著者
宮崎 清恵 高梨 薫
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

周産期医療施設766施設においてソーシャルワーク業務を担当している職員に対するアンケート調査、事例研究、および文献研究をおこなった。それらの分析により、極低出生体重児へのソーシャルワーク実践モデルを開発した。実践モデルは(1)実践理論、(2)実践の対象、(3)実践の意義、(4)援助の手続き、(5)必要な知識・価値・技能、(6)業務環境で構成される。今回の研究では、それぞれの項目の内容を明確にした。
著者
武川 直樹 木村 直樹 井上 智雄 湯浅 将英
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

人が共に食事をする「共食」を例題に会話コミュニケーションを分析し,日常的コミュニケーションの相互行為の仕組みを明らかにし,共食支援システムを実現する研究を実施した.共食評価用会話コーパスを作成し,書き起こしたデータから共食中の会話の順番交替,食事動作の構造を解明した.たとえば,聞き手は会話への関与の度合いに応じて摂食タイミングを調整しコミュニケーションの構築に寄与していることを明らかにした.また,人と共食をするエージェントSurrogate Diner,ビデオメッセージを通じて疑似的に非同期な共食をするKIZUNAシステムを開発した.共食コミュニケーションに改善効果があることを明らかにした.
著者
大島 徹 塚 正彦
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

熱中症及び熱傷性ショックで死亡したグループ(第1群)と,機械的窒息で死亡したグループ(第2群)に分けて,細胞数の比較検討を行ない,病理組織学的観察を行ったところ,機械的窒息死事例の肺組織においては,高温の悪影響による熱中症や熱傷性ショック死事例と比べて,単球及び多核巨細胞が多数認められた。また,一酸化炭素中毒死のグループ(第3群)にもマクロファージ及び多核巨細胞減少の傾向が認められ,遊走する数はある程度,浸出物の多寡と相関する傾向にあった。法医診断において,単球系細胞の観察によって,以上3群間の鑑別診断の精度が上がるものと考えられた。
著者
駒瀬 裕子 山本 崇人
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

喘息患者において病薬診が連携することは地域における喘息治療の質を高める上で重要である。すなわち、1)病〓ことができ、その結果、より重い患者は専門医においてより専門的な治療を受け、より軽い患者は地域の非専門医において安定して継続加療を受けることが可能である。本研究では、インターネットを用いることで服薬指導をスムーズに行い、患者のアドヒアランスが高まるかどうか、薬剤師の専門知識が高まるかどうかに着いても検討した。本年度は、1年半にわたってインターネットを用いた薬剤指導の成果に関してデータ整理を行った。結果:この間にインターネットを通じて薬剤指導を依頼した患者数は66名であった。依頼に関して、薬局を訪れて服薬指導を受けたものは61名で、5名は服薬指導を受けなかった。さらに、61名のうち、薬局から指導に関して返答がなかったものが11例であった。服薬指導を受けた50名の指導依頼内容は(複数回答)、吸入方法が44名、ステロイド薬の指導が21名、アドヒアランスの確認が19名、その他の薬剤についてが7名、副作用や相互作用についてが4名であった。結果および考察:インターネットによる服薬指導の依頼および回答は当院のように門前薬局を持たず、広域で薬局の指導を行っている地域では報告が早いなど一定の利点があった。欠点として1)薬剤師によるインターネットの操作が必要、2)経費がかかるなどがあげられた。今後この方式を広めるためには、システムの維持費の問題と、セキュリティーの問題が解決されなければならない。
著者
根本 到
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

労働法における公法的規制と私法的規制の関係について研究を行った。高年齢者雇用安定法や労働者派遣法のように、その規範に違反した場合の効果について公法的特質のみを強調する法規が現れている。こうした法分野に考察を加えた結果、私法的規制と認定される場合の判断基準とともに、採用の自由論の限界などが明らかになった。労働法においては、古くから妥当する公法私法二元論が大きな影響力を有しているが、これよりも公法私法相互依存論の方が適切であると結論づけた。
著者
矢野 正子
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

