著者
片岡 則之 梶谷 文彦
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

あらかじめ、アクチンフィラメントの重合を可逆的に阻害するサイトカラシンで処理した内皮細胞に単球を投与して浸潤挙動を観察したところ、浸潤した単球が増加した。いっぽう、ざくろに含まれるポリフェノールの代謝物であるエラグ酸はアレルギー等の抑制効果があることが知られている。そこで、培養内皮細胞をIL-1βで活性化、さらには酸化LDLを投与したさせた後にエラグ酸を同時に投与して単球挙動を観察したところ、浸潤した単球数が減少した。単球の内皮下浸潤は、アクチンの構造とともに、酸化ストレスが重要な因子であることが確認された。
著者
遠藤 保子 八村 広三郎 小島 一成 崔 雄
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

無文字社会であったアフリカにおける身体芸術(特にダンス)の研究は、舞踊の原点を知る上で重要である。またジャズやブルースの誕生に深くかかわっているため、現在の芸術を知る上でも必要である。そこで本研究は、アフリカの身体芸術とアフリカの今日の社会に焦点をあてて以下を行った。I研究目的:I・1.アフリカ(特にナイジェリアとケニア)における身体芸術と文化社会の現状I・2.身体芸術をモーションキャプチャによる記録・解析I・3.2の動作特性と文化・社会との関連性とその意味・構造を明らかにする。II研究方法:II・1.アフリカに関する文献研究II・2.アフリカにおける文化人類学的フィールドワークII・3.アフリカ人ダンサー(日本へ招聘)によるダンスのデジタル記録・解析である。III研究対象:III・1.ナイジェリアの代表的な舞踊:Kabulu,Bata,Maliki,Swange,Iri-Agha(ナイジェリア国立舞踊団抽出)III・2.ケニアの代表的な舞踊:Gonda,Orutu,Borana,Sukuti,SamburuSengenya,Kikuyu(ボーマス・オブ・ケニア抽出)である。IVモーションキャプチャの記録プロセス:立命館大学アート・リサーチセンターにおける光学式モーションキャプチャを利用してIV・1.カメラ設置IV・2.キャリブレーションIV・3.被験者にマーカー付着IV・4.計測IV・5.データ編集を行った。V研究結果の主な点:V・1.トルソー(肩と腰)の動かし方に特徴が見られるV・2.ダンスの熟練と非熟練者の違いは、トルソーの動かし方にみられる等。本研究は、現地のダンサーやダンス関係者にコンピュータ解析によって新しい見方を可能するなど、有益であると思われる。
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

『魂論』二巻の「魂」の定義に用いられる「力能(dunamis)」そして「完成(entelecheia)」の概念を、その対となる「実働(energeia)」の概念とともに明確に理解するに至った。従来「可能態」と「現実態(energeia =entelecheia)」等と訳されてきたが、これでは精密な議論の展開を正確に理解できない。アリストテレスはロゴスとエルゴンという二つの視点から魂を把握した。ロゴスにおいて事物の一性を開示する「力能」と「完成」の対により「魂」の定義「力能において生命を持つ自然的物体の第一の完成」が提示される。エルゴンは今ここにおいて捉えられる。二巻は従来と異なる翻訳である。
著者
村戸 ドール 樋口 明弘 北村 正敬
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

喫煙は多くの疾患や健康被害の原因や増悪因子として考えられており、特に肺における閉塞性肺疾患や肺癌などの影響がよく知られている。眼表面は肺と同じくタバコの煙を含め外界からの影響を受けている。シトクロムP450(CYP)酵素系は眼表面に存在し、外因子に伴う障害を防ぐ作用も知られているがCYP1A1およびCYP2A6系は肺癌発症に関係することも報告されている。我々は6週齢雄SDラットをチャンバー内に入れ、シリンジを用いてチャンバー内に主流煙を添加することにより曝露した。暴露後、フルオレセイン染色液を用いて蛍光染色法により角膜障害を、綿糸法により涙液量を測定した。次に角膜および涙腺を摘出し、シトクロムP450(P450) 1A1, P4501B1および2B2のmRNA発現変動をリアルタイムPCR法により測定した。タバコ煙暴露ラットは角膜上皮障害が生じ、涙液量の著名な低下が認められた。角膜の免疫染色において角膜上皮障害を示すCYP1A1および8-hydroxy-2'-deoxyguanosineの酸化ストレスにより発現が上昇することが認められた。これらの結果は喫煙が角膜だけでなく涙腺にも影響したことを示唆する。
著者
BERNARD Gelloz
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

