著者
高橋 純一 行場 次朗
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.112, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

本研究では,アファンタジア傾向者の視覚イメージ特性について一事例検討を行った。アファンタジアとは,視知覚に異常は認められないにも関わらず,視覚イメージの形成に困難を示す状態である。本研究の事例(K)について,視覚能力(レーブン・テスト)とイメージ能力(鮮明性,統御性,常用性[認知スタイル])の測定を行った。結果から,Kの視覚能力について問題は見られなかった。イメージ能力では,視覚,触覚や痛覚などに関するイメージは皆無であったが,聴覚イメージのみ弱く保たれていた。また,視覚イメージの欠如から,統御性は判断ができなかった。さらに,認知スタイルについては,視覚処理よりも言語処理の優位性が明らかとなった。以上より,アファンタジア傾向者では,視覚イメージが欠如している一方で,他の感覚モダリティに関するイメージ(e.g., 聴覚イメージ)の残存性と言語処理の優位性について,認知の代償性が存在すると考える。We examined a single case of Aphantasia, focusing on mental imagery abilities. Aphantasia is a condition in which individuals have difficulties in forming mental imagery although their visual perception is intact. The subject (K) had never experienced visual imagery. His visual (Raven’s test) and imagery abilities (vividness, controllability, and cognitive style) were assessed. While he displayed no difficulty in his visual abilities of perceiving/discriminating objects, he showed a complete deficit in his imagery abilities of visual, tactile, pain, gustatory, olfactory, and somatic image clarity. There may have also been substantial deficits in auditory image. He could not judge controllability due to his blind imagination. Moreover, his cognitive style seemed to mainly involve verbal strategies. We speculated that individuals with Aphantasia display cognitive compensations for their blind imagination, for their imagery to function in some modality (e.g., auditory imagery) and they show superiority in verbal processing.
著者
厳 振国 張 建華 顧 洪川 毛 根金 魏 鴻煕 王 財源 吉備 登 高橋 研一 王 財源 吉備 登
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.191-195, 1997-09-01 (Released:2011-03-18)

51体の新鮮な成人遺体を冷凍し、風府、〓門、風池、晴明穴における断面を作製し、断面の浅点 (その経穴の皮膚表面) と深部点 (危険臓器よりの最も近い点) の間の最短距離すなわち危険な刺入深度を測定した。その結果より刺針時の安全な刺入深度を求め、風府は40.08mm、〓門は38.10mm、風池は39.77mm、晴明は34.25mm以下であるとの結論を得た。
著者
小山 薫 作山 正美 高橋 一男
出版者
岩手医科大学
雑誌
岩手医科大学教養部研究年報 (ISSN:03854132)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.77-81, 2006-12-31

第54回全国高等学校スケート競技・アイスホッケー競技選手権大会スケート競技出場の岩手県立M高等学校スピードスケート選手,男子5名,女子2名の心理的コンディションをPCIで調査した結果,以下の知見を得た.1.男子選手で決勝進出した2名中1名はポジティブな心理状態にあったが,他の男子選手はややネガティブな状態であった.一方,女子選手は闘志があり,やや緊張感を感じている状態で,男子選手と女子選手間に有意差は認められなかった.2.男子決勝進出者と予選敗退者の比較で有意差は認められないが,「一般的活気」,「技術効力感」,「競技失敗不安」に課題がみられた.これらのことから,大会時,各自の陥りやすい心理的トラブルを認知し,それに対処できる心理的スキルを練習段階において習得させることが重要であることが示唆された.
著者
亀山 郁夫 白井 史人 林 良児 沼野 充義 甲斐 清高 野谷 文昭 梅垣 昌子 藤井 省三 高橋 健一郎 齋須 直人 望月 哲男 番場 俊 越野 剛
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ロシアの作家フョードル・ドストエフスキーの文学のもつ世界的意義について、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンをキー概念としつつ、主に2つの観点から解明する。Ⅰ、アレクサンドル二世暗殺を頂点とする19世紀ロシアの社会と人間が陥った危機の諸相とドストエフスキー文学の関連性を、歴史、宗教、文学、人間の観点から明らかにし、Ⅱ、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンが、世界諸地域の文学及び表象文化(映画、演劇、美術ほか)にどう受け継がれ、再生産されたかを明らかにする。後者の研究においては、「世界のドストエフスキー表象」と題するデータベース化を目指している。
著者
高橋和之
出版者
国立国会図書館
巻号頁・発行日
2005-03-25
著者
高橋 陽子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.186, 2011-04-15 (Released:2011-05-31)
参考文献数
2
被引用文献数
4 1

