著者
大塚 茂
出版者
米子工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

携帯情報端末としてモバイル化への対応が望まれるHDD、DVD・BDドライブ用スピンドルモータの軸受に、多孔質焼結含油体を用い、その端面および内周面に気孔調整層と動圧形状を形成した「スラスト・ラジアル複合軸受」を製作した。本軸受試料を使用し、軸起動時といった非定常状態において、要望される高速化・高精度化に適した動圧形状仕様やその組合せの適正化検討を実験的に実施した。結果として、動圧形状はヘリングボーン形状が最も高速化・高精度化に適しており、耐振・耐衝撃性も高く、加振状態においても十分な軸振れ抑制効果を発揮できることが判明した。
著者
郭 昌俊(郭沛俊)
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では繰り返せない一回限りの意思決定問題に対し、ワン・ショット意思決定理論を提案した。期待効用理論など主な意思決定理論は「くじ」を選択する理論に対し、ワン・ショット意思決定理論は「シナリオ」を選ぶ理論であるので、今までにない根本的に新しい理論である。提案した理論を用いて、個人の不動産投資問題、複占市場問題、新聞売り子問題に適用し、分析の結果から、一回限りの意思決定問題に対し、ワン・ショット意思決定理論は有効であることが分かった。ワン・ショット意思決定理論の拡張として、多段階ワン・ショット意思決定理論を提案し、基本的な性質を調べて、最適停止問題および個人の多段階投資・消費問題に適用した。
著者
都築 伸二 山田 芳郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

漏電ブレーカの誤動作問題と従来のN-L (コンセントのN (Neutral)とL (Live)端子を用いる) 伝送時の信号減衰問題の両方を回避できる方式として、PE端子(Protective Earth, コンセントの3番目のアース端子)とN端子間に信号を注入するN-PE伝送方式をまず提案した。しかしこのN-PE方式でも、ビルのフロア間通信は困難であった。そこで、フロア間を縦断するケーブル(1線のみでよく、信号の帰路は大地を用いる)をインダクティブカプラでクランプして、PLC信号をシングルエンド型で伝送する一線式PLC伝送方式も開発した。
著者
日向 一雅 袴田 光康 長瀬 由美
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

源氏物語の研究は大きく本文研究、作品論研究、注釈史・享受史研究に分けられるが、本研究では源氏物語の中世近世の注釈史・享受史における儒教的仏教的言説を対象として、その歴史的背景を明らかにするとともに、それが源氏物語の主題や作品論に深く関わることを明らかにした。
著者
早川 聞多 鈴木 貞美 井上 章一 小松 和彦 鈴木 貞美 早川 聞多
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

日本における生命観についての学際的、総合的研究の一環として、性愛についての学際的・通史的研究を課題として取り組み、関連図書約500点余を購入し、国際日本文化研究センター図書室に入れた。最終年度の研究代表者、早川聞多は、絵画、とりわけ徳川時代の浮世絵春画を対象とし、そこに書かれた言葉と描かれた絵との関連を分析する新たな手法による研究を重ねて、徳川時代の性愛、とりわけ男色などに関する風俗全般の表象の研究を飛躍的に発展させた。前二年度にわたる研究代表者、鈴木貞美は、とくに明治後半期から大正期の生命観と性愛観の変容の過程を、進化論受容や大正生命主義などの思想史、「自然主義」などの文芸思想の展開、および文芸上の性愛の表現を探る論考を重ねた。井上章一は、風俗史の観点から、近・現代において性愛の営まれる場所の諸相の解明を中心に、未開拓の分野に成果をまとめた。小松和彦は、近親相姦の伝承に関して取り組み、その端緒をひらいた。全体としては、性愛学(セクソロジー)の隆盛の中で、手薄であったり、未開拓であったりした領域を開拓したものの、「生命観から見た性愛観」という角度に絞ったまとめがなし切れなかった。「生命観」という研究対象がアモルフなものなので、研究過程にあっては、いたしかたないともいえるが、今後は「生命観」の研究それ自体の確定とアプローチの角度の分節化など、方法の明確化が必要であるとの結論に達した。鈴木貞美がこれを今後の課題として分担することを確認し、終了した。
著者
田部 陽子 岩渕 和久 笹井 啓資 金 林花
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、低線量放射線がヒト生体内の微小環境の中で、前がん状態の細胞に対して発がんに関与する遺伝子発現やその調節機構にどのような影響を与えるのかを調べることを目的とした。研究の結果、①低線量放射線ストレスによって前がん状態の細胞内では遺伝子の発現を抑制するmicroRNAを介した遺伝子発現コントロールが機能し、遺伝子とタンパク発現が変化すること、②生体微小環境内に存在する間質細胞が、直接・間接的にこれらの前がん細胞内での低線量放射線による遺伝子・タンパク発現変化に関わっていること、が明らかになった。
著者
熊澤 茂則 杉山 靖正 太田 敏郎 中村 純
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ミツバチの生産物であるプロポリスは、健康食品素材として広く利用されている。本研究では、プロポリスの機能性について化学的および生物学的アプローチから解明することを目的とした。特に、韓国済州島産およびソロモン諸島産のプロポリスの成分研究を行い、済州島産プロポリスについては現地における調査も行うことで、起源植物(プロポリスの原料植物)が明日葉であることを明らかにした。ソロモン諸島産プロポリスからは、いくつかの新規プレニルフラボノイドを見出した。さらに、沖縄産プロポリスおよびその構成成分に関するin vitroおよびin vivoにおけるガン血管新生抑制活性についても評価した。
著者
松久 公嗣 加藤 隆之 藤田 志朗 坂井 孝次 尾立 和則 青木 朋子 坂本 英駿
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