酸化ナノシリコン層の青色燐光について基礎研究を行った。青色燐光は材料の酸化部分の分子種に由来し,シリコンナノ結晶は発光に関与しないことが分かった。青色燐光には6つの振動源をもつサブバンドが含まれており,励起エネルギーにより各強度を調整できる.紫外領域(275-290 nm)での発光が発見され,材料のポーア表面の吸着水に関連する分子種に起因することが分かった。化粧品,ディスプレイ,光電素子, 太陽電池への応用研究も行った。赤・青・白色発光粉末の開発。また、電気的活性なデバイス作製のため,超臨界流体を用いたナノシリコンポーア内部への金属堆積技術を開発した。
著者
影山 太郎
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

英語と日本語における語彙の意味構造と構文的用法の検討を通して,動詞・名詞・形容詞を柱とする総合的なレキシコン(辞書)理論の開発を行い,14篇の論文を3部構成にして研究成果報告書をまとめた。第I部「統語論とレキシコン」(3篇)では,形態論の規則が語彙部門だけでなく統語部門でも成立すること,語と句の境界に「語+」という特別の範疇が存在すること,項の受け継ぎ現象が動詞の語彙概念構造および名詞の特質構造によって説明できることを明らかにした。第II部「動詞の意味構造とレキシコン」(5篇)では,動詞の自他交替が反使役化,脱使役化,使役化,場所表現の取り立てなどの意味操作によって行われることを示し,英語と日本語の相違を明らかにした。また,語彙概念構造における物理的位置と抽象的状態の表示形式に基づいて,言語体系と心理的外界認知とが異なることを明らかにした。第III部「名詞・形容詞の意味構造とレキシコン」(6篇)では,名詞および一部の形容詞の意味を検討し,語彙概念構造を特質構造に組み込む表記方法を提示した。これによって,動詞が名詞化された場合などで,動詞の意味構造と名詞の意味構造のつながりが明確化される。また,一般的な語形成規則によるのではなく,言語の創造性によって生じる偶発的な造語を特質構造で処理することを検討した。更に,英語が特質構造内部の主体役割や目的役割にかなり自由に言及できるのに対して,日本語はそのような意味操作が乏しく,複合語などの形態を重視することを指摘した。しかし名詞・形容詞に関する考察はまだ荒削りで,今後,副詞などの品詞も含めて更に精緻化を進めていく必要がある。
著者
濱田 英嗣 小野 征一郎 島 秀典
出版者
下関市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

わが国の水産物輸出は2005年現在、金額ベース1,750億円と、ここ5年間で30%増となった。いうまでもなく、韓国・中国を中心とした東アジア圏の経済成長が著しく、健康・高級食材としての水産物需要が増大し、高品質な日本産水産物の輸出が活発化しているのである。この輸出効果をタチウオを対象に調査研究した結果は以下の通りである。少なく見積もっても、タチウオは全漁獲量のうち30%は韓国に輸出されている。和歌山県M漁協では対韓輸出が開始された1999年を基点として、単価上昇率は平均1.5倍、とくに中型サイズタチウオの上昇率は4倍を越えている。大分県などでも事態は同様であり、タチ釣り漁業以外に、効率的な網漁業によってタチウオを狙う新規参入の動きも確認できた。これまで国内量販店が安く買い叩いてきた中・小型タチウオは、韓国相場の方が高くなり国内市場から流出し、結果として、タチウオ扱い量が20〜30%減少した大手量販店もある。水産物輸出が、わが国の漁家経営・流通に変化をもたらしていることが明らかとなった。しかし、輸出活発化はプラス面だけでなく、早くもタチウオ資源の急激な悪化も招いている。今後FTA交渉が進展し、さらなる水産物貿易の活発化が予測されるが、貿易活発化と資源悪化の矛盾をどう緩和させるか。輸出促進施策としての輸出相手国市場調査やパンフレット作成を否定するつもりはないが、もう一方で、秩序ある輸出体制が求められている。持続的な水産物輸出施策を構築する必要があることも明らかとなった。
著者
源 利文 冨田 勢 日高 舜介 福本 想
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

