛群の上位牛における社会的順位には, 導入約3ヵ月後に若干の変化があった。2)第一順位とリーダーの地位にある牛は変らなかった。3)異性双児の雌牛の最下位という順位にも変更がなかった。3.第3回調査〔夏期導入牛15頭(去勢牛)〕一カ所に集められた後導入された夏期導入牛群には, 激しい闘争がみられなかったので, この牛群の社会的順位は分らなかった。4.第4回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛の最も体重の軽い3頭, 計18頭)1)夏期導入牛群に春期導入牛のなかの最も体重の軽い牛3頭を合流させたところ, 合流牛の異性双児の雌牛が先住牛群に対して, 最初の積極的闘争を行った。この雌牛は勝率0.93(13頭/14頭)をあげ, 最高位牛にだけ負けた。2)不明であった夏期導入牛群の最高位牛が明らかになった。それは異性双児の雌牛に勝った去勢牛であったが, 体重は群の平均値に近かった。5.第5回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛9頭, 計24頭)第4回調査の18頭の牛群に, 残りの春期導入牛群のなかの体重の軽い6頭を合流させたところ, 先住牛群の最高位牛が全合流牛と闘い全勝し, かつ全群のなかでも勝率1.00(9頭/9頭)をあげて, 新しい牛群の最高位牛となった。6.第6回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛15頭, 計30頭)第5回調査の24頭の牛群に, さらに春期導入牛の残りの6頭を合流させたところ, 春期導入牛群の最高位牛が勝率1.00(10頭/10頭)をあげて, 全群のなかで第一順位を占めた。7.先住牛群が休息形の時に牛を合流させても, 先住牛群が食草を開始するまで角突きを行わなかった。しかし, 食草時に合流させ屈斜路酪農研修施設において, 1979年5月と7月の2回に分けて, それぞれ15頭づつ導入したホルスタイン種去勢牛29頭に異性双児の雌1頭を含む30頭の間に行われた角突きと, 最高位牛を中心とする社会的順位の決定について, 春に1回, 夏に5回, 計6回調査して, 次のような結果をえた。1.第1回調査〔春期導入牛15頭(去勢牛14頭と雌1頭)〕1)新しく編成のうえ放牧した牛群は, 1日目には激しく闘ったが, 3日目には落着いた。放牧牛1頭1時間当りの角突き回数は1日目が1.3回, 2日目が0.8回, 3日目が0.08回であった。2)角突きでは体重の重い牛が全組み合わせの83%を勝ち, かつ社会的順位が上位の牛はいずれも平均体重より大きかった。3)最高位牛は最も大きい牛であった。4)異性双児の雌牛は10頭の去勢牛と闘い全敗して, 社会的順位は最下位となった。5)最高位牛が群のリーダーになった。6)最上位牛4頭には二つの三角関係があり, 順位型態は直線的, 絶対的ではなかった。2.第2回調査(春期導入牛15頭)1)春期導入牛群の上位牛における社会的順位には, 導入約3ヵ月後に若干の変化があった。2)第一順位とリーダーの地位にある牛は変らなかった。3)異性双児の雌牛の最下位という順位にも変更がなかった。3.第3回調査〔夏期導入牛15頭(去勢牛)〕一カ所に集められた後導入された夏期導入牛群には, 激しい闘争がみられなかったので, この牛群の社会的順位は分らなかった。4.第4回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛の最も体重の軽い3頭, 計18頭)1)夏期導入牛群に春期導入牛のなかの最も体重の軽い牛3頭を合流させたところ, 合流牛の異性双児の雌牛が先住牛群に対して, 最初の積極的闘争を行った。この雌牛は勝率0.93(13頭/14頭)をあげ, 最高位牛にだけ負けた。2)不明であった夏期導入牛群の最高位牛が明らかになった。それは異性双児の雌牛に勝った去勢牛であったが, 体重は群の平均値に近かった。5.第5回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛9頭, 計24頭)第4回調査の18頭の牛群に, 残りの春期導入牛群のなかの体重の軽い6頭を合流させたところ, 先住牛群の最高位牛が全合流牛と闘い全勝し, かつ全群のなかでも勝率1.00(9頭/9頭)をあげて, 新しい牛群の最高位牛となった。6.第6回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛15頭, 計30頭)第5回調査の24頭の牛群に, さらに春期導入牛の残りの6頭を合流させたところ, 春期導入牛群の最高位牛が勝率1.00(10頭/10頭)をあげて, 全群のなかで第一順位を占めた。7.先住牛群が休息形の時に牛を合流させても, 先住牛群が食草を開始するまで角突きを行わなかった。しかし, 食草時に合流させると, ただちに闘争を行った。8.体重差が大きい牛群では, 体重が最高位牛を決める最主要々因であった。しかし, 体重差の小さな半群では, 体重が決定的要因ではなかった。家畜の管理16(3) : 93-105.1981 1980年11月18日受理
著者
金井 崇
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.24-25, 1977-12-01
著者
中田 豊久 金井 秀明 國藤 進
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3962-3976, 2007-12-15

