著者
瀬戸 美江 澤田 崇子 遠藤 金次
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.219-224, 2003-08-20
被引用文献数
5

A comparison of the salt concentration in miso soup made by the families of female students in Nagasaki and Osaka showed that it was higher in Nagasaki (1.25%) than in Osaka (0.83%). This low salt concentration in Osaka is considered to be due to the quantity of miso used, being about half that used in Nagasaki, although the salt content of the powdered stock used in Osaka was higher than that used in Nagasaki. We next studied whether the use of more concentrated stock led to a lower salt concentration in miso soup or not. The salt concentration in miso soup decreased with increasing concentration of the stock, and it was reduced by 0.16% by preparing the stock with 2〜3%, rather than 0.5%, of dried bonito shavings. We found that miso soup with a salt concentration of 0.8〜1.0% could be prepared by extracting 1 cup of dried bonito shavings with 1 cup of water and dissolving 2 teaspoonfuls (10cc) of miso per person.
著者
高橋 真美 森高 初惠 池山 豊
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.302-309, 2006-10-20

アンケート結果から学年間において市販飲料水に対する意識の違いが異なることが判明した。官能評価の結果,どの学年においてもカルシウム,マグネシウム,ナトリウム,硫酸イオンなどの溶存物が低含量である国産市販飲料水の試料1,2が有意に好まれた(P<0.05)。試料1と試料2の水質の識別は,3,4年生では正解率が高く,1,2年生では低く得られ有意差が認められた(P<0.05)。試料1で抽出した水出し煎茶溶液が他の試料より有意に好まれた(P<0.05)。カリウム,重炭酸イオン,シリカ,硝酸イオンなどが高含量である試料3で1時間抽出した水出し煎茶溶液は3,4年生は1年生よりも有意に高く識別した(P<0.05)。
著者
坂元 明子 山本 信子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.130-135, 1998-05-20
被引用文献数
1

毎年授業開始時に, 5味識別テストを行って来たが, 最近正解率に低下傾向がみられるため, '93年から'96年の4年間における結果を比較し, 学生の味の識別能力を検討したところ, 以下のことが明らかとなった。1) 6試料を識別出来た者, 即ち6点正解率は'93年では, 40%であったが, '96年には, 26%と低下し, '93年を100とすると'96年は65%にすぎなかった。4点正解率は, 6点正解率に次いで高く, 年度による差はなかった。しかし, 3点以下は'93年では全体の30%以下と少ないのに対し, '96年では47%と高く, 年度とともに増加する傾向であった。6試料の識別能力の低下傾向が認められた。2) 6点満点の正解率と有意な正の相関を示した単一味正解率は, 甘味, 無味, 酸味であり, うま味も有意ではないが, 同様の傾向であると考えられた。3) 6試料のうち, 甘味, 塩味, 苦味では正解率が高く, 年度間の差は少なかった。一方, 酸味, うま味, 無味の正解率は低く, 年度と共に低下した。うま味正解率低下に対しては, 酸味誤答率が, 有意な上昇を示し, 次いで酸味正解率低下に対しては, 無味誤答率が, 無味正解率低下に対しては, うま味誤答率が, それぞれ上昇傾向を示した。以上の結果より, 酸味, うま味及び無味, の3者間相互の, 識別が困難なために誤答率が高くなり, 成績低下に結びつくものと判断された。
著者
山崎 歌織 外西 壽鶴子 加藤 和子 河村 フジ子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.31-36, 2000-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
20

We examined the effects of ingredients and boiling time on the quality of Nikogori.The boiling time for making the firmest gel with yellowtail and Pacific cod was shorter than that with chicken wings. The firmest Nikogori was that formed from chicken wings, being firmer than that from yellowtail, while the gelling of broth from Pacific cod was very poor.Gel made from chicken wings was relatively stable during long-term boiling. However, those from yellowtail and Pacific cod gradually became soft by boiling for more than 30 minutes.The transparency of the broth decreased with increasing boiling time, and the amount of protein in the broth increased with yellowtail and chicken wings.Proteins in the broth contained the gelatinous molecules forming Nikogori, as well as unidentified proteins hindering the gelation process.The gelatinous molecules in the broth were changed to those of low molecular weight by long-term boiling so that the Nikogori became soft.
著者
堀江 秀樹 平本 理恵
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.194-197, 2009-06-20
被引用文献数
1

