著者
永嶋 久美子 小川 睦美 島田 淳子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.391-399, 2011 (Released:2014-04-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

凍みもちは鎌倉時代に端を発し,特に東北地方を中心に日常食として広く食されてきた伝統的保存食品である。伝統的凍みもちの製造における,凍結・乾燥工程中の内部温度は温度履歴より,凍結・融解を繰り返しながら最大氷結晶生成帯で長時間保持されており,極めて狭い温度帯に限定されていることを明らかにした。乾燥後は水分含量,重量,体積,密度の減少が見られた。乾燥後の伝統的凍みもちの内部組織構造を観察したところ,大小さまざまな空隙が生じ,切りもちとは異なる多孔質構造を有していた。水浸漬後では,密度の変化は見られなかったものの,吸水率は非常に高く,内部組織構造が影響を及ぼしていることが明らかになった。さらに,食味特性においては,伝統的凍みもちは焼成後の軟らかさを維持し,軟らかく,崩れやすいもちであり,切りもちとは明らかに異なる食感を有し,この特徴を長時間保持し得ることが明らかになった。
著者
伊藤 有紀 福留 奈美 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.351-358, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
34
被引用文献数
1

一汁三菜の食事に適した食器や盛り付けの要点を調理初心者に示すことを想定し,好ましい食器の組み合わせの数値的な指標を明らかにすることを目的とした。まず,もっとも影響が大きいと考えられる飯碗・汁椀以外の食器の大きさについて調べた。飯碗・汁椀の面積(=大きさ)を1.0としたときの三菜(主菜,副菜,副副菜)の大きさ比を種々に変化させて組み合わせた10通りの写真を作成した。料理を盛り付けた状態で女子大学生に好ましさを評価させたところ,主菜2.5:副菜1.5:副副菜1.0の食器の大きさ比がもっとも評価が高く,これを食器の大きさの基準とした。次に,大きさが同一のときの形の影響を調べるためコンジョイント分析を行なった。基準の大きさ比で三菜の食器の形の組み合わせを変えた8通りの写真の好ましさを調理実習指導経験者に評価させたところ,主菜の食器が縦1:横1.6(楕円や長方形)で,副菜の食器が縦1:横1(正円形や正方形)の組み合わせが好まれた。
著者
逵 牧子 内川 輝美 森末 裕希 寺本 忠司
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.344-347, 2008-10-20
参考文献数
5
被引用文献数
1

市販野菜サラダの生菌数,大腸菌群数および大腸菌数の汚染実態を調査し,衛生基準のガイドライン作成を試みた。また,従来法のデソキシコーレイト寒天培地と発色酵素基質法を用いたアガートリコロール培地で大腸菌群を定性および定量的に比較した。さらに大腸菌数を調べた。1.市販野菜サラダ100検体の生菌数は10〜10^6個/g以上と広範囲であった。また,デソキシコーレイト寒天培地とアガートリコロール培地による大腸菌群陽性数はそれぞれ82検体および97検体と高率であり,両者の大腸菌群数は10〜10^6個/g以上と広範囲であった。2.市販野菜サラダの大腸菌陽性数は6検体と低く,その菌数は10〜10^4個/gであった。3. 発色酵素基質寒天培地は消費期限の短い市販野菜サラダの大腸菌群数および大腸菌数検査を1日で判定できる迅速検査法であった。4.発色酵素基質寒天培地から分離された大腸菌群陽性検体の菌種は,Klebsiella pneumoniae,Enterobacter intermedium等であった。
著者
岡野 節子 堀田 千津子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.73-78, 2002-02-20
被引用文献数
1

今回,鈴鹿市における食べ物と行事について聞き取り調査やアンケート調査(郷土料理,天王祭,報恩講,山の神祭り,粥占い)を行った。さらに前述において地域別による検討をした結果,次の回答が得られた。1) 鈴鹿地域の16市町村(69.6%)に郷土料理や行事に関係する食べ物が伝承されていた。2) 鈴鹿地域の北西部には郷土料理や行事は数例であった。3) 鈴鹿地域の中央部や南東部には郷土料理と行事の関する食べ物は北西部と比較すると多かった。その背景には中央部が農業地帯であったことや南東部は沿海地域であったことが示唆された。また,それらの地域には旧街道が通っており,人々や物の往来も多く,そこに文化が生まれ,現在に伝承されていったのではないかと思える。以上,鈴鹿地域における郷土料理と行事に関する食べ物は他の文献から数例しか収集できなかったが,今回の調査により地域別に把握することができた。
著者
林 知子 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.299-305, 2004
被引用文献数
3