20世紀後半の保健医療制度の変遷における看護分野の課題について、国の看護施策と看護の変化を明らかにするためにマスネディアである新聞と看護関係誌の内容を分析することによって、その変化を看護政策論の立場から説明出来る資料を得ることを目的とした。全国紙について1945(昭和20)年から1999(平成11)年迄の55年間の記事内容をKeyword「看護」で年次別に検索・整理し、最終的に15大分類とした。「看護」に関する新聞記事数は55年間で1672あり、1945(昭和20)年には4件であったが次第に増え、夕刊の発行(1961(昭和26)年、紙面数も増もあるが年平均4.8(1945〜1949年)、11.6(1950〜1959年)、30.2(1960〜1969年)、30.2(1970〜1979年)、33.6(1980〜1989年)、57.6(1990〜1999年)であった。記事数の多さから見た10位迄の順位は、1位:看護婦が関わる事件、2位:看護争議、3位:マスメディア、4位:看護行政、5位:看護婦(士)事情、6位:国際、7位:老人看護、8位:看護教育、9位:裁判、10位:看護体制であった。報道の内容と国会審議議事録等に見る経緯から戦後55年間は、看護婦確保の課題を基軸に3期に分けられ、第1期:戦後の混乱と看護婦の労働者意識目覚めの時期(1945〜1965年)、第2期:看護婦確需給計画による看護婦確保対策の始まった時期(1966〜1984年)、第3期:高齢社会に備える看護職員需給見通しによる看護職員確保対策の時期(1985〜1999年)とした。「看護」に関する新聞報道記事数から、それを分類・整理してみることにより、現状施策に観する施策の有無と将来施策の予測性とを兼ね備えた供覧されている、と分析した。
著者
江澤 雅彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

「保険顧客の需要を喚起・認識させ、その需要に合致した適切な保険商品を保険顧客が選択することを促すという役割を期待される募集行為の本質は、保険商品をめぐる情報を提供し、それについて保険顧客の理解を得て、その後、契約締結にいたらしめることに他ならない」という認識の下、平成16年度日本保険学会大会(10月23日、上智大学)の「シンポジウム」において、保険募集行為規制の沿革をたどり、特に、保険募集人の禁止行為を規定した保険業法300条のうち、情報提供に係るものとして、「重要事項の説明」、「不正転換・乗換」、「予想配当」を検討した。結論として、保険募集行為の2重構造性を認識すべきであると述べた。すなわち、1つは「全社共通部分」で、保険のニーズを喚起し、それを質的(保険種類)、量的(保険金額、保険料の大きさ)に明確にさせるプロセスである。これは特定会社の特定商品の購入に直接結びつくものではないが、それは募集行為の今1つの構成要素である、「自社商品販売促進部分」にとり不可欠の前提となっている。これは、保険という、その需要が間接的である商品を扱う「業界共通のコスト」として積極的に負担する必要がある。個別会社にとり一見迂遠に思える「保険リテラシー」を充実させ、「情報を十分得た上での保険購入あるいは保険の乗換」を図ることが、結局は、喫緊の課題である「失効・解約の増大」といった問題解決にも資すると主張した。
著者
大渕 朗 加藤 崇雄 米田 二良 本間 正明 吉原 久夫 三浦 敬 高橋 剛
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

種数gの代数曲線Cに対する平面モデルの最少次数s_c(2)は評価式としてs_c(2)≦g+ 2が成立する。s_c(2)=2g-t+ 2の時は種数tの曲線に二重被覆であると言うMartens-Keemの予想をt=0, 1, 2で考察し、特にt=2の時はg≧10なら予想は肯定的に成立、g≦9では各gに反例が存在することを示した。また第7回代数曲線論シンポジウム(横浜国立大学にて2009年12月05日(土)-12月06日(日))、第8回代数曲線論シンポジウム(埼玉大学にて2010年12月11日(土)-12月12日(日))と第9回代数曲線論シンポジウム(首都大学東京にて2011年12月10日(土)-12月11日(日))を開催した。
著者
五十嵐 隆治
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

現在重要なインフラとなっているインターネット上で悪意あるトラフィックが疎通した場合、これは異常トラフィックとして検知できる。インターネットトラフィックはランダム時系列であり、異常トラフィックが混在していないときには2次の自己相似過程に従っている。R/Sポックスダイアグラムはこの自己相似パラメータ推定に用いられるものであるが、異常トラフィック混在時には独特な散布形状を呈する。 本研究ではこの散布形状を異常トラフィック検知に援用し、異常トラフィックを検知し得ることを見出した。
著者
山本 久雄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