野菜の消費拡大のためには,おいしく味わう工夫が重要である。予備試験の結果ニンジンを蒸し加熱することで甘味が増強する可能性が示された。そこで,蒸し時間を変えたニンジン片について,官能評価と理化学評価を行った。蒸し時間が増すにつれて,官能的には,軟らかさ,ジューシーさと甘味が増加した。蒸すことによる甘味は糖含量によって説明できなかった。それはニンジン片中の糖含量は蒸し加熱によって変化しないからである。30秒間一定の低圧で加圧したときに蒸したニンジン片から滲出するエキスの量を比較した。より長時間蒸したニンジン片から,より多量のエキスが集められた。エキス中の糖類の濃度は約10%であった。容易に滲出するエキスの量が感覚的な甘さやジューシーさに関係するものと考えられる。
著者
大家 千恵子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.15-23, 1998-02-20
参考文献数
5
被引用文献数
2

日本料理, 西洋料理, 中国料理の概念イメージについて, SD法と因子分析法をもとに考察した結果は次のようになった。(1) 日本料理の概念イメージの基本的因子として「品質性と親近感」「嗜好性」「重厚感」「郷愁感」「性別と甘味性」, 西洋料理は「品質性と親近感」「重厚感と味覚」「明るさと爽快感」「甘味性」「センス」のそれぞれ5因子が抽出された。中国料理の基本的因子は「品質性」「嗜好性」「重厚感」「郷愁感」の4因子が抽出された。また, 日本, 西洋, 中国料理を合わせた基本的因子は「品質性」「嗜好性」「重厚感と温涼感」「郷愁感」「性別と甘味性」の5因子が抽出された。(2) 日本料理・西洋料理・中国料理および日本・西洋・中国料理の合わせたそれぞれの基本的因子に対して, 各日本・西洋・中国料理がどのような関係にあるかが明らかになり, 日本料理・西洋料理・中国料理の類別が可能である。
著者
米田 千恵 笠松 千夏 村上 知子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.339-345, 2012-10-05
参考文献数
25

北海道厚岸産シングルシード方式による養殖マガキ成分の季節変化について調べた。産卵期後の2004年8月および2005年9月の試料は軟体部重量ならびに軟体指数ともに最低となった。タンパク質は産卵期前後の試料で最高になった。グリコーゲンは産卵期前後の試料で10%以下(乾重量換算)であったが,秋から春にかけては20%以上となった。ATPおよび関連化合物の総量は,11月に最高となり9月に最低となった。遊離アミノ酸総量は,6月に最高となり,9月に最低となった。主要なアミノ酸はタウリンが最も多く,次いでアラニン,プロリン,グリシン,グルタミン酸の含量が高かった。9月および11月のマガキから調製したエキスの官能検査の結果,11月のエキスは,まろやかさが強く,苦味が弱いことが示された。
著者
新井 貞子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.392-400, 2000-08-20
参考文献数
38
被引用文献数
1
著者
松本 時子 中村 百合子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.46-49, 1995-02-20