動作解析法を用いて,調理技術の習得度の違いにより「輪切り」の包丁の動きにどのような差が生じるのかを検討した. 試料はきゅうり,人参を用い,試料の違いによる包丁の動きの差についてもあわせて検討し,以下の結果を得た. (1) 熟練者群と非熟練者群を比較すると,包丁の持ち方には大きな違いはなく,ほとんどが全握法と卓刃法であったが添え手には大きな違いがあり,熟練者群全員に添え手があるのに対して非熟練者群は半数に添え手がなかった. また明らかに非熟練者群は3切れ分の所要時間が長く,仕上がった輪切りの試料は厚く不均等であった. (2) 非熟練者には包丁の上下,前後方向に細かい動き及び,試料を切って包丁を持ち上げる時に右側に大きく動く動作が認められた. また,まな板平面に対する包丁腹面角度にばらつきが見られ,全体を通して包丁の動きが極めて不規則であった. (3) 試料聞の差を分析した結果,厚さや所要時間に差が見られたが,包丁の最大切り下ろし速度,角度の平均値には差がなかった. ただし,熟練者でも人参では切り下ろす時にギザギザとした動きが見られた.
著者
高倉 裕 河辺 達也 森田 日出男
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.37-43, 2000-02-20
被引用文献数
4

水,本みりん,煮切りみりんおよびエタノール溶液に豚肉(ヘレ部)を浸漬した時の浸漬液の成分分析を行い,可溶性成分の溶出抑制効果の解明を行った。さらに,加熱処理後の豚肉切断図を電子顕微鏡で観察し,豚肉の筋線維崩壊抑制効果について解明を行った。(1) 豚肉に含まれる可溶性成分の溶出を抑制する調理効果に寄与する浸漬液中の成分は,エタノール及び糖であるが,エタノールまたは糖単独では可溶性成分溶出抑制効果は低く,本みりんのように両成分を含有する調味料がもっとも豚肉の可溶性成分溶出抑制効果が高かった。(2) 豚肉を加熱する前にあらかじめ浸漬調理を行なうと,浸漬液の成分によっては加熱処理した豚肉の筋線維が崩壊するのを抑制する効果があることが明らかとなった。筋線維崩壊抑制効果は豚肉内部で発現しており,エタノール成分が重要な役割を果たしているものと考えられる。(3) 豚肉の筋線維崩壊抑制に寄与する成分は,エタノール及び糖であるが,エタノールまたは糖単独では筋繊維崩壊抑制効果は低く,本みりんのように両成分を含有する調味料が最も筋繊維崩壊抑制効果が高かった。
著者
峯木 真知子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.335-341, 1997-11-20
被引用文献数
4

鶏卵卵黄の加熱による組織構造の変化を観察した。1)加熱した卵黄球は,新鮮生卵黄と同様に多面体で緊密充填を示し,その形状は外層部はまるみを帯び,内層部は細長かった。卵黄球の間隙は生卵黄に比べて狭く,卵黄球の基質は小胞化し,レース状を呈していた。加熱により,卵黄球の基質に存在する蛋白性小顆粒の中には,融合したものや内部に電子密度の低い部分が斑点状に生じているものが出現した。2)半熟卵黄では,外層部は全熟卵と同様に多面体が緊密充填した卵黄球がみられたが,中層及び内層部の卵黄球の境界は消失し,多面形構造は不分明であった。蛋白性小顆粒は,新鮮卵であっても偏在し,融合過程を示すものもあった。また,卵黄球の基質の小胞化は,外層部では全熟卵と同様にレース状を示したが,中層部では部分的に小胞が散在する程度であった。3)貯蔵した鶏卵の全熟卵黄では,卵黄球の基質の小胞化は明瞭で,蛋白性小顆粒は融合しているものが新鮮全熟卵に比べて多く,その分布には偏りがみられた。また,卵黄球の間隙に電子密度の低い物質が集塊の状態で存在するのが観察された。
著者
佐野 満昭
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.223-230, 2007-08-20
参考文献数
29
被引用文献数
1
著者
野坂 千秋 星川 恵里 久保田 浩二 小川 宣子 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-9, 2001-02-20
参考文献数
10
被引用文献数
1

