著者
木本 喜美子 千葉 悦子 宮下 さおり 勝俣 達也 高橋 準 中澤 高志 萩原 久美子 野依 智子 早川 紀代
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、地方圏における女性労働史の実態調査による事例研究から、戦後日本の<女性労働と家族>の史的再構成への視座を得ることをめざしている。方法的関心は、近代家族論と階級・階層論を女性労働史に接合することにおかれる。具体的には、大手機業場を擁した福井県勝山市の織物産業における女性労働者に焦点をおき、その生活史の考察が中心となる。すでに調査を終えている零細機業場の集積地帯、福島県川俣町の事例も比較検討の対象として取り上げる。以上を通じて、主婦化が進展したとされる高度成長期に、結婚・出産後も継続的に就業する女性のライフコースが成立していたこと、およびその家族的諸条件および地域的特性を明らかにした。
著者
高橋 政代 吉村 長久 高梨 泰至 栗山 晶治 喜多 美穂里 谷原 秀信 小椋 祐一郎 岩城 正佳
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

網膜色素上皮細胞は神経網膜と脈絡膜の間に存在する単層上皮細胞であるが、増殖性硝子体網膜症の発生時に網膜色素上皮細胞の異常な増殖が見られることが知られている。網膜色素上皮細胞に見られるこれらの異常は様々な原因によって惹起されるものであるが、血液眼柵の破綻によって各種の細胞増殖因子が眼内に放出されることも一因として考えられる。そこで以下の4点に関し研究を行った。1)培養網膜色素上皮細胞が産生する細胞増殖因子及びその受容体についてスクリーニングを行うこと。これについては予定していたスクリーニングを終了し、TGF-β、PDGF及びその受容体、aFGF・bFGF及びその受容体、IL-1及びその受容体、TNF-α、IGFなどについてその発現を調べ、学会および雑誌にて発表を行った。2)遺伝子導入が網膜色素上皮細胞にも応用できるかどうかの検討を行うとともに必要があれば遺伝子導入法の基礎的な検討をする。-これに関しては一時的な発現を得ることには成功したが、継続的な遺伝子発現を初代培養の網膜色素上皮細胞を用いて行うことは困難であった。現在各種の細胞株を用いて検討中である。3)細胞増殖因子受容体遺伝子の発現量を変化させて、培養網膜色素上皮細胞の機能がどの様に変化するかについての基礎的な検討を行う。-これについては2)の結果を待って行う予定であるため検討中である。4)網膜色素上皮細胞に特異的な細胞増殖因子受容体の有無についての予備的実験を行う。-網膜色素上皮細胞に特異的に発現する線維芽細胞増殖因子受容体遺伝子を見つけるため共通配列をプラズマ-としたポリメラーゼチェーン反応を行った。これによりいくつかのクローンを獲得したが、その塩基配列並びに機能については現在検討中である。
著者
高橋 政代 高橋 淳
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2001

我々は過去に成体ラット脳由来の神経幹細胞網膜に移植し生着と神経への分化を確認した。しかし、網膜神経の分化に最適な環境である胎児網膜に移植しても脳由来の神経幹細胞から視細胞を分化誘導することはできなかった。そこで、眼球組織から神経幹細胞/神経前駆細胞を海馬由来神経幹細胞と同様の条件で培養した。ラット胎児網膜からは効率よく視細胞に分化する神経前駆細胞がneurosphereの形で得られた。また、成体ラットの毛様体色素上皮や虹彩上皮を同様の条件で培養して分裂増殖する神経前駆細胞を得、さらに視細胞に特異的なホメオボックス遺伝子を導入することによって視細胞のマーカーであるロドプシンやリカバリンを発現させることができた。海馬由来神経幹細胞ではロドプシンの発現はみられなかった。次いで京都大学医の倫理委員会の承認を受けて、ヒト胎児脳および網膜から神経幹細胞/神経前駆細胞を培養した。ヒト胎児脳からは神経幹細胞のクローンが得られ、網膜からはneurosphere法にて神経前駆細胞が得られた。それぞれ神経およびグリアに分化する多分化能を有することが確認された。また、ラット虹彩細胞と同様にヒト虹彩細胞からも視細胞様細胞が分化するか確認するため、通常の緑内障手術で廃棄される虹彩組織を用いて虹彩上皮細胞の培養を行い、ヒトでも虹彩上皮細胞の培養増殖が可能となった。ラットで神経幹細胞が組織特異性を示したのと同様にヒト胎児脳由来の神経幹細胞も前脳、中脳、菱脳それぞれの由来によって分化してくる神経のphenotypeや発現している遺伝子に差がみられ、組織特異性があると考えられた。
著者
高橋 政代 本田 孔士 柏井 聡
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

