著者
湯浅 三郎 後藤 登 磯田 浩
出版者
東京都立科学技術大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

火星大気主成分のCO_2を酸化剤・作動流体としMgやAlを燃料とする火星用ジェットエンジン燃焼器開発の基礎データを得るために、低圧CO_2雰囲気下でのMgとAlの着火・燃焼過程を調べ、以下の成果を得た。(1)8Kpa程度の低い圧力のCO_2中でもAlやMgは着火・燃焼することが出来る。(2)初期反応膜を有しないAlが自発着火するか否かは、着火初期過程での反応膜形成の有無によって決まる。その形成は表面からのAl蒸気の無次元吹出し速度によって支配され、それが臨界速度を越えたときに着火が起こる。(3)Alの自発着火温度は約1550〜2000℃の範囲にあり、CO_2の雰囲気圧力や淀み流流速が低くなるにつれて低下する。(4)Alの燃焼過程は圧力によって変わらず、凝縮したAl_2O_3とCOとを形成するAl蒸気の一様な拡散火炎を伴って燃焼する。(5)Mgの着火は、反応速度支配の表面反応過程で最初に形成される薄い保護的な表面膜が破れた後、CO_2拡散によって支配される気相反応過程が活発になることによって起こる。(6)Mgの自発着火温度は約800〜900℃の範囲にあるが、雰囲気圧力が下がるとともに低下し、淀み流流速には殆ど影響されない。(7)Mgは、凝縮したMgOとCOとを形成するMg蒸気の拡散火炎によって燃焼する。しかしAlとは異なってCOが液体Mgと反応できるため、MgOと炭素からなる表面膜も同時に生成され、この膜の作用によって燃焼は間欠・局所的に起こる。(8)Mgを火星用ジェットエンジンに使用する場合には、表面反応膜の形成による燃焼速度の低下を防止するため、Mgは極超微粒子か蒸気の形で供給する必要がある。
著者
辻 三郎 今井 正和 山田 誠二 石黒 浩 徐 剛
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

