著者
内山 清子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、効率的な検索に利用するシソーラス構築のために、分野における基礎的で必須である専門用語について以下の3点の研究を実施した。 (1)専門用語の専門度(分野基礎性)を示す指標の分析:文書中に出現する専門用語について、分野を理解する上で必須・基礎的なレベルから専門性が高いレベルまでの段階を分野基礎性として客観的な指標について、論文や書籍の文章構造中の出現傾向について分析を行う。 (2)分野基礎性判定手法の検討:分析結果に基づいて、自動的に分野基礎性が高い用語を抽出する方法を検討する。 (3)システムへの応用の検討:分析に基づいて分野基礎性が高い用語判定を利用してシソーラスを構築し、システムへの応用の可能性について議論した。
著者
今井 國治 藤井 啓輔 池田 充 川浦 稚代 川浦 稚代 藤井 啓輔
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本申請研究の主たる目的は、CT検査時における被ばく線量(重要臓器線量)を測定した上で、申請者がCT画像上で発現に成功させた確率共鳴現象を利用して、病変検出能の向上を図ると共に、CT検査時の被ばく線量軽減を行うことである。特に今回は脳梗塞部の検出(脳溝の狭小化や早期虚血性病変)に主眼を置き、どのような条件の時に効果的に確率共鳴が発現するかを検討し、最終的に臨床への応用を目指す。確率共鳴はノイズ強度が10HUの時に最も効率よく発現し、コントラスト分解能も鮮鋭度も大きく改善した。また、この改善効果はノイズの種類に依存し、高周波を多く含むノイズを付加した際に、その効果が大きくなることを定量的に示した。
著者
酒井 健
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、20世紀フランスの思想家ジョルジュ・バタイユ(1897ー1962)の初期の活動、とりわけ総合的文化誌『ドキュマン』(1929ー1931)をめぐる活動を、当時の文化的背景に注目しながら解明した。視点としては文化多元主義(諸文化の多様性をそのままに肯定する立場)をとった。成果としてあげられるのは、前世紀からの西欧近代一元主義に膠着して危機的状況にあった同時代の西欧文化を、バタイユが、考古学、民族誌学、前衛芸術の最新の情報を呈示しながら、批判、相対化、活性化していった様を論文やシンポジウムを通して具体的に呈示できたことである。
著者
白川 恵子 林 以知郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、アメリカ独立革命期の建国神話がいかに構築され、それが共和政期および南北戦争以前期の文化の中で、いかに表象され、大衆に受容されてきたのかを考察する。特に、(1)建国祖父の伝記による独立革命の矛盾の曖昧化、(2)共和政期以降の建国神話受容、(3)独立革命のイデオロギーと文学的体制転覆的想像力との関連、(4)南北戦争以前期の煽情主義的/感傷主義的ナラティヴに反映・表象さえる建国神話に焦点が当てられる。
著者
堀井 直子 前川 厚子
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、使用が簡便な肺がん患者用生活調整尺度(短縮版)の開発を目的として行った。堀井ら(2010)による肺がん患者用生活調整尺度(22項目版)について、新たに263名(平均年齢69.8±7.58)を対象に調査を行った。探索的因子分析の因子負荷量を基準に、短縮版に用いる10項目を選択した。短縮版の下位尺度はいずれも内的一貫性を示した(α=0.657~0.805)。また、22項目版と短縮版の間の相関係数(r=0.858~0.922)から基準関連妥当性も支持された。以上より、短縮版は22項目版と同様の構成概念を測定できることが示唆された。
著者
菊池 彦光 藤井 裕
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