美術史上の評価が定まっていない福永晴帆とその作品について,宗像大社御便殿に現存する襖絵や腰障子絵の調査を中心に,視覚的効果の高い模写による実証的研究を通して技法や材料的な側面から晴帆の芸術性を分析した。また,晴帆のご息女ならびにお孫さんへの取材調査によって,色紙作品75点と直筆覚書他の資料を発見し,晴帆の画歴や人物像の一端を明らかにした。本研究の成果は,「福永晴帆日本画展」(2014.6.3-6.29,海の道むなかた館)を開催して広く公開する。
著者
宮崎 和人
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1)語法研究的・要素主義的アプローチから文論・機能主義的なアプローチへ. 2)命題とモダリティを切り離す分析から両者の有機的相関性の解明へ. 3)主観性モダリティ論から現実性モダリティ論へ. 国内外の研究動向の検討および実行系のモダリティの分析を通じて、日本語モダリティ論の再構築は、こうした基本理念に基づいて進められていくべきであるということを確認した.
著者
前田 祐治 杉野 文俊 メッセイ デヴィット
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、キャプティブを通じたリスクファイナンスが、米英の企業に比べて、なぜ日本企業に浸透しないのかとの課題に対して、3つの仮説を立てて「ミクロ分析」と「マクロ分析」の2つのアプローチにより実証分析を行った。研究結果として、日本企業はキャプティブによる効率性よりも取引会社との利益相反をできるだけ避けようとする非合理的な経営判断を行っていることが示された。また、企業の持ち株会社である保険会社が企業価値向上よりも既存の保険商取引を重視していることが判明した。
著者
宮本 順二朗
出版者
帝塚山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

給与・賞与といった報酬割合が依然として高く、金額的にはまだまだ低いといわれるわが国企業において、ガバナンスを変えるための方策として、報酬体系・支給方法をただちに英米化するとは想定し難い。本稿では[1]タイム(1期)ラグ付きの役員報酬対企業業績回帰モデルよりも同時方程式モデルの方が説明力は高いこと、[2]'海外法人等持ち株比率'が取締役報酬と最も関連性が強いこと、[3]取締役報酬は、株価関連指標の中では'株価収益率(またはその変化率)'と正の相関、会計的指標の中では(対数変換)総資産額自己資本利益率と正の相関があり、'負債比率'と負の相関があることが判明した。さらに説明力を高めるためには、一方で、入手が比較的容易な会計(決算)数値データや株価関連データのみならず、(企業間異質性を示す)その他諸変数(例:役員の年齢・在任年数・員数)や(厳密には算出が難しい)フリー・キャッシュフローや、(乱用は慎まなければならないだろうが)適切なダミー変数などを利用するといったことも一考を要するだろう。また他方で、被説明変数(「経営者報酬」代理変数)として、取締役一人当たり平均報酬額を用いることに、再検討の余地は大いにあるだろう。
著者
渡辺 和之 橘 健一
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、自動車道路の開通した現在でも、ヒマラヤ交易が形を変えて継続していることを、ネパール国内での現地調査によって実証した。特に畜産物に注目し、その生産から消費に至る流通経路を調べることで、交易を支える諸条件を明らかにした。この結果、交易が山地住民の農業・牧畜・森林利用の複合経済を基盤とし、他地域や都市や海外とも関わる交易ネットワークに支えられることが示した。また、とかく一方向的に都市の商品が流通すると見られていた山地経済を見直し、出稼ぎ経済の浸透で過疎化する山地経済を支え、存続する基盤は何か考察した。
著者
松尾 真一郎 森山 大輔 﨑山 一男
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

