著者
飯野 友里恵 森谷 友昭 高橋 時市郎
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 35.14 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.49-52, 2011-03-04 (Released:2017-09-21)
参考文献数
2

モーションキャプチャシステムを用いて取得されたデータを利用して,ストリートダンスの動作解析を行った.ダンス経験者と初心者のモーションデータを取得し,その違いが数値的に表れているか,特徴抽出を試みた.解析結果によれば,上級者との違いを初心者へ伝達し,練習効率を高めるための処理とシステム化を検討したので,報告する.
著者
高橋 和宏
出版者
JAPAN ASSOCIATION OF INTERNATIONAL RELATIONS
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.170, pp.170_46-170_60, 2012

During the Ikeda administration (1960–1964), Japan's index of import liberalization accelerated from 40% in 1960 to 93% in 1964, approximately same as in the European Economic Community countries. Such rapid liberalization, however, prompted severe anxiety among the Japanese, who feared their economy might be swallowed up by "black ships." Focusing on actions of the Economic Affairs Bureau (EAB) in the Ministry of Foreign Affairs and the leadership of Prime Minister Ikeda Hayato, this article explores the rising of Japan's economic nationalism, its underlying logic, and how Japan government restrained it.<br>Under insistence from the U.S. government, Japan decided to liberalize its trade restrictions in 1960. Such overt foreign pressure, however, fueled economic nationalism among Japan's governmental agencies. Believing trade liberalization was needed to not only meet U.S. demands to expand free trade and defend the dollar but also strengthen Japan's economy, EAB urged Ikeda to take assertive action. Consequently, Ikeda expressed his determination to hasten the removal of trade restrictions when he visited the U.S. in 1961.<br>Nonetheless, intense nationalism was inherent in the Japanese government, especially among its economic agencies. Although they considered trade liberalization necessary, they rejected its basic theory—the principle of comparative advantage—fearing that Japan's infant heavy industries might be forced out, obliging Japan to specialize only in light industries. Hoping to avoid that outcome, the Ministry of International Trade and Industry (MITI) introduced legislation titled "Temporary Measures for Promotion of Specific Industries" intended to create a new industrial structure and strengthen competitiveness of the Japanese heavy industry through public-private cooperation. However, this bill could not muster enough support for enactment because it emphasized regulation rather than free trade.<br>Instead of trade regulations, Japan's economic agencies regarded higher tariffs as the means to prevent acceleration of imports. In opposition, the U.S. and the General Agreement on Tariffs and Trade (GATT) called for linear tariff cuts at the start of the Kennedy Round negotiations. MITI and the Ministry of Agriculture resisted drastic tariff cuts, but their insistence on protecting domestic industries was so self-serving that Japan was reproached during the GATT negotiations. It was Ikeda's initiative that persuaded the intractable economic agencies and enabled Japan to participate affirmatively in the Kennedy Round negotiations.<br>This article concludes that Ikeda's leadership was essential to Japan's overcoming of the forces of economic nationalism and liberalizing its trade policies. Ikeda believed that the Japanese economy would become more vigorous and competitive through trade liberalization.
著者
高橋 正幸 木村 和哲 奈路田 拓史 松下 和弘 宮本 忠幸 川西 泰夫 沼田 明 湯浅 誠 田村 雅人 香川 征
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1563-1568, 1995-10-20
被引用文献数
1

(背景と目的) 夜間陰茎勃起現象の記録は勃起機能検査法として早くから行われてきた検査であるが, 現在でもその.重要惟、は変っていない.特に器質性インポテンスと心因性インポテンスの鑑別には必須の検査であり, 陰茎周径を測定するため活性炭や水銀を用いたストレインゲージが使用されてきた. (対象と方法) われわれは今回, 水銀ストレインゲージにかわるインジウムとガリウムの合金製のストレインゲージを使用した新しい装置を開発しこのストレインゲージを用いた新しい夜間陰茎勃起現象記録システムが臨床に使用可能かどうかを正常ボランティアを対象に検討した. (結果) インジウム-ガリウムストレインゲージは, 伸展-抵抗の特性が直線的でしかも再現性が高く夜間陰茎勃起現象の記録に充分な性能を有していた.測定データの保存, グラフ化のためのソフトウェアは簡潔で, しかもすべて日本語表示であるため操作が容易である.またこの新しいストレインゲージはディスポーザブルなのでメインテナンスが不要であり, 清潔である. (結論) 本システムは夜間陰茎勃起現象の記録の目的で臨床使用が可能であると考えられる.
著者
高橋 孝
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.811-819, 2006-06-20

