著者
小泉 一愉 今村 智弘 高野 裕二 松江 登久 島田 浩章
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.53-57, 2003-06-01

動物の骨組織や酵母細胞を効率的に破砕する方法としてこれまでに密閉容器を用いたセルミル法が開発されている。この方法では、破砕したい細胞組織をステンレス塊(クラッシャー)と一緒に密閉容器に封入し、これを手動で激しく振とうすることによって植物組織が磨砕され、それによって細胞は粉砕される。しかしながら、この方法では、室温で操作を行なうため、細胞内に含まれるDNaseやRNaseなどの夾雑物の影響は避けられない。また、この方法をそのままイネ組織の破砕に準用した場合、植物組織に含まれる様々な繊維状物質やシリカ化合物による強固な細胞構造のために、十分な破砕効果が得られない。そこで、破砕した植物組織から純度の高いDNA、RNAあるいはタンパク質を得るために、これらの分解が少ない液体窒素条件の超低温での細胞破砕を可能にする器具の開発とこれを用いた新規な細胞破砕法の確立を試みた。ここでは、超低温条件下での植物細胞破砕を可能にしたクールミルの開発について報告する。
著者
黄 宇成 川端 祐一郎 高野 裕久 宮沢 孝幸 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00047, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
6

COVID-19の感染拡大を踏まえ,度重なる緊急事態宣言が発令されたのにも関わらず,医療体制の緊迫,そして過度な自粛による経済の後退や社交の減少などの問題が存在する.また,COVID-19の危険性やワクチンの接種に対する正しい認識は広まっておらず,医療関係者の意見より,政府の見解や社会の空気が世論に大きく影響しているのが現状である.そこで本論文は,大阪府の医師に対しアンケート調査を実施し,236名分の回答から,COVID-19対応の医療現場にあるべき行政支援策,COVID-19の法的な位置づけの妥当性,そして新型コロナワクチンのリスクや医療関係者の接種への態度を,COVID-19治療経験の有無に分け,統計的に検証した.こうした知見は,都市・地域の活力増進や公衆衛生増進に向けた公的実践に資すると期待できる.
著者
森 英彦 高野 裕 滝沢 悦貞 川添 豪 金子 豊 名村 栄次郎 Mori Hidehiko Takano Yutaka Takizawa Yoshisada Kawazoe Takeshi Kaneko Yutaka Namura Eijiro
出版者
宇宙開発事業団
雑誌
宇宙開発事業団技術報告 = NASDA Technical Memorandum (ISSN:13457888)
巻号頁・発行日
pp.1冊, 1995-02-28

本報告書は月・火星の無人の探査計画、すなわち月と火星のそれぞれについての観測、着陸/移動探査およびサンプル・リターンについての無人の探査計画の検討結果を報告した。この計画による2015年以後の月と火星の開発利用シナリオについての検討結果の概略は次の通りである。(1)有人月面拠点の建設:5人程度が14日間程度滞在するものとする、(2)軌道上システムの建設:宇宙ステーションの有人機能と軌道上サービスシステムで開発される無人サービス機能を結合して軌道上サービスセンターを構築する、(3)静止軌道プラットフォームの建設:在来型の静止軌道衛星をプラットフォーム化し、永続的に使用する、(4)輸送系の開発:貨物および有人の低高度地球周回軌道機(LEO貨物、LEO有人)と貨物および有人の軌道間輸送機(OTV貨物、OTV有人)の開発が必要である、(5)火星探査:軌道上サービスセンターを用いて火星サンプルリターン機を構築する。
著者
高野 裕 和田 盛哲 岩永 則城 Takano Yutaka Wada Shigeaki Iwanaga Noriki
出版者
宇宙開発事業団
雑誌
宇宙開発事業団技術報告 = NASDA Technical Memorandum (ISSN:13457888)
巻号頁・発行日
pp.1冊, 1995-08-31

現在宇宙開発事業団では月の探査について、(1)月周回軌道からの観測、月面での移動探査、月面物質のサンプルリターンからなる無人探査を経て、(2)有人探査、(3)月開発利用へ向かう3段階の開発シナリオを構想している。周回観測以降の着陸/移動探査のために着陸技術および月面周回移動技術の研究も行われている。これらの技術の開発には共通して「月面へ着陸する技術」の開発が不可欠である。本研究は月面に降下着陸する際の飛行軌道について検討したものである。今回得られた軌道は今後の研究における基準軌道として推進薬消費量、推進系および航法誘導制御系に対する要求仕様の設定に利用することが予定されている。本報告書は以上の研究について、(1)月面着陸実験機のシステム概要(概要、月面着陸実験機のミッション、システムの諸元)、(2)着陸軌道の概要(前提条件、軌道概要)、(3)軌道の詳細(ホーマン軌道フェーズ、燃料最小軌道フェーズ、最終降下軌道フェーズの解析)、(4)結論と要約および今後の課題をまとめたものである。
著者
高野 裕太 武田 知也 坂野 雄二 中野 倫仁
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.18-27, 2022 (Released:2022-01-01)
参考文献数
24