我々が、過去にin vivoで報告した角膜上皮の細胞骨格蛋白fodrinの創傷治癒過程における分布変化をin vitroにおいて再現し、さらに培養細胞を用いてfodrinの分布変化の機構を検討した。牛眼の角膜上皮初代培養細胞を使って以下の結果を得た。confluentな状態になり細胞間の結合装置も完成した状態の角膜上皮初代培養細胞において、一部にabrationを行うとその周囲数層の細胞で受傷10分後にはfodrinの分布変化を認めた。すなわち受傷10分後には細胞膜裏打ち蛋白であるfodirnが細胞壁より離れて細胞質中にび慢性に分布するようになった。また、細胞内のプロテインキナーゼCを活性化するphorbol esterを培養液中に添加すると10分後にはやはりfodrinは分布変化をおこす。一方、細胞内カルシウム濃度を上昇させるカルシウムイオノフォアを添加した場合は分布変化が起こらなかった。以上の結果より、in vivoにおいて創傷治癒過程でおこる細胞骨格蛋白の分布変化がin vitroにおいても起こること、またその変化は細胞内カルシウムの上昇を介したものではなく、細胞内プロテインキナーゼCの活性化によって起こる可能性が示唆された。今後、細胞骨格蛋白の分布変化が細胞間及び細胞基質間の接着にどのように影響しているのか検討を進める。また、網膜の機能を保つために重要な役割を果たしている網膜色素上皮細胞等においても同様の変化が起こるか検索していく。
著者
高橋 政代 高橋 淳
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

ヒト胎児脳および網膜からの神経幹細胞の分離培養11週齢のヒト胎児から大脳と眼球を摘出し、眼球からは網膜のみを剥離する。大脳および網膜を機械的および酵素にて細胞に分散したのち、DMEM/F12に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と上皮細胞増殖因子(EGF)を添加した無血清培地にて培養したところ、徐々に増殖、増大する細胞塊が得られた。この細胞塊を形成する細胞の多くはネスチン陽性の未分化な神経系細胞であり、神経幹細胞を含むと考えられているneural sphereと同様の細胞集団と思われた。さらに、この細胞塊をラミニンコートした培養皿でbFGFとEGFを除去して培養すると細胞は培養皿上に接着し、形態を変化させた。神経突起様の突起を伸ばした細胞の一部は免疫細胞化学的検討にてβチュブリンIII陽性の幼若な神経細胞に分化しており、また、一部はGFAP陽性のグリア細胞に分化していた。これらの結果からヒト胎児脳および網膜から神経幹細胞あるいは神経前駆細胞が得られたと考えられる。ヒト成体虹彩神経色素上皮細胞の培養我々は、成体ラット虹彩色素上皮細胞を上記と同様の培養条件で培養することにより、神経とグリアに分化する能力を有するネスチン陽性の神経前駆細胞が得られることを確認している。同様にして、緑内障手術の際に得られるヒト成体の虹彩色素上皮を培養することにより、増殖する細胞を得ている。現在この細胞の多分化能を検討中である。以上の実験はいずれも京都大学医の倫理委員会の承認を受けて実施したものである。
著者
高橋 政代 春田 雅俊 田邊 晶代 柏井 聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