自律的に環境を観測し、そのモデルを作成する知能ロボットを実現するために全方位ビジョンを開発し、その能動的利用方式の確立を研究の目的とする。[1]全方位画像理解の研究 カメラを回転させながら連続的に撮像した画像列から作成する全方位画像は、広い視野を持つが、物体までの距離が得られない欠点があった。本研究では、カメラを円弧上で移動しながら連続撮像し、2本のスリットからサンプルする2枚の全方位画像間の視差から距離情報を算定する方式を考案し、実験で有効性を検証した。[2]全方位画像から環境地図の作成 全方位ステレオの距離情報から粗い環境地図を構成し、それに基づいて次の観測点を計画し、移動して観測を繰り返す。それぞれの場所で得られた全方位ステレオデータを融合して、より信頼性のある地図を作成する方式を提案し、実験で検証した。[3]能動ビジョンによる環境地図の作成 全方位ステレオは、基準線が短く精度の高い計測は難しい。そこで、離れた2点での2枚の全方位画像を用いて計測する両眼全方位ステレオが有効と考えられる。しかし、ロボットが移動するために2点間の距離と、移動前後の回転成分を決定する必要がある。環境内の2個の特徴点を360度の視差に保ちながら移動するアクティブビジョンの方式を利用することにより、回転成分を0とし容易に高精度で環境地図を作成する考えを提案し、実験で有効性を示した。[4]定性的室内地図の作成 ロボットの移動のためには、環境の構造を示す定性的地図が有用である。ロボットが、自律的に環境観測の計画を作り、それに従って全方位パノラマ画像、経路パノラマ画像を撮像し、それらを融合して地図を作成するシステムを試作し、実環境で検証した。
著者
郡 史郎
出版者
大阪外国語大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究では、次の2点に関して一通りの解決を与え、その成果を教育現場で試用することを目指した。まず一点は、交付申請書に記したように、「イタリア語らしいイントネーション」とはどのようなものであるかを音響的に正確に記述し、規則化することである。そして、第二点めは、学習者がそこから正しいイントネーションを再現できるような「表記」を教材に施すことである。具体的な成果としては、第一点の「イタリア語らしいイントネーション」の規則化に関しては北部、中部、南部、シチリア出身の計14名のイタリア人の短文朗読発話と自然談話を分析し、以下の10項目の規則を抽出した。(1)肯定文の文尾は、最後のアクセント音節の直前か、その内部で音が下がる、(2)一般疑問文は、文尾で一度肯定文のように下がり、その後で上がる、(3)疑問詞疑問文の文尾は上がらないことが多い、(4)意味の大きな区切りごとにその最後を上げ、ポーズを置く、(5-a)アクセントのあるところは高く発音する、(5-b)ただし、ある語が前後の語を修飾する構文では、後に位置する語のアクセントは高くならない、(5-c)また、朗読調では肯定文の最後の2語はひと続きに高く言う、(6)文中で意味的にいちばん重要な要素を際だたせて高く言い、その後文尾までは低く平らに言う、(7)否定文は動詞を高くその後を低く平らに言うことが多い、(8)同種の項目を列挙する際に、各項目の最終音節あるいはアクセント音節以降から高く平らに言う。第二点の表記の問題に関しては、英語の表記などを検討した結果、高低2段階の線(~_)を基本とし、これに音の高まりを示す山印(/\)と、文尾での上昇を示すための矢印(↑)を付加する表記法を考案した。さらに、この方式によるイントネーションの試験的解説を「NHKラジオ・イタリア語講座応用編」で実践した。
著者
SAFFEN DAVID
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究でわれわれは、PC12細胞の亜株であり神経成長因子(NGF)によりすばやく分化するPC12D細胞を用いて、神経成長因子(NGF)やムスカリン受容体アゴニストであるカルバコールとオキソトレモリンの刺激によって、zif268のmRNAが迅速に発現することを明らかにした。PKCをダウンレギュレートするホルボールジアセテート(PDA)を刺激の一日前に作用させると、ムスカリン受容体のアゴニストによるzif268の発現が完全に抑えられた。一方でNGFによる発現は、同じ処理により部分的にしか抑えられなかった。またNGFによる発現の誘導は、蛋白キナーゼの阻害剤であるK252a(100nM)やスタウロスポリン(10nM)によって阻害された。この結果により、NGFによる発現誘導にはチロシンキナーゼであるp140-trkA NGF受容体の活性化が必須であることが示唆された。カルバコールやオキソトレモリンによる発現の誘導には、細胞外カルシウムの流入が必要であり、これはLタイプのカルシウムチャネルの阻害剤であるニフェジピンにより阻害されないチャネルを介していることがわかった。以上の結果から、NGFとムスカリンアゴニストのzif268発現誘導は、少なくとも部分的には独立した経路を介していることが示唆された。われわれはまた、zif268のDNA結合部位を、マルトース結合蛋白との融合ペプチドとして大腸菌で発現させた。この蛋白はアフィニティークロマトグラフィーで回収でき、zif268の認識するDNAの配列に特異的かつ高親和性に結合した。今後この融合蛋白を用いて、転写因子zif268によって制御されている遺伝子を同定する予定である。
著者
橋詰 隼人 山本 福壽
出版者
鳥取大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究においては次の四つの課題について研究した。1.日本列島のスギ林の着花状況について:鹿児島県から秋田県まで各地のスギ林の着花状況を調査した。スギ林の着花は地方によって著しく差があった。一般に関東・東海・関西及び四国地方の実生スギ造林地帯は雄花の着生が多く,九州・北山・智頭などさし木スギ造林地帯は雄花の着生が少ない傾向がみられた。また品種系統,樹齢,年度などによってスギ林の着花に著しい差がみられた。オモテスギの実生林は30年生位から、ウラスギのさし木林は50〜60年生から着花が盛んになった。2.スギ林・ヒノキ林における花粉生産量について:森林の花粉生産量は品種,林齢,生育場所,年度などによって著しく差があった。スギ林では、実生林はさし木林よりも生産量が多く、また老齢林や神社等の老木は豊作年に多量の花粉を生産した。豊作年における花粉生産量は、スギの中・壮齢林で250〜660Kg/ha,老齢林で1.050Kg/ha,ヒノキ壮齢林で93〜620Kg/haと推定された。3.スギ・ヒノキ花粉の飛散動態について:花粉の飛散時期は年度及び生育場所によって著しく差があった。関西地方ではスギ花粉は2月上・中旬に,ヒノキ花粉は3月中旬〜4月上旬に飛散を開始し、飛散期間はスギで60〜80日、ヒノキで40〜70日に及んだ。花粉の飛散数は、年度、場所、森林の状態によって著しく差があった。スギ花粉は豊作年には1シ-ズンに林地で最高17,000個/cm^2落下した。都市部でも1,000〜6,000個/cm^2の花粉が落下した。ヒノキ花粉は壮齢林の近くで豊作年に1,000個/cm^2程度落下した。しかし、凶作年には花粉の飛散数は著しく減少した。3。薬剤によるスギ雄花の着花抑制:マレイン酸ヒドラジッド,NAA,Bーナインなど成長調整剤によってスギの雄花を枯殺することができた。これらの処理は、花芽分化直前から花芽分化初期が有効である。
著者
岡田 茂弘 千田 嘉博 山本 光正
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

