著者
岡村 典子 青木 洋子 渡辺 礼子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.221-228, 2017-08-01 (Released:2017-10-16)
参考文献数
21
被引用文献数
2

目 的:本研究の目的は, 副看護師長が新規着任時に抱いた思いと, 自身の役割認識を明らかにすること. 方 法:新任副看護師長37名を対象に, 「任に就いての思い」「今時点で認識している副看護師長の役割」「現在の課題」について自記式質問紙にて調査を行った. 結 果:着任時の思いとして,【担うことへの煩悶】【自身に必要とされる力への思案】【自身の評価に対する心配】【着任への抵抗】【昇格への意気込み】の5カテゴリーが, 着任した時点で認識している役割についても,【師長との連携】【スタッフへの働きかけ】【環境作り】【モデルとして存在】【業務調整】の5カテゴリーが抽出された. 結 語:副看護師長は,【担うことへの煩悶】といった立場の転換に戸惑いつつも, 職場内の改善といった【環境作り】に着目するなど, いちスタッフであったからこそ感じている役割を認識していることが推測された.
著者
青木 祐樹 城 仁士
出版者
人間・環境学会
雑誌
MERA Journal=人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-8, 2010-03-31
被引用文献数
1

本研究は、従来の心理的領域に関する実験に視線のずれという条件を加え、視線のずれが心理的領域に与える影響について検証を行った。また、性格特性によって視線のずれが心理的領域に与える影響の大きさは異なるのではないかという仮説から、向性と対人恐怖心性を用いて検証を行った。その結果、主に以下の3点が明らかになった。1)接近者から視線をずらされているとき、被接近者は120cmより遠い距離帯の全ての方向に対し、「居心地」の心理負荷が軽減されている。同様に、接近者は視線をずらしているとき、210cmより遠い距離帯で「居心地」の心理負荷が軽減されており、その影響は被接近者が接近者から視線をずらされているときよりも大きい。2)視線のずれが「会話」の心理負荷に与える影響は小さく、主に接近者の正面方向での全距離帯でわずかに会話をする距離として相手を遠く感じさせる。3)向性の高いグループ及び<目が気になる>悩みが小さいグループは、向性の低いグループ及び<目が気になる>悩みが大きいグループよりも、視線角度0°・120〜180cm程度の距離帯において、多くの条件で「居心地」の心理負荷が小さい結果となった。つまり、性格特性によって、近距離で視線を合わせた状態での「居心地」の心理負荷が異なる可能性が示唆された。
著者
青木 優和 山口 あんな
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.304, 2004 (Released:2004-07-30)

コンブノネクイムシは、褐藻類の茎部に穿孔造巣し、寄主である海藻を生息場所および餌資源として利用する端脚目の海産小型甲殻類である。静岡県下田市大浦湾において本種が寄主とするワカメの藻体は 12月から 3 月までは生長するが、生長停止後は崩壊し始め、5 月までには消失する。寄生率はワカメの生長期である 1 月から 3 月にかけて増大し 90% 以上に達し、坑道状の巣内では、一夫一妻のペアが最大 3 腹分の幼体と同居する。体長組成解析と野外飼育実験により、初令幼体が新規加入サイズに成長するまでに約 1 ヶ月、加入後ペア形成して繁殖開始するまで約 2 週間、成熟メスは約 1 ヶ月間に脱皮成長を繰り返しながら最大 3 回産仔、寿命は約 2 ヶ月半であることが分かった。親と同居する幼体のサイズは体長 1.0-4.5 mm のものであり、このうち体長 2.0 mm 以上のものは新規加入個体としての造巣が可能なサイズであり、親との共存巣から取り出したこのサイズクラスの幼体は単独で造巣可能なことも確認された。加入初期のコンブノネクイムシでは、巣の容積増加率がワカメの茎部容積増加率に追いつかないため、ワカメ茎部の利用率は低下するが、2 月中旬に入ると上昇に転じた。1 巣当たりの個体数は巣容積の増加に対して成体がほぼ一定であるのに対して、幼体は次第に増加する。しかし、親が 1 腹分の仔のみと同居の場合には成体のみの場合と資源消費率に差がなく、0.5cm3 を越える巣の拡張には、2 腹以上の幼体との共存が必要であった。幼体にとって早期の移動分散は捕食や流失といったリスクを伴う。したがって、幼体はできるだけ長くワカメに留まり、分散後すぐに繁殖するのがよい。コンブノネクイムシは 2 腹以上の幼体の親との同居によって、短期的に増大するワカメ資源を集中的かつ効率的に利用していると考えられる。
著者
青木 淳
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
1995