繊維質とは,自然に放置しても分解されにくく,動物によっても消化されにくい成分のことを指す.本来,ヒトの消化酵素で消化されない繊維質は,生理的意義が低い非栄養素とされてきたが,難消化性の繊維質はヒトの健康維持に重要な役割を果たすことが次第に知られるようになった.食物繊維とは多糖類のひとつであるが,日本食品標準成分表2010では「ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体」と定義されている.ヒトの炭水化物消化酵素であるアミラーゼは,デンプンを構成している糖分子のα結合を分解できるが,食物繊維を形成しているβ結合を分解する能力がない.従来,食物繊維はエネルギー源にならないと考えられていたが,実際は,消化されない食物繊維の一部が腸内細菌により発酵分解されて短鎖脂肪酸とガスになるため,エネルギー量はゼロにはならない.また,食物繊維はタンパク質,脂質,炭水化物(糖質),ビタミン,ミネラルに次いで,ヒトに不可欠な第六の栄養素として数えられるようになっている.食物繊維は水に溶けない不溶性(water-insoluble dietary fiber ; IDF)と水に溶ける水溶性(water-soluble dietary fiber ; SDF)に大別される.一般的に食物繊維は,食物の咀嚼回数や消化液の分泌を増加させたり,便通や腸内環境を改善したりするが,不溶性と水溶性で異なる生理作用もある.不溶性食物繊維は保水性が良く,便量の増加や腸の蠕動運動の促進,脂肪や胆汁酸,発がん物質等の吸着・排出作用がある.水溶性食物繊維は,糖の消化吸収を緩慢にして血糖値の急な上昇を抑える糖尿病予防効果,胆汁酸の再吸収を抑えてコレステロールの産生を減らす脂質異常症の抑制効果が期待できる.また,水分を吸収してゲル化するため,胃腸粘膜の保護や空腹感の抑制作用がある.不溶性食物繊維には植物体を構成するセルロース,ヘミセルロース,リグニン,エビやカニ類の外骨格成分であるキチン・キトサンがある.セルロースは植物の細胞壁の主成分で,野菜や穀類の外皮に多く含まれる.グルコースがβ-1,4結合により直鎖状に連なってリボン状に折り重なる構造をしているため,力学的に強固な物質である.ヘミセルロースも細胞壁を構成する不溶性食物繊維であるが,セルロースを構成するグルコースが他の糖で置換された多糖類である.糖分子の種類によって水溶性が異なり,マンナン(グルコマンナンとも呼ばれるコンニャクの成分.グルコースとマンノースがβ-1,4結合したもの),β-グルカン(キノコ類や酵母類に含まれる.グルコースがβ-1,3または-1,4結合したもの),キシラン(細胞壁の成分であるキシロースがβ-1,4結合したもの)等がある.リグニンは果物や野菜の茎,穀類の外皮に含まれる木質の繊維である.キチンはセルロースに構造が似ているが,N-アセチル-D-グルコサミンが連なるアミノ多糖であり,キトサンはキチンからアセチル基が除かれたD-グルコサミン単位からなるものである.水溶性食物繊維にはガム質,ペクチン,藻類多糖類等が分類される.ガム質は植物の分泌液や種子に含まれている粘質物で,代表的なものにグアー豆に含まれるグアーガム(マンノース2分子に1分子のガラクトースの側鎖をもつ多糖類)がある.ペクチンはガラクツロン酸がα-1,4結合した構造をしており,腸内細菌では分解できるがヒトの消化酵素では分解できない.果物類に多く含まれ,水分を吸収してゲル化する性質があり,砂糖と酸を加えて加熱調理するジャムやゼリーの製造に利用されている.藻類多糖類には渇藻類に多いアルギン酸,紅藻類に多いフコイダン,寒天の主成分であるアガロース等がある.この他に,トウモロコシを原料として人工的に合成されるポリデキストロースや難消化性デキストリンも食物繊維として使用されている.食物繊維の摂取目標量は,日本人の食事摂取基準(2010年版)によると,18歳以上では1日あたり男性19g以上,女性17g以上とされている.日本人の食物繊維摂取量は,食生活の欧米化や穀類,芋類,野菜類,豆類の摂取減少の影響を受けて第二次世界大戦後から年々減り続けており,実際の摂取量は若い世代を中心に目標量を満たさない状況が続いている.
著者
佐藤 和紀 三井 一希 手塚 和佳奈 若月 陸央 高橋 純 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45019, (Released:2021-09-14)
参考文献数
24