近世において将軍家(大御所・世子を含む)が旅行や外出する際の宿泊・休憩のために、御殿・御茶屋と呼ばれる施設がつくられていた。その用途は旅行用と遊楽用であり、前者には上洛・駿府往復・日光社参等があり、後者には鷹狩等の狩猟や湯治等がある。特に頻繁に外出・旅行を行った徳川家康・秀忠・家光が造営した御殿・御茶屋は関東から近畿にかけて約100ヶ所が史料上で知られている。わずかに残る施設絵図や廃止以降の村絵図等から、それが比較的単純な居館的な構造であったと判るが、中性以来連綿と続いてきた武士の居館の最末期の姿であるとともに、近世の武家屋敷へ繋がるものでもある。しかし、17世紀末までに廃止されたため関連史料が少ない上、近代以降に開発で遺跡も破壊されてきたために、実体の解明はほとんどなされていなかった。このため、本研究では、比較的遺跡の保存が良好である千葉御茶屋御殿跡の発掘調査を契機として、近世初期の将軍家御殿・御茶屋跡の史料を集成し、遺跡の現状調査を行うと共に、千葉御茶屋御殿跡・鴻巣御殿跡・浦和御殿跡の発掘を伴う遺跡の現地調査を実施した。遺跡全体を発掘調査できたのは、千葉御茶屋御殿跡だけであり、他の2ヶ所は部分的な調査にとどまったが、立地や規模の大小に違いはあっても、主として土塁・空堀による外郭施設内に簡単な書院造り風の建物群を中心とした諸施設が配置されているなど、共通性を有することが明らかになった。さらに、多数の施設が列記されている17世紀中葉(寛永年間)以降の御殿目録や御殿絵図と比較すると、17世紀初期の御殿等はより単純であることが判った。このことは、家光治下で御殿・御茶屋の大規模な修築が行われたことを暗示しており、近世史の分野でも文献史料や絵図資料と考古学資料との対比の必要性が明らかとなった。
著者
松森 昭
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

近年、血中TNF-αの測定が可能となり、各種の癌、感染症、膠原病において高値を示し、また、重症心不全において上昇することが報告され、心不全末期のカヘキシ-との関連が示唆された。研究者らは心筋炎、心筋症なとの血中サイトカインを測定し、急性心筋炎ではIL-1α,IL-1β,TNF-α,などの炎症性サイトカインが高値を示し、拡張型心筋症、肥大型心筋症でTNF-αが上昇することを発見した。また、マウスEMCウイルス性心筋炎モデルにおいて血中TNF-αが上昇し、抗TNF-α抗体の投与により心筋細胞障害が軽減することを明らかにした。本年度は、同モデルにおいてサイトカインの発現を経時的に検討した。4週令DBA/2マウスにencephalomyocarditis(EMC)ウイルスを接種し、1、3、7、14、28、80日後に屠殺、心臓を摘出し、RNAを抽出、cDNAを合成し、PCR法を用いIL-1β,IL-2,IL-4,IL-10,IFN-γ,TNF-αのmRNAおよびEMCウイルスRNAを半定量した。EMCウイルスRNAはウイルス接種1日後より検出され、7日後に最高となったが、80日後でも検出された。IL-1β,TNF-αは3日後から有意に発現が増強し、多くのサイトカインの発現は7日後に最高となり、すべてのサイトカインmRNAは80日後も検出された。近年開発された強心薬ベスナリノンは心不全の生存率を著明に改善することが報告され注目されているが、最近のわれわれの研究によりベスナリノンはIL-1,IL-6,TNF-α,IFN-γなどのサイトカイン産生を抑制することが明らかとなった。ベスナリノンはEMCウイルス性心筋炎の生存率を用量依存的に改善し、心筋細胞障害および炎症所見を改善した。しかし、ベスナリノンに抗ウイルス作用はなく、LPS刺激による脾細胞からのTNF-αの産生を抑制したことから、ベスナリノンはサイトカイン産生を抑制することにより心筋炎を軽減したと考えられた。
著者
橋口 倫介 鈴木 宣明 シロニス R.L. ペレス F. リーゼンフーバー K. 大谷 啓治
出版者
上智大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本計画の2年目で最終年度に当る平成2年度は13世紀から15世紀までの学者の自己理解と知識観の変遷との関係が研究課題となった。この研究テ-マを計画通りに時代区分に従って3つの分野に分けて研究が進められた。1.13世紀の知識観は、大学とくに神学部と哲学部において形成されたものなので、パリ大学とオックスフォ-ド大学における学問論が主題となり、2.14・15世紀に関して、フランス・ドイツ・イギリスにおける「古き道」と「新しき道」という2通りの学問理解が研究され、3.14世紀後半〜15世紀は、イタリアの人文主義にみられる学問観が研究課題となった。1.に関して、13世紀大学において展開された知識観の内、3つの基本形態が区別できるようになった。(1)12世紀サン=ヴィクトル派の学問観を継承・発展させた旧フランシスコ会学派とくにボナヴェントゥラに代表される神学的学問観では、諸学問を神学の下で統一しようとする伝統的知識観、(2)ボエティウスを通して媒介されたアリストテレスの哲学的学問論を受け継いだドミニコ会とくにトマス・アクィナスによって代表される認識論的知識観、(3)オックスフォ-ドにおける、アラブ哲学とアウグスティヌス主義の光論を基盤とし、中期フランシスコ会学派とくにロジャ-・ベ-コンによって代表される数学的・実用主義的な知識観。2.に関して、14・15世紀ヨ-ロッパ北方において、(1)いわゆる「古き道」のアルベルトゥス学派、トマス学派、スコトゥス学派における体系的で思弁的な学問観、(2)「新しき道」を自称した形式論理的・唯名論的・経験論的な学問観、(3)とくにフランスにおいて登場した自然学・経済学・歴史学などの新学問によって特徴づけられた知識観。3.に関して、14・15世紀イタリアにおける学問を生活・文芸・人間形成と結びつけて考察する初期ルネサンスの知識観を研究し、その社会的背景と学者の精神性との連関性を明確にとらえることができた。
著者
角田 文男 板井 一好 三田 光男 中屋 重直 桜井 四郎 立身 政信
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