【1881年1月29日(1)―この日の胃切除の意味を探る手掛かり―】 1881年1月29日が近代外科,特に腹部外科の発展の中で特別な日であることは言うまでもありません.この日WienのAllgemaine Krankenhausでは,Billrothが胃癌に対する胃切除(当時の用語では幽門癌に対する幽門切除)を成功裡に成し遂げ,その後,この患者の経過を4か月にわたって観察し得たのです. これは,一般には胃癌に対する外科手術の成功第1例として語り継がれていますが,当時の諸状況のなかに身を置いて考えてみますと,開腹して腹腔内の病巣を取り除くという外科手技を可能にしたこと,また消化管,特に上部消化管の連続性を離断しこれを再建することの可能性を実際に具現したということに第一義的な意味が置かれるべきものと思われます.つまり,1881年1月29日のBillrothにあっては,胃癌の手術という意識よりは,胃の切除手術という意味をより強く念頭に置いて手術を進めていたのではないかと考えるのです.
著者
高橋 英之 石川 悟 大森 隆司
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.202-215, 2008 (Released:2009-10-30)
参考文献数
25
被引用文献数
5

It is thought to be an important brain function for us to modulate our cognitive state depending on recognition of interactive agents. From our behavioral experiment, we have shown that when subjects believed their interactive agent as a human being in a competitive game, specific behavioral tendency could be observed in comparison with a case that they believed their opponent as a computer and this tendency of subjects with autism spectrum disorder (ASD; they are thought to have some problems in social interaction) was different from that of subjects without ASD. We consider that this tendency is a reflection of cognitive modulation depending on recognition of interactive agents. To explain computational theory of this tendency, we propose a computational model that consists of change detection and state space switching evoked by the change of environmental nature. From this model, we reproduce the result of behavioral experiment by a computer simulation and try to discuss our computational model is useful to understand about the brain function for frequent human social interaction.
著者
高橋 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.539-546, 2016-11-25 (Released:2017-02-25)
参考文献数
2

経営学の論文では「統計的に有意」によく出くわす。標本調査は全数調査と比べて安く実施できるが、どうしても標本抽出に伴う標本誤差が生じてしまう。しかし標本抽出を「くじ引き」にすれば、その標本誤差も確率を使って評価できる。それが有意確率で、実は仮説からの乖離が標本誤差の範囲を超えていますよ (=標本誤差では片づけられないですよ) という意味で「統計的に有意」だったのである。
著者
高橋 敏
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.149-164, 2003-10-31

生命の危機にさらされたとき人々はどのようにこれに立ち向かうのか。日本歴史上人々は天変地異の大災害や即死病といわれる伝染病の大流行に直面した。文明の進歩、医学の革新等、人々の生命に関する恐怖感は遠のいたと一見思われがちの現代であるが、二〇〇三年のSARSの大騒動は未だ伝染病の脅威が身近に存在することを思い知らしめてくれた。本稿は安政五年(一八五八)突如大流行したコレラによって引き起こされた危機的状況、パニック状態を刻明に実証しようとしたものである。人々は即死病といって恐れられたコレラが襲って来る危機的状況のなかでどのようにこれに対拠したのか、本稿は駿河国富士郎大宮町(現富士宮市)を具体例として取り上げる。偶々大宮町の一町人が克明に記録した袖日記を解読することから始める。長崎寄港の米艦乗組員から上陸したコレラ菌は東へ東へ移動し次々と不可思議な病いを伝染させ、未曾有の多量死を現実のものとした。コレラに対するさまざまな医療行為が試みられるが、一方で多種多様、多彩な情報を生み出し、妄想をまき散らしていく。まさに、現実の秩序がくつがえる如く、人々を安心立命させていた精神(心)の枠組が崩壊し、人々はありあらゆる禦ぎ鎮魂の呪術を動員し救いを求めていく。コレラ伝染の時間的経過と空間的ひろがりに対応して人々の動きは活発化し、非日常の異常に自らを置く方策を腐心していく。コレラの根源を旧来の迷信の狐の仕業、くだ狐と見なして狐を払うため山犬、狼を設定し、三峯山の御犬を借りようとする動きやこの地域に特に根強い影響力を有する日蓮宗の七面山信仰がコレラを抑える霊力をもつとして登場する。極限状況の人々の動向にこそ時代と社会の精神構造があらわにされるのである。
著者
高橋 仁大
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,筆者らが開発したテニスの電子スコアブックの機能としてのパフォーマンス評価プログラムを開発し,実際の指導場面での活用結果からその有効性について検討するものである.本研究の結果,performance profiling手法を用いたパフォーマンス評価は,試合のセット取得と関連があり,セットを取得したプレーヤーは相手プレーヤーよりも高い評価結果となることが明らかとなった.
著者
高橋 工
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.139-160, 1995-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
110