GIGA スクール構想の標準仕様にしたがってICT 環境が整備され,1人1台の端末を活用している学級へのICT 活用に関する児童と教師への調査から,導入初期の児童によるICT 活用と教師の指導の特徴を検討した.その結果,児童は1人1台の情報端末を日々の活動の中で,さまざまなアプリケーションを組み合わせて活用しながらクラウド上でコミュニケーションを取っていたこと,教師は学校内の情報端末の活用については指導できるが,家庭学習については自治体のルールや情報モラルの観点から指導できていないことが特徴として挙げられた.
著者
地主 敏樹 岡本 光技 高橋 豊治
出版者
神戸大学
雑誌
國民經濟雜誌 (ISSN:03873129)
巻号頁・発行日
vol.189, no.5, pp.47-64, 2004-05
著者
滝沢 正仁 大島 創 山本 浩司 高橋 秀喜 北 真吾
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.2_29-2_38, 2017-09-30 (Released:2017-12-22)
参考文献数
29

高速道路の可変式道路情報板には,危険回避やルート選択に役立つ情報が表示される.近年,グローバル化や高齢化社会への対応策として,シンボル活用の機運が高まっているが,情報板シンボルには,わかりにくいものが存在する.また,媒体特性や環境特性を考慮したデザイン指針や評価手法も定められておらず,改良への手がかりが乏しい.そこで本稿では,情報板シンボルのわかりやすさに関する,「造形の基本的取決め」,「評価手法」,「改良の手がかりとなるデザイン指針」の導出を目的に検討した.まず,情報板の特性を道路標識や一般シンボルとの比較から整理し,取決めと評価手法を導いた.次に,提案した評価手法を用いて,取決めに基く代替案と現行シンボルの理解度調査を実施した.以上の結果から,取決めの妥当性を確認し,デザイン指針として,「車の造形を高評価のもので統一」,「熟知性の高い図材を用い,図材間の因果関係や,主体と客体を明確化」,「熟知性が低いまたは高速道路の文脈と関連付けが困難なシンボルは意味内容の見直しも検討」を導いた.
著者
栗田 春奈 吉田 智彦 本條 均 高橋 行継
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.21-28, 2014

携帯電話・スマートフォン等モバイル通信機器の急速な普及により,従来のパソコン向けウェブサイトを携帯電話やスマートフォン向けに改編する必要性が生じる場合がある.そこで,パソコン向け既存ウェブサイト「作物学用語集」を例に,初学者でもできるだけ簡易に取り組める手法を検討し,携帯電話向けサイトとAndroid用アプリに変換した.携帯電話向けサイトに変換するためのユーティリティは,無料で公開されているTiny   BASICで作成した.パソコン向けウェブサイトの元ファイルの長いテキストは,各用語の先頭につけられた星マークを目印に短いテキストへ分割し,必要なHTMLタグは各テキストの前後に追加した.各ファイルを識別するために,全ファイルに通し番号を付けた.作成したファイルは無料のFC2ホームページ・サービスにアップロードし公開した.Android用アプリについては,プログラミングについての特定の知識なしでAndroid版・iOS版両方のアプリ作成が可能なアムゼネット社の「アプリビルダー」を利用して,携帯向けサイト用に分割した各用語のテキストファイルを用いて各項目を作成し,Google Playで無料のアプリとして公開した.
著者
村上 唯斗 轟木 梨奈 高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45101, (Released:2021-07-06)
参考文献数
5