本論は『像内納入品にみる中世的「結衆」の特質-快慶作例を中心とする結縁交名の総合的研究-』と題して、仏像の像内納入品資料の分析を通じて中世社会を構成した政治・思想・芸術などにかかわる宗教的共同体(「結衆」)の実態とその役割を解明することを目的とする。とくに本研究では、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて活躍した仏師快慶の作例をとりあげ、その像内におさめられた夥しい数の納入品資料のうち、結縁文名(信仰者の連署名)の分析から、快慶の造像活動の背後にある勧進組織や職人集団による「結衆」組織の構造的分析を試みた。序章 本章では本論の中心資料となる像内納入品の史料的価値と研究の方向性を示した。従来の美術史や文学史の研究では、美術や文学における想像力を「個」の次元で理解するのが一般的であったが、中世初期に誕生した宗教・美術・文学などの運動においては、作者における「個」の問題もさることながら、いくつかの共同体を中心として形成された文化的・社会的事象が重要な役割を果たしたことを指摘した。 また、中世における「結衆」の祖型を古代の「緒」の組織、あるいは10世紀後半から11世紀前半にかけてのいわゆる摂関期の宮廷サロンやその周辺に発生した勧学会・二十五三味会などの宗教的共同体にもとめ、これらとの比較・対照を通じて中世的な「結衆」の性格について論じた。とくに従来の像内納入品研究の成果、および残された課題について具体的に指摘した上で、本研究により明らかにすべき問題点の所在を指摘した。第一章結縁の諸相 日本仏教における民衆化の歴史をたどるとき、さまざまな「結縁」をめぐる信仰の展開が重要な位置をしめる。 第一節「結縁の祖型」では文献的な基礎資料となる経典・祖師の法話・貴族の日記などより結縁に関する資料の収集を行なった。これらをもとに、人々の結縁の目的や手続きを語彙分析などの方法より事例別に分類し、結縁信仰の諸相を明らかにした。 第二節「金石史料より見た結縁」では、人々が「結縁」の行為を現実の「かたち」として認識する契機となった仏像の造立・写経供養・経塚建立などの際に添えられた銘文(金石文)をもとに、「結縁」の記事を年代を追って抽出し、整理した。ここでは、その記事を解析し「結縁」に纏わるデータベース-項目として年代・所蔵者[出土地]・内容[尊像別・書写経典別・埋納品別]・銘記法・願意・願主[施主]名・勧進僧の有無・結縁者数・公刊史料等をあげる-の構築を行なった。さらに結縁の目的について作例総数二百三十八をいくつかの項目に類別し示した。第二章中世的「結衆」の構図-東大寺僧形八幡神像の結縁文名を中心に- 本章では、治承4年(1180)12月、平重邊衡による焼き討ちで焼失した東大寺の再建にあたり、仏師などの職巧人がどのような役割を果したのか、その動向を像内納入品資料から探ることを主眼とした。とくに建仁元年(1201)東大寺八幡宮の僧形八幡神像の再興造立の場合を一つのモデルとして、その事業に関わった約百五十名にのぼる結縁者たちの「結衆」要因を「血縁的関係」「法線的関係」「地縁的関係」「職業的関係」などに分類し、そこに形成された結縁者相互のネットワークモデルを構築した。 この東大寺僧形八幡神像の場合、仏師の快慶が製作者であると同時に施主として関係していることから、この「結衆」の中心的な役割を果したものと考えられる。また結縁者に皇族をはじめ、東大寺・興福寺・比叡山・高野山などの僧綱に列なるものや、銅細工などの職人や芸能者の名が見えることに着目し、仏師快慶を中心とするさまざまな人間関係のネットワークを多面的に考証した。第三章中世教団の成立と造像信仰の展開 本章では、12世紀後半に成立した源空浄土宗における造像の問題を取り上げ、古代的な作善としての造像起塔を否定する立場をとった源空やその門下が、実際にはなぜ多くの仏像を制作したのか、という問題を中心に検討した。 ここではその背景として、従来の既成教団と異なり、いわゆる寺領荘園などの経済的基盤を持たない新興教団の経済的な問題が関係するのではないか、という仮説を提起している。基礎史料として仁治4年(1242)浄土宗西山派の開祖證空や後鳥羽上皇の子で天台座主道覺法親王が中心となって造立された京都府・大念寺阿弥陀如来立像、文暦2年(1235)澄憲・聖覚ら安居院流唱導の祖師たちの結縁した滋賀・阿弥陀寺阿弥陀如来立像の結縁交名を用い、初期浄土宗教団の組織と布教の背後に形成された勧進組織と信仰者たちのネットワークを明らかにした。第四章像内納入品にみる中世の祖霊信仰 本章ではに中世前期、すなわち源平の争乱と前後して造立された東大寺南大門金剛力士像京都市・遣迎院阿弥陀如来立像などの像内納入品の分析を通じて、中世の造像信仰とそこにあらわれた祖霊追善の問題について検討した。とくに前者からは歴代の村上源氏の名が発見され、この造像と時をほぼ同じくして頭角をあらわした源通親のクーデター(建久七年の政変)との関係を示唆した。また後者からは壇ノ浦の戦いで滅亡した平家一門二名の名が確認され、これら一連の快慶による造像が当時の社会状況と密接な関係にあったことを指摘した。さらにここでは建礼門院の出家に際して戒師を勤めた大原上人湛〓や、南都において斬首された平重衡の首を高野山に納めた重源らが結縁しており、中世の勧進聖たちがその募縁手段として各地で造像結縁をすすめる一方で、『平家物語』などの創作に関係したことをこれらの像内納入品資料より明らかにした。結章 以上全四章にわたる論証を通じて本研究では以下四つのネットワークモデルを構築し、その実態を明らかにするとともに中世における「結衆」の文化についての提言を試みた。1)鎌倉時代の東大寺復興造営においては、重源を中心とする大勧進細織が独自の職巧人集団などを含む共同体を形成し、その組織下に東大寺に関係の深い皇族・貴族(村上源氏など)や鎌倉幕府、あるいは東大寺・醍醐寺・仁和寺・神護寺などの僧侶と、彼らの血縁関係や法縁関係にある人々を含めた「結衆」の組織が協調関係を結ぶことによって、その経済的な基盤を支えた。また勧進集団は東大寺内の再興造営における造像起塔の多くを、特定の武家や公家などの権力者に奉行させることにより、資財・資金の調達の円滑化をはかった。(パターン1:「東大寺復興と共同体モデル」)2)重源による播磨・周防・伊賀などの別所経営では、在地からの造営料を東大寺に集中する一方、各地方の別所では大念仏の興行や迎講などの信仰儀礼、あるいは施湯などの結縁儀礼や社会事業を通じて教化し、勧進活動を活化させた。また別所における造像活動の多くは地域の人々の結縁によるもの(地縁結合)を中心として、勧進の手段としての造像が行なわれていたことを明らかにした。(パターン2:中世像内納入品にみる「結衆」と勧進の基本 構造 1180-1215)3)重源や明遍が深く関係した東大寺並びに高野山の勧進事業では、仏師の快慶が常に行動をともにしており、快慶のはたした役割の大きさを察することが出来る。また、快慶作の京都市・遣迎院阿弥陀如来立像などからは『平家物語』の成立に間係したと目される藤原通憲の一門や葉室家の一門等の結縁が複数確認されたことにより、『平家物語』の成立に東大寺の勧進組織が深く関与していたことを明らかにした。(パターン3:『平家物語』の成立に間係する「結衆」の捕造1180-1230)4)東大寺復興造営が終束すると、多くの職巧人たちは失業し分散したが、彼らは引き続き、源空浄土宗教団や親鸞の真宗教団などに吸収されたものと考えられ、そこにも彼らをネットワーク化する組織の存在がうかがわれる。こうした実態は快慶工房の作風を示す滋賀・玉桂寺阿弥陀如来立像(源空の追善造像)、京都・大念寺阿弥陀如来立像(證空関係の造像)、奈良・興善寺阿弥陀如来立像、滋賀・阿弥陀寺阿弥陀如来立像(浄土宗諸行本願義系の造像)等の作例から確認された。(パターン4:中世浄上宗教団の成立と勧進組織の関係 1180-1280頃)
著者
岩橋 和彦 吉原 英児 青木 淳
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-119, 2009-03-31