RFIDタグやセンサーなど計算能力やメモリが制限されていて、パソコンやサーバ向けに設計された暗号化や認証のための技術が利用できないデバイスにおいても、安全な通信や認証を行うために、安全性が証明されるとともに実際のデバイスにも実装可能な軽量な暗号プロトコルを設計し実装するための研究を行った。その成果として、PUFと呼ばれる、デバイスの製造時の物理的差異を用いた暗号プロトコルを設計し、その安全性を証明するとともに、実際のデバイスにおける安全性を統計学的に示した。また、RFID用の認証プロトコルを実装する際のハードウエア実装の性能評価を行い、実用に向けた技術的な目安を示した。
著者
三橋 伸夫 佐藤 栄治 黎 庶旌 本庄 宏行 望月 瞬 宇賀神 直彬 榊 京太郎 陶 鋒 斉藤 太紀
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中国広州市の城中村および近郊農村を対象に、急速な経済成長を背景として行われた都市化、高密度住宅化を防止するための産業振興および居住環境整備の方策について検討した。その結果、これら農村集落がその歴史文化的,産業的な特性を生かした経済的振興と居住環境整備を両立させることには多くの障がいがあることが明らかとなった。不安定な外部経済への依存は持続的な集落経営に結びつかず,村(村民委員会)による将来計画の策定が望まれる。広州市は近郊農村の農業・観光産業育成に向けた技術的支援と資金提供を行うべきことを提言する。
著者
荒川 薫 伊藤 節子
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

乳幼児は言葉を持たず、「泣く」という行為によって何らかの不快感を人に訴えようとする。母親はこの音声(啼泣)を聞き、不快の原因を取り除こうとするが、一般に乳幼児の音声やその状況を観察しただけでは、その原因を理解することが困難である。すなわち、啼泣の原因には、空腹、眠い、痛い、寂しい、不安など複数の要素があるが、乳幼児の観察からこの原因を特定することは難しい。従って母親は種々の原因を想定して様々な対処を試行錯誤的に試みるが、対処が不適切であると乳幼児の啼泣は続き、これが母親の育児ノイローゼを引き起こしたり、さらには昨今問題となる乳幼児虐待をも引き起こすことになる。そこで、乳幼児の音声を計算機で解析して啼泣原因を推定・表示することができれば、母親は容易に適切な対処を選択して子供の啼泣を早く止めることができ、種々の育児トラブルを軽減できると考えられる。本研究では、このように言葉を話せない乳幼児の音声が持つ意味情報を計算機処理により解析し、啼泣原因を推定する情報処理システムを提案する。特に、乳幼児の啼泣原因として最も一般的な、「空腹」と「眠い」を主に取り上げ、空腹時と眠いときの泣き声を自動的に識別するための特徴量抽出や推定ルールの構築を行った。実際の乳幼児の泣き声に本システムを適用し、およそ8割の精度でこれらの泣き声の自動識別を行うことができた。また、注射をした後の痛いときの泣き声についても検討を行った。さらに、乳幼児の音声処理の前処理として必要な、音声に混入する雑音除去のための新しい非線形ディジタルフィルタを提案し、その有効性を示した。
著者
和泉 ちえ
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、古典期アテナイにおいてフィロソフィアをはじめとするギリシア的諸学問を巡る系譜論的視座が如何に形成され変容したのか、その諸展開の細部を文献学的論拠と共に全面的に再検討した。ペリパトス学派に由来する哲学史の枠組みを敢えて前提に据えずに原典資料を精査することを通して、【1】フィロソフィアの起源をイオニアに求めるペリパトス学派的哲学史の形成過程とその特異性を明らかにすると共に、【2】アカデメイアをはじめとする他の諸学派が展開する学問系譜論の各々と詳細に比較分析し、【3】ギリシア世界における学問文化勢力地図の変容の細部を,古典期アテナイという文脈に則して詳述し総合的に検討した。
著者
無藤 隆 佐久間 路子 掘越 紀香 砂上 史子 齋藤 久美子
出版者
白梅学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、幼稚園の一つのクラスで週に1回ないし2回、3歳から5歳までの3年間の縦断的なビデオ観察を行い、その記録を分析することを中心とした。また並行して、各々の分担者がそのフィールドで行った観察を元に検討した。幼児教育を貫く3つの軸として「協同的な学び」や自己制御、学習の芽生えを取り上げ、それらを、構成遊び、ごっこ遊び、製作活動、クラスのグループの話し合い活動等を通して、「目的を志向する傾向」が成り立つ過程として位置づけられることを見いだした。
著者
寺久保 繁美 中島 秀喜 竹村 弘 金本 大成
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