全国で1人1台端末環境が整備され,クラウドを活用した学習ツールと共に,活用が期待されている.しかし日常的にこれらを活用した授業の知見が不足している.そこで本研究では,1人1台端末環境を整備し,クラウド活用に制限を加えず,日常的に活用している学級の授業を事例として,児童のPC 活用の特徴を明らかにした.授業を学習活動の変化を境目として分節化し,学習活動とPC 活用の関係を検討した.結果,学習活動の質や利便性を向上させるためにPC を活用する点では従来のPC 活用の特徴と同様であったが,授業形態に関わらず複数の学習活動でファイルを共同編集し,多くの児童間で交流していた点などが新たな特徴であった.
著者
高橋 堅二
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.1, pp.79-87, 1991-05

昭和51年8月「東海地震説」が発表されて以後、静岡県では県民と一体となった東海地震対策が推進されてきた。その一環として、県では東海地震に対する県民意識を隔年毎に、又県政世論調査においても一部地震関係の調査を実施している。これにより、県民の意識や実態、経年的な変化を把握し、地震防災に係る施策を検討する基礎資料としている。以下は、この調査資料をもとに分析した「県民の防災意識変化」の要旨である。1 県民意識の変化分析(1)東海地震に対する関心度58年度から6年間の経過で関心層が約7%減少しており、ゆるやかな意識低下を続けている。男女別、年代別においては大差ないが、地区別では東部における関心層の減少率が低い。これは、これまで年中行事のごとく発生していた伊豆半島東方沖の群発地震や平成元年7月の海底噴火のためと思われる。県政世論調査による「地震発生後の行動についての話し合いの有無」においても、同様な傾向が見られる。しかし、「東海地震説」発表以前の昭和46年度における調査では61.1%と高い結果を見るが、これは、44年11月「駿河湾から遠州灘沖での地震発生の可能性大」との発表が、県民にかなりの動揺を与えていた結果と思われる。(2)家庭内対策の実施状況(1)家族の話し合いが必要と思われる対策項目について、わずかづつ低下しているが、これは(1)の関心度と相関があり、地震に関する話題が家庭内で減少していることを表している。(2)「出火防止対策」の項目では他より実施率が高いものの、やや低下を示すのは、種々の安全装置の普及によるものと思われる。(3)「家具の固定」「食料・飲料水の備蓄」等では、販売商品の多様化によるためか、実施率の上昇を示す。2 イベントと意識変化元年度の県民意識調査によれば、伊東、熱海両市を中心とした東部地区の「関心度」「家具の固定」が他地区に比較し高い結果を示している。この結果が平成元年発生した群発地震から海底噴火にいたる一連の現象によることは明らかであり、イベントとの遭遇が意識変化と大きくかかわっていることが分かる。中西部においては、51年度目立ったイベントがなく静穏であることが、家庭内対策必要性の認識を弱めている。3 意識低下の要因と今後の対策防災意識を低下させている要因は種々考えられるが、中でも、「日本(特に東海地震予想震源域)において、近年、大きな地震がない」ことが最大であろう。今後、適度な揺れを待つことができない以上、県民が東海地震に対する正しい認識を身につけると共に、地震に備えた日頃の家庭内対策の重要性を認識するよう、県・市町村一体となった啓蒙、啓発活動を繰り返し展開していく必要がある。
著者
高橋 恵理子 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.225-235, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
21

本稿では、青年期女性における身体不満足感への認知行動的介入の効果を検証するために、非無作為化試験を実施した。研究1では、認知行動的介入群において、外見に関する信念に焦点を当てて、自己の身体に対する思いやり/いつくしみを促進する実験課題を実施した。状態的な身体不満足感の得点について、外見に関する信念には焦点を当てずに身体について語る傾聴群、いずれの課題も行わない統制群と比較した。その結果、認知行動的介入群で状態的身体不満足感の得点が最も顕著に低減した。研究2では、研究1の実験課題を実際のカウンセリング場面に近づけて発展させ、認知行動的介入群でホームワークを含む4週間の介入プログラムを実施した。その結果、認知行動的介入群は傾聴群、統制群に比べて、身体不満足感などの得点がより減少する傾向にあり、主観的幸福感の得点はより増加することが示唆された。