プロイセンでは,1850年憲法で公的国民学校の授業料徴収の廃止が明確に定められたが,その実施までにおよそ40年を要した。これには,その代替財源の確保の困難という事情もあったが,実はこの授業料の存廃問題が大きな問題を内包していたからでもあった。本研究では,授業料廃止を定めた法律の審議過程をたどることにより,その問題の広がりを究明し,教育史上のその意義についてまとめた。
著者
久保 光徳 寺内 文雄 青木 弘行 田内 隆利
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究はまず,1/fゆらぎを持った三次元形状が心地よさ(情動)に与える効果に着目し、このゆらぎを適用した立体格子と規則的に配列された立体格子を制作し,両者を心理的・生理的な観点から評価することで,心地よさ(情動)に及ぼす1/fゆらぎの影響を立体格子形状を通して明らかにすることを試みた。結果として,1/fゆらぎを持った立体格子は,その触り心地や自然な外観が心地よさ(情動)を提供する造形要因となりうることが示唆された。次に,デザインプロセスにおける"発想の飛躍(気づき)"をモデル化するために,一般的なデザインプロセスを表現する平面(デザインプロセス平面)を定義し,それに直交する平面を,プロセスを通してデザイン実践者が持つと想定できる情動やイメージを示す平面としてのイメージ平面を定義し"気づき"を図式化することの可能性を示唆した。最後にこの心地よさと気づきをいずれも情動と理性との複合空間により説明できるとし,基本的な情動モデルの提案を行った。
著者
本多 弘樹
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

計算クリッドにおいて,アプリケーションプログラムの安定した実行を可能とする環境を提供するには,利用可能なサーバの稼働状況に応じてサーバの切り替えを自動的に行う機構が求められる.本研究では,グリッドサーバの自動切替機構の実現を目指して,サーバへのタスク割り当てを行うスケジューリング手法を提案するとともに,サーバ自動切替機能を有するグリッドミドルウェアの開発を行った.
著者
篠原 孝司 馬場 護 石川 正男
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

燃焼プラズマの物理の理解に必要な高速イオン輸送研究のために、2.45 及び14MeV 中性子の同時計測可能なシステムの研究開発を行った。開発では、これまでの実績による課題を念頭に、ゲイン変動と呼ばれる波高変動の特性の把握、シンチレータ検出器の特性の把握、パルス波形最適化のための高速パルス波形処理用機器や解析ソフトの開発、処理用機器の試験を行い、改良に向けた指針を得た。指針にもとづき、多段式の検出システムを考案した。試験の結果、多段式検出システムが有望であることが確認できた。
著者
日下 裕弘
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、自然の中で仲間と思いっきり楽しく遊び、活動する諸実践の分析を通じて、「フロー」状態にある子どもが、「他者」(自然、仲間、規範など)を、自らの身体に練り込む過程を、主として、市川の現象学的身体論やワロンの情動論の視角から明らかにした。茨城県で実施されている自然遊び・体験学習には様々なものがあったが、本研究では特に比較的長期の「夏の自然遊び合宿」(4泊5日)と「山中友子隊体験村」(29泊30日)に焦点をあて、分析・考察を深めた。前者については、「光るどろだんごづくり」を事例に、子どもたちが自然を身体に練り込む過程を、遊戯世界を構成する6つの契機((1)自由への離脱・没入・一体化、(2)どろだんごの変身、(3)遊び手とどろだんごの関係の深まり、(4)遊び手の二重存在、(5)独自の遊戯世界の生成、(6)遊び手のアイデンティティの確認)に分け、これらの「こころの契機」が、実は、意識下の身体のはたらき(例えば、体感、身体感覚、錯綜、受動的統合など)を基盤とし、それらに結びついてはじめて成立することを明らかにした。後者については、自然の中での1か月にわたる長期の体験学習が、喜怒哀楽をすべて含めた、深い「情動の体験」であること、また、子どもたちが「がんばり」と「協力・励まし合い」の体験を通じて、自らの身体に練り込んだ「他者」(他人、自然、仲間、リーダー、規範など)が、意識下の深い層に烙印され、意識下の他の「引き出し」と様々なかたちで錯綜しつつ、変質し、やがて、チャンネルとモードの切り替えによって、有意味な顕在的行動となって現れることを、「体験・追跡調査」によって明らかにした。
著者
鈴木 秀美
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

