著者
篠崎 祐介 鈴木 美穂 冨士池 優美 北原 博雄 中田 幸司
出版者
日本リメディアル教育学会
雑誌
リメディアル教育研究 (ISSN:18810470)
巻号頁・発行日
pp.2021.07.20.03, (Released:2021-09-01)
参考文献数
11

主体的・対話的に批評を行わせる学修活動を取り入れた授業実践を実施し,批評文の変化を分析するとともに,批評文の変化が大きかったグループの学修活動の分析を会話を中心に行った。その結果,取り出した情報と解釈を結びつける理由づけが記述される等の批評文の変化が見られた。また,分析対象となったグループでは,散発的で単調な会話から相手の発言に関連づいた会話に展開していた。作品がただ面白いという感想から,作品の内容や表現に着目しつつ,他者にも捉えられる理由を求めようとする意識が共有されるようになっていった。一方で,批評においてどのような理由を持ち出すとよいのかという点をメタ的・批判的に意識化させることができなかったという実践上の課題が見出された。
著者
吉元 涼介 芳鐘 冬樹 鈴木 崇史
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-13, 2016

本研究は,利用者のコミュニケーションの状況や立ち寄る店舗の業種業態に着目して,商店街とショッピングモールの特徴を明らかにした.大宮駅東口方面の商店街,岩槻駅周辺の商店街,イオンモール浦和美園,それぞれにおいて利用者への質問紙調査を行った.質問紙調査の結果をもとに,ランダムフォレストによる回答者の分類実験を行ったところ,地区による差異が大きい項目は,利用者の属性,立ち寄り場所,同伴者,コミュニケーションの相手と内容などであることがわかった.特に,同伴者の有無・種別,すなわち,来訪時の集団形成に大きな違いがあることが示唆された.商店街の中でも,繁華街にある商店街(大宮)は,ランダムフォレストによる分類が難しく,地方の商店街(岩槻)と共通する特徴(同伴者の傾向)を持つ一方,ショッピングモール(浦和美園)と共通する特徴(コミュニケーションの傾向)も持つことがわかった.
著者
鈴木 凌斗 村上 弘晃 西山 勇毅 川原 圭博 瀬崎 薫
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングと新社会システム(MBL) (ISSN:21888817)
巻号頁・発行日
vol.2021-MBL-100, no.22, pp.1-6, 2021-08-26

屋内での滞在情報を正確に把握することで,混雑度の推定や集客情報,人流の把握など,様々なサービスを提供できる.Bluetooth ビーコンや WiFi の信号強度を用いた滞在場所推定手法では,低コストに滞在推定システムを導入できる.しかしながら,受信信号強度の不安定さや隣接した部屋から漏れる信号などが原因となり,単純な信号強度のみを用いた判定では,受信環境によっては滞在場所の誤判定が頻繁に発生する.本稿では,部屋ごとの滞在時間特性の違いを考慮に入れることにより誤判定を抑制する手法を提案する.提案手法では,部屋ごとの滞在時間の分布をワイブル分布にフィッティングし,生存時間解析を適用することによりユーザの状態を推定する.信号強度の強弱のみに基づく既存手法との比較のため,正解ラベル付きのデータを収集し評価実験を行った.
著者
川嵜 幹生 鈴木 和将 磯部 友護 渡辺 洋一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第26回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.27, 2015 (Released:2015-10-19)

不燃ごみとして捨てられる使用済み化粧品や医薬品についての処理処分に関わる課題について、本学会誌及び昨年度の研究発表会にて報告した。その主な要点は、①自治体が示している不燃ごみの出し方は、資源の出し方とは異なり、「中身を出し、軽くすすぐ」といった記述がない②化粧品、医薬品等の出し方に関する説明が少ない③使い切っていない化粧品や医薬品等が不燃ごみに混入しており、そのまま破砕され埋立処分されている④種類によっては、焼却灰より有機汚濁負荷能力が高いものもある等である。しかし、これまでの検討においては、不燃ごみ中に含まれている化粧品、医薬品等の量に関する調査は実施していなかった。そこで、不燃ごみ中に含まれている化粧品、医薬品等のピックアップ調査を行い、混入量に対する知見が得られたため報告する。
著者
渋川 祥子 鈴木 咲枝
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.58-63, 1985-03-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
6
被引用文献数
2