紅玉とふじの熟成度の異なるリンゴを用い、砂糖濃度30%と60%のジャムを調製し,粘弾性と官能検査による識別と嗜好性を検討した。1.リンゴ生果の水分は紅玉の場合,1ケ月保存により87.23%〜85.01%に減少したが,ぶじは,84.50%〜84.12%と,ほとんど変化しなかった。糖度は,Brix値で紅玉(12.0〜13.0),ぶじ(10.9〜14.0)とも熟成が進むにつれて高くなった。紅玉のpH値は,試料間に差がなく(3.50〜3.54),ふじのpH値は3.54〜4.14と熟成が進むにつれ高くなった。粗ペクチン量は,紅玉に多く,特に果皮に多かった。2.紅玉の過熟のジャムが貯蔵弾性率,損失弾性率とも高かったが,パネルはその差を識別できなかった。3.生果では好まれない未熟果も,ジャムにすれば好まれることが分かった。4.総合的た好ましさにおいては,酸味と甘味のいずれも強い紅玉を好む人と,マイルドなふじを好む人に好みの傾向が分かれ,いずれのジャムもそれぞれの好ましさがあることが認められた。終りに本研究にあたり,ご協力いただきましたお茶の水女子大学生活科学部調理学研究室のみたさんに感謝致します。
著者
広島県食文化研究グループ 三好 康之 岡本 洋子 前田 ひろみ 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 亀井 文 上村 芳枝 倉田 美恵 土屋 房江 三谷 璋子 吉永 美和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.369-377, 2006-12-20
被引用文献数
1

広島県で摂取されている魚料理を把握する目的で,広島県在住者171名を対象として質問紙を用いた聞き取り調査を実施した。回答数は4,551件であった。魚料理にはあじ,いか,ぶり,あさり,さばがよく用いられ,広島県で漁獲量の多い牡蠣,ちぬ,たちうお,こいわし,なまこはこれらより少なかった。また,島嶼地域では,自給の魚介類で調理する魚料理が他の地域よりも多かった。調理法は,焼き物が最も多く,なま物,煮物,揚げ物の4つの調理方法で総回答数の75.1%を占めていた。和風調理が多く,焼き物の64.4%を塩焼きが,煮物の75.2%を煮付けが占めていた。対照的に,こしょう,バターなどを用いた洋風調理は少なかった。広島県特有の魚介類であるこいわしは,天ぷらや刺身として,ちぬは塩焼きとして,えびじゃこは汁物や塩茹でとして料理されていた。
著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.309-318, 2005-08
被引用文献数
1

干し椎茸の水戻し汁の, 料理への利用の是非を検討する為, 3通りの水戻し方法を試みた。水戻し方法「P」は, 230分水戻しを行った。水戻し方法「Q」は始めに30分間水戻しを行い, その水戻し汁は捨て, 等量の新たな水を加え, 更に200分水戻しを行った。水戻し方法「R」は水戻し時間以外は「Q」と同様の方法であり, 一度目の水戻し時間は90分, 2度目の水戻し時間は140分であった。3通りの水戻し方法にて, 無機質, 遊離アミノ酸, 5'-ヌクレオチド, 有機酸含量の分析, 及び官能検査を行った。これらの結果を基に, 干し椎茸の水戻しは, 水戻し90分後水戻し汁を一旦捨て, 新しい水を加え, 干し椎茸中心部の堅い部分が柔らかくなるまで更に水戻しを継続する, という新しい方法を提案したい。
著者
田村 朝子 加藤哲子 加藤哲子 鈴木 一憲 南 江美子 佐々木 舞 木下 伊規子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.403-409, 2003-11-20
参考文献数
20
被引用文献数
3

「煮物」は,「煮くずれ」が生じやすく,難しい調理操作の一つとされている。特に大量調理では,家庭などの少量調理に比べて煮くずれが生じやすい。本研究では,大量調理で煮物を作る場合の煮崩れ防止の調味加工前の材料(ジャガイモ)に,した処理の調理条件を検討した。蒸す,揚げる,炒める,ゆでるの4種類を行った。煮くずれは,ジャガイモを取り除いた後の煮汁中に残った残渣量,ジャガイモの破断強度,色差,組織観察,官能評価で総合的に比較した。その結果,「揚げる」処理を行ったものが最も煮くずれ量が少なかった。これは素揚げにより,いもの表面が脱水され,表面が硬くなって,内部組織がくずれにくい状態になったものと考えられた。以上のことから,ジャガイモの煮物の煮くずれ防止には,揚げる処理を用いる方法が有効であると考えられる。
著者
掛江 美和子 今井 悦子 村上 知子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.2-14, 2004-02-20
被引用文献数
3