本研究の目的は,大学生の不眠症状に対して実施されている支援方法を整理し,各支援方法における不眠症状の改善効果をメタアナリシスで明らかにすることであった.文献検索にはPubMed,PsycINFO,CiNii,メディカルオンラインを使用し,989編の文献を抽出した.7件の研究をシステマティックレビューの対象とし,6件の研究でメタアナリシスを行った.その結果,大学生の不眠症状に対しては,不眠症に対する認知行動療法,睡眠衛生指導,cognitive refocus treatmentが実施されていた.不眠症に対する認知行動療法では不眠症状が有意に改善した(Hedges’ g=−0.78).一方で,睡眠衛生指導では不眠症状が有意に改善しなかった(Hedges’ g=−0.21).Cognitive refocus treatmentではメタアナリシスは実施できなかった.本研究の結果,不眠症に対する認知行動療法は有効性が確認され,支援の提供形態についての議論もなされた.睡眠衛生指導は重症度別における実施,cognitive refocus treatmentは複数の無作為化比較試験での追試の必要性が示された.
著者
齋藤 美絵子 高野 裕子 嘉数 彰彦
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.B19, 2009

大型街頭ビジョンは、街の華やかさや賑わい、新しさを象徴する存在として人々に親しまれている。また、災害時の情報発信などの情報伝達メディアとして期待されている。しかしその効果が発揮されているのは、東京や大阪などの大都市の一部のビジョンにすぎない。地方都市では、大型街頭ビジョンをうまく活用することができず、効果が発揮できていないものが多いのが現状である。本研究では、地方都市のモデルケースとして、岡山市内の大型街頭ビジョンの現状を改善するため、通行者に注目させる方法を研究する。岡山市内の大型街頭ビジョンの調査から、一瞬目を向ける通行者はいるが長時間の視聴にはならず放映内容が意識に残るほど視聴されていないことが明らかになった。そこで、「焦点注目反応」と呼ばれる意識的な注目反応に着目し、既存のコンテンツとコンテンツとの間に通行者の興味をひく短い映像を挟みこむと効果的であるという仮説を導き出した。その効果を検証するため、注目反応を促す映像がある場合とない場合を比較する実験を行い、その結果から、注目反応がある場合の方が意識的に視聴していたということが明らかになった。
著者
有馬 実咲 桑島 精一 福田 雅幸 福地 峰世 五十嵐 秀光 高野 裕史
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.281-285, 2021-05-20 (Released:2021-07-20)
参考文献数
26

Ectopic impacted teeth are considered to be caused by congenital malposition of tooth germs, increased internal pressure from cysts, tumor growth, periodontal ligament traction, and rupture of the gubernacular cord. It often progresses asymptomatic, but has been reported to cause pain and infection. Here, we report a case of ectopic impacted tooth in which the mandibular horizontal impacted wisdom tooth migrated to the vicinity of the mandibular notch over 9 years. A 42-year-old woman visited our department with the chief complaint of pain in the left mandible. Upon comparison with past radiographs, the left impacted mandibular wisdom tooth was found to have migrated to the mandibular notch over 9 years. We performed an ectopic impacted wisdom tooth extraction to improve thepain. Fragile soft tissue was found forward the tooth. Histopathological specimens showed no epithelial structure and numerous plasma cell infiltrates. Immunohistochemical staining was negative for cytokeratin. The cause of the migration was considered to be the gubernacular cord thickened by inflammation. After the operation, the pain disappeared, no relapse was observed, and the patient has shown good progress.
著者
茂崎 宇十沙 藤井 洋子 砂原 央 高野 裕史 青木 卓磨
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.512-517, 2014

3カ月齢のイタリアン・グレイハウンドが心雑音の精査を目的に来院した.各種検査の結果,肺動脈弁狭窄症及び筋性部心室中隔欠損症と診断した.肺動脈弁狭窄症は重度であり右室圧の亢進(肺動脈血流速:7.15m/s,推定圧較差:204.5mmHg)により,心室中隔欠損孔を介する短絡血流は右─左方向を呈し,酸素飽和度は93%であった.心室中隔欠損症よりも肺動脈弁狭窄症の病態が予後因子として重要であると判断し,治療として侵襲性が少なく死亡リスクが低い肺動脈弁バルーン弁口拡大術を選択した.右室負荷の軽減に成功し,短絡血流は左─右方向となり酸素飽和度は100%に改善した.術後18カ月が経過したが,臨床徴候は認められず,短絡血流量増大による左室容量負荷を生じることなく良好に維持されている.
著者
高野裕基 斎藤隆文 今間俊博
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.145-146, 2012-03-06

現在,セルアニメーションの制作の一部に3DCG技術が導入されている.しがしながら,3DCGは元々実写調の画像を生成するために発展してきた技術であるため,通常のシェーディングではセルアニメーションに適さない画像を生成する.3DCGからセルアニメーション風の陰影を生成するために,セルシェーディングが開発されたが,セルアニメーションの独特な質感を完全に表現することは困難である.そこで,本研究では,実際のセルアニメーション作品の調査,セルアニメーション作品と3DCGによって生成した画像と比較を行い,その違いについて考察を行う.これにより,3DCGにより,セルアニメーション風の陰影を生成する方法を模索する.
著者
村岡 康博 木原 俊之 安河内 春彦 陶山 三千也 高野 裕光 今村 裕行 志波 直人 田川 善彦
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.37-45, 2001-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
44