現在、社会的に問題となっている中途失明者の原因の多くは網膜の視細胞が選択的に障害されることによる。これらの網膜疾患に対して胎児網膜組織を移植することが欧米では試みられているが、胎児組織を利用することの倫理的問題、ドナー不足の問題、拒絶反応など問題も多い。我々は網膜幹細胞を培養して、視細胞移植の細胞源として臨床応用できないかを検討している。今回、胎児網膜、成体虹彩、成体毛様体から網膜幹細胞を分離培養しうるか、またこれらの細胞が視細胞への分化能を有しているかを確認した。ラットの胎児網膜をneurosphere法で培養することにより、神経前駆細胞のマーカーであるネスチンを発現する網膜前駆細胞を培養することができた。これらの網膜前駆細胞は分化誘導条件下では効率よく視細胞にも分化する。しかし継代を重ねるとともに視細胞に分化する割合も減少し、網膜としての組織特異性が失われてしまうことが分かった。次に毛様体色素上皮や虹彩上皮から網膜幹細胞を培養できないかを試みた。成体ラットの毛様体色素上皮や虹彩上皮からは細胞分裂して増殖し、神経前駆細胞のマーカーであるネスチンを発現する神経前駆細胞を得ることができた。これらの細胞は分化誘導条件下で引き続き培養するとニューロンまたはグリアのマーカーを発現するが、視細胞に特異的なマーカーは発現しなかった。そこで視細胞の発生に必要不可欠なCrxホメオボックス遺伝子を導入すると、成体の毛様体組織や虹彩組織から視細胞に特異的なマーカーであるロドプシンやリカバリンを発現する細胞を得ることができた。毛様体組織と異なり、虹彩組織は臨床的に確立された周辺虹彩切除術で安全確実に自己組織を採取できる。そのため、今回虹彩組織から得られた視細胞が生体内でも機能することが確認できれば、将来拒絶反応のない視細胞移植として、臨床応用することも期待できる。
著者
高橋 政代 万代 道子 本田 孔士 谷原 秀信
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的:増殖性硝子体網膜症の発症に網膜色素上皮細胞の増殖、遊走の関与が考えられる。今回我々は細胞の動態と各種転写因子の関与を解明し、増殖性硝子体網膜症の新しい治療法をを開発することを目指した。方法:各種転写因子中、E2F転写因子、NFκB転写因子に注目した。デコイ法を用いて、網膜色素上皮細胞の増殖、遊走を解明し、E2F転写因子、NFκB転写因子の機能的意義を解明する。動物実験で転写因子の抑制で増殖性硝子体網膜症が可能か検討した。結果:E2F転写因子:(1)増殖期培養網膜色素上皮細胞の核抽出液中に、E2Fコンセンサス領域を含む、二重鎖オリゴヌクレオチドと結合する因子の存在を確認した。(2)増殖期培養細胞でE2Fデコイは細胞周期調節因子の発現を抑制するが、非特異的デコイでは影響を与えないことをRT-PCR法で確認した。(3)細胞増殖能をbrdU labellingindex、DNA合成量で判定した。E2Fデコイの導入では効果的に濃度依存的に抑制されるが、非特異的デコイの導入では影響が無いことを確認した。NFκB転写因子;(1)培養網膜色素上皮細胞の核抽出液中に、NFκBデコイと結合する因子が誘導されることを確認した。(2)IL-1β刺激によって培養網膜色素上皮細胞中で、IL-1βの転写がさらに増加するが、NFκBデコイの導入でその発現が効果的に抑制されるが、非特異的デコイの導入では影響が無いことをRT-PCR法で確認した。(3)培養細胞創傷治癒モデルにNFkBデコイを導入すると、培養網膜色素上皮細胞の遊走が非特異的デコイの導入に比べて有意に抑制されることを確認した。(4)NFκBデコイを培養ヒト線維芽細胞に導入し、白色家兎増殖性硝子体網膜症モデル眼硝子体内へ注入した。Bluemenkrazらによる分類でPVRを判定したがNFkBデコイ、非特異的デコイで有意差を認めなかった。各実験眼で結果の偏差が大きく動物眼での有効性をさらに検討する必要があると考えた。
著者
高橋 政代 柏井 聡 田辺 晶代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

毛様体色素上皮細胞の培養と神経分化誘導成体ラット毛様体組織を分離して色素上皮細胞側が下面になるようにして培養皿に接着させた。塩基性線維芽細胞増殖因子を加えた無血清培地を用いた培養により、毛様体組織から増殖して培養皿上に遊走する細胞が得られた。これらの細胞は多くが神経幹細胞のマーカーであるネスチンを発現するようになった。毛様体色素上皮から増殖した細胞を引き続き神経分化誘導条件(血清添加)下で培養すると上皮様形態であった色素上皮細胞は劇的に形態を変化させ、一部には神経様突起をもった細胞も認められた。これらの細胞の一部はニューロンのマーカーであるNeurofilament 200およびグリアのマーカーであるGlial Fibrilary Acidic Proteinを発現していた。ただしこの培養条件下では視細胞のマーカーであるオプシンの発現は得られなかった。アデノウイルスを用いたCrxとGFPの遺伝子導入次に視細胞に特異的に発現するホメオボックス遺伝子であるCrxを導入することにより、毛様体の色素上皮細胞が視細胞に分化しうるかについて検討した。毛様体色素上皮細胞に対し、視細胞特異的ホメオボックス遺伝子であるCrxまたはレポーター遺伝子であるGFP(Green Fluorescein Protein)を組み込んだアデノウイルスを感染させた。引き続き神経分化誘導条件下で培養したのち免疫細胞化学的解析を行った。GFPを導入した毛様体色素上皮細胞からは視細胞のマーカーであるオプシン陽性細胞は得られなかったのに対し、Crxを導入した細胞ではオプシンを発現する細胞が多数認められた。これらの結果から成体ラット毛様体色素上皮から未分化な神経幹細胞あるいは神経前駆細胞が得られ、Crxを遺伝子導入することにより、毛様体色素上皮細胞は視細胞に分化転換する可能性があることが示された。
著者
高橋 政代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