A questionnaire survey was conducted on the compatibility between four alcoholic beverages (beer, wine, sake, and chuhi sour) and various foods. Beer showed a relatively high score regardless of the food variety when the average value of each result was used ; therefore, the validity of the results was confirmed by applying a multivariate analysis by Quantification Method III and a sensory evaluation. The sensory perception by the evaluation panel for certain foods that go well with beer was confirmed. When the compatibility with beer was scaled from the results by Quantification Method III, eight foods (green soybean, Japanese fried chicken with soy sauce seasoning, Japanese barbecued chicken, grilled beef, sausage, fried chicken, dumpling, and grilled pork on a skewer) were considered to be clearly more favored than the other foods tested. The validity was also confirmed by the results of the sensory evaluation, which showed that the correlation was high between each ranking from the questionnaire and sensory evaluation. Furthermore, when the relationship with the degree of substitution of each food was investigated, there was a significant positive correlation with the lipid content and the "oiliness" score, and a significant negative correlation with the starch content. The salt content of each food had no significant correlation with its compatibility with beer.
著者
濱西 知子 若松 尚美 貝沼 圭二 高橋 節子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.326-332, 2000-08-20
被引用文献数
1

サゴ澱粉の高濃度澱粉ゲルの老化特性を知る目的でサゴおよびとうもろこし、馬鈴薯、タビオカ、加工小麦澱粉を用いてゲルの凍結解凍安定性について比較した。ゲルの調製法は攪拌加熱法について静置加熱と比較し、加工小麦澱粉を添加した結果についても実験を行った。高濃度ゲル食品としてわらび餅を調製し、官能評価を行ない食味評価と物性との関係について検討した。1)調製直後の各種高濃度ゲルの硬さの差は僅少であった。2)高濃度ゲルの調製法としての攪拌加熱法は、静置加熱法に比べて、凍結・解凍を繰返した際の硬さ、離水量の増加が緩慢であり、老化が抑制された。また、加工小麦澱粉ゲルの老化は認められなかった。3)天然澱粉に加工小麦澱粉を20%添加することにより、凍結・解凍サイクルにおける硬さ、離水量の増加が抑えられ、特にサゴ澱粉において老化抑制効果が顕著であった。4)評価法による官能評価から硬さ、弾力性、べたつき、総合評価の項目でサゴ澱粉は嗜好性が高く、次いで馬鈴薯澱粉が好まれた。5)嗜好性の高かったサゴおよび馬鈴薯澱粉を用いて官能評価を行なった結果、サゴ澱粉は攪拌加熱法が馬鈴薯澱粉の場合は静置加熱法がより好まれ、澱粉の種類により攪拌が食味特性に及ぼす影響の異なることが明らかとなった。本研究を行なうにあたり平成7年度財団法人飯島記念食品科学振興財団より研究助成をいただきました。ここに深く感謝の意を表します。
著者
市川 朝子 菊嶋 和菜 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.82-89, 2007-04-20
被引用文献数
1

西洋かぼちゃはビタミン類,食物繊維を多く含み,甘みが強く,紛質でほくほくした味わいをもち,しかもいろいろな形態のかぼちゃを手軽に購入することができる。そこで本研究では,3種類のかぼちゃ(生,冷凍品,フレーク品)の添加が,スポンジケーキの食味と物性に及ぼす影響について検討した。その結果,以下のことが明らかになった。1)かぼちゃ添加ケーキの性状は,添加量が多くなるにつれて,硬さ及び凝集性の値は低くなり,付着性の値は高くなる傾向が示された。2)かぼちゃを添加したケーキは,生および冷凍かぼちゃの場合は,全重量中の36%前後の量まで,フレーク状かぼちゃでは26%前後の添加量までケーキのスポンジ状の組織が良好に維持された。3)官能検査においてもがぼちゃの種類によって嗜好的に好まれる添加量が,それぞれ異なることが示された。
著者
村上 知子 蛭田 眞一 下村 道子 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.117-125, 2008-04-20
被引用文献数
1