我々はセロトニントランスポーター (5-HTT) 3'非翻訳領域 (3'UTR) 遺伝子多型の影響, 疼痛感受性個人差の原因, 性格の遺伝要因を解明する一助として5-HTT 3'UTR遺伝子多型と痛覚閾値およびパーソナリティとの3つの要因の関連性について調査検討を行った。 181人の健常者を対象に, 5-HTT 3'UTR遺伝子多型の判定には制限酵素切断長多型解析法を用い, 痛覚閾値に関しては冷水刺激試験および圧刺激試験を, パーソナリティの測定にはTCI (Temperament and Character Inventory) を行った。 遺伝子多型と痛覚閾値には関連がなかった。遺伝子多型とTCIの相関について, 男性ではST3{超個人的同一化 (vs. 自己弁別)}が遺伝子型G/G群で有意に高く, 女性ではST (自己超越性総合点) およびST2{自己忘却 (vs. 自己意識経験)}が遺伝子型G/T + T/T群で有意に高かった。痛覚閾値とTCIとの関係について, 男性群で冷水刺激閾値とNS4{無秩序 (vs. 組織化)}およびNS (新奇性追求) で負の相関, 女性群で冷水刺激閾値とSD4 (自己受容), C5{純粋な良心 (vs. 利己主義)}および圧刺激閾値とSD4 (自己受容) で正の相関が認められた。本研究から5-HTT 3'UTR遺伝子多型はCloningerの理論における性格次元に影響を与える可能性がある一方で, 痛覚は5-HTT 3'UTR遺伝子多型と関与せず, 一方でパーソナリティの一部と相関関係にある可能性が示唆された。To estimate the genetic factors influencing individual differences in sensitivity to pain, we have examined the associations among serotonin reuptake transporter (5-HTT) 3' UTR gene polymorphism, sensitivity to pain and personality. After the procedures were fully explained and written informed consent was obtained, 5-HTT 3' UTR gene polymorphism was investigated by PCR-RFLP, and personality assessment was performed by means of Temperament and Character Inventory (TCI), and pain threshold by means of cold water and pressure stimulation tests in 181 healthy Japanese volunteers. Males with the T allele (T/T and T/G) showed a significantly lower Self-Transcendence (ST) 3 subdimension score than those without the T allele (G/G). Females with the T allele (T/T and T/G) showed significantly higher ST2 subdimension and ST dimension scores than those without the T allele (G/G). There was no significant relationship between 5-HTT 3' UTR gene polymorphism and pain sensitivity. As for pain sensitivity and TCI, there was low negative correlation between cold water stimulation in males and Novelty Seeking (NS) 4 subdimension and NS, and low positive correlation between cold water stimulation in females and Self-Directedness (SD) 4 subdimension and Cooperativeness (C) 5 subdimension, and between pressure stimulation in females and SD4. It is possible that 5-HTT 3' UTR gene polymorphism may affect the character dimension in the theory of Cloninger, however, 5-HTT 3' UTR gene polymorphism may not be related to the sense of pain, and that there is low correlation between pain and a part of the personality.
著者
青木 京子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.67-81, 2003-03-01