特別天然記念物であるオオサンショウウオの環境DNA検出手法を確立し、分布域全域である西日本の河川で検出試験を行った。12水系の331地点で調査を行った結果、111地点でオオサンショウウオのDNAを検出した。この結果をもとに、生息適地モデルを作成したところ、既知の生息地とほぼ一致するモデルが得られ、環境DNA分析を用いた希少種の生息適地探索が可能であることが示された。研究の過程では市民団体や高等学校との協働も行い、お互いにとって意義のある連携が可能であることが明らかとなった。
著者
田村 厚夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

自然界に存在するタンパク質等の生体分子の多くは、自己集合により規則的な構造体を形成することでその機能を発揮している。本研究では、らせん型のへリックス構造を骨格としたタンパク質(ペプチド)を人工設計し、新たな立体構造体や新機能の創製を目指した。機能として酵素機能、アミロイド線維分解能、細胞凝集能、レアメタル結合能など自然界には存在しないものを含む新機能の獲得に成功した。これらは、高齢化に伴う病気や資源の有効活用など現代社会の多くの問題解決の糸口になるものと期待される。
著者
挾間 章博 三宅 将生 小林 大輔 勝田 新一郎
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

セシウムの臓器蓄積モデルとしてHeLa細胞を使用した。HeLa細胞に対してCsが増殖抑制効果を示すことを明らかにし、学術論文(FEBS Lett. 2017 Mar;591(5):718-727)として発表した。本研究で細胞内へのCsの流入が実際に起きていることが示され、Csにより解糖系酵素の発現抑制や機能抑制が起きている可能性が示された。HeLa細胞と他の細胞株のCs感受性の違いからCsの透過経路となる遺伝子を調べたところ、TRPC1、TRPM7がCsの透過経路と予想できた。
著者
瀬川 至朗 中村 理 山田 耕 桶田 敦 千葉 涼 于 海春
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

東日本大震災に伴う福島第一原発事故の初期段階について「事故の実態」「日本政府記者会見(東京電力を含む)」「全国紙の報道」という三者の関係性を分析した。「炉心溶融」に絞り、量的かつ質的に分析したところ、全体として、炉心溶融の実態を政府記者会見が過小に評価し、その記者会見を踏襲した形で報道される傾向がみられた。また、隣国である中国の新聞は当時、記事の情報源として日本のメディア報道を採用していた。本研究では日本政府記者会見をテキスト化しFUKUSHIMA STUDYのサイトで公開した。この会見テキストを用い、記者会見における記者の積極性や記者会見と新聞報道の連動性について、より詳細な分析を実施した。
著者
西垣 泰幸 伊藤 敏和 寺田 宏洲 西本 秀樹 新井 潤 佐竹 光彦
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

複素ロジスティック方程式の解の大域的構造の研究と、その成果を応用し経済データに潜む複雑な動態を解明するとともに、複雑系経済モデルや、複雑系の時系列分析を改善した。具体的には、複素ロジスティック方程式の応用により、(1)「新S-カーブ理論」の構築、(2)新しい複雑系経済モデルの構築と政策的含意の研究、(3)n次元リミットサイクルの複雑系経済モデルへの応用と政策的含意の研究、(4)複素ロジスティック微分方程式を基礎とする計量研究を行った。
著者
澤田 知香子 戸田 由紀子 原田 寛子 原田 寛子
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

現代の英語圏文学における女性のイメージを「変身」というテーマに着目して考察した。多岐にわたる文学テクストの中の女性のイメージを詳細且つ広範に見直し、現代における新たな女性の表象を生みだす試みや可能性を探った。研究期間内の成果として四編の論文を発表し、学会で二度の口頭発表を行った。加えて、もう一編の論文が現在審査中である。また、本課題研究の内容を学生向けに編集し、専門教育の場で活用できる資料を整えた。
著者
池田 啓子 川上 潔 佐竹 伸一郎
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