アメリカへ渡航しGage研究室を訪問したことによって、神経系幹細胞の培養方法を習得し、また最適な網膜移植法の検討を行った。Gageが確立した海馬由来神経系幹細胞(LacZ遺伝子でマーキング済み)を、生後5日以内の幼若ラット網膜に移植すると、2週間では移植細胞は網膜表面に付着するのみであるが、移植後4週間では移植細胞は多数網膜内に侵入、分化した。移植細胞の形態は、視細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞に酷似し、しかもそれぞれの細胞に適した層に生着していた。このような現象はコントロールとして使用した線維芽細胞や死滅させた幹細胞などではおこらなかった。生着した神経系幹細胞を様々な網膜細胞特異抗体で免疫染色を行ったところ、移植した細胞の中にはGFAPおよびS-100β、Map2,5などグリアあるいは神経のマーカーは陽性のものがあったが、HPC-1、opsinなど網膜神経に特異的な蛋白は陰性であった。このことは移植した未分化な神経系幹細胞は環境因子に反応し神経やグリアに分化するが、網膜細胞へと完全に分化するためには、さらになんらかの内因的あるいは外因的因子を要することを意味する。以上の結果を受けて、今後の研究の方向性を検討し、不足している内因的因子としてRxなどのhomeobox遺伝子をアデノウイルスをもちいて導入し、網膜細胞への分化を促すことを計画しており、そのためのRx,Crx,Chx10のhomeobox遺伝子を入手した。また、今回は海馬由来の神経系幹細胞を用いたが、網膜から神経系幹細胞を培養することにより、網膜細胞へ分化しやすい幹細胞を得ることも計画している。
著者
高橋 政代 谷原 秀信 GAGE Fred H 本田 孔士 FRED H. Gage GAGE Fred H. 竹市 雅俊 高橋 政代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

成体ラットの網膜を機械的に損傷し、直後にLacZでラベルされた成体ラット海馬由来神経系幹細胞の懸濁液を硝子体中に注入した。1,2,4週後に4%paraformaldehydeにて灌流固定し、凍結切片を作製、ニューロン・グリア系の各種マーカーおよび抗β-galactosidase抗体を用いて蛍光抗体法による光学顕微鏡的観察および金粒子銀増感法による電子顕微鏡的観察を行った。移植された神経系幹細胞は損傷部周囲のホスト網膜の表層から内顆粒層に多く分布していた。移植細胞は移植後1週で神経前駆細胞のマーカーであるnestinを多く発現していた。移植後4週では、移植細胞におけるnestinの発現は減少し、神経細胞のマーカーであるMAP2abやMAP5、グリア細抱のマーカーであるGFAPを発現するものがみられた。網膜神経細胞のマーカーであるHPC-1,calbindin,rhodopsinの発現はほとんどみられなかった。電子顕微鏡的には、移植細胞の一部は仮足または細胞突起により移植細胞同士、あるいは移植細胞とホスト細胞間で接触していることが観察された.内網状層のレベルにおいては、移植細胞とホスト細胞との間でシナプス様構造を形成していることが観察された。損傷網膜に移植された神経系幹細胞は、ニューロンおよびグリアに分化することが示されたが、網膜特異的な神経細胞への分化はみられなかった。しかし電子顕微鏡的には、移植細胞はホスト網膜への親和性を持つ細胞に分化することが示され、またホスト網膜とのシナプス様構造の形成は、物理的接触のみならず機能的にも連絡している可能性があると考えられた。
著者
高橋 義人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ルネサンス以降、人間の感性と理性が分離するとともに、二つの知的系譜(文系と理系)に世界は分裂していった。この分裂はF・ベーコンによって決定的になった。他方、感性と理性の統合を目指す動きもまた存在した。その第一はレオナルドであり、第二は魔術的・錬金術的運動である。レオナルドが、自然は完全には探究しがたいと信じていたのに対して、錬金術師たちは、太陽の生命力(プリマ・マテリア)を抽出しようと無駄な努力を重ねた。ニュートンもじつは錬金術的な伝統の継承者である。本研究は、若い頃、錬金術の研究に傾倒していたゲーテが、やがてレオナルド的な立場に立ち、ニュートン的・ベーコン的な近代科学の批判こそ自らの使命だと考えるようになった経緯を明らかにしている。
著者
高橋 和志
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、インドネシアで収集したデータを用い、近年、世界各地で広まりつつあるSystem of Rice Intensification(SRI)と呼ばれる新しい稲作技術の採用規定要因と家計へのインパクトを実証的に分析した。その結果、SRIは圃場単位辺りの稲収量を有意に増やすが、家計所得そのものへの貢献はほとんどないこと、また、SRIは家族労働力が少ない場合や、リスク回避的・不確実性回避的である家計の間で採用されにくいことが明らかになった。
著者
西村 浩一 高橋 修平 本山 秀明 小杉 健二 根本 征樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

