著者
高橋 健造
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は、難治性の皮膚角化症であるダリエー病、ヘイリー・ヘイリー病に対する外用治療薬の開発を目標とする。ダリエー病およびヘイリー・ヘイリー病は、各々SERCA2遺伝子、SPCA1遺伝子の変異による比較的頻度の高い優性遺伝性の角化皮膚疾患であり、醜形・悪臭を伴う皮疹が思春期以降の顔や胸部などの脂漏部位、あるいは腋窩などの問擦部に発症するが、現在の所、有効な治療法が存在しない。両遺伝子より転写される小胞体、ゴルジ体のカルシウムポンプであるATP2A2、ATP2C1蛋白の蛋白量が低下し、表皮角化細胞が正常な角化プロセスより逸脱することで発症する。我々は、ハプロ・インサフィシエンシーと呼ばれるこの発症メカニズより、SERCA2あるいばSPCA1遺伝子の転写を亢進し、患者皮膚でのポンプ蛋白の発現量を変異体・正常蛋白ともに増加させることで、皮膚症状を改善しうると考えた。そこで培養ヒト表皮角化細胞を用い、SERCA2・SPCA1遺伝子の発現を増強させる薬剤を、脂溶性薬剤ライブラリーをスクリーニングすることで網羅的に探索した結果、カンナビノイドとバニロイドと呼ばれる作動薬の1群が、ヒト皮膚でのATP2A2蛋白の発現を亢進することを発見し特許を申請した。ln Vitroの解析結果より発見した各作動薬群の薬剤を今後、モデル動物を用いたEx Vivoの実験を通して、より効果的で安全性の高い薬剤を検討することで探索するとともに、近い将来の臨床治験などへ向けたより効果的な薬剤の選定を進めている。さらにヘイリー・ヘイリー病の治療薬となるべき薬剤のスクリーニングも継続している。
著者
高橋 克已 綾 牧子
出版者
文教大学
雑誌
教育研究所紀要 (ISSN:09189122)
巻号頁・発行日
no.15, pp.43-54, 2006

いわゆる「学級崩壊」の原因を教師の指導力不足に求める考え方はマスメディア等を通じて広く定着し、近年では特に「子どもたちは変化してきているのに、それに対応できないベテラン教師が『学級崩壊』を引き起こす」という原因帰属様式がかなり広まっている。本稿ではそうした原因帰属様式の問題性を考察する。まず「学級崩壊」を取り上げたテレビ番組を時系列で比較分析することによりメディアにおける原因帰属様式の変化を示し、また現職教員に対するアンケート結果からそうした原因帰属様式の広まりを指摘する。次に、ある公的機関による統計資料の結果が、そうした原因帰属様式と矛盾することに着目し、その矛盾を「予言の自己成就」という観点から説明することを試みる。すなわち、「学級崩壊」を起こす危険性のあるクラスはある程度予測可能であり、そうしたクラスを忌避する傾向が教師間に生じ、その結果としてベテラン教師が担当せざるを得ない状況となり、その後実際に「学級崩壊」を引き起こした場合、「予言の自己成就」によってますますそうした原因帰属様式は定着していく、ということである。最後に、この仮説を実証するための若干の実証的根拠を紹介するとともに、その問題性について考察している。
著者
久保田 尚 松本 正生 藤井 聡 羽鳥 剛史 高橋 勝美
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、交通計画に関わるサイレント層に着目し、計画論の分野では、地区レベルの合意形成において社会実験がサイレント層に及ぼす影響を明らかにするとともに、ナラティブアプローチによりアンケートでは把握しきれない物語の抽出を測り、それに基づく政策提言を行った。さらに調査論の面から、複数の調査手法を組合わせることによる交通調査の回収率向上や調査コスト削減、データ信頼性向上が期待される結果を得た。
著者
高橋 友一
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