部屋の中でテレビのリモコンや携帯電話などをなくすことがある.本論文では,このような屋内での捜し物を手助けするシステムについて提案する.システムは,隠れた位置にある物であっても高い精度で位置を計測するために,超音波方式とActive RFIDからの計測値をパーティクルフィルタによって融合する.また,測定した位置をスポットライトで照らすことによって,ユーザに分かりやすく捜し物の位置を知らせる.このシステムを,構築した実験環境で性能試験を実施した.また,関連システムとの比較実験により,提案システムが捜し物を早く発見できることを明らかにした. : We propose a support system for finding lost objects indoors. The system employs active RFID and ultrasonic position detection to detect the position of a lost object. Even if a lost object is hidden by others, the system enables us to find the position by the two position detection devices. Since the system illuminates the position by using a spot of light, user can find it easily. From an experiment, we made clear ability of the system and the advantage of time to find it over a related system.
著者
金井 遵 須崎有康 八木 豊志樹 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.36, pp.155-162, 2007-04-06
被引用文献数
1

本稿では、DNS と P2P 技術を用いた、モバイル可能な小型組込み機器と HTTP-FUSE-KNOPPIX による、負荷分散機構や耐故障性を有するスケーラブルなシンクライアントシステムについて述べる。本研究では、キャッシュサーバ、RAID、DNS などを用いた負荷分散、耐故障性向上技術に加えて、DNS に P2P 技術を組み合わせることにより、小型機器によるサーバにおいても高いスケーラビリティを実現した。特に P2P 技術により、シンクライアントシステムでボトルネックとなりやすいクライアントの同時起動時の性能低下を、クライアントが同時に起動用サーバとなることで緩和した。また、多くのハイブリッド P2P システムでボトルネックとなる検索システムを軽量化することで、組込み機器など資源が制約されるサーバ環境においても十分なスケーラビリティを実現した。これらの機能を実装した組込みシンクライアントサーバ HTTP-FUSE-KNOPPIX-BOX において、クライアント8台で起動時間98秒と多数のサーバを利用したシンクライアントシステムと遜色ない性能を実現した。This paper describes an implementation of mobile thin-client system with scalability and fault-tolerance by DNS and P2P technology for embedded hardwares and HTTP-FUSE-KNOPPIX. DNS-Balance with P2P technology realizes more scalability by embedded servers in addition to cache servers, RAID, and DNS. The P2P system improves bootstrap performance by clients which distribute block files for other clients when many clients boot simultaneously. The mobile embedded servers with limited hardware resources have sufficient scalability by lightweight search system. Evaluation of embedded HTTP-FUSE-KNOPPIX-BOX with the P2P system has shown that it boots up 8 clients in 98 seconds and its performance holds up to existing thin clients.
著者
高橋 薫 村松 浩幸 椿本 弥生 金 隆子 金 俊次 村岡 明 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.97-100, 2009

本稿では,総合的な学習の時間にアントレプレナー教育(起業家教育)に取り組んでいる山形県米沢市立南原中学校の実践を,言語力育成の観点から評価した結果を報告する.同校の実践では,一連のビジネスのプロセスの中に,言語力育成に配慮した授業デザインがなされている.生徒の言語力の変容を,実践の前後に生徒が書いた意見文の質(客観的評価)と,実践後のアンケート(主観的評価)から評価した.その結果,実践後は産出する文章の質を向上させており,より高度な論証を行っていることが明らかになった.また,実践後のアンケートから,生徒は自らの言語力の伸張に自信を深めていることが確認された.以上のことから,客観的評価と主観的評価の双方から,言語力の伸張が確認され,授業デザインの効果が推察された.
著者
金 漢龍 堀江 武 中川 博視 和田 晋征
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.644-651, 1996-12-05
被引用文献数
17

温度傾斜型CO_2濃度制御チャンバー(TGC)を用い, 2段階のCO_2濃度(&cong;350μLL^<-1>, 690μLL^<-1>)と4段階の温度条件とを組み合わせて生育させた水稲(アキヒカリ)個体群の収量およびその構成要素器官の生長反応を1991年と1992年の2作期について検討した. 実験に供した温度範囲は, 全生育期間の平均気温として1991年は27.2〜31.1℃, 1992年は26.0〜29.3℃であった. 約2倍増のCO_2濃度(690μLL^<-1>)処理による水稲の最大増収率は最も低温, すなわち現行の外気温もしくはそれに近い温度条件下で得られ, 1991年と1992年にそれぞれ40%と22%であった. この収量増加は, 主としてCO_2濃度倍増処理による単位面積当たりの穎花数の増加に帰せられ, 登熟歩合や粒重に対するCO_2濃度の効果は相対的に小さかった. CO_2濃度倍増処理による穎花数の増加率, ひいては増収率の年次間差異は, N施肥量の年次間の違い(1991年: 24 gN m^<-2>, 1992年: 12 gN m^<-2>)を反映した結果と考えられる. 一方, 現行の気温より高温条件下における収量は, CO_2濃度にかかわらず, 気温上昇に伴って急激に低下した. 気温上昇にともなう減収程度はCO_2濃度倍増区で大きい傾向にあり, 高温条件下では収量に対するCO_2濃度の効果がみられなくなった. 高温条件下での収量低下の原因はまず高温による不稔穎花の増加に求められ, 次に不完全登熟籾の増加にあった. 不稔穎花の発生は開花期の日最高気温の平均値と最も密接に関係していることが認められた.