競合的な交換相互作用を有する一次元量子磁性体は新規な物性が期待される。本研究ではダイヤモンド鎖、三本鎖、ジグザグ鎖磁性体の磁性を調べた。ダイヤモンド鎖の新規化合物の強磁場磁化を測定し1/3磁化プラトーの徴候を見いだした。三本鎖磁性体の現実物質アントラライトとセニックサイトの磁気的性質を研究した。アントラライトは非常に複雑な磁気相図を示すのに対し、セニックサイトは低温まで磁気秩序を示さない。両化合物の構造は類似しているにもかかわらず、磁性は顕著に異なる事から量子相転移が基底状態に存在する事が示唆される。ジグザグ鎖磁性体NaCr2O4において新規な機構に基づく巨大磁気抵抗効果を見いだした。
著者
西原 和久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成18年度は、本科研費研究の国家意識に関する研究課題の遂行のために、海外には、1)中国の南京大学、2)マレーシアのマレーシア国立大学、3)オーストリアのインスブルック大学に赴いた。とりわけ、中国およびオーストリアにおいては、それぞれの機関で学生・研究者に対して複数の講演を実施し、また当地の関係社会学者とかなり突っ込んだ社会学的国家論の議論ができた。すなわちそれは、グローバル化を価値中立的な概念として提出する意義、グローバル化時代に対応した脱国家的な方向性をもった社会学的な近代国民国家論の展開、そしてそのための現象学に影響を受けた問主観性論をもとにした人際(にんさい)関係構築へ向けた土台作り、の意義を持った。またシンガポール国立大学のブライアン・S・ターナー教授などを名古屋大学に招聘し、講演を中心として情報提供いただいた。彼の『被傷性(傷つきやすさ)と人権(Vulnerability and Human Rights)』に関する理論志向性は、申請者の間身体性論を基盤とする間主観性論の社会学的展開に非常に近く、今後の研究協力を約束できた。なお、直接的には今年度の研究実施計画とは関わらないが、今回の科研費の成果を十分にふまえて、フィリピンにおける国際社会科学連盟の大会での講演、および韓国・慶尚大学における倫理教育学会での招待講演を行うことができた。以上が研究成果であるが、これらを基にして各種の論文作成、著書作成,学会報告などをおこなったことを合わせて記しておきたい。
著者
大島 隆幸
出版者
徳島文理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

研究成果の概要:糖尿病などに代表される生活習慣病の最重要原因は肥満であり、核内受容体型転写制御因子PPAR-gamma は、脂肪細胞の分化制御を介した肥満の倹約因子である。今回我々は、PPAR-gamma のSUMO 化修飾の生理学的意義を明らかにすることを目的に、まずPPAR-gamma2 特異的ノックダウンマウスを作成した。そしてこのマウスは、痩せの大食いと共に、脂肪肝が全く認められないという表現系を示した。
著者
戸崎 哲彦
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

現存する『柳宗元集』の南宋刊本は、劉禹錫原編三十巻に属する永州公庫本三十三巻本残巻と、北宋・沈晦校刊四十五巻本に属する韓醇詁訓本、眉山百家註本、魏仲挙五百家註本、鄭定重校添註本、劉怡増広音辯本、廖瑩中刪去註氏本に大別され、さらに後者は韓本と劉本と眉本等の三系統に分けられる。前者は正集とは別に序目一巻を備えた三十一巻であり、また編者・作者の文学観と制作時期を反映した編次になっているが、後者は内容分類によって編次を大きく変えている。眉本は魏本・鄭本・廖本へと継承されているが、韓本と魏本には註を異にする複数の覆刻本が存在しており、鄭本では補修部分に今日亡失する多くの版本と註とが用いられている。
著者
林 浩一 井門 康司
出版者
鳥羽商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,磁性エラストマー部材の振動特性が,磁場印加から受ける影響について調べた.その結果,磁場印加により磁性エラストマー部材の固有振動数や減衰率は変化するが,減衰率の変化は固有振動数変化の主要因ではないことを明らかにした.また,空気流により励起される磁性エラストマー板の振動は,印加磁場強度に応じて周波数の顕著な変化は確認できなかったが,振幅は変化することを明らかにした.
著者
福嶋 秩子 鑓水 兼貴
出版者
新潟県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究代表者は1983年にパソコンを利用した言語地理学データ処理システムSEALを開発した当初から、個別項目の言語地図の描画だけでなく、異なる言語地図の重ね合わせを意図して開発を行い、種々の総合・比較の方法を実践してきた。最近の研究代表者による研究で、過去に行われた旧世代の調査結果と若い世代の新しい調査結果とを比較し変化の跡をたどることができた。本研究では、異なる言語地理学調査データを比較分析する手法をさらに進めた。(1)言語地図の作成・方言分布の解釈について、特に総合の観点から考えた。(2)奄美徳之島及び新潟県で調査を行い、その結果と過去の調査の結果を比較し、その間におきた言語変化について検証した。
著者
森田 直子 森本 浩一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、観相学という知の体系が19世紀の絵物語形式のメディアの成立に与えた影響を解明した。まず、19世紀前半のスイスで、後のストーリー漫画の原型となるような近代的絵物語を刊行したR.テプフェールが観相学を作画に取り入れた背景を解明した。一作品あたり何百回も同じ顔を描くことで物語るメディアの語りのしくみと、17・18世紀ヨーロッパの美術・演劇論・修辞学との関連を探った。とくに、18世紀までの美術・演劇理論や作法書等において、「内面を映し出す顔」と「作法・演技としての顔」という顔表現の二面性への関心が強く見られたことも明らかにした。
著者
小山 慎一 NORASAKKUNKIT Vinai CHEN Chun-hsien AHMAD Hafiz Aziz 由 振偉 張 暁帆 若松 くるみ 商 倩 成田 佳奈美 堀端 恵一 山田 桃子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