『人間失格』の「コキュ」の問題については、志賀直哉の『暗夜行路』を想定した作品だと指摘されている。「コキュ」そのものを追及した論文もみられ、示唆的ではある。しかし、『人間失格』と『暗夜行路』の詳細な比較を通し、その根拠を提示した論文は見られない。『人間失格』の草稿には、「コキュ」の場面に「暗夜行路」の記述が見られ、『暗夜行路』を想定した作品であることは明確である。が、「コキュ」の問題だけではなく、母の欠落、醜い女や淫売婦の造形、代理母のような年上の女性との接触等、双方には多くの共通点が見られる。従って、『人間失格』は『暗夜行路』をかなり意識した作品であるといえる。『暗夜行路』は多くの女性と接触することにより、「暗夜」を乗り越え、「明るい」世界へと向かう作品であるが、『人間失格』は、徐々に女給や淫売婦との深みにはまり、全幅の信頼を寄せた内縁のヨシ子にも裏切られ、破滅してゆく。太宰は晩年には志賀直哉を辛辣に批判しているが(「如是我聞」)、志賀直哉の作品をかなり視野に入れ、作品を構築している(「懶惰の歌留多」、『津軽』等)。太宰は『人間失格』を構築するのに、志賀直哉の集大成ともいえる『暗夜行路』をかなり意識していたのではなかろうか。
著者
宇澤 達 山田 裕二 青木 昇 藤井 昭雄 黒木 玄 長谷川 浩司
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、対称対についての研究を行った。対称対は、リー群および代数群の研究において基本的な対象である。群Gと位数2の自己同型σが対称対を与える。古典型単純リー群も、基礎体の標数が2ではないときには、一般線形群を元に、位数2の自己同型の不変元全体として定義される。したがって、標数が2ではないときには、単純リー群は有限個の例外を除いて、一般線形群の対称対として理解することができる。1)対称対の基礎理論。標数2の体の上でも、リーマン対称多様体に相当する理論が構成できることがわかった。佐武図式も定義される。標数2の体上では、位数2の自己同型の共役類の数が一般には増えることが知られている。その理由もルート系の言葉で理解することができることがわかった。2)整数環上のスキームとしての対称多様体の構成。整数環に1/2を付加した環の上での対称多様体のモデルの構成は比較的容易であるが、ここでは整数環上のスキームとしての構成ができることがわかった。3)対称多様体のコンパクト化の構成。対称多様体のコンパクト化のモデル(群Gが随伴型であるという仮定のもとに)整数環上のスキームとして構成できることがわかった。応用としては、標数2の体上では、5個の2次曲線と接する2次曲線の数が51と、標数が2ではないときの1/64となっていることの説明がある。4)ルスティックによって定義された指標層に対してラングランズ対応を定義することができることがわかった。群ではなく、より一般の対称対に対してもラングランズ対応を研究することは、ジャッケの相対跡公式ともあわせて大変興味がある問題である。5)対称対と整数論の関係。対称対に関連して、エプシュタインのゼータ関数が定義され、その特殊値についての結果が得られた。また、群と対極にある対称対に付随して、楕円曲線の族があらわれる。楕円曲線の族に関する結果も得られた。6)数理物理との関係。対称対としてあらわれるアフィンリー環についての知見が得られた。
著者
青木 芳夫
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.32, pp.51-65, 2004-03