産業界は勿論、社会全般にフッ化物の使用量が著増し、職場や日常生活に由来するフッ素の生体負荷量が増加する環境にある。懸念されるフッ化物の慢性影響として、少年期以後(主に成人期)の暴露による骨フッ素症が注目されるが、本邦ではその研究が殆どなされていない。本研究は骨フッ素症についてX線検査および臨床諸検査の成績から診断基準を確立し、さらに現在または過去にフッ化物暴露を受けている集団を対象として量-反応関係を検討したものである。1.骨フッ素症の診断基準:国内外から得られた多数の骨フッ素症のX線写真を読影し、これら患者の臨床検査成績を参考として重症度診断基準を作成した。即ち、骨X線の撮影部位は骨盤正面、腰椎を主とする脊椎部の正面と側面、膝関節を含めた下腿骨の正面と側面、前腕部の正面と側面または手部の正面とする。読影は骨梁の粗さ、骨密度の増高、骨輪郭の不明瞭さ、骨皮質の肥厚、石灰化や骨化の出現、骨棘や外骨腫の形成等をフッ素による硬化像として留意する。有所見は骨盤と腰椎>四肢骨>手の順で現れ易かった。骨X線像は重症度別に軽・中等・重症の3段階に分類しえた。臨床生化学的諸検査成績は、血清や尿のフッ素濃度を含めて直接的に診断に寄与しえなかった。2.フッ素の量-反応関係に関する疫学的検討:(1)労働許容濃度レベルの気中フッ化物に暴露されている中国労働者集団について年令階級別に暴露年数の長短と骨フッ素症の有症率を検討した結果、軽症を疑う者の率が45〜54歳代で暴露群に有意に高かった。45歳未満では15年暴露群でも有意の差を認めなかった。(2)国内の高フッ素地帯の住民について、過去に2〜3ppmのフッ素を含む地下水を20年以上飲用していた集団では、骨フッ素症が疑われる者を発見できず、また他の数地方で斑状歯者の家族検診を進めてきたが、まだ明らかな骨フッ素症は発見できない。
著者
入谷 明 三宅 正史 内海 恭三 細井 美彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

一卵性多子生産は一つの受精卵から数多くの同一遺伝子構成の個体を複製するという点で、胚の効率生産のみならず、遺伝的検定材料としての利用面に貢献できるものと思われる。しかし胚発生の過程において細胞は増殖と分化を繰り返して個体に発生する。胚の単離割球が個体に分化発生するためには全能性(個体への発生能力)を保持しているか、人為的に賦与させる必要がある。マウス胚では2細胞期の胚ゲノムの活性化が起こり、4細胞期胚の個々の単離割球全てには個体への発生能力がみられていない。しかし羊では8細胞期胚の単一割球の発生能力が報告されている。本研究ではウシとヤギ胚の初期胚の単離割球の発生能を調べると共に、それらの1卵性多子生産を試みた。胎児部と胎盤部に発生する部分に分化した胚盤胞期胚を均等に2分離して1卵性双生児は容易に作出された。金属刃での顕微操作で90%以上の確立で分離され、ウシでは60%以上の受胎率と20対以上の産子が得られた。8細胞期由来2割球(2/8)からはヤギではウサギ卵管中で37%の胚盤胞が得られ、4個の移植から1頭の産子が得られた。ウシでは同様にして20%の胚盤胞が得られた。他にウシでは初期分割期胚の回収が困難なため体外受精由来胚が実験に供され、1/8割球と2/8割球の胚盤胞への発生能はウサギ卵管中で20%であった。ヤギやウシでの1/8〜と2/8細胞の胚盤胞への発生能が認められたので、2/8細胞に1/2〜1/4細胞又は1/8細胞を集合させて2/8細胞の胚盤胞期以後の発生能を改善しようとした。さらに1/8細胞に未受精除核卵母細胞を電気融合させて、受精卵を再構成させた。ヤギ及びウシとも体内受精発育卵及び体外受精発育卵を材料として、8細胞からの割球の単離、融合用の除核卵母細胞の調整、及びそれらの電気融合、再構成胚の胚盤胞期への発生能の検定など一連の基礎技術が開発され、ヤギ・ウシ胚とも胚盤胞が得られているので今後の一卵性8つ子の生産が期待させる。
著者
垣生 園子 守内 哲也 勝木 元也 玉置 憲一
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