避難行動において重要な要素である避難誘導に着目し、身体的な相違の他に、過去の災害時の報告書にある行動に至る個人の状態をモデルで表現し、避難情報の提供方法や個人の心理状態と行動パターンもパラメータとするマルチエージェントベースの避難シミュレーションを構築した。一斉避難放送や警備員から避難誘導、避難誘導情報の適切さ・伝達効率、エージェントの行動パターンなどの条件を変化させたシミュレーション結果を解析し、避難誘導内容・方法により避難行動に変化がある事を示し、それをもとに避難シミュレーションが防災計画の評価に有効な事を示した。
著者
高橋 義行 小島 勢二 ブストス イッツエル
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

化学療法に抵抗性で予後不良な急性白血病に対して、HLAハプロ一致造血幹細胞移植が試みられている。移植後に白血病細胞がヒト主要組織適合抗原であるHLAを失うことが6番染色体による異常で起こり、それが再発のメカニズムの一つであることを解明できた。HLAを失った白血病細胞はNK細胞に攻撃されやすくなっており、移植後にドナーからのNK細胞を輸注することが再発予防につながる可能性が示唆された。
著者
馬場 新悟 菅 幹生 大城 理 湊 小太郎 松田 哲也 小森 優 高橋 隆 徳富 義宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.350, pp.23-27, 2000-10-06
被引用文献数
4 1

近年, ロボット手術支援など医療分野で力覚提示技術が注目されている.しかし, そのヒューマンインターフェースに関する性質は必ずしも十分には検討されていない.この研究では, 力覚フィーフォバックディスプレイ装置でペン型ジンバルのインターフェースを利用する場合を対象に, 人間の力覚特性, すなわち, 振動刺激閾値周波数特性とその弁別閾の特性を心理物理的実験によって明らかにした.これらの結果は, 力覚デバイスを用いてVRシステムを設計する際の基礎的データとして利用できる.
著者
中河 隆仁 森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.457, pp.411-416, 2009-02-24
被引用文献数
3

Unstructured型P2Pネットワークにおいて,コンテンツごとに人気度が異なり,コンテンツのリクエスト数分布やコンテンツのネットワーク上の存在数分布がべき乗側に近い性質を持っていることが報告されている.これにより,フラッディングを用いてコンテンツの検索を行うと,人気度の高いコンテンツは発見しやすいが,人気度の低いコンテンツは発見しにくいという問題がある.さらに,人気度の高いコンテンツを検索する際に無駄なメッセージが多く発生するという問題が生じる.そこで,本稿では,コンテンツの人気度に応じて検索時のTTL(Time To Live)を制御する方式を提案する.本方式では,コンテンツの人気度を過去にそのコンテンツを検索したメッセージが通過した回数で計算し,人気度の高いコンテンツを検索する際には,TTLを小さく設定し,人気度の低いコンテンツを検索する際には,TTLを大きく設定する.これにより,人気度の高いコンテンツを検索する際に,高いヒット率を維持しながら無駄なメッセージが減少し,かつ人気度の低いコンテンツのヒット率が向上する.結果として,P2Pネットワーク全体で高いヒット率を維持させながら,メッセージ数を減少させる効果が期待できる.また,本稿では,シミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.
著者
高橋 晋也
出版者
東海学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

環境色彩が人間の心理・行動に影響を与える上で、積極的な快適性であるプレザントネスの喚起が鍵を握ることを検証するため、実験室実験、質問紙実験、実地調査を行った。色照明下で推論課題や計算課題を行わせた一連の実験では、色による課題成績への影響は見られなかった。色嗜好特性という切り口からプレザントネス感受性の個人差を検討した質問紙研究では、黒嗜好・紫嗜好とプレザントネス感受性との関連が見出された。国外の実地調査ではプレザントネスを伴う特異な環境色彩事例が収集され、我が国における適用可能性が示唆された。今後、この成果をフィールド実験に展開することで、効果的な環境色彩の導入・普及に繋げていけよう。
著者
檀浦 正子 小南 裕志 高橋 けんし 植松 千代美 高梨 聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