筆者は、現在、『グレゴリオ・コンドリ・ママー二自伝』を日本語に翻訳しているところである。グレゴリオは、20世紀前半の、まだ半封建的な風習が残るペルー・アンデスの農村で孤児として育ち、やがてクスコ市内に移住するが、晩年の1960・70年代には一介の荷担ぎ人夫として暮らした。自らの辛酸の数々を伝えるために、その生涯を若き人類学者のバルデラマらに語る決心をした。この『自伝』は単なるオーラル・ヒストリーではなく、自らの経験をも伝承風に語れる、稀代の語り部、グレゴリオを得たことにより、口頭伝承の宝庫ともなっている。本稿では、その伝承を「アンデスの自然」「アンデスの神々」「牛泥棒」「スペイン人・キリスト教・文明」に分類し、紹介する。
著者
貝戸 清之 小林 潔司 青木 一也 松岡 弘大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.255-271, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
36
被引用文献数
12

社会基盤施設の劣化過程においては,施設の構造特性や使用・環境条件の違いにより劣化速度に多大な異質性が存在する.個々の施設に特有な異質性がもたらす劣化速度の過分散の問題を克服するために,施設グループ間の劣化速度の異質性を明示的に考慮した混合マルコフ劣化ハザードモデルが提案されている.本研究では,劣化速度の過分散が,施設グループ間における劣化速度の異質性と,グループを構成する個々の施設間における異質性というレベルの異なるつの異質性が複合された結果により発生すると考える.その上で,階層的異質性を導入した混合マルコフ劣化ハザードモデルを定式化し,その階層ベイズ推計法を提案する.最後に,橋梁床版に対する目視点検データを用いた実証分析を通して,本研究で提案する手法の妥当性を検討する.
著者
青木裕司[著]
出版者
語学春秋社
巻号頁・発行日
2015
著者
田中 誠雄 金 東必 青木 陽二
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.246-248, 1999-01-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
7