T細胞はMHCと共に抗原を認識する。このMHC拘束性T細胞レパートリー形成は胸腺内分化過程で選択的に生ずると推測されている。しかしヌードマウスにもThy-1+細胞が少数検出され、胸腺非依存的に分化するT細胞の存在を示唆する。本研究ではT細胞分化における胸腺の役割を明確にするために、胸腺欠如ヌードマウスのT細胞系リンパ球の性状、分化段階を検討した。細胞表面分子を指標にして調べると、6週令マウスではThy-1+細胞は正常マウスの1/10以下で、多くはasialo GM1(GA1)をも発現していたが、成熟T細胞と異なりCD4、CD8、CD3、等は検出されなかった。即ち、幼若ヌードマウスには未熟型T細胞しか存在しないことが示唆された。しかし、加令と共にThy-1+細胞は増加し、その1/2以上はCD3+と同時にCD4あるいはCD8を発現していた。この結果は、緩慢ではあるが胸腺外でT細胞が成熟型に分化することを示している。また、CD3はT細胞における抗原認識レセプター(TCR)と常に共存して発現しているので、ヌードマウスThy-1+細胞はTCRを発現していることを意味する。実際、ヌードマウスのCD3+細胞上にはTCRVβ8が検出され、かつTCRβ鎖遺伝子再構成も証明されたので、抗原を認識し活性化され得る成熟型T細胞のヌードマウスでの分化が明らかになった。16週令ヌードマウスではアロ抗原と反応するT細胞や抗原特異的キラーT細胞は誘導され、ヌードマウスの成熟型表現型のT細胞は機能的に分化が完了していると考えられる。胸腺内ではT細胞はCD4+CD8+(DP)細胞を経て分化するが、ヌードマウスではそれら細胞を介さないで分化することが示唆された。DP細胞は胸腺内の自己反応性T細胞の選択的除去の候補であるので、それら細胞がないヌードマウスはトレランスを考える上で良いモデルとなる。
著者
杉原 重夫 叶内 敦子 梅本 亨 竹迫 紘 小疇 尚
出版者
明治大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

平成4年度は、伊豆半島先端部の蛇石大池湿原において、深度40mまでのオールコア採取の機械ボーリングを行った。ここでは、深度35.3mまで池沼性の有機質堆積物が認められ、示標テフラの同定、^<14>C年代測定から最終氷期以降の堆積物であることが明らかになった。また花粉分析の結果、約5万年以降の植生変化が明らかになった。このほか東北地方南部から中部地方にかけての湿原(矢の原湿原など)においてシンウォールボーリングを行い、試料を採取して^<14>C年代測定などの分析を行った。平成5年度は、内陸の乾燥地域の湿原(長野県の八島ヶ原湿原)と、日本海側の多雪地域の湿原(福島県の大曽根湿原)においてボーリング調査を行った。八島ヶ原湿原では採取した約6mの試料全層について、微化石(花粉・珪藻)分析とテラフの同定・レスの検出を行った。大曽根湿原(福島県)では約3mの試料を採取し^<14>C年代測定と花粉分析を行った結果、完新世に形成された湿原であることが明らかになった。平成6年度は、日本海側の多雪地域の湿原(福島県苗場山山頂湿原・新潟県小松原湿原)においてボーリング調査を行った。これらの湿原の泥炭層から妙高系、浅間系のテフラが数枚検出された。湿原堆積物の花粉分析の結果、両湿原とも完新世に形成された湿原であることが明らかになった。本年度までに行った各地の湿原調査・研究の結果、湿原の形成年代や成因が明らかになった。また、湿原堆積物の花粉分析から最終氷期の寒冷化の開始時期について新たな知見を得て、湿原の気象観測結果と既在の気象データを整理し、実験的に山地の降雪現象をシミュレイトした。
著者
村田 道雄 佐々木 誠 安元 健
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