The following became clear after the comparison of potatoes both cooked with pressure pan and steamer.Cooking condition of pressure pan to attain the core of potatoes (150g) to the same hardness as that cooked with steamer was 5 min. for heating until steam leak and continuously heating for 3 min, and further intact holding for 5 min.Although the hardness of potato core became almost the same, the exterior of potato with pressure pan became overtender.Mushed potato made from the potato cooked with pressure pan was more sticky and harder than that with steamer. In the case of mushed potato with pressure pan, tissue were partially destructed and the amount of gelatinized starch which flowed out from tissue and the amount of soluble pectin were greater than the case of that with steamer.When cooking time was prolonged for 2 min, those tendency became more clearly.Both the consumption of gas and time required for cooking, in case of pressure pan, decreased by apporoximately one-half in quantity of those of those of steamer.
著者
鈴木 恭宜 大下 浩二郎 垂澤 芳明 野島 俊雄 豊島 健 藤本 裕
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.189-201, 2008-04-10 (Released:2008-10-06)
参考文献数
23
被引用文献数
1

This paper presents a probabilistic evaluation of electromagnetic interference caused by portable telephones in implantable cardiac pacemakers. Based on experimental results of electromagnetic interference in the 900 MHz and 1.5 GHz band PDC(Personal Digital Cellular)system in Japan, a distribution is extracted of the maximum distances between the affected pacemaker and a portable telephone. This paper shows that the distribution is approximated as a Rayleigh distribution using statistical analysis. The interfering probability for which the maximum distance of X cm is exceeded is defined based on the product of the cumulative distribution of the Rayleigh distribution and the ratio of the affected pacemaker types to the measured ones. The interfering probabilities that exceeded the maximum distance of 15 cm for the 900 MHz and 1.5 GHz band portable telephones are 5.0×10-4and 6.0×10-4, respectively. The expected values, which are a product of the interfering probability and the number of measured pacemaker types for the 900 MHz and 1.5 GHz band portable telephones, are 0.210 and 0.248, respectively. The continued surge in the number of pacemaker types indicates that the expected values will continue to increase. If the immunity of the new pacemaker types in the future maintains the same level as that in the present, this paper indicates that the maximum distance of the new pacemaker types must continue to be confirmed using the electromagnetic interference test.
著者
内藤 明美 森田 達也 神谷 浩平 鈴木 尚樹 田上 恵太 本成 登貴和 高橋 秀徳 中西 絵里香 中島 信久
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.255-260, 2021

<p>【背景】医療において文化的側面への配慮は重要である.本研究は沖縄・東北を例に首都圏と対比させ国内のがん医療・緩和ケアにおける地域差を調査した.【対象・方法】沖縄,東北,首都圏でがん医療に携わる医師を対象とした質問紙調査を行った.【結果】553名(沖縄187名,東北219名,首都圏147名)から回答を得た.地域差を比較したところ,沖縄では「最期の瞬間に家族全員が立ち会うことが大切」「治療方針について家族の年長者に相談する」「病院で亡くなると魂が戻らないため自宅で亡くなることを望む」などが有意に多く,東北では「特定の時期に入院を希望する」が有意に多かった.東北・沖縄では「がんを近所の人や親せきから隠す」「高齢患者が治療費を子・孫の生活費・教育費にあてるために治療を希望しない」が多かった.【結論】がん医療・緩和ケアのあり方には地域差があり地域での文化や風習を踏まえた医療やケアに気を配る必要がある.</p>
著者
長澤 拓 鈴木 健太 雑賀 高
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会大会講演要旨集 (ISSN:24238317)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.242-243, 2012

Ammonia is focused on as a no carbon fuel, and the design of the fuel cell vehicle with onboard devices to generate hydrogen from ammonia is performed. The ammonia has higher hydrogen content by percentage than that of methanol or ethanol, and can be liquefied at a normal temperature and a pressure of 0.84 MPa. Therefore the ammonia has a possibility as a new energy, because it can be obtained from biomass energy such as urea.
著者
鈴木 幸司 野崎 晃 今野 紀雄 前田 純治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.51-52, 1994-09-20

人間の記憶はコンピュータの記憶システムのように番地指定によって情報を記憶したり取り出したりするのではなく,連想によって情報の記憶・想起が行なわれていると考えられている.したがって,記憶の一部からより関係の深い情報を想起でき,情報間の関係が記憶されている.本研究では,連想記憶を入力パターンX=(x_1,...,x_n)(1)と出力パターンY=(y1,...,yp)(2)の組が(3)のように複数存在するとしたときその入出力関係を記憶することと考える.((X^<(1)>,Y^<(1)>),...,(X^<(q)>,Y^<(q)>))入出力の関係を記憶することが記名過程であり,パターンを入力することでなんらかのパターンを出力をすることが想起過程である.このような連想記憶には,多くの研究があり相関学習と直交学習による連想記憶がその代表的なモデルである.また,ニューラルネットワークによる連想記憶も活発に研究されている.相関学習による連想記憶は,入力パターンが互いに直交しているときに入力パターン相互の干渉を排除でき正し想起が可能となる.また,直交学習による連想記憶では,n次元の入力ベクトルX_1,...,X_k(1k&pre:&pre:n)(4)が一次独立であるとき入力ベクトル相互の干渉を排除でき正しい想起ができる.しかし,連想記憶をパターン認識や画像復元に応用するとき,入力データにノイズは加わることが一般的であり,入力ベクトルの直交性や一次独立が満たされないことが多い.そこで本研究では連想行列をファジー数で表現することによってファジー連想記憶を実現し,その想起特性を評価した.
著者
廣澤 愛子 武澤 友広 織田 安沙美 鈴木 静香 小越 咲子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.61-73, 2019 (Released:2021-06-20)
参考文献数
16