本研究は, 柔道の競技力に繋がる平衡機能に, 咬合状態がどの様に関与しているかを知るための基礎的資料を得ることを目的とし, 日本代表柔道選手を対象に, 重心動揺と咬合状態との関連性について検討した.1. 咬合状態咬合面積, 咬合力及び咬合バランスの値には, 個人差が大きかった.2. 咬合状態と重心動揺との相関1) 咬合面積と重心動揺主観的に強い噛み合わせでは, 総軌跡長, 単位軌跡長に相関が見られ, 安静状態での噛み合わせでは, 外周面積, 矩形面積及び実効値面積に相関が見られた.2) 咬合力・咬合バランスと重心動揺噛み合わせに関係なく外周面積, 矩形面積及び実効値面積に相関が見られた.3. 噛み合わせ条件の違いによる重心動揺の差の検定総軌跡長と外周面積では, 統計的に有意な差を示した.以上の結果により, 咬合状態と重心動揺には密接な関係が有ることが示唆された. また, 主観的に強いクレンチングは, 重心動揺の成績を向上させることが示された.
著者
高野 裕久
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S8-1, 2015 (Released:2015-08-03)

近年、アレルギー疾患に代表される生活環境病や、肥満、糖尿病を代表とする生活習慣病が激増し、新たな現代病となっている。これらの悪化、増加要因としては、遺伝要因よりむしろ環境要因の急変が重要と考えられており、種々の環境要因の中でも、日々増加しつつある環境化学物質や粒子状物質などの環境汚染物質が及ぼす影響に注目が集まっている。一方、環境汚染物質に対して影響を受けやすい高感受性・脆弱性群が存在することも指摘されている。例えば、粒径2.5μm以下の微粒子(PM2.5)に関し、疫学的な報告では、呼吸器系、免疫系や循環器系、代謝系の疾患を持つ人、特に、気管支喘息や気管支炎、虚血性心疾患や糖尿病の患者さんの症状が悪化しやすいことが報告されている。この事実は、アレルギーをはじめとする生活環境病や糖尿病等の生活習慣病の患者さんが、ある種の環境汚染物質に対し、高感受性、あるいは、脆弱性を示すことを示唆するものと考えられる。現在、わが国を含む先進国においては、高毒性物質の曝露や環境汚染物質の大量曝露の可能性は減じている。しかし、低毒性物質の少量曝露は普遍的に広がり、ありふれた疾患である生活環境病や生活習慣病の増加・悪化との関連が危惧され始めている。本シンポジウムでは、ありふれた環境汚染物質が、ありふれた現代病(生活習慣病やアレルギーを代表とする生活環境病)を悪化・増加させうるという実験的検証と増悪メカニズム解明の現状・進展を紹介し、環境毒性学に新たな視点を加える。本講演はそのイントロダクションの役を担う。
著者
高野 裕士 鈴木 健嗣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.1, pp.67-75, 2016-01-01

本研究では,他者と表情を共有するための新しい装着型インタフェースを開発し,表情によるコミュニケーションが困難な方々への支援機器の実現を目指す.開発したインタフェースは顔面上を伝播する表面筋電位から得られる生体信号のパターンに基づき表情を識別し,LEDや振動デバイスを通じて実時間で表情識別結果を提示することで,自身や他者の表情を知覚することを支援し,共有することを可能にする.ここでは,表情の中でも特にコミュニケーションに重要だと考えられる笑顔に着目し,笑顔の識別及び共有が可能であるかを明らかにする.また,取得する表面筋電位は乾式電極により前頭部及び側頭部上の領域から複数チャネルを通じて計測する手法を提案する.これを頭部装着型インタフェースとして実装することで,使用者の自由な動作が可能な空間的制約の小さい計測を実現する.開発したインタフェースの性能を検証するため,複数の評価実験を行い,提案した表情識別手法が頭部の動きや発話,頭部姿勢に対して頑健であることを明らかにした.更に実証実験を行い,振動提示による表情の共有が視覚障害者の支援に有効であるという結果が示唆された.
著者
赤羽 学 今村 知明 高野 裕久 上田 佳代 清水 厚
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々がこれまでに確立したインターネットを介した健康調査システムを用いて、アレルギー症状を日々収集し、黄砂飛来量・花粉飛散量との関係をみた。各症状の有無を従属変数とし、対象者の性別、年齢と各調査日の最高気温、湿度、黄砂量を共変数として一般化推定方程式を用いて分析した。アレルギー症状の有症状率は2月上旬から増加傾向を示し、黄砂の大量飛来日を起点として増加していた。黄砂量と関連が強かった症状は、鼻水、咳、目のかゆみであった。本研究では、黄砂によってアレルギー症状が誘発されている可能性が示唆されただけでなく、花粉症患者においては花粉飛散量と不眠にも関連があることが判明した。