研究課題の研究1~4の全てを実施し,その成果を学会および論文で報告した.研究 1では照明の第一印象に与える影響について検討し,研究2では選択肢の種類と数が消費者の選択時における満足度に与える影響について検討した.研究3・4では消費者がモノに対するこだわりと愛着を発達させるプロセスおよび飽きが生じるメカニズムについて検討した.以上の研究から,モノに対する長期的な愛着を発達させるためには「積極的に情報を収集し,複雑な評価を楽しむことによって対象物に対する愛着を発達させ,愛着が発達することによってさらに積極的に情報を収集するようになる循環的なプロセス」が重要な役割を演じていることが示唆された.
著者
松田 繁樹 春日 晃章 花井 忠征 出村 友寛 香村 恵介
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は裸足保育の効果を検証することであった.具体的には,幼児の浮き趾の発生状況および前後足圧荷重割合について,裸足保育を実施する園に通う園児および裸足保育を実施していない園に通う園児間で比較を行った.浮き趾の発生状況については横断的および縦断的データにより分析した.その結果,幼児期の裸足保育は男児の浮き趾および前後足圧荷重割合に影響を及ぼし,浮き趾を減少させること,および,後部の足圧荷重割合を少なくすることが明らかになった.
著者
佐々井 祐二
出版者
津山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

天文教育のため、小中学生を対象とする公開講座としての「天体観測会―君も未来のガリレオだ!―」を12回開催した。望遠鏡操作係を担当する補助学生はこれらの公開講座により相互教育されている。学生はまた食連星や太陽系外惑星の観測に取り組んだ。2015年12月、我々は東天体観測室の天体望遠鏡システムを更新した。新システムには赤道儀と口径35cm ACF鏡筒が装備されている。この赤道儀のスターロックシステムは、イメージングセンサーで対象を捉え、露光中に正確なオートガイドを実行する。また、我々は食連星(おとめ座HW星)の測光解析も行った。
著者
白尾 敏之
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

SPH刺激やくも膜下出血モデルが引き起こす脳血管攣縮機構におけるラフトやカベオラの関与を検討した。血管平滑筋の総コレステロール濃度の変化がラフトやカベオラの発現を誘導しているだけでなく、そのシグナルの核への伝達によるラフトとカベオラの発現制御メカニズムの存在も示唆された。さらに、くも膜下出血後の血管平滑筋細胞内のABCA1の発現量を解析し、ABCA1を介するHDL新生反応が引き起こすCa2+感受性機構増強のメカニズムを検討したところ、SAH後では細胞増殖刺激の惹起により、細胞膜にコレステロール供給が促進される状態となっている可能性が高い事がわかった。
著者
恒藤 暁 坂口 幸弘
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

