著者
高田 浩司
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

昨年度から引き続き、各地から出土した弥生・古墳時代の銅鏃について、報告書などから形態・法量・年代等に関するデータの収集を行った。また、重要な資料については、各地の博物館や埋蔵文化財センターが保管する銅鏃を実見して、実測やデジタルカメラによる撮影などを行うなどして資料の調査・記録を行った。以上のデータをパソコンにデータベース化する作業を進め、ほぼ全国の資料について終えることができた。これらの基礎的なデータをもとに銅鏃の製作技術、地域性、生産・流通の検討を行った。従来の研究では、各地で製作されていた弥生時代の銅鏃が古墳時代にいたって畿内を中心とした政治的権力によって一元的に生産され、それが各地に配布されるようになったと指摘されてきた。しかし、製作技術や形態などを詳細に検討すると、古墳時代においても弥生時代と同様に、地域ごとにそれぞれ特徴をもっており、地域性がみられることが判明した。そして、古墳時代も畿内からの一元的な配布のみならず、弥生時代と同じように、列島の各地域でも生産が行われ続けていたことを明らかにすることができた。以上から、弥生時代を経て古墳時代にいたって形成された政治体制の特質は、重要物資の流通に関して、その一部を掌握しつつも弥生時代から続く各地域独自の生産・流通体制を温存しっつ、それをうまく自らの政治システムの中に組み込むことによって政治体制の維持を行っていたという結論にいたった。
著者
高田 嘉尚 高橋 浩二 中山 裕司 宇山 理紗 平野 薫 深澤 美樹 南雲 正男
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.68-74, 2006-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
11

本研究は嚥下音と呼気音の音響特性を利用して嚥下障害を客観的に鑑別することを目的として企画されたものである.対象は嚥下障害を有する頭頚部腫瘍患者26名である.VF検査中嚥下音ならびに嚥下直後に意識的に産生した呼気音をわれわれの方法によって採取し, 嚥下と呼気産生時の動態のVF画像とともにデジタルビデオレコーダーに記録した.嚥下音と呼気音の音響信号はわれわれの音響解析コンピュータシステムによって分析を行い, 嚥下音については持続時間を計測し, 呼気音については1/3オクターブバンド分析により, 中心周波数63Hzから200Hzまでの6帯域の平均補正音圧レベルを求めた.嚥下音と嚥下後に意識的に産生した呼気音92サンプルずつについて, これらの分析が行われ, VF所見との比較が行われた.その結果, 嚥下音の持続時間では, Abnorma1群 (誤嚥あるいは喉頭侵入のVF所見を示した群) はSafety群 (前記のVF所見のない群) に比べ, 持続時間が延長する傾向がみられ, 呼気音の補正音圧レベルでは, Abnorma1群はSafety群に比べ, 音圧レベルが大きい傾向を示した.次に嚥下障害を鑑別するために嚥下音の音響信号の持続時間の臨界値として0.88秒を設定し, 同様に呼気音の音響信号の補正音圧レベルの臨界値として17.2dBを設定した.嚥下音と呼気音の分析値の両者がともにこれらの臨界値を超えた場合, そのときの嚥下は障害があると評価した.これらの評価とVF所見との判定一致率は感度82.6% (38/46), 特異度100% (46/46), 陽性反応的中度100% (38/38), 陰性反応的中度85.2% (46/54), 判定-致率91.3% (84/92) となった.以上の結果より嚥下音の持続時間と呼気音の補正音圧レベルは嚥下障害を検出するために利用できることが示唆された.
著者
高田 純
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.53-60, 2009

本研究の目的は,特別支援教育開始後の小学校教師のバーンアウト傾向の実態を質問紙調査で明らかにし,それに関連する心理学的要因を検討することである。小学校の通常学級を担任する206名の教師に対し,次の項目についての調査が実施された。調査内容は,バーンアウト傾向尺度,職場環境ストレッサー尺度,特別支援教育負担感尺度,自己効力感尺度,障害のある児童(以下,障害児)の有無,基本的属性(性別,教職経験年数)からなる。分析の結果,(a)障害児を担任しているかどうか(以下,障害児の有無)によって,教師のバーンアウト傾向得点に差は認められなかったが,障害児の担任教師(以下,有群)が担任していない教師(以下,無群)よりも「孤立性」が低いことがわかった。(b)性別と障害児の有無によって検討したところ,「生徒指導」において,男性有群が男性無群よりも高いことがわかった。(c)教職経験年数と障害児の有無によって検討したところ,「管理職との葛藤」において,中堅有群が中堅無群よりも低いことがわかり,「生徒指導」において,中堅有群が中堅無群よりも高いことがわかった。(d)小学校教師のバーンアウト傾向に至るモデルを共分散構造分析によって検討したところ,職場環境ストレッサーから直接バーンアウト傾向に至る有意なパス,職場環境ストレッサーから特別支援教育負担感を経由してバーンアウト傾向に至る有意なパスが認められ,職場環境へのネガティブな認知が,特別支援教育への不安や負担に影響している可能性が示唆された。
著者
李 奕驍 松原 豊 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.4_91-4_115, 2017-10-25 (Released:2017-11-03)