環境変動予測のためには、陸域炭素循環において大きな役割をもつ森林の炭素循環解析およびモデルの確立が必要である。そこで、炭素同位体パルスラベリングをアカマツ、コナラ、ミズナラ、マテバシイに適用し樹木内の炭素移動速度および樹木内滞留時間の樹種間比較を行った。アカマツにおける移動速度は広葉樹と比較して遅く、樹木内滞留時間には季節変動がみられ特に冬季は顕著に遅くなった。ミズナラ・マテバシイについては大きな違いは見られなかった。コナラの葉に固定された炭素は4日程度でそのほとんどが幹へと移動した。しかしラベリングから長期間経過後も13Cが残存し、同化産物によって滞留時間が異なることが示唆された。
著者
高橋 一誠
出版者
名古屋市立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究は、運転者の生体指標(心拍・呼吸)から覚醒度を推定し、覚醒度低下検出時に運転者を最適な運転水準へ誘導するシステムの基礎体系を構築することを目的としている。システムは①覚醒度推定に用いる心拍および呼吸を計測する静電容量センサ、②覚醒度推定アルゴリズム、③覚醒度維持刺激の3つの要素技術から成る。平成25年度に実施した各要素の技術開発の成果を以下に記す。①自動車運転時において心電図と呼吸を着衣状態で安定的に計測することを目的とし、本年度は静電容量型アクティブ電極を用いた心電・呼吸センサのプロトタイプを実車に搭載し、直進走行時において安定的に心電図と呼吸を計測できることを確認した。②眠気兆候を捉え易い心拍と呼吸を用い、覚醒度推定アルゴリズムの開発を行った。被験者48名の協力により実施した実験から、運転時の覚醒度低下に観察される心拍と呼吸の特徴を定量化した指標を用いたアルゴリズムにより、覚醒度推定の最も信頼性の高い眼球運動指標よりも早い段階で眠気兆候を捉えることができることを見出した。この成果はInternational Journal of ITS Researchに投稿している。③生理的に眠気を緩和させる手法の開発を目的とし、眠気時の血中酸素飽和度の低下に着目した。被験者16名の実験から、運転者の心拍と呼吸リズム間にCRPS (Cardio-Respiratory Phase Synchronization)を出現させることによって眠気時の頭部酸素量低下を抑えることができることを見出した。このCRPSは運転者の心拍リズムに同期した振動刺激をシート座面から付与することによって導出可能である。これらの成果は、IEEE Transactions on Intelligent Transportation Systemに掲載された。
著者
和達 清夫 高橋 末雄
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.42-56, 1974-03-30 (Released:2010-03-11)
参考文献数
23

In the present paper the underground structure peculiar to Japan and its neighborhood is dealt with, based on the seismic activity in Japan and neighborhood, especially taking account of the fact that each of the seismic activity area and the seismic inactivity area shows in the subterranean space its respective space, and adding the authors' investigational result to the fruits of researches hitherto.Main results of the present paper are:(1) The seismic activity area was divided into 3 zones: the shallow earthquake zone (particularly the existence of “a thick shallow earthquake zone”), the joint earthquake zone and the deep earthquake zone.(2) A concept that the seismic activity zone can be regarded as “the crust” has been proposed.(3) From the discussion of the travel time residual and the area of abnormal distribution of seismic intensities, the values of Low V and Low Q of the seismic inactivity area were obtained, and in particular the stronger point of that property was found at a comparatively small depth in the underground on the continental side along the volcanic front.(4) The mantle flow in Japan and neighborhood is assumed to be composed of its main flow (along the deep earthquake zone) which flows descending from the Pacific side to the continental side and from east to west, of a weak flow northward in the offing of Tosa and in Enshu-nada, and of flows eastward and southward from the direction of the Sea of Japan.(5) In general, where the mantle flow ascends, there exist Low V and Low Q and the area is related to volcanic activities, and where the flow descends, the area is related to the seismic activity area.(6) The joint earthquake zone is an area of the strongest seismic activity, and is closely related with large-scale earthquakes.
著者
遠藤千麻 高橋桂太 金子正秀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.671-673, 2012-03-06