中国に始まった山水画の一つに宋の時代に描かれた瀟湘八景画がある。これは我が国に伝わり, 日本人の風景観に大きな影響を与えた。室町時代に絵画として伝わって以来, 近江八景など多くの八景を日本の地形に見いだすことになった。日本の地に見いだされた現在に至るまでの八景の分布を明かにすることにより, 風景観としての八景の影響を明かにするものである。この資料では現在までに地方自治体により把握されている八景の分布と見いだされた年代を紹介するものである。回答の得られない自治体があるので, 今後の調査により八景の数は増加すると思われるが, 現在までの資料でも八景の影響の大きさを推定するに十分な価値を有する。
著者
原田 雄司 田中 達也 中尾 裕典 服平 次男 青木 理 山下 洋幸
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.858, pp.17-00458-17-00458, 2018 (Released:2018-02-25)
参考文献数
30

Heat insulation by a wall material which has low heat capacity and heat conductivity is one of the effective ways to reduce heat transfer. By the heat insulated coating, wall temperature is fluctuated following the behavior of in-cylinder gas temperature, which decreases the gap between gas and wall temperature. In order to suppress wall heat transfer in wide engine operation range, Model Based Development is required. In this study, wall heat transfer mechanism under wall temperature fluctuated condition by heat insulation was investigated by simultaneous measurement of wall heat flux and flow behavior in wall boundary layer in RCEM. As a result, it was clarified that turbulent energy was influenced by wall temperature behavior, which impact on heat transfer coefficient. In addition, non-dimensional velocity distribution in wall boundary layer was not changed drastically by wall temperature behavior. In terms of modeling under heat insulated condition, wall heat flux was able to be predicted well by wall heat transfer model taking into account of density change in wall boundary layer.
著者
古巣 克也 尼子 龍幸 中川 稔章 浜辺 勉 青木 典久
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.858, pp.17-00326-17-00326, 2018 (Released:2018-02-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

In this study, a formula describing on the flattening phenomenon when a bending moment acts on a box beam was derived considering the cross-sectional deformation. Calculation results obtained using the derived formula were then compared with results acquired using the finite element method (FEM). The case of a bending moment acting on a box beam composed of four thin plates that permits cross-sectional deformation along the longitudinal direction was investigated with the following assumptions: the boundaries of these plates is are simply supported, an equally distributed load acts on these plates, and the width along the neutral line of the plates is retained after deformation. Furthermore, on the basis of the coupling of the deflections of adjacent plates and the thin plate theory, the moment of inertia of cross section was obtained as a function of the curvature of the box beam. A formula relating the bending moment to the curvature is was then derived. Calculation results from this derived formula were compared with FEM results modeling only the cross section using generalized plane strain elements. For box beams with a square cross section, the maximum moments and curvatures calculated from the derived formula were within 5% of the FEM results. This indicates that it is important to consider the reduction in the cross section that accompanies the bending of the plates. Regarding general box beams with a rectangular cross section, the influence of the aspect ratio of the cross section was found to be considerably larger in the FEM results than in the derived formula. The reason for this difference may be that plates do not satisfy the abovementioned assumptions regarding the boundary and load conditions of the plates; however, confirming this remains a task for future work.
著者
青木 正志 鈴木 直輝 加藤 昌昭 割田 仁
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1115-1118, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

封入体筋炎(sIBM)は骨格筋に縁取り空胞と呼ばれる特徴的な組織変化を生じ炎症細胞浸潤をともなう疾患である.厚生労働省,希少難治性筋疾患班ではsIBMの患者数把握・診断・治療改善に関する取組を継続しておこなっている.現在日本には1,000~1,500人前後のIBM患者がいると考えられる.筋病理をもちいたTDP43, p62などの検討も各施設でおこなわれており,診断マーカーとしても検討がおこなわれている.さらに2013年にはIBM患者血清中に抗cytosolic 5'-nucleotidase 1A(cN1A)抗体が存在するという報告もある.さらに現状では治療法が無い難病であるが,IBMに対するアクチビンのタイプII受容体をターゲットにした拮抗薬の治験も進行中である.