EV3RT is, to our knowledge, the first RTOS-based software platform for LEGO Mindstorms EV3 robotics kit. It is faster and more suitable for developing applications with real-time requirements than other existing software platforms. In practice, EV3RT has been selected as one of the officially supported platforms of ET Robocon, a popular robot competition in Japan, since 2015 and used by many participating teams to make their robots accomplish the assigned tasks more stably and precisely. In this paper, the usage and architecture of EV3RT are firstly introduced. We then explain TOPPERS/HRP2 kernel, the RTOS of EV3RT, and how to use its protection functionalities to build a reliable platform. A mechanism to support dynamic module loading in a static RTOS is proposed to implement the application loader for EV3RT. Implementation techniques like approach to reusing Linux device drivers are also described. Finally, the advantages of EV3RT are shown by evaluating and comparing its performance with other platforms.
著者
小林 正治 小田 陽平 長谷部 大地 加藤 健介 新美 奏恵 中里 隆之 泉 直也 高田 佳之 福田 純一 高木 律男 齊藤 力
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.153-160, 2006-08-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2 12

To assess whether patients were satisfied with the results of treatment, questionnaires were sent to 291 patients who had undergone orthognathic surgery for correction of jaw deformities and 133 questionnaires were returned with valid answers. The chief problem of 94 (71%) of these patients was appearance. Dysfunctions such as masticatory disturbance and speech difficulties were the primary reason for which 38 (29%) of the patients sought treatment. Seventy-five percent of the patients answered that they were satisfied with the results in regard to their chief problems. A favorable change in appearance was recognized by 125 patients, whereas five patients noticed no major changes and three patients were displeased with their postoperative faces. The patients'evaluations of their appearance seemed to be influenced by the responses of other peoPle to the surgical-results, and objective improvements did not always satisfy their expectations. Improvements in masticatory function and speech were recognized by 92 and 54 patients, respectively. Eighty patients had TMJ signs and symptoms such as click and/or pain before treatment, which disappeared in 53 (66%) of the symptomatic patients after the surgery. On the other hand, TMJ signs and symptoms appeared postoperatively in 7 (15%) of 47 patients without those before treatment. Psychologically, 42 patients noted favorable changes in personality after the surgery. Eight patients with mandibular set back noted the onset or worsening of snoring after the surgery.
著者
高田 洋
出版者
東京都立大学人文学部
雑誌
人文学報 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
no.329, pp.65-87, 2002-03

本論文は、人々が職業名に対応してもっている職業イメージの分析を行う。職業威信スコアの適用には、職業の類似性が考慮されなければならず、この類似性を職業のイメージによって明らかにする。また、職業の威信評定の基準は、多様であり、職業名に対応して決定されることも分析する。第一に、数量化III類による分析の結果、人々の職業の威信評定の基準は、職業名ごとに異なっており、職業名に対応した職業イメージの社会的距離によって、職業の類似性は測定することができる。第二に、職業によって、評定基準の優先度は異なっており、その順序パターンによって類似性にアプローチできる。第三に、職業評定基準には、収入や学歴や責任といったものが強く要求される高地位性、仕事のやり方を自分で決められる自立性、技能や労働を必要とする技術性の三つの基準があるということを分析する。
著者
蛯子 慶三 高田 久実子 伊藤 隆 木村 容子 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.402-406, 2018 (Released:2019-08-01)
参考文献数
3

当研究所では寒証に対して面状電気温熱器を用いた置鍼治療を行っている。腰背部8ヵ所に置鍼後に面状電気温熱器を被せ,6段階に温度調節できるダイアルのうち2番目に熱い5チャンネルで20分間加温する本法を,寒証の治療および検査として用いている。加温途中で熱さを不快に感じたときには,治療目的で用いた場合は温度を下げて継続,検査目的で用いた場合はその時点で終了としている。2016年3月から10月までの8ヵ月間に実施した75例(224件)を対象に有害事象を調査したところ,皮膚表面のヒリヒリ・チリチリした感じが5件(2.2%),かゆみが3件(1.3%),体調不良が1件(0.4%)みられたが,いずれも一時的なものであり,重篤な有害事象は認めなかった。結果より,本法の安全性は高いと考えられた。漢方と鍼灸の臨床研究に繋げていくことが今後の課題である。
著者
寺薗 富朗 大島 渉 中尾 美穂 紀平 晋也 河田 了 大川 和春 高田 憲
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.203-207, 1991-02-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