Naポンプα2サブユニットは脳(アストロサイトと海馬の錐体細胞)に高発現し,家族性片麻痺性偏頭痛2型(FHM2)の原因遺伝子である。常染色体優性遺伝形式のFMH2は痙攣や小脳症状を合併する。研究代表者はその病態解明と新しい治療法・治療薬の開発を目指し,α2サブユニット遺伝子ノックアウトマウスを用いて解剖・組織学的解析,電気生理学的解析を行った。ノックアウトマウスでは皮質拡延性抑制 (CSD)の誘発閾値が低い傾向が観察された。また,ヒトで見つかる遺伝子変異をマウス相同部位に導入したトランスジェニックマウス3種類の作成と,疾患モデルマウスとしてのスクリーニングを行い,今後の研究の基盤作りを試みた。
著者
濱谷 清裕 江口 英孝 伊藤 玲子 本田 浩章 小山 和章
出版者
公益財団法人放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

放射線甲状腺発がんにおけるEML4-ALK融合遺伝子の役割を検証するために、不死化ヒト甲状腺上皮細胞の生体外X線照射実験とこの融合遺伝子を持つコンディショナルトランスジェニックマウスを用いた発がん実験を行った。X線照射では、線量に比例してEML4-ALK融合が形成されることより、原爆被爆者甲状腺乳頭がんでのEML4-ALK融合遺伝子は放射線により生じたものと示唆される。他方、得られたトランスジェニックマウスのEML4-ALK融合遺伝子発現レベルは高くなく、そのようなマウスでは甲状腺がんは形成されなかった。甲状腺発がんには、少なくともこの融合遺伝子の高レベル発現が必要であると考えられる。
著者
森 隆男
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1研究の概要大正から昭和初期にかけて関東や関西など日本各地で展開した田園都市構想について、吹田市千里山住宅地を中心に検証し、近代における都市の住まいを考察した。ちなみに千里山住宅地は関西初の本格的田園都市である。当時の開発に関する図面や資料を分析し、さらにフィールドワークを実施して間取りとくらしの情報を収集する民俗建築学の手法を用いた。2成果(1)新発見のものも含め、当時の千里山住宅地の開発に関する図面6点を収集し、第二次世界大戦直後の航空写真と重ねることで、住宅地の変容の過程を明らかにすることができた。(2)千里山住宅地が田園調布のように田園都市としての発展をしなかった主な理由は3点あり、とくに新住民が伝統的な生活様式を選択したことが大きい。(3)建前は洒落た駅舎やロータリーをもった中央広場、そこから延びる放射状の道路などが創り出す景観を西洋風の町として受容する一方、本音の部分すなわち日常生活を送る住まいでは日本風の様式が尊重されたといえる。3意義住まいの理想を求めて街づくりが行なわれた田園都市構想は、社会の成熟期に入った現在、あらためてその意味を考えるべきである。田園都市の景観や住まいには、わが国の住文化を研究する上で重要な鍵が存在する。
著者
桑本 暢子 菱沼 典子 中山 和弘 鈴木 和代 青池 慎一 佐々木 杏子 佐竹 澄子 品地 智子 中村 佳代 古川 優子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