風力発電と太陽光パネルを用いた吹雪計測システムの開発を試みた。低温風洞で出力特性等の検証後、国内は新潟県と北海道、国外ではフランスアルプスで性能試験を行った。2013年には南極の昭和基地近傍の氷床上で、約2カ月にわたる吹雪の自動観測に成功したほか、フランスと共同でアデリーランドの観測タワーで吹雪フラックスの鉛直分布を求めた。また英国と共同で砕氷船により南極海の棚氷を周回し、海塩エアロゾルの供給源としての吹雪の寄与の測定を行った。一方、メソスケール気象モデルWRFで南極氷床上における気象要素の時系列変化を求め、これに基づいて算出された吹雪量を2000年の南極みずほ基地での観測結果と比較した
著者
上山 直美 松尾 博哉 田中 祐子 山下 正 子安 恵子 野島 敬祐 高橋 篤信
出版者
宝塚大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

未就学児の父親の育児参加を促すことを目的とした教育プログラムの実践と,父親が育児知識、育児技術や育児情報を得られ、父親同士の交流を図れるようなインターネット上のウェブメディアの開発を行って運営することの両者を合わせ育児支援サービスシステムとして、その構築をおこなった。具体的な内容として、育児支援サービスシステムの中で、教育プログラムで提供した育児知識をウェブメディアでも配信することで情報の共通性や拡散を行い、また、継続的に育児知識、育児技術、育児情報の提供を行った。今後の研究の課題は、より多くの育児期の父親に対してのウェブメディアの普及である。
著者
松尾 秀邦 高橋 治郎 鹿島 愛彦
出版者
愛媛大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究によって新知見とすべき事項は下記の五項目である.1.岩湧寺植物群(Iwakiji Flora):伊藤大一(1986)により発見された. この化石植物群は白亜紀後期の植物群としては珍しい落葉樹林相を示す.2.Archaeojostera属について:郡場・三木(1931, 1958)によって新属とされた被子植物化石である. 一部の人々によって生痕化石説が唱えられているが, この化石の大半は植物化石である. しかし, 一部には生痕化石の疑いの残る部分もあって今後の研究が望まれる化石の一つである.3.鮮新世火成活動による変質:この現象は和泉砂岩層群の分布域の西端部で観察される. 鮮新世火成活動(主に含黒雲母安土岩, 石英安山岩など)によって, この地層の基部に近かい礫岩及び砂岩層が侵され, その硬度を増し, 割栗石その他の石材として採石されている.4.和泉砂岩層群の西端域について:この層群の地層の分布の西端部は愛媛県長浜町青島とされているが, その分布は対岸の大分県臼杵市近効大野川流域まで拡がる可能性がある. 化石こそ少ないが, 岩相の酷似が極め手となる. 今後の研究が望まれる.5.和泉砂岩層群の堆積構造について:これらの地層が堆積した後, 中央構造線を形成した地殻運動によって, 東西の曳きずりが働き, 南北性断層が発達している. これらの断層に区切られた6区の地域では, それぞれ東に落ちる向斜構造が認められる. この構造については, 和泉山脈西端部において松尾(1949)が始めて提唱し, それ以来幾多の研究者によって解明が試みられているが, 未だに説明できない構造の一つである.
著者
上村 益永 高橋 祐 猿渡 洋 鹿野 清宏 近藤 多伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.143, pp.43-48, 2008-07-11

本稿では,スペクトル減算処理過程で生じるミュージカルノイズ量の計量尺度を提案する.スペクトル減算法はミュージカルノイズと呼ばれる人工的で耳障りな歪みを生じ,音質の劣化が著しいという問題を抱えている.そのため数多くのミュージカルノイズ対策手法が提案されているが,ミュージカルノイズの評価尺度が存在しないために,その効果を定量的に議論することができない.我々は,スペクトル減算処理によるミュージカルノイズ発生量が処理強度と原信号の確率密度関数の形状に関係深いことを発見した.この関係に着目し,高次統計量を利用することで確率密度関数の形状を考慮できるミュージカルノイズ発生量の計量尺度を提案する.最後に,主観評価実験により提案尺度とミュージカルノイズが高い相関を持つことを示す.