An unusual case of pleomorphic adenoma of the epiglottis is described. A 71-year-old female complained of dysphagia. Laryngoscopy revealed a tumor located on the laryngeal side of the epiglottis. The tumor was excised successfully by laser treatment under laryngomicroscopy. The extirpated tumor was 1.5cm in diameter, the cut surface was solid and light yellow, and the microscopic diagnosis was pleomorphic adenoma. This is one of three cases of pleomorphic adenoma of the epiglottis to have been reported in Japan.
著者
藤原 治 小松原 純子 高田 圭太 宍倉 正展 鎌滝 孝信
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.5, pp.569-581, 2006-12-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
36
被引用文献数
9 9

The temporal development of a late Holocene strand plain system along the western Shizuoka Prefecture was reconstructed based on facies analyses and 14C dating for core samples excavated in a back marsh using a geo-slicer, 6.0-m-long, 0.35-m-wide, and 0.05- to 0.1-m-deep wedge-shaped stainless steel case. The strand plain system consists of beach, sand dune, and back marsh. Stratigraphic succession of the strand plain system, up to 4.4 m thick, is composed of upper shoreface sand, foreshore sand, backshore sand, and back marsh mud, in ascending order. The succession shows three development stages of the strand plain system.Stage 1 (before the 13th century) : The study area was under a wave-dominated beach environment. The beach system was developed by progradation of shoreface, foreshore, and backshore deposits in the later period of this stage.Stage 2 (from the 13th century to the 16th century) : Sand dune and back marsh developed, covering the beach deposit. Humic mud was thickly deposited in the back marsh with low sand supply from seaward across the dune.Stage 3 (after the 17th century) : The back marsh has been infilled mainly by washover sand and debris from the hinterland. The AD 1707 Hoei Earthquake Tsunami, which destroyed villages on the dune, possibly promoted reactivation of sand movement from ruined dune to the back marsh.
著者
松下 由美 高田 康徳 松田 藍 川村 良一 大沼 裕 大澤 春彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.475-481, 2016-07-30 (Released:2016-07-30)
参考文献数
15

低血糖により自律神経系の活動と関連した不整脈や心血管イベントが増加することが報告されている.今回,インスリン依存状態の1型糖尿病症例において,continuous glucose monitoring(CGM)とホルター心電図を同時に施行し,夜間低血糖時における心電図と自律神経活動の変化を解析し得たので報告する.症例は77歳男性,病歴30年の緩徐進行1型糖尿病患者.入院中のCGMで,睡眠中に約4時間持続する低血糖を認めた.ホルター心電図の心拍変動解析では,同日の睡眠中の非低血糖時に比し,低血糖時に交感神経活性指標(LF/HF)の亢進,副交感神経活性指標(HF)の減少,同時に心室性期外収縮,QTc延長を認めた.CGMとホルター心電図の併用は,夜間低血糖の把握のみならず,低血糖時の自律神経系の変化およびそれと関連した不整脈を検出するのに有用と考えられる.
著者
高田 佳輔
出版者
中京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は,集団形態が複雑で流動的であり,かつ,課題の難易度が高いオンラインゲームのプレイヤーの,集団を維持する「チームワーク」や目標達成のための「合理的問題解決」といった能力を,ゲーム場面ならびに現実場面において縦断的に調査し,得られたデータを潜在方程式モデルによって分析することを通じて,ゲーム世界において獲得したソーシャルスキルが現実世界の対人関係スキルに及ぼす因果的影響を明らかにすることである。以上の目的を遂行するべく,平成30年度に実施した研究の成果は次の通りである。第1に,継続して行なっていたパネル調査に関して3時点目の調査を実施した。第2に,2時点目までのパネルデータを用いて,1時点目の仮想世界における「合理的問題解決能力」が2時点目の現実世界における「合理的問題解決能力」に及ぼす影響について明らかにするために,交差遅れ効果モデルを用いた分析を行なった。第3に,パネル調査において新たに作成したオンラインゲームプレイ動機尺度に関して,その因子構造の妥当性について検証を行なうため,インタビュー調査によって資料を収集した。具体的には,大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)をプレイする動機の時期による遷移について検討を行なった。上記の研究成果は,学会報告および学術講演という形態でまとめることができた(研究発表欄参照)。