本稿では5世紀以前の東アジアで出土した甲冑を検討対象とする。その目的は大きく分けて2つある。第1は,当時の東アジアの各民族・国家がもっていた甲冑にどのような特性が認められるかを明らかにすることである。第2は,わが国の古墳時代前・中期の甲冑が,年代的に,技術的に,あるいは政治的に,東アジアの甲冑の体系の中でどのように位置づけられるかを明らかにすることである。検討の手法としては,東アジアで出土する多様な甲冑をその基本設計の違いから,小札綴・小札縅・地板綴の3つの系統に大別する。そして,小札綴系統が漢民族と,小札縅系統が北燕や高句麗等の騎馬民族と,地板綴系統が朝鮮半島南部・日本の民族と,それぞれ深い係わりを有していたことを述べる。その後,甲冑の基本設計を規定する製作技術の検討から,各種甲冑の変遷,各系統間相互の影響と伝播を考える。その結果,特に3~5世紀代の甲冑の伝播において,騎馬民族国家が果たした役割が大きいことを指摘する。また,地板綴系統として一括される朝鮮半島南部と日本で出土する甲冑が,技術的に別系統として分離可能であり,日本から半島南部へもたらされた可能性が強いことを指摘する。日本では独自の様式の甲冑が生産され続けたが,同時に,甲冑製作技術が海外からうけた影響も大きい。その影響は,4世紀代には中国から完成品が輸入され,5世紀代には朝鮮半島南部から甲冑工人が渡来するといったように,時期によって内容に違いが見られる。そして,このような状況は当時の東アジアの政治情勢と密接に関係していたと考えられるのである。
著者
鳥羽 研二 大河内 二郎 高橋 泰 松林 公蔵 西永 正典 山田 思鶴 高橋 龍太郎 西島 令子 小林 義雄 町田 綾子 秋下 雅弘 佐々木 英忠
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.346-352, 2005-05-15 (Released:2011-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
29 40

【目的】転倒は, 身体的要因と環境要因によっておきるとされているが, 地域において, 環境要因と身体的要因を定量的に比較した研究は少ない. 両者を加味した転倒リスク測定表の開発を目的とする.【方法】厚生労働省研究班, 転倒ハイリスク者の早期発見のための評価方法作成ワーキンググループの会議によって過去の転倒歴と21項目の危険因子を選択し仮の「転倒スコア」とした. 1) 過去一年の転倒 2) つまずく 3) 手摺につかまない階段の昇降 4) 歩く速度が遅延 5) 横断歩道を青のうちにわたりきれない 6) 1km歩行できない 7) 片足で5秒起立できない 8) 杖の使用 9) タオルを固く絞れない 10) めまい, ふらつき 11) 円背 12) 膝痛 13) 視力低下 14) 難聴 15) 物忘れ 16) 転倒不安 17) 5種類以上の服薬 18) 屋内が暗く感じる 19) 家の中の障害物 20) 家の中の段差 21) 家の中の階段使用 22) 生活上家の近くの急な坂道歩行. 対象は全国7地域住民2,439名 (76.3±7.4歳). 検討項目は各項目の該当頻度, 項目の該当有無と転倒の相関, 過去の転倒歴を従属変数とし, 21項目を独立変数とした重回帰分析を行った. 有意な項目に関しては, ロジスティック回帰分析によってオッズ比を算出した.【結果】転倒歴は29%に認められた. 転倒スコア項目では, 物忘れ, 家に段差が60%以上, つまずく, 階段昇降に支障, 視力障害が50%を越えた. 横断歩道を青のうちにわたりきれない, 一方照明が暗い, タオルがきつく絞れないは20%未満であった. 転倒の有無による各因子の頻度の有意差を検定すると, 段差, 階段, 坂道以外のすべての項目が, 転倒者は非転倒者に比べ, 有意に「はい」と答えた率が高かった. 重回帰分析では, 独立した有意な危険因子として, つまずく (p<0.0001), めまい (p<0.0001), 家の中に障害物がある (p=0.0001), タオルがきつく絞れない (p=0.0003), 杖を使っている (p=0.0027), 膝が痛む (p=0.0362) が抽出された. この項目と横断歩道の歩行 (p=0.1) の7項目を用いて, 転倒予測を解析し,3項目以上に該当する場合に, 転倒の感度, 特異度とも良好な値を得た.【結論】内的要因と外的要因を加味した簡便な転倒危険度調査票「転倒スコア」を開発した.「転倒スコア」は, 下位項目の殆どが転倒既往者で高く, 項目選択の妥当性は高い. 段差, 階段などの環境バリアは過去の転倒の危険因子としては重要ではない. 転倒予測因子として, 7項目の短縮板の作成を試み, カットオフ値3項目該当で2/3程度の転倒の予測が可能であり「転倒スコア」の有用性が示唆された.
著者
藤平 武文 北澤 正樹 高橋 聡 吉川 厚
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会研究発表大会予稿集 2021 秋季 (ISSN:24320382)
巻号頁・発行日
pp.82-89, 2021 (Released:2021-10-16)
参考文献数
11