本研究では,9歳から11歳の知的障害のない自閉スペクトラム症の児童6名,支援者6名,参与観察者3名による療育活動の参与観察分析を通して,児童の社会性の発達と,それに伴う支援者の係わりを明らかにした。児童と支援者の相互作用を量的・質的に分析した結果,どの児童に対しても支援者は,活動前半には,共感的に児童の言動に耳を傾けたり,逆に自分の意見を伝えたりしながら関係作りを行い,さらに,児童同士が係われるよう仲介していた。そして活動後半には,誤りを指摘したり,児童の思いを明確化するなどして各児童の発達課題にアプローチし,さらに,児童ら自身で協働活動が行えるよう支援していた。一方,児童の社会性については,全児童において,活動終盤には自他境界を意識した言動もしくは他児との協働活動の増加が見られ,社会性に係わる言動の増加が見られた。但し,そのプロセスについては,「自己中心から他者理解へ」「集団の辺縁から集団の中心へ」「孤立から他者との関係性の芽生えへ」の3つに類型化され,個別性が見られた。今後は,このような社会性の発達と密接に係わる自他理解の発達過程が,自閉スペクトラム症の子どもと定型発達の子どもとの間でどのように異なるのかを明らかにすることが課題である。
著者
梅田 隆司 高橋 英夫 杉藤 徹志 勝野 伸介 石川 薫 下郷 和雄 大岩 伊知郎 鈴木 千鶴子 鬼頭 修 戸崎 洋子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.311-314, 1996
参考文献数
23
被引用文献数
6

出生前に診断され各科立ち会いのもとで出生直後から管理,救命できた上顎体の1例を経験したので報告する.症例は在胎29週0日当院産婦人科に紹介され入院した.胎児超音波検査で胎児顎部に塊状に突出した径約6cmの腫瘤をみとめ各科への紹介と妊娠継続の方針が立てられた.在胎32週4日,娩出直後の呼吸管理を準備して予定帝王切開が行われた.胎児娩出後も臍帯は結紮せず,6分後に気管内挿管された後に臍帯結紮・胎盤娩出が行われた.気管内挿管状態では腫瘤に対する処置が困難なため即時気管切開を施行した.その後,腫瘍茎部にゴムによる結紮術が施行された.術後患児は6日間呼吸管理された.腫瘍は結紮後徐々に縮小,壊死に陥り生後6日ほぼ脱落状態で切除した.生後25日には残存腫瘍を追加切除し,生後44日気管カニューレを抜去し,生後66日退院した,
著者
鈴木 徹 平野 幹雄 北 洋輔 郷右近 歩 野口 和人 細川 徹
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.105-113, 2013 (Released:2015-02-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1

従来、自閉症児の対人相互交渉の困難は、他者理解の困難が背景要因として指摘されてきた。しかしながら、心の理論課題の結果と日常生活の様相について実証的な研究は行われてこなかった。本研究では、高機能自閉症の一事例を対象に、心の理論課題の実施と実際の様相、とりわけ自身の言動と他者の言動の因果関係の理解の様相から対人相互交渉の困難の要因について検討を行った。その結果、心の理論課題を通過した対象児は、対人相互交渉において、過去の他者の言動と現在の状態との因果関係について適切な解釈を行っていた。一方、過去の自身の言動と現在の状態の因果関係について誤った解釈を行うことが多かった。このことから、対人相互交渉の困難を招く一因として、自己の言動の認識の困難という可能性について論じた。
著者
矢野 耕也 鈴木 英之 竹中 理
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-20, 2008

企業の与信を評価する際に,定性スコアリングシートを使用する場合がある。そのとき,定性的な評価に対して客観性を持たせることと,また与信を正しく評価可能とする尺度を与えることが課題であった。またスコアリングシートは評価項目が多いために,定量的な尺度で総合評価することが望ましいといえる。ここではスコアの配列を一種のパターンとして捉え,スコアから総合パターンの値を求める方法に品質工学のマハラノビスの距離を用いた。またパターンの規則性を可視化するために直交表の適用を図った。その結果,36項目の定性スコアを一元化した数値で求められ,また直交表から得られる要因効果図で,潜在構造を可視化することを達成した。
著者
鈴木 徹 平野 幹雄
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.67-72, 2018-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
11