研究1:目的は、訪問看護師による遺族支援サービスの現状とニーズを明らかにすることである。結果として、遺族への支援を目的に「患者の死後、遺族を訪問している看護師」は74%であった。訪問看護師による遺族支援については、62%が「不十分である」と回答した。研究2:目的は、養護教諭による遺族支援サービスの現状とニーズを明らかにすることである。結果として、在学中の児童・生徒が亡くなった場合の保護者への対応に関しては、「どのように接したらいいのか分からない」が34%であった。他の児童・生徒への対応では、「思い出を語り合うこと」が47%と最も多かった。研究3:目的は、宗教者による遺族支援サービスの現状とニーズを明らかにすることである。結果として、僧侶が考える遺族のニーズに関しては、「葬儀や法事などの宗教行事を執り行うこと」だけでなく、「遺族の悲しみや悩みをしっかり聴くこと」も遺族から求められていると回答していた。僧侶として苦慮した点に関しては、「今までの学びでは目の前にいる遺族をサポートすることができないと感じた点」が最も多かった。研究4:目的は、葬儀社による遺族支援サービスの現状とニーズを明らかにすることである。結果として、「遺族が集まる定期的な会合」を行っている葬儀社は4%に過きなかったが、34%は「行っていないが関心はある」と回答していた。研究5:目的は、葬儀社が提供する遺族支援サービス「ひだまりの会」のニーズと効果を検討した。研究対象は、会に参加した経験のある153名である。結果として、最も多かった参加理由は、「同じような体験をした人の話を聞きたかったから」で61%であった。2)会に参加して良かったことは、「同じ思いの人がいるということが分かった」が最も多かった。今回の結果は、「ひだまりの会」の一定の活動意義を示唆するものである。
著者
押野 武志 畑中 健二 土屋 忍 山崎 義光 野坂 昭雄 森岡 卓司 高橋 秀太郎 野口 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本の1960年代において、文学概念の再編が社会的・思想的・政治的な諸言説と重層的に干渉し合いながら、どのように行われたのかを総合的に究明した。純文学/大衆文学、カルチャー/サブカルチャー、文学/政治、事実/虚構といった1960年代の文学をめぐる新たな境界の生成を1930年代前後の諸言説と対照させながら、60年代の文学が何を構造的に反復していたのかという、戦前と戦後を貫く近代日本の知的言説の歴史的特質も明らかにした。
著者
谷口 祥一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

現行の図書館目録のメタデータ(書誌レコード、典拠レコード)を、FRBR(「書誌レコードの機能要件」)概念モデルに準拠したものとなるよう、著作の効率的な同定法かつわが国固有の書誌・典拠レコードに適合した同定法を提案し、その有効性を検証した。古典著作、翻訳資料などの資料タイプごとに、必要な同定基準を検討し、実際に同定作業を行い、同定結果を公開した。並行して、人手による同定作業を補完する目的で、機械的な同定法を組み合わせることの有効性を検証した。また、それら同定結果を有効に用いるためのFRBR型の検索システムを構築した。他方、表現形については同定に大きな困難が伴うことを確認した。
著者
西田 稔
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高温形状記憶合金として期待されているTiPdNi合金のPd, Ni過剰組成において、研究代表者が見出した新しい析出相を利用した本合金の組織制御と高機能化に関する基礎研究を実施した.析出相の組成はTi_9(Pd,Ni)_<11>と表すことができ、三方晶構造を持つ.B2母相との方位関係は{110}_<B2>//{100}_<Ti9(Pd,Ni)11>,<111>_<B2>//<001>_<Ti9(Pd,Ni)11>である.研究の進行にともない、当初、析出相と考えていたこの相はB2母相の<111>方向に4倍周期の構造をもつ規則相であることが判明した.この根拠として、上記の方位関係より4つのバリアントが存在しそれらは不規則な形状の逆位相界面(APDB)によって分割されており、規則化温度(Tc)以下の焼き鈍しにより単一バリアントのみが優先的に成長することが知られた.さらに規則相の成長にともないマルテンサト変態が抑制され、Ms温度が室温から液体窒素温度まで低下した.この現象はTi系形状記憶合金においては初めて見出されたものであり、これまで貴金属合金系のみで議論されていた母相の規則化とマルテンサイト変態の関係に、今後、新たな知見を与えるものと期待できる.拘束時効により規則相を分散させた合金では二方向形状記憶効果が200〜400℃の間で発現することが確認できた.次に二方向特性に及ぼす熱処理の影響を種々検討したが、目的として設定したTi_3Ni_4相を分散させたNi過剰TiNi合金ほど顕著な形状変化を発現させるには至らなかった.今後の課題として、規則相の正確な結晶構造の同定およびマルテンサイト変態(母相の安定化)に及ぼす規則相の影響を明らかにする必要がある.