著者
京極 吾一 伊藤 裕之 須長 正治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.279, pp.11-13, 2010-11-06

描いた絵を裏返して見ると、そのまま表から見たときに比べて、明らかに歪んで見えることがある。これは絵を描く人々がしばしば直面する問題と考えられており、絵を描く機会のある学生に実際にアンケートをとったところ、ほぼ全員が「裏返して見ると歪んでいると感じることがある」と答えた。しかし、絵を描いた本人以外が見ても同様のことが起こるのか、必ず裏返しの絵の方が歪んで見えるのかなど、詳しいことは分かっていない。本研究では、身近な対象である「人の顔」の絵を用い、絵の反転と知覚される歪みの大きさとの関係を、他の要因も交えながら調べた。
著者
齋藤 大輔 山本 敬介 峯松 信明 広瀬 啓吉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.322, pp.7-12, 2011-11-21

本稿では,話者空間をテンソル形式によって表現することにより,柔軟に話者性を制御することが可能となる新しい手法を提案する.声質変換の研究において,任意話者の音声を入力または出力として,変換を実現する手法はアプリケーション応用の観点からも非常に重要な技術であるといえる.任意話者声質変換を目的とする技術として,固有声混合正規分布モデル(EV-GMM)に基づく固有声変換法(EVC)が提案されている.EVCにおいては,話者認識でよく用いられるアプローチと同様に,各話者GMMの正規分布の平均ベクトルを連結して得られるGMMスーパーベクトルをもとに話者空間が構築される.構築された話者空間上において,個々の話者は固有スーパーベクトルに対する少数の重みパラメータによって表現することが可能となる.本稿では,話者空間を構築するための事前学習話者データに対して,テンソル解析を導入することによって話者空間を構築することを検討する.本研究における提案手法では,個々の話者はスーパーベクトルではなく行列によって表現される.この話者を表す行列の行及び列は,それぞれ音響特徴量の平均ベクトルの次元及びガウス分布の要素に対応する.ここで,これらの行列のセットに対してテンソル解析を導入することで話者空間が構築される.提案法は,話者情報のスーパーベクトル表現に内在する問題点に対する解法となっており,任意話者声質変換の性能向上が期待できる.本稿では,一対多声質変換において,提案する話者空間表現を導入することで,その有効性を示す.
著者
趙 希鵬 菅原 俊継 黒田 聡 有澤 準二 木村 主幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.406, pp.21-24, 2006-11-28
被引用文献数
4

フィトンチッドは、樹木が産生する殺菌性物質として従来から知られている。フィトンチッドの主成分は、いわゆるヒノキチオール(β-ツヤプリシン)と呼ばれる化合物で近年その殺菌作用や消臭効果などが注目され、フィトンチッドを含有した製品が次々と発売されている。しかし、その基本的な殺菌・抗菌作用機序についての科学的な裏付けや実験的検証がほとんどなく、効果の事例のみが先行しているのが現状である。我々は、ヒノキチオールを主成分とするフィトンチッド剤NSPP08を用いて本剤の殺菌・制菌効果について実験した実験に供したフィトンチッド剤は、それほど強力ではないが一定の殺菌力を有することを確認した。これに対して各種細菌の発育を抑制する効果については、含有フィトンチッド成分の換算値で8ppm程度を含有させるだけで制菌効果を示すことがわかった。また、本剤の殺菌機序を解明する目的で黄色ブドウ球菌の表層抗原を検出する検査キットであるスタフィロLAを用いてフィトンチッド処理後の表層抗原の変化を観察したが、明瞭な変化を観察できなかった。
著者
得丸 公明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.137, pp.67-72, 2010-07-15
被引用文献数
2

地球環境問題がなぜ起きたのか探究した筆者は,人類,文明,言語の起源を訪ねて,最古の現生人類遺跡として知られる南アフリカ・クラシーズ河口洞窟を訪問した.あまりに快適な居住環境は,そこが人類誕生の地であることを思わせた.東アフリカの地下トンネル中で生活するハダカデバネズミの音声通信とヒトの話し言葉を比較し,符号語の数が3〜4桁も異なることを考究し,この違いはヒト言語のデジタル性にあると思った.情報理論や分子生物学の研究成果を参照した結果,ヒト話し言葉の背後には誰もまだ概念化できていないデジタル原理があり,それがオートマトンとして言語システムを駆動していると思った.
著者
大出 訓史 安藤 彰男 谷口 高士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.100, pp.55-60, 2009-06-18