脳卒中患者に対する背面開放座位ケアプログラムの定着を目指した看護師支援ツール開発のために、普及理論をもとに質的研究を行った。結果、促進因子は,認定/専門看護師がオピニオンリーダーとなり,コアナースの育成,多職種/家族の協力,病棟文化,電子チャートにケア項目として入れる,プログラムをアレンジする,相対優位性/試行可能性,/両立可能性が高いことであった.阻害因子は,看護師の異動,採用拒否者の存在,教材不足,複雑性/観察可能性の低さであった.促進/阻害因子の多さ,強さによって,導入/実施継続,中断が起こっていた.定着には,プログラムの重要要素は保持した上で内容を変化させることが重要であった.
著者
藤田 比左子 吉谷 須磨子 樋之津 淳子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,看護職及び看護部門による感染予防対策(スタンダードプレコーションの主要項目)の実践の現状を明らかにし,スタンダードプレコーションの普及に向けたガイドライン作成を検討することを目的とした。全国の医療施設のうちの一般病院を対象とした質問紙調査を実施し,以下の結果を得た。1)方法第1段階調査は,500施設(2006年3月1日〜3月27日),第2段階調査では,2400施設(2006年9月15日〜10月15日)を対象とし,自由回答欄を一部含む選択回答肢から構成される自記式質問紙を用いた郵送調査を実施した。調査項目は,第1段階調査の質問紙は,感染予防対策に関する実践内容,施設の属性とし,第2段階調査の質問紙は,第1段階調査にて使用したものに準じ,一部を改訂したものを使用した。最終解析対象は,第1段階調査では281施設,第2段階調査では,998施設であった。2)結果感染対策委員会を構成する看護師数は,病院規模に関わらず,関東から近畿地方にかけて少なく,九州・沖縄地方が有意に多かった。感染予防対策マニュアルへの記載項目では,白衣・カーディガンの着用に関する記載がなく(約90%),手袋の使用方法に関して記載があるとした施設は,70%に満たなかった。特に,全患者に手袋の使用を規定している項目は,排便と蓄尿バッグの取り扱い時(排泄)が約90%,創処置・採血時は約70%程度であった。重要視されている感染対策項目は,手洗いが最も多かった(791施設,79.3%)が,その教育は入職時の新人教育にとどまっていた(839施設,83.9%)。3)考察感染予防対策に必要な体制の整備・感染対策マニュアルの具体的な内容の充実と機能性の向上・感染予防に関する継続的な教育推進活動が重要な中核として示唆され,今後はこれらの内容を明確に示すガイドラインの構築が必要である。
著者
竹ノ谷 文子 塩田 清二 影山 晴秋 鈴木 勉
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

抗肥満ペプチドは摂食やエネルギー代謝亢進があるが、このペプチドと運動を活用して肥満動物に抗肥満作用を活用した報告はない。本研究では、抗肥満ペプチドの点鼻投与法を動物実験で確立した。さらに抗肥満ペプチド点鼻投与と走行運動により、摂食抑制とエネルギー代謝亢進作用を詳細に検討した結果、摂食量や体重減少を得られた。この抗肥満ペプチドと運動療法をヒトへ臨床応用すれば、画期的な抗肥満療法の開発ができると示唆される。
著者
山下 博樹 藤井 正 伊藤 悟 香川 貴志
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16〜17年度の2年間における本研究課題では、リバブル・シティとしての評価が高いカナダ・バンクーバーとオーストラリア・メルボルンにおける公共交通網を基軸とした都市圈整備に関する現地調査を実施し、わが国における都市圈整備の方向性を検討することを目的とした。その研究成果の概要は、次の通りである。1.バンクーバー都市圈では、1970年代からの取り組みをベースにしたGVRDによる"Livable RegionStrategic Plan"を基に、公共交通網の再整備と結びついたコンパタトで高密度な街づくりが郊外タウンセンターで実践され、利便性の高い日常生活拠点として整備されている。2.メルボルン都市圈では、1990年代から取り組んできた市街地拡教化防止のための土地利用規制に加えて、2002年に第定されだMelbourne 2030"による持続可能な都市圈整備の取り組みがスタートし、郊外のディストリクト・センターを中心に公共交通でもアクセズ可能で、多様な機能集積による利便性の高い中心地形成が進められている。3.これらの両都市圈での詳細な土地利用調査や公共交通網整備の状況などから、21世紀の持続可能な都市整備方針としてのリバブル・シティの特性の一端を明らかにすることができた。4.わが国でのリバブル・シティ形成の可能性は、東京、大阪など公共交通網の発達した大都市部では高い実現性を有するが、反面、過密な人口密度などによる弊害をどのように緩和するか等の新たな課題が生じる。地方都市部では、低い人口密度とモータリゼーションにより、持続可能な市街地整備の必要性が一層高まっているが、その状況はむしろ悪化しつつある。高齢化の進展などに対応したバリアフリー化などの視点からの再整備が有効であると考えられる。