マイトトキシンは、植物プランクトンである渦鞭毛藻が生産する分子量3422のポリエーテル化合物であり、天然物中最大の分子量と非常に強い毒性によって、現在最も注目されている海洋天然物である。われわれは、1993年にマイトトキシンの平面構造とエーテル環が連続している部分の立体化学を明らかにしたが、その他の鎖状部分に関しては未解明の部分が多い。本一般研究Bにおいて、エーテル環をつなぐ部分の立体配座(F-G環の間の2個の不斉炭素とM-N環の間の2個の不斉炭素)を主に有機合成化学的手法により決定することができさらに、C1-C14とC134-C142の側鎖部分に関して立体化学と回転配座を求めた。新たに開発したNMRのスピン結合定数(^<2,3> J_<C,H>と^3 J_<H,H>)と分子力場計算を併用した方法をこの部分に適用した結果、側鎖に存在するすべての不斉炭素を推定することができた。さらに、推定立体構造を有する合成フラグメントと天然物のNMRデータを比較することによって確認作業を進め、同時に、エナンチオ選択的なフラグメントCの合成を行ない、天然の分解物と比較することによって絶対構造を決定することができたので、ここにマイトトキシンの完全構造決定が完成した。
著者
仁科 浩二郎 小林 岩夫 山根 義宏 KOBAYASHI Iwao
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

本研究の目的は, 原子炉燃料臨界安全モニターの開発にあり, 昭和57〜59年度の3年間に引き続き, Cf-252利用の3検出器雑音法を実際的方法を目指して改善, 確立することである. この方法では, Cf内蔵の検出器1個と, 中性子検出器2個を体系周辺に配置し, これらの検出器出力の相互, または自己パワースペクトルを信号処理によって得る. これらの量から作った比(スペクトル比)を確率過程論によって体系の中性子増倍率に関係付ける.本研究3年間の主な成果を以下に列記する(1)上述のスペクトル比が, 見かけ上, 如何に検出器配置に依存するか予測する理論式を導き, 実験における検出器配置に対して指針を得た.(2)この式を, 原研のTCA装置で実験的に検証することを試み, 一部のデータで理論式と一致する傾向を得た.(3)モデル化円柱体系に対するモンテカルロ法シミュレーションコードを作成し, スペクトル比の検出器位置依存性に関し, 上記(1)の理論式の妥当性を明らかにした.(4)同じモンテカルロ法コードにより, Cf中性子源強度に対する, スペクトル比の依存性を調べ, この依存性が少いという結論を得た.(5)相互干渉系(2コニツト体系)への本方法の適用を考え, 2点炉近似に基ずく理論式の導出を行った.(6)遅発中性子がスペクトル比に及ぼす効果を定量的に調べ, 10Hz以上の周波数域では, この効果は考慮する必要がないと結論できた.今後は, a.上記(2)の実験の続行, b.再処理燃料中に必ず存在するプルトニウムの核分裂が, 結果に及ぼす影響の検討, c.測定統計改善のための検出器改善, d.同じく統計改善のためのCf以外の外部中性子源使用の効用検討 などの課題がある.
著者
今石 宣之 秋山 泰伸 佐藤 恒之
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

半導体や酸化物などの高品位単結晶の製造のために,単結晶育成炉内の融液の流れを正確に理解し,合目的的に制御する技術を開発することが要求されている。このなかで,自然対流に関する理解はかなり深まっているが,表面張力対流(マランゴニ対流)およびマランゴニ対流と自然対流の共存対流についての基礎的理解が不足している。マランゴニ対流は,微小重力環境における流体運動の基礎科学としても重要である。本研究では,マランゴニ対流の基礎的理解を深めるため,通常の流体と異なる表面張力の温度係数σT (σT≡∂σ/∂T)を持つ溶融苛性ソーダ(NaOH)の微小液柱内に生じるマランゴニ対流,および溶融NaNO_3の液柱内に生じるマランゴニ対流と自然対流の共存流について,実験および数値解析による検討を行い,下記の結果を得た。1)溶融NaOHの表面張力を,最大泡圧法を用いて測定し,融点(600K)〜T^*=725Kの温度域ではσT>0,T^*以上の温度域ではσT<0となることを明らかにした。2)T^*以下の低温域では,表面液が定温度点から高温度点へと向かう方向に流れるマランゴニ対流が観察された。実測した流速分布等は,数値解析結果と良く一致した。3)T^*以上の温度域では,通常の流体におけるマランゴニ対流と同様に,高温度点から定温度点へ向かって流れる表面流が観察され,数値解析結果と良く一致した。4)加熱板温度がT^*の近傍に設定される場合,温度および温度差に依存して,液柱内には2〜4個のロールセルが発生する。このマルチロールセル流れの発生機構は数値解析の結果,定量的に説明できた。5)液中を水平に置いた場合に生じるマランゴニ対流と自然対流との共存流の解析用の3次元数値解析コードを開発し,NaNO_3融液に対して解析を行い,実験結果を説明した。
著者
小川 道雄 中口 和則 柴田 高 宮内 啓輔 NAKAGUCHI Kazunori
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