視聴者満足度といった観点から音や音楽を評価する場合,その音が大きいか小さいかといった物理的な特徴量と,その結果としてどう思ったのかという聴取者の心理状態を評価する必要がある.本稿では,音の物理的な特徴量と聴取者の受け止め方という2つの観点から音や音楽を評価することを目的に,アンケート調査を実施し,「迫力のある」などの印象語に対するそれぞれの反意表現(「繊細な」や「騒々しい」)を抽出した.次に,これらの印象語を用いて評価実験を行った.対となる反意表現を変えると評価値も変わるが,どの印象が変わるかは音源に依存した.また,要因を分離するために,各印象を2次元で表記する検討も行った.従来から用いられる評価語対(「迫力のある-ものたりない」など)は,どちらの観点でも反対の意味の言葉が使われていることが多く,その評価値には,音の物理的な特徴量だけでなく,聴取者の受け止め方も含まれている可能性が高いことが分かった.
著者
四方 順司 鈴木 譲 今井 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.329, pp.9-15, 1999-09-24

量子計算の分野において最も衝撃的だったのは、1994年のShorによる素因数分解問題、及び有限体上の離散対数問題が多項式時間で解けるという結果であった。ここで、我々は、はたしてShorのアルゴリズムが楕円曲線上の離散対数問題にもそのまま適用できるのかという問題を考えてみる。本論文では、実際に楕円曲線上の離散対数問題に対するShorのアルゴリズムを明確に記述することで、難なく適用できることを確認する。更に、Shorのアルゴリズム以外に、Kitaevのアルゴリズムを用いることでも楕円曲線上の離散対数問題を多項式時間で解くことが可能である。従って、楕円曲線上の離散対数問題に対するKitaevのアルゴリズムを考察することも本稿の目的としている。
著者
山田 太雅 棟方 渚 小野 哲雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.73, pp.27-32, 2014-06-06

近年,gimpに代表されるようなペイントソフトウェアの開発が盛んに行われている.その一方で,作画技術の向上や,ユーザのモチベーション維持を目的とした支援システムについては,あまり研究が進められていない.そこで,ユーザの模写技術向上を目的とした支援システムに着目した.支援システムを作成するにあたり,必要となる特徴量の抽出方法を2つ提案する.2つの抽出法についてそれぞれ精度実験を行い,アルゴリズムの利点や欠点を見つけることができた.
著者
谷沢 智史 中川 晋吾 金指 文明 西村 一彦 長久 勝 横山 重俊 吉岡 信和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.492, pp.161-165, 2014-03-13

国立情報学研究所では仮想マシン貸し出し型のプライベートクラウドedubase Cloudや,物理マシン貸し出し型のプラィベートクラウドの開発,運用を行なっており,さらに,新たにインタークラウド基盤プロトタイプの開発を行い,試験運用を開始している.我々はクラウド運用を効率化するため,編集可能な広大な「マップ」アプローチを提案し,実運用に適用した.この適用事例について報告し,よりよいマップを作るための支援機構について提案する.
著者
五十嵐 由夏 大森 馨子 和氣 洋美 厳島 行雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.283, pp.91-96, 2013-11-09

近年,都市部の交通機関を利用する者にとって"痴漢"は避けられない問題となっており,多くの人が痴漢被害や冤罪被害に巻き込まれる不安を抱えているという.そこで本研究では,都内近郊の大学に通う男女137名を対象に質問紙調査を実施し,混雑した交通機関内で生じうる様々な身体接触状況に対する不快感と,各状況が痴漢行為だと思うかどうかについて尋ねた.その結果,身体接触そのものが全般的に不快であり,痴漢だと判断されやすい行為は概ね不快な行為でもあることが確認された.一方で,痴漢であると判断されやすい状況に,混雑した車内で偶発的に生じうるものが数多くあることも明らかとなり,冤罪被害が発生する可能性の高さも示唆された.
著者
黒澤 崇浩 水谷 圭一 笹生 拓児 有坂 憲行 宮本 健宏 阪口 啓 荒木 純道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SR, ソフトウェア無線 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.41, pp.73-80, 2010-05-13
被引用文献数
1

近年,無線マルチホップ中継ネットワークが接続性や柔軟性などの利点から注目を集めており,センサネットワークやユーティリティーネットワークなどへの応用が期待されている.この無線マルチホップ中継ネットワークをセカンダリシステムとして運用する場合,プライマリシステムと周波数共用を行わなければならない.周波数利用効率を高めるためには,スペクトラムセンシングによりプライマリの電波使用状況を認識し,セカンダリの使用する帯域を割り当てる必要がある.本研究では、950MHz帯アクティブ系小電力無線システムにおいてFFTを用いたスペクトラムセンシング機能を設計し,MIMO中継プロトタイプハードウェアに本機能を実装したので報告する.
著者
中島 佐和子 水戸部 一孝 鈴木 雅史 吉村 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.472, pp.25-29, 2012-03-02
参考文献数
8