実写顔画像から顔の形状を表す特徴点を取得し、主成分分析を行うことにより、顔特徴を定量的に扱うことができる。人の顔は様々な要素を含んでいるが、その中の一つとして、例えば、のんきや勇ましいなど顔全体の印象を言葉によって記述することがある。本研究では、顔部品(特に目、眉、口)の形状特徴と配置の印象が顔の全体的印象にどのような影響を与えるかを調べる。さらに、顔部品の形状・配置印象に基づいた顔の全体的印象に対する定量的な判定方法を提案する。
著者
日野川 靜枝 高橋 智子
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、サイクロトロンの発明地バークレーのカリフォルニア大学を対象にして、放射線研究所の184インチ・サイクロトロン開発を契機に産業界、ロックフェラー財団、そして科学行政官らがどのように相互の関係を構築していったのかを明らかにしました。しかし、軍産学複合体の形成につながる科学・技術の戦時動員体制づくりにおけ Alfred Lee Loomisの役割は、必要な資料入手が不十分であったために、残念ながら満足には解明できませんでした。引き続き、資料入手に努めたいと考えております。
著者
高橋 和久 大鳥 精司 高相 晶士
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

椎間板性腰痛の基礎研究は1970年に教室の篠原がヒト変性椎間板内へのdeep nerve ingrowth を報告して以来、椎間板内の炎症性サイトカインの上昇や、後根神経節(DRG)における炎症性疼痛ペプチドの増加が報告された。しかし、神経栄養因子であるbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)と椎間板性腰痛に関連に関しての報告は無い.本研究の目的はラット腰椎椎間板傷害モデルにおける痛みに対し,抗BDNF抗体を投与することにより,その疼痛マーカーは抑制が可能であった.
著者
高木 英明 高橋 豊 李 頡 張 勇兵 北島 宗雄 後藤 邦夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.Eコマースサイトのウェッブページのデザイン評価ウェブページに表示されるリンクを逐次選択しながらターゲット情報が提供されているページにたどり着く過程をMarkov連鎖確率過程としてモデル化した。各リンクが選択される確率は、認知工学の技法を用いて計算された百科事典の見出し語間の類似度データベースの検索から自動的に計算して決めることにした。例として、現実の3つの航空会社のiモード航空券予約サイトをMarkov連鎖でモデル化し、予約完了までに要する平均クリック数と操作時間を計算した。その結果、ユーザの習熟度に応じて、3社のサイトの効率の特徴に違いがあることを示した。2.セルラ移動体通信網におけるハンドオーバ数の評価と最適端末位置管理セルラ移動体通信網において、1つの通話中に横切るセルの数(ハンドオーバ数)を評価するモデルを再生過程という確率過程の理論を応用して構築した。また、セルラ移動体通信網においては、基地局が移動端末の位置を時々刻々に記録しておくことが必要であるが、そのコストを節約するために、端末が一定数のセルを横断するごとにページングにより位置を報告させるものとする。端末が通話中に横断するセルの数を遅延再生確率過程でモデル化し、位置管理のコストを最小にするような更新頻度を決定する方法を研究した。3.波長分割多重方式の光通信網における波長割り当てと経路選択の高速解法大規模な波長分割多重方式の光通信網において、送受信の要求が静的に与えられていると仮定するとき、波長割り当てと経路選択を高速で行なう2つのアルゴリズムを開発した。これらを、茨城県および関東地方のNTT電話局の位置から構成した仮想網に対して適用し、既存のアルゴリズムと比較すると、実行速度が格段に短いことが示された。