専門店シェフちょうせいひん[VP]と一般市販品[VM]のビシソワーズの食感の差異を,物性面を主体とする品質評価から把握し,ジャガイモの裏ごし条件の特に裏ごし時の温度と裏ごし器のメッシュサイズに着目し,ビシソワーズ物性との関連を明らかにした。更に,好ましいビシソワーズの調整操作の条件を定めることを目的に検討を行った。1.市販品の物性評価 VPは,VMに比べ,見かけの粘度が低く,そこに含まれるジャガイモ細胞の粒子径が大きく,ジャガイモ細胞の粒子積分率が高いスープ物性を示した。ジャガイモ細胞の組織観察の結果,デンプン粒が細胞内に存在し,一方,VMでは細胞外へ溶出して糊化した状態にあった。このように,VPはVMに比べて調理工程において細胞が受ける損傷が少ない為に,粘りが弱く,いもの流感のあるスープとなっていることが分かった。2.ジャガイモ裏ごし調理条件が及ぼすビシソワーズ物性の影響 裏ごし時の調製条件として,裏ごし器のメッシュサイズをジャガイモの細胞経を考慮した250μmとし,かつ90℃で行なうことにより,細胞の損傷が少なく,粒子体積分率が高く,かつ見かけのの粘度の低い,品質の良いビシソワーズが調製できた。これらの条件は,シェフの経験的調理条件と一致した。一方,ミキサーによる調製では,破砕による糊化デンプンの細胞外への流出と破砕された細胞の存在から,好ましい調製法には至らなかった。3.裏ごしミキサー調製法の品質効果 裏ごし製法品(条件 : 裏ごし温度90℃,裏ごし器メッシュサイズ250μm)と,ミキサー製法品(条件 : 90℃,9,000rpm×30sec.)のビシソワーズを官能評価した結果,前者は後者に比べて弱りが弱く,いもの粒間を有し,のどごしがよく,食感全体が好ましいという条件で有意に好まれた。以上のことより,ビシソワーズの調理操作条件として,裏ごし製法の適用と,その際の処理条件として温度90℃,裏ごし器メッシュサイズ250μmが好ましいことを明らかにした。
著者
孟 琦 熊丸 陽奈 今村 美穂 中尾 隆人 小幡 明雄 菅原 悦子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.214-220, 2014

調理加熱前後の生醤油と火入れ醤油から,香気濃縮物を調製した。香気濃縮物のGC-O分析により生醤油では火入れ醤油より甘く香ばしい香気成分が多く感知でき,スモーク様の香気成分は少ないこと,生醤油は調理加熱により感知できる香気成分が加熱前より増加することが判明した。AEDA分析により,生醤油で最も高いFDf成分は甘いカラメル様のHEMFと花様の2-phenylethanolであり,火入れ醤油ではHEMFと燻製様の4VGであることが判明した。さらに,調理加熱後も生醤油ではHEMFの寄与が最も高く,火入れ醤油ではHEMFの寄与度が低下した。甘く香ばしい香りを持つ生醤油は,調理加熱後も火入れ醤油と比較してより複雑な香りになることが明らかになった。さらに,官能評価により,調理加熱した生醤油の甘く香ばしい香りは調理加熱した火入れ醤油より有意に強いことが確認され,この香りの特徴は「豚肉のしょうが焼き」において好まれる傾向があることが判明した。
著者
峯木 眞知子 鈴木 惇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.58-62, 2005-01-20
参考文献数
18
被引用文献数
1

Smaller hens's eggs and yolks are composed of smaller yolk spheres, and vice-versa for larger yolks. We examined whether the size of the yolk spheres was related to the size of eggs and yolks in eggs from different birds. The cross-sectional area of the yolk spheres in the intermediate layer of steamed yolks was measured by the image-processing technique. The weights of the eggs and yolks from different birds were greatest in the ostrich (>duck>White-Leghorn>Nagoya>guinea fowl>quail). The weight of an ostrich egg was about 25 times greater than that of hen eggs, and about 120 times greater than that of quail eggs. The cross-sectional area of yolk spheres was greatest in the White-Leghorn (>ostrich>duck>Nagoya>quail>guinea fowl). There was no significant correlation between the cross-sectional area of yolk spheres and the yolk weight in eggs from different birds (r=0.12). The kinds of bird egg cannot be identified by the different cross-sectional areas of the yolk spheres.
著者
小島 朝子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.256-263, 1999-08-20
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
長尾 慶子 久松 裕子 粟津原 理恵 遠藤 伸之 原田 和樹
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.324-334, 2013-10-05
被引用文献数
1

抗酸化能を高めた中国料理献立を立案するために,栄養・嗜好面に配慮した基本献立と食材や調理手法を変えて抗酸化能を高めたモデル献立の抗酸化能を評価した。その結果,大菜の煮込み料理の[紅焼白菜]では食材のカニ,ケール及びエノキタケを選択し,同じく 炒め料理の[木穉肉]では調味料の五分たまり醤油と甜麺醤に薬味のネギ,ショウガを選択した。[湯菜]ではだし素材の干し椎茸と鶏ガラにネギとショウガを加えて加熱した。甜点心の [杏仁豆腐]では,杏仁霜と牛乳で調製した寒天ゲルに,黒糖シロップと果物のブルーベリーを選択し,鹹点心の[餃子]ではキャベツを脱水せずに加え蒸し加熱する方法で,どの料理も抗酸化能を高めることができた。これらを組み合わせたモデル献立にして,数種の測定法で抗酸化を測定したところ,基本献立に比べて抗酸化能の有意に高い中国料理モデル献立として提案できることが示唆された。
著者
春日 敦子 荻原 英子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.329-336, 2007-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
22