従来、膵分泌性トリプシン・インヒビター(PSTI)は膵臓にのみ存在し、膵管内におけるトリプシンの活性を阻害する役割を担っているとされてきた。われわれは血中PSTI測定のためのRIA系を確立し、血中PSTIが膵疾患以外にも外科手術後や重度外傷後に著明に上昇すること、その上昇が血中の急性相蛋白の変動と有意の正の相関をなすことを明らかにした。また悪性腫瘍患者でも進行例では血中PSTIが上昇していた。このような事実から血中PSTIは侵襲に対する生体の反応として血中に増加しており一種の急性相蛋白であると考えられる。PSTIは膵臓以外の各種臓器に存在していた。また各種悪性腫瘍組織にはPSTI陽性細胞が存在し、培養細胞系の免疫組織学的検索やノザン・ブロッティングの結果から、このPSTIは腫瘍細胞において産生されていることが証明された。PSTIの構造は上皮成長因子(EGF)のそれと類似していた。このことから急性相蛋白としてのPSTIの作用がEGF様の作用ではないかと考え、PSTIを線維芽細胞に作用させ、そのDNA合成に対する効果を検討した。その結果PSTIにはDNA合成促進作用のあることがわかった。ひきつづいて、培養細胞系にはPSTI受容体が存在すること、その受容体はEGF受容体とは異なることを明らかにした。血中PSTIは侵襲に反応して血中に増加する。そして血中PSTIの作用は組織の損傷に対して再生あるいは修復のための情報の伝達に関連していると考えられた。これらの結果から、悪性腫瘍細胞において産生されたPSTIにもこのような成長促進因子としてのPSTIと共通した作用があることが示唆された。
著者
水田 英實
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

デカルトが方法的懐疑を通して心身の実在的な区別に言及する一方、「身体は人間精神によって形相づけられる」とも述べて、人間精神=実体的形相という説を保持していたことは明らかである。ところで人間精神が、一個の実体としての人間の部分であるのか、それともそれ自身として存在する一個の実体であるのかという問題は、トマス・アクィナスにもある(拙論(1988))。ただしジルソンによれば、人間精神を不完全な本質を持つものと見るが完全な本質を持つものと見るかという点にトマス説とデカルト説の決定的な違いがある。さてこのようなデカルト説をとる際に生じる、心身の実体的結合の可能性に関する議論については、ゲーリングスやライブニッツらを含めて、従来から詳しい研究が行なわれてきた。しかし心身の実体的結合の必然性の問題については、近世初頭のアレクサンドロス説・トマス説・アヴェロエス説の間で三つ巴の論争があり、デカルトもそれを承知しているけれども、その詳細が研究されてきたとは言いがたい。この論争の中で、魂の不死性の論証可能性を否定するカエタヌスは、アレクサンドリストのポンポナッツィにくみして、トミストでありながらトマス説と齟齬をきたす主張をするにいたっている。あるいはスピノザの「人間の魂は神の無限の知性の一部である」という主張は、アリストテレスの『デ・アニマ』第三巻の解釈をめぐって十三世紀以来トミズムと対立関係にあるアヴェロイズムの側に位置づけしたのである。アヴェロエス説を論駁するトマスの立脚点は、可能知性の内在説であり、それは人間の魂における能動知性と可能知性の存在的な同一性の主張を伴う点で「殆どすべての哲学者たち」と一致しないだけでなく、離在的な能動知性と存在的に異なる内在的な能動知性の措定を伴う点で全く特異である。このようなトマス説の成立を可能にしたのは、言うまでもなくエッセの思想であり、創造の思想である。
著者
白木 啓三
出版者
産業医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