金融機関のトレーディングチームは、様々な経験や知識を持ったトレーダーが構成員となり、それぞれの相場観に従ってトレーディングを行う。チームはリーダーにより束ねられるが、リーダーも自身の相場観を持ち、構成員の判断に介入を行う。トレーディングチームは当初多様性のある集団だが、リーダーの介入により画一的なチームとなることも、多様性を維持したチームとなることもありうると考えられる。本研究では、リーダーの行動がトレーディングチームのパフォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることを目的に、リーダーの介入が組織特性に及ぼす影 響について、エージェント・ベース・モデリング(ABM)の手法を念頭に、投資実態をトレーディングチームリーダーに対して行ったインタビューの結果を報告する。
著者
鈴木 創三 田中 治夫 浮田 美央 斉藤 政一 杉田 亮平 高橋 直史 古川 信雄 矢野 直樹 双胡爾 竹迫 紘 岡崎 正規 豊田 剛己 隅田 裕明 犬伏 和之
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.9-16, 2005-03-31
被引用文献数
1

千葉大学森林環境園芸(利根高冷地)農場内の森林土壌および果樹園土壌(地点名は各TNF-3およびTNO-5)の無機成分および粘土鉱物組成を分析した結果,以下のことが明らかとなった.1.両土壌ともに,現在の表層と下層の土壌の下に過去の表層と下層の土壌が埋没し,それぞれA/Bw/2A/2Bw層およびAp/2BC/3BC/4Bw/5AB/6A層の配列であった.2.両土壌ともに可給態リン酸含量は表層(A, Ap層)が下層よりも高く,とくにTNO-5のAp層はTNF-3のA層より8倍程度も高かった.逆にリン酸吸収係数はA, Ap層が下層より低く,リン酸吸収係数とアロフェン推定含量とは高い正の相関関係が認められた.3.陽イオン交換容量はTNF-3ではA層のほうがBw, 2A, 2Bw層より高かったが,TNO-5ではAp層より5AB, 6A層のほうが高かった.交換性のカルシウム,マグネシウム,カリウム含量および塩基飽和度はTNF-3よりTNO-5が大きかった.4.両土壌ともに,A, Ap層は下層よりも粗砂の割合が大きく,粘土,シルトおよび細砂の割合が小さかった.5.両土壌ともに,A, Ap層の酸化物(OX),非晶質粘土鉱物(AC)および結晶性粘土鉱物(CC)の割合は概ね30, 40および30%であった.しかし,TNF-3の2A層,TNO-5の4Bw, 5ABおよび6A層ではOX, AC, CCの割合は約10, 30および60%で,A, Ap層よりOX, ACの割合が小さく,CCの割合が大きかった.6.両土壌ともに,結晶性粘土鉱物組成はいずれの層もアルミニウム-バーミキュライト(Al-Vt)およびクロライト(Ch)を主体とし,これにアルミニウム-スメクタイト(Al-Sm),スメクタイト(Sm)およびバーミキュライト(Vt)が含まれる組成であった.
著者
高橋 徹
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.620-634, 1999-03-30 (Released:2010-11-19)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本稿では, 近代西欧の歴史的な社会変動に対するニクラス・ルーマンの分析視角を明らかにしたい。ルーマンは, 社会の成層的分化から機能的分化への移行を近代社会変動の中心的なメルクマールと考えており, とりわけそこにおいて生じた複合性の増大がコミュニケーションを方向づける歴史的一文化的形成物 (ゼマンティク) の変化を刺激したことが, 近代におけるコミュニケーション的変動の媒介条件をなしているという仮説を構築している。この仮説は, 彼独自の社会システム理論の枠組みを基礎としている。「ゼマンティク」というタームには, ドイツにおいて蓄積されている歴史的意味論の研究との批判的接続を保持することが含意されており, 本稿では, この歴史的意味論の研究の文脈をも視野に入れつつ, ルーマンの「ゼマンティク」的変動の分析枠組みを彼の所説から再構成して明示化し, 歴史的な知識社会学的研究の枠組みとしての特質を明らかにしたい。