加熱に長時間を要する煮豆が日常的に家庭調理へと受け入れられるための方策として,多量に煮豆を調製した後冷凍保存を行い,必要に応じて解凍することで利用しやすくなる可能性があると考えた。本研究では黒大豆を蒸留水および調味液に浸漬後煮熟調製した黒豆を用い,冷凍保存が煮熟大豆の軟化に及ぼす影響を物性測定,官能評価および子葉組織の観察から検討した。その結果,黒豆の破断強度は未冷凍の場合,調味液煮豆が水煮豆よりも大きかった。水煮豆・調味液煮豆のいずれにおいても冷凍保存により,破断強度が低下し,破断曲線から数値化したz値もわずかに高くなる傾向がみられた。光学顕微鏡およびSEM観察において2週間冷凍保存すると,水煮豆・調味液煮豆共に細胞間に間隙がみられ,細胞壁の分離が認められた。冷凍保存に伴う軟化現象は,細胞組織の状態の変化により生じることが推察された。官能評価の結果,水煮豆・調味液煮豆共に冷凍2週間後には有意に軟らかく,ねっとり感が強くなった。黒豆の冷凍保存は,家庭における調理の簡便化につながると考えられる。
著者
北尾 敦子 倉賀野 妙子 奥田 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.17-24, 1996-02-20
被引用文献数
2

限られた資源を大切にし、環境汚染をくいとめるという視野から、家庭での揚げもの料理の実態と使用済み油の物理、化学的測定を行ない劣化度との関連性を検討した。1.使用後の廃油の酸価、過酸化物価、TBA値、粘度、色(L、a、b、彩度)は、新油のそれとほぼ同じ分布幅にあり、新油とほぼ変わらない程度の油が廃油として捨てられていた。 2.これは、揚げ物を始めて使い終るまでの期間が短いこと、使用回数が少ないことなど短期使い捨て型使用実態に裏うちされていた。3.さし油の有無によって上述の測定値には差がなかった。本結果のような短期使い捨て型ではさし油の効果は認められなかった。4.油の使用をストップする目安として色のほかに、健康によくない、カラット湯がらないという理由が上げられた。5.短期使い捨て型であるため廃油が多いものと推察されたが、流しに捨てるものは1%で、多くは市販凝固剤で固める、紙などに吸わせる、牛乳パックに入れゴミとして廃棄していた。6.資源を大切にするために、廃油になるまでの使用回数をいま少し延ばし、安易に油を廃棄する習慣を改め、1回の廃油量を減らす工夫が重要である。今後、1回のはり込み量を少なくするための鍋の形状、1回のはり込み油脂量と廃油との関連性を検討する予定である。
著者
若山 忠明 関根 由喜夫
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.243-248, 2003-08-20

The polyphenol oxidase (PPO) activity in the leaves, stalk or flesh, and core or peel of seven vegetables was determined, and the temperature, time and pH value required for the thermal inactivation of the enzyme were investigated. The PPO activity was highest at the bottom of the stalk in spinach, celery and komatsuna and in the core of cabbage, while the PPO activity in radish, carrot, and onion was highest in the peel. The enzyme activity was rapidly decreased by incubating for 10min at a temperature above 50℃ for celery and 60℃ for spinach, cabbage and komatsuna, whereas the carrot PPO activity was gradually decreased above 60℃ and reduced to 19% by heating at 70℃ for 10min. The enzyme obtained from carrot was the most heat resistant, requiring 59.3min at 65℃ for 90% reduction of the activity. The z value of PPO prepared from five vegetables ranged from 6.1℃ to 11.5℃. A change in pH from 5.5 to 4.0 resulted in a substantial reduction in the D value of radish PPO.