本研究では、知的障害特別支援学校中学部および高等部に通うASD児と知的障害児を対象とした自己/他者理解課題の実施と教員を対象とした社会的相互作用場面に関する半構造化面接の実施から、ASD児における自己/他者理解の程度と社会的相互作用との関連について検討した。結果として、ASD群は自己/他者理解課題の通過率が知的障害群よりも低かった。また、ASD群では自己/他者理解の程度が低い(高い)と社会的相互作用の自己/他者理解の問題が多い(少ない)傾向を示したが、知的障害群ではそのような傾向は認められなかった。これらのことから、ASD児においては、自己/他者理解の程度と社会的相互作用の様子に関連があり、自己/他者理解の程度が社会的相互作用における自己/他者理解の問題の頻度に反映されていることが示唆された。
著者
鈴木 航 江草 知通 寺沢 良則 増山 政次 澤本 嘉正
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第31回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.251, 2020 (Released:2020-11-30)

近年,ごみ焼却施設の運営形態を地方自治体によるものから,民間を活用したDBO(Design Build Operate:公設民営)へと移行するケースが増えている。その一方でベテラン運転員の不足が深刻化しており,安定稼働とコスト削減を両立していく上で,これまで以上に遠隔からの運転支援が必要不可欠なものとなりつつある。こうした中,当社では複数の焼却施設の運転状況を一元管理すべく,遠隔監視・運転支援システム 及び AI(Artificial Intelligence) やクラウドを活用した運転支援システムを構築して運転データを集約し,得られたノウハウを水平展開することによって,DBO施設における運営の高度化・効率化を図っている。本報では,当社システムの現状とその高度化に関する取組み状況,そして,それらも活用した横浜市との共同研究の概要について述べる。
著者
秋坂 真史 安達 正則 鈴木 信 向井 敏二 永盛 肇
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.1242-1246, 1992-11-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

若年者における突然死の死因および危険因子を明らかにする目的で,沖縄県で死亡した15歳以上30歳未満の内因性急死8例(男7名,女1名)の死亡状況,病歴,死因,危険因子および剖検所見等について検討した.病歴や既往歴等には特記すべきことがなかった.死亡状況は睡眠中が4例,運動中が3例,入浴中が1例であり,すべて数分以内の急死と考えられた.組織学的検査の結果,1例が肥大型心筋症,2例が虚血性心不全と診断され,さらに他の3例も致死的な病理所見は欠くものの死亡状況等から心臓性突然死の可能性が強く示唆された.一方これら8例中4例に心肥大が認められ,その中には運動負荷に伴う冠循環障害の関与が示唆される症例も認められた.今後は予防医学的見地と病理検索の両面からの対策がきわめて重要な課題であると考えられた.
著者
鈴木 賢英
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.81-91, 1977-03-10 (Released:2014-11-22)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

ICR系マウスを用いて, 妊娠14日から20日まで6mgのcyproterone acetate (CA) および溶媒のみを妊娠マウスに注射し, 経時的に殺して雄胎仔の生殖路を組織学的に調べた. その結果, 雌胎仔およびCA投与群の雌性化雄胎仔の腟原基は妊娠16日から18日の間に出現し, その頭側部は前立腺小室に相当するミュラー管由来の腟原基で, 尾側部は尿生殖洞に由来する細胞索 (腟板) であった. この雌性化雄仔の腔原基は, 雌のそれに比べてミュラー管由来の部分が短い点を除けば質的に同様と考えられる. 雌性化雄胎仔での腟板形成は雌胎仔と同様に尿生殖洞背側壁から1対の細胞索として生じ, 妊娠18日でその基部が融合し, 妊娠19日で雌新生仔と同様な尿道から隔離された1つの腟板を形成した. 次に雌性化雄マウスの腔原基形成および雄性性腺付属腺の分化と発達に対するCAの影響を調べるために, 妊娠14日から20日まで, 1mg, 3mg, 6rngのCAおよび溶媒を妊娠マウスに皮下注射し, 妊娠20日に開腹して雄胎仔を取り出し, その生殖器管を調べた. CA投与群の雄の腟原基形成において最も強く影響を受けるのは腟板形成であって, 6mg投与群では腟板の形態は雌とほとんど同様であり, 3mg投与群ではその発達は抑制され, 1mg投与群では雌胎仔またはCA6mg投与群の妊娠18日の胎仔に見られる程度の腟板形成しか起こらなかった. さらに雄性性腺付属腺の発達の抑制 (脱雄性化) もCAの濃度と相関しており, 中でも脱雄性化の程度が著しかったのは尿生殖洞由来の器官で, 尿生球腺・凝固腺・前立腺の順にその発達が抑制された. これに対してウォルフ管由来の精管および精のうはほとんど抑制されなかった. これらのことからアンドロゲンと腔原基形成および雄性生殖路の分化と発達との関係を考察した.