百日咳、麻疹、風疹はワクチン接種により予防可能な感染症である。近年、我が国ではこれらの疾患の成人発症例が増加している。その原因として抗体低下が考えられる。今回、若年成人(医学生)の抗体価を測定した。百日咳抗体価は28.3%(194/686名)が感染防御レベル(10EU/ml以上)を満たしていなかった。麻疹抗体価は55.6%(322/579名)が感染予防の基準(16以上)を満たしていなかった。風疹抗体価は27.5%(159/579名)が感染予防の基準(8以上)を満たしていなかった。感染予防対策のためにも医学生に対するワクチン接種を積極的に推進する必要があると考える。
著者
原 真志
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

第1に,集積内と集積間の関係を総合的に取り扱い,また,企業から独立したプロジェクトリーダーチームが意思決定を行う場合があるコンテンツプロジェクトを説明するためには従来の組織論,組織間関係論,境界連結単位を超えるプロジェクトの理論が必要であり,申請者のこれまでの研究成果と他の既存研究の再検討を通して,「プロジェクトの空間デザイン」の研究フレームの構築作業を進めた。第2に,「プロジェクトの空間デザイン」の研究フレームを具体的に検証するため,ハリウッドにおけるVFXプロジェクトの総括責任者であるVFXスーパーバイザーへのヒアリングを行った。具体的にはKevin Tod Haug氏,John Bruno氏,John Dykstra氏を対象に,担当したVFXプロジェクトでの,要求内容に応じた企業選択の要因を,分業内容,企業や集積の評価(コストとクリエイティビティ),過去のプロジェクト経験,監督やプロデューサーの意向などの点について詳細にヒアリングを実施した。第3に,プロジェクトリーダーであるハリウッドのVFXスーパーバイザーを対象に調査した内容を,連携するハリウッド外の視点から検証するために,ハリウッド映画の参加実績を持つロンドンとプラハに立地するVFX企業を対象とした現地調査を行った.第4に,日本におけるアニメの事例として,東京のサンライズ社を中心とする日本で初めてのフル3DのCGによるテレビアニメシリーズ「SDガンダムフォース」プロジェクトにおけるコミュニケーションとイノベーションに関する調査を実施した。第5に,日本における実写の事例として,円谷プロとNHKの共同制作によるデジタル衛星放送用のハイディフィニションテレビSFシリーズ「WoO」を取り上げ,VFXスーパーバイザーである松野美茂氏を対象に1週間の参加観察を実施し,コミュニケーション行動のデータ収集を行って分析した.
著者
杉万 俊夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

「住民主導による教育・医療」を軸とした地域コミュニティ活性化の可能性を、当事者との協同的実践を推進、貴重な実例をつくりつつ検討した。同時に、「閉鎖的な専門的組織・専門家集団への依存」を前提に運営されてきた教育・医療制度を、住民の主体的参加を前提にした制度へと転換する方途について、Y.Engestromの活動理論(activity theory)を理論的枠組みにして考察した。具体的なフィールドには、(1)住民主導の教育実践として、大阪府寝屋川市で展開されている「寺子屋Neyagawa」の活動(毎週土曜に学校を舞台に住民が手作りの教育をする活動)、(2)住民主導の医療実践として、京都市小野郷地区における「地域医療の拠点づくり」の活動(無医地区に住民主体で診療所を設営・運営する活動)をとりあげた。いずれにおいても、研究者が当事者と共に活動を推進しつつ、その経過を追尾し、問題点や失敗経験をも含めて発信した(著書「コミュニティのグループ・ダイナミックス」)。とくに、(1)に関しては、学校側の抵抗に抗して敢えて学校を活動の場とすることによって、学校そのもののあり方を問い直し、地域の教育機能を復権させる可能性を指摘した。(2)に関しては、「医者と患者(住民)の上下関係を是認した上で、医者が患者重視の医療サービスを提供すること」をもって理想的な医療とみなす風潮の中、「住民主体の地域医療」という理念に理解を得ること自体が、最初に乗り越えるべき大きな壁として立ちはだかっていること、また、高齢化した地域における住民主体の診療所運営は、医療以外の領域でも住民が地域活性化に積極的に取り組み出す起爆剤になりうることを指摘した。