低濃度の食塩水を用いた脱塩は“呼び塩”と言われ,多くの料理本では数の子の塩抜きに塩を用いることを薦めている。塩漬け数の子の脱塩中に,拡散による味成分の溶出のみが数の子の味に影響する要因であるのか,またどのような味成分が影響を及ぼされるかを明らかにするために,数の子を水と食塩水を用いて脱塩し,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,遊離アミノ酸,5'-ヌクレオチドの分析を行った。ナトリウム,マグネシウムは,水よりも食塩水を用いた脱塩の方が溶出量は少なかったが,カリウムは食塩濃度とは関係がなかった。脱塩中に浸漬液中の遊離アミノ酸は時間と共に増加し,数の子中の遊離アミノ酸は減少した。水で15時間脱塩した時の,数の子と浸漬液中の総遊離アミノ酸含量の合計は,脱塩前の塩漬け数の子の総遊離アミノ酸含量より1.8 倍多かったが, 3% 食塩水を用いて脱塩した時は全く増加していなかった。さらに, 水で15 時間脱塩した時の数の子中の総遊離アミノ酸含量は, 3% 食塩水を用いて脱塩したときより2倍多かった。これらの遊離アミノ酸の中では, 味が苦いと言われる疎水性アミノ酸が70% 占めていた。これらの,結果は,遊離アミノ酸が水を用いた脱塩中にプロテアーゼによって生成されたことを示唆している。
著者
春日 敦子 荻原 英子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.329-336, 2007-10-20

低濃度の食塩水を用いた脱塩は"呼び塩"と言われ,多くの料理本では数の子の塩抜きに塩を用いることを薦めている。塩漬け数の子の脱塩中に,拡散による味成分の溶出のみが数の子の味に影響する要因であるのか,またどのような味成分が影響を及ぼされるかを明らかにするために,数の子を水と食塩水を用いて脱塩し,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,遊離アミノ酸,5'-ヌクレオチドの分析を行った。ナトリウム,マグネシウムは,水よりも食塩水を用いた脱塩の方が溶出量は少なかったが,カリウムは食塩濃度とは関係がなかった。脱塩中に浸漬液中の遊離アミノ酸は時間と共に増加し,数の子中の遊離アミノ酸は減少した。水で15時間脱塩した時の,数の子と浸漬液中の総遊離アミノ酸含量の合計は,脱塩前の塩漬け数の子の総遊離アミノ酸含量より1.8倍多かったが,3%食塩水を用いて脱塩した時は全く増加していなかった。さらに,水で15時間脱塩した時の数の子中の総遊離アミノ酸含量は,3%食塩水を用いて脱塩したときより2倍多かった。これらの遊離アミノ酸の中では,味が苦いと言われる疎水性アミノ酸が70%占めていた。これらの結果は,遊離アミノ酸が水を用いた脱塩中にプロテアーゼによって生成されたことを示唆している。
著者
木村 友子 福谷 洋子 菅原 龍幸 佐々木 弘子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.24-31, 1995-02-20
被引用文献数
1 1

干し大根(割り干し)の迅速な水戻し法を見出す目的で, 超音波照射を取り入れた水戻しを行い, 水温5, 25及び40℃設定での好適条件を探索し, 更に煮物にした製品の理化学的性状と食味変化に及ぼす超音波照射の影響について検討し, 次の結果を得た。1) 干し大根は水戻し時間経過と共に吸水量が増加するが, 照射した方が短時間で膨潤し組織は速く軟化した。2) 水戻し時間が長くなると, 一般成分の全糖・遊離糖, 粗蛋白質, 遊離アミノ酸, 灰分, 無機質の含量は著しく減少する傾向を示したが, 超音波照射有無の差はわずかであった。3) 干し大根の水戻しの好適条件は水温25℃設定の15分照射と対照の照射なしの30分浸漬で, 両試料の一般成分値はほぼ同等値を示し, 無機成分の残存率もCa81%, Fe70%, Mg69%以上で良好であった。4) 煮物調理では照射した製品は照射なしの製品に比しテクスチャー特性の破断歪率が有意に大きく, 歯応えがあり, 調味液の浸透割合がやや高く, 干し大根の特有の臭気も多少緩和され, 食味評価も優れていた。以上の結果から, 干し大根の水戻し法に超音波照射を行うことは水戻し時間が短縮でき, 嗜好にも関与し効果的であると考えられた。