この研究の目的は脱水(体重の約4%、血漿浸透圧約10mosmol/kg上昇)により強い口渇を誘発させた被験者を頚下浸水させ血漿浸透圧および液性因子(アンギオテンシン,ADH,ANP等)等のいわゆる"細胞性の因子"と血漿量や圧受容器へのインプット(いわゆる"細胞外性の因子")を経時的に測定し,これらのパラメーターと飲水量及び口渇の消失との相互関係を解析し、ヒトの飲水行動に関与する因子の度合を解明することであった。その結果この実験方法は安全で当初の予想どうり、浸水する事により、ヒトの口渇感が減退する事が確認された。体重の3-4%の減少および血漿浸透圧を10mosmol/kg上昇させるような脱水条件では、ヒトは著しい口渇感を覚える。飲水をさせずに頚下浸水を続けた脱水状態の被験者でも口渇感は消失したことから、飲水行動に伴う咽頭反射(咽頭受容器)や、胃の膨満感(胃内受容器)はこの実験系から除外することが出来、これらがヒトの口渇感の軽減には大きな役割を果たしていないことは明確になった。脱水状態の被験者の頚下浸水中には口渇感は減弱するにもかかわらず、血漿浸透は高値(^+10mosmol/kg)を保っていた。したがって浸透圧が高いままでも中枢は口渇感を減弱させることになる。つまり細胞性の因子はここでは関与していないことになる。さらに脱水時には頚下浸水中も血漿量が高値を保ったままであった。これは脱水状態では尿量が増加しないにもかかわらず、頚下浸水による体液の移動は有効に作用していたことを意味する。その結果脱水状態での頚下浸水中は容積受容器がより多く刺激されていたことが推察される。つまり細胞外性の因子が口渇感の減弱および飲水量の低減を惹起させる主な因子であることが判明した。結論として頚下浸水中に見られる口渇感および飲水行動を減弱させる機序としては、細胞外性の因子が大きな役割を果たしていることが判明した。
著者
宮田 幹夫 奥 英弘 福島 一哉 堀内 浩史 難波 龍人
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

スギ花粉症の増加が近年種々話題になってきている。今回実験スギ花粉症におよぼす生活環境因子の検討を試みた。その結果身近な環境汚染物質りある、有機燐殺虫剤、有機燐除草剤、トリハロメタン、パラジクロロベンゼン、タバコ煙、食品色素としてタートラジン、および赤色3号、食品酸化防止剤などがスギ花粉によるモルモットのアレルギー性結膜炎を増悪させることが判明した。しかもそれらの増悪を引き起こす濃度はppmまたはppbレベルという極めて微量な濃度であった。むしろ高濃度ではその増悪作用はやや弱い傾向があった。これらの結果は従来の古典的な中毒学の細胞の変性、死を目標とする濃度とはまったく異なり、免疫系への毒性は極めて低濃度でその毒性が発揮されているのが分かる。いまだそれらの混合負荷、すなわちtotal body burdenに関する実験は行っていないが、今後の研究課題も残ったままである。なお実験経過中に化学的環境のみでなく、物理学的環境にも眼を向ける必要性があるかと思われ、VDT作業で問題となるCRT画面曝露の影響を観察したが、機械的は角膜上皮障害のみでなく、CRT曝露によるアレルギー性結膜炎の著しい増悪作用が認められた。CRT画面からは低周波の電磁波が放射されており、各波長による電磁波の影響が今後の研究課題としてのこった。近年の花粉症の増加の原因をスギ花粉の増加に求めようとするのは余りにも非科学的な発想であり、むしろ生活環境の変化に求めるべきである、今回の実験から免疫系に及ぼす環境因子の重要性を明らかになし得た。
著者
稲井 眞彌 三木 哲郎 森山 剛
出版者
大阪医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

C9完全欠損症はわが国では高頻度で日本全国で発見されることが明らかになっている. このC9欠損症のC9遺伝子は健常者のC9遺伝子に比較してどのような異常が存在するのかを検討した.1.C9完全欠損症15例より採血した血液から末梢白血球を分離し, これらの症例の白血球より高分子DNAを調整した. 一部の症例の白血球は, EBウィルスで株化することにより, 貴重なDNA材料を持続的に利用できる体制を整えた.2.個々の症例から得られた高分子DNAをEcoRI, BglII, HindIII, PstI, BamHIなどの制限酵素で処理し, アガロース・ゲル電気泳動により切断フラグメントを分離した. これらDNA断片をサザン・ブロティング法により, ナイロン・メンブレンに転写した. このフィルターとアイソトープで標識したC9cDNAとをハイブリダイズさせ, オートラジオグラフィーによりプローブと相補的な塩基配列をもつDNA断片を検出し, DNA断片の長さの多型性(RFLPs法)を検討した. その結果, C9欠損症のC9の構造遺伝子には健常者のそれと差異を認めず, 構造遺伝子内には大きな塩素の脱落などは生じていないと考えられる結果が得られた.3.C9に対するモノクロナール抗体を作製し, C9aを認識する抗体はX195をはじめ14クローン, またC9bを認識する抗体がX197とP40の2クローン得られた. さらにX197はC9をトリプシン分解して得られるC9a', C9b'のうちC9b'を認識したが, P40はC9a', C9b'のいずれとも反応しなかった. このような抗C9モノクロナール抗体は酵素免疫測定法によるC9の蛋白の微量定量法の開発に応用することができる.