日常生活を豊かにし文化的な活動を行う上で,映画やテレビの存在は欠かせない.しかし,加速する超高齢社会を背景に様々な身体特性を有する人々(聴覚障害や視覚障害等)が増加する中で,これらの人々の日常生活を豊かにする手段の一つである映像コンテンツを鑑賞できるシステムは充分に整備されているとはいえない.本研究では,聴覚障害者対応の映画字幕の現状課題と可能性を把握するために,聴覚障害者,映画製作者,字幕制作者及び一般鑑賞者を対象としたヒヤリング及びアンケート調査を実施した.その結果,聴覚障害者が必要とする字幕の程度については,セリフ字幕,環境音や効果音を説明する字幕,音楽を説明する字幕のそれぞれにおいて異なる尺度でありことが分かった.また,一般鑑賞者(健聴者)を対象とした調査からは,映画音声の聞き取りにくさなどの観点から,聴覚障害を有しない方々に対しても字幕が役に立つ可能性が示唆された.
著者
鈴野 聡志 増田 夏樹 大矢 雅則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.187, pp.49-54, 1999-07-16

量子コンピュータとは, 量子力学を動作原理とするコンピュータのことである. 現在のコンピュータに比べ, 量子状態の干渉性を用いて計算を高速にでき, 発熱を少なくできるなどの特徴を持ち, 次世代のコンピュータとして期待されている. ナップサック問題とはNP完全に属する問題で, 現在のコンピュータでは効率よく解くアルゴリズムは見つかっていない. 本論文では, 量子コンピュータが高速に計算できる証明とし, ナップサック問題の量子アルゴリズムを述べ, quピットを表現する重ね合わせ状態ができれば, ナップサック問題が多項式時間で解けることを示す.
著者
西村 綾乃 椎尾 一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.38, pp.193-198, 2013-05-16

家事などの日常的な仕事は単調でつまらない作業,いわゆるルーティンワークになりがちである.また,今日では,音楽情報処理の技術が発達し,携帯プレーヤーで音楽を再生するだけでなく,ソフトウェアを利用することで歌詞とメロディをコンピュータに歌わせることも可能となった.そこで,本稿では位置情報や家電 (掃除機,冷蔵庫,電子レンジ,食洗機など) に取り付けたセンサ及びネット (SNS,天気予報,webニュースなど) から取得したユーザーの状況 (コンテクスト:Context) に合わせた歌詞とメロディを自動的に作成しリアルタイムに VOCALOID に歌わせることで,生活に彩りを与えるシステムを提案し,その実装を行った.
著者
大泉 洋路 佐藤 俊治 三宅 章吾 阿曽 弘具
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.732, pp.117-122, 2004-03-10
被引用文献数
1

多義図形に対する図地反転知覚は,観察者の注意位置や範囲に依存して図地が反転し,この注意もまた,提示される図形に依存して変化する.本稿では,図地知覚と注意の動的な情報処理過程を説明する神経回路モデルを提案する.提案モデルは,(i)提示された図形中の輪郭情報から領域間の図地関係を決定する機構,及び(ii)視覚的注意の影響を(i)に与える機構から構成される.これら2つの機構は,図地知覚および注意の状態に応じて相互に影響し合う.数値実験により,図地反転図形を入力とした場合,提案モデルが図地反転現象を再現できること,また様々な条件下で我々の知覚と定性的に一致することを確認した.
著者
星野 真人 村越 一支 中村 清彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.490, pp.47-52, 2000-12-01

短期記憶には、"magical number"といわれる7±2項目程度の容量限界が存在することが知られている.また、反応時間に着目して、記憶項目数がある値を越えると反応時間が急激に増大するようなnew magical number4±1も提唱されている.課題の中にはこのnew magical numberが現れない課題も見られる.本研究では、このnew magical numberの発現が、視覚刺激を被験者が学習済みか未学習かに依存していることを調べるため、知り合いと知らない人物の顔画像提示による心理物理実験を行った.その結果、(1)知り合い画像提示でmagical numberの増大が見られた.このことは短期記憶保持に対する長期記憶の効果を示している.また、(2)new magical number周辺で、反応時間の増大勾配が飽和していくという現象が見られた.このことは、被験者がnew magical number4±1近辺で、直列悉皆走査から記憶の走査戦略を変えているということを示している.