通信放送法制は2010年に大きく改正された。総務大臣が番組内容に対して監督を行うことは憲法上問題があるにもかかわらず、2010年改正は、この問題を積み残し、そのうえ番組種別の公表という新しい義務を放送事業者に課した。本研究は、新放送法の憲法上の問題点を明らかにした。また、2008年のいわゆる「青少年インターネット環境整備法」を手がかりに、法律によって事業者の自主的取り組みを促す手法についても検討を加えた。
著者
入江 幸男
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年、分析哲学からのドイツ観念論の再評価が注目を集めており、なかでもピッツバーグ大学のブランダムとカントとヘーゲルの再評価は、現代哲学にとって重要な意味を持っている。本研究では彼の仕事を引き継いで、さらに展開することを目指した。フィヒテの判断論の読みなおしによって、フィヒテにすでに意味の全体論が見られることを指摘した。また問答の観点から意味論を捉え直すことにより、ブランダムの意味論を拡張するなどの成果を得た。また本科研費で超越論的論証についての、国際会議を開催し、それの成果を出版(近刊)できる予定である。
著者
天野 殖 笹原 正清
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

遺伝性てんかんミュタントラット(IGRER)の海馬体には神経細胞の微少形成異常が認められる。この神経細胞の微少形成異常の発現機序を解明することはこの遺伝性てんかんラットにおけるてんかん発作の原因に直接的に迫るものである。本研究はIGER海馬に見られる微少神経形成異常の病理形態学的異常の詳細を明らかにし(実験1)、次いでBrdUを神経細胞の分裂・移動のトレーサーとして用い以下の事を明らかにしようとするものである。(1)海馬錐体細胞が胎生期においていつ分裂し、どのようなルートをたどり目的部位へ移動するか(実験2)。分裂、移動の障害があるかどうか、またあるとすればそれはどのようなものであるか(実験3)。結果並びに考察:第1の実験によりIGER海馬体には錐体細胞の配列の乱れ、層構造の途絶並びにSt.rad領域の異常神経細胞集簇よりなる微少神経形成異常が認められた。形成異常は2ヶ月齢の動物に雌雄の差無く常に認められ、常染色体遺伝形式を示すことが明らかとなった。遺伝的に決定された形成異常であり、胎生期に発現する遺伝子異常があると考えられるた。第2の実験によりてんかんラットの微小形成異常を構成している神経細胞の主体は胎齢16,17日に分裂するものであった。移動のルートには特に異常を認めなかった。第3の実験によりIGERでは海馬原基で分裂した細胞は中間帯に移動した後,長く同部に止まることが明らかとなり、この中間帯での停滞による移動遅延が結果的には移動の障害を招き微小形成異常の病理発生に関与していることが類推された。
著者
柴田 近 鹿郷 昌之 田中 直樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

意識下成犬において寒冷受容体(TRPA1)刺激剤のallyl isothiocyanate (AITC)の結腸内投与は結腸運動を亢進させ排便を誘発した。このようなAITCの効果は、ムスカリン, ニコチン, 5-HT3, TRPA1の各受容体拮抗薬の存在下で抑制され、TRPV1拮抗剤の存在下では影響を受けなかった。結腸壁を切離・吻合、または外来性神経を切離するとAITCの結腸運動亢進、排便誘発効果が減弱した。これらは、AITCが結腸知覚神経末端のTRPA1に作用し、アセチルコリン、5-HT3を介して結腸運動を亢進させ排便を誘発するが、その作用には外来性神経と壁在神経が重要なことを示唆していた。
著者
澤田 博司 山濱 由美 間瀬 啓介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,カイコ休眠卵を浸酸処理し休眠移行を阻害した際に特異的に発現する一酸化窒素合成酵素(NOS)の新規スプライシングバリアント(NovNOS-V)を見出し, NovNOS-VがNOS遺伝子の35残基のアミノ酸に相当する一つのエキソンを除いて合成されること及びNOS遺伝子が22のエキソンと21のイントロンで構成されていること等を明らかにした。また,休眠卵,非休眠卵,浸酸処理休眠卵でのNOSの遺伝子発現と酵素活性を解析した。その結果,活性変動は転写レベルでなく,翻訳後の修飾による可能性が示唆された。更に,抗NOS抗体を用いた免疫組織化学的解析を行ったところ, NOSは卵黄細胞に局在していることも明らかにした。
著者
磯貝 淳一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平安時代から鎌倉時代にかけて仏家によって撰述された漢文資料の原本調査を実施した。対象としたのは済暹撰『顕密差別問答』、覚鑁撰『心月輪秘釈』『密厳浄土略観』および『法勝寺御八講問答記』である。翻字本文にもとづく電子テキストを作成し、注釈関係文献については漢字の情報付きデータベース構築の基礎的段階を終了した。また、「注釈活動を中心とした教義理解」と「法会における言説の記録」という異なる言語活動の所産について、そこに認められる言語事象の記述を行った。このことを通じて、当該期の仏家の漢字文に共通する用字・用語・文章構造の実態を明らかにした。