- 著者
-
Inoue Hiroshi
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.3, pp.159-171, 1980-01-20
Pelosia angusta(STAUDINGER)ネズミホソバ(チビホソバ) 北海道東部で多数とれている本種と同種ではあるが,小型でやや黒っぼい♂が隠岐でとれており,これが,長いあいだ正体不明となっていたIlema okiensis MIYAKEの記載と一致するので,本文で異名とした.樺太のP. sachalinensis MATSUMURAは,北海道やアムールの本種とまったく同じである.私はまだ♀を検していない. Tigrioides immaculata (BUTLER)ナガサキムジホソバ 私(1961)はDANIEL (1954)の同定を信じて,本邦南西部の買Tigrioidesをkobayashiiという新種としたが,台湾から記載されたBUTLERの夕イプ標本(♀)の交尾器を検したところ,kobayashliiは異名であることがわかった.伊豆半島以南に産し,屋久島にまで分布している.Tigrioides pallens INOUE リュウキュウムジホソバ(新称) 前種より翅が少し細く,前翅の脈相も異る.交尾器にも大きなちがいがある.沖縄,石垣島,西表島に多産し,前種と分布が重っていない.Miltochrista sauteri STRAND タイワンスジべニコケガ 岸田,1978,月刊むし 90:27, fig. 15,によって図示され,表記の和名が与えられたが,M. orientalis DANIELは異名となる.M. sauteri ab. fuscozonata MATSUMURAは,次の新種で,上に引用した岸田のFigs. 15a-15cがこれに当る.Miltochrista fuscozonata INOUE ソトグロスジべニコケガ(新称) M. striata (BREMER & GREY)スジべニコケガや前種ほど濃厚な赤色でなく,前翅横線が太く,外横線より外にある脈上の暗色線が太く,しばしばゆう合して全体に暗くなっている.本種も前種も台湾にごく普通だが,日本に多いスジべニコケガは台湾から未発見.miltochrista aberrans okinawana MATSUMURA ハガ夕べニコケガ(オキナワべニコケガ) 奄美大島,徳之島,沖縄産は,小型で,鋸歯状の外横線が消えやすいし,前翅中央部が黄色くない.石垣島と西表島のものは,むしろ横線が太く強い傾向がある.琉球の亜種については,更に多くの標本によって調べる必要がある.私(1965)がM. convexa WILEMANアミメべニコケガとして琉球から記録したのは,同定の間違いであった.Neasura melanopyga(HAMPSON) ムモンウスキコケガ 私(1965)がN. hypophaeola HAMPSONとして記録したのは間違い.台湾から記載された本種は,南西諸島に広く分布している.Chamaita ranruna (MATSUMURA)スカシコケガ(ラソルンヒメホソバ) 私(1961)が本州と四国の標本で記載したCh. diaphana INOUEは,台湾の本種とまったく同じである.そのご茨城県鹿島(目下わかっている北限),奄美大島,西表島でとれている.山本, 959,原色昆虫大図鑑 1:101, pl. 60:23,のSchistophleps bipuncta HAMPSONウスバフタスジコケガのうちbは本種の間違い.Hemipsilia coavestis(HAMPSON) キイロコケガ(改称)(フンキホソバ) Nudaria punkikonis MATSUMURAを本文で異名として整理した.台湾の中部山地に多い. Palaeopsis suffusa (HAMPSON) シラキコケガ(改称)(シラキホソバ) Nudaria shirakii MATSUMURAを本文で異名として整理した.本種も台湾の中部山地に多い. Palaeopsis unifascia INOUE ウスバチビコケガ(新称) 日本で発見されたコケガのなかで最も小型.翅は白く半透明で,前翅に褐色の内外横線があり,後者は強く外方に湾曲している.福岡県でとれた1♂は,やや大きく,前翅中央部と後翅の基半を除き,淡黒褐色をしている.そのほか屋久島と口永良部島でとれた少数の個体しか知られていない.Metaemene hampsoni WILEMANアトジロコヤガ(改称)(カレンコウアトジロコケガ) ヒトリガ科コケガ亜科のParasiccia karenkonis MATSUMURAは,ヤガ科コヤガ亜科のもとに同じ台湾から記載された表記の種と同種である.私(1965)はこれを西表島から記録したが,そのご沖縄のも入手した.琉球産は台湾のものより小型だが,検した標本が2つしかないので,亜種の問題は保留したい.本種の前翅にはMetaemeneのような小室がないので,分類上の位置については,更に検討を要する.