著者
中谷 敏昭 林 達也
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

高齢者が自立生活を維持するためには下肢筋機能が維持されていることが望ましい.本研究では,連続ジャンプ(SSC動作)を用いて下肢筋力や筋パワーなどの筋機能を改善する運動プログラムの効果と中止の影響を検討した.連続ジャンプは,Borg-RPEで14.3程度,着地時の床反力は体重の約2倍程度であった.3ヶ月間のトレーニグでは,下肢筋力やバランス能力が改善した.トレーニグ終了後は,脚伸展能力が低下する傾向にあった.トレーニング期間を5ヶ月間に延ばした場合には,下肢筋力とバランス能力が改善した.連続ジャンプを用いた本課題のトレーニグは,高齢者の下肢筋機能やバランス能力を改善するプログラムと言える.
著者
宮野 英次
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

多くの重要な離散最適化問題は計算量の意味で困難(NP困難)となる.すなわち,最適解を求めるための多項式時間で動作するアルゴリズムが存在しない.また,ある状況では,問題を解く前に,完全な入力が与えられない場合もある.例えば,入力が徐々に与えられるような要求列となっている場合である.将来の要求に関する情報が欠損している場合にもアルゴリズムは効率よく動作する必要がある.前者をオフライン計算モデル,後者をオンライン計算モデルと呼ぶ.本研究では,それら2つの計算モデルにおける困難な離散最適化問題に対して,最適解に対する出力解の精度が理論的に保証されたアルゴリズムを設計した.
著者
中村 艶子
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

アメリカの先進的ワーク・ライフ・バランス企業や国内の「ファミリー・フレンドリー企業」、女子学生のキャリア、働き方について論文、共著、共訳の形でまとめた。また、日米のワーク・ライフ・バランス動向を追い、企業内保育所を類型化し、その内容・成果について国内外の学術交流(講演)や学会においてこの課題について発信を行った。
著者
菊川 芳夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

格子カイラルフェルミオンの生じるゲージアノマリーの厳密相殺を示すための局所的コホモロジー問題を解くために,格子上のChern-SimonCurrentの局所性およびゲージ共変性に着目し, FieldTensorによる展開法を用いる解法を提案した。2次元SU(N)理論については,この方法が有効であることを示し,数値的な検証を行った。
著者
松田 雅子 中島 恵子 西村 美保 ルール ミシェル
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

カナダ文学の旗手であるマーガレット・アトウッドの作品世界を、長編小説、短編小説、詩、カナダの文学思潮の4つの側面から解明した。研究代表者は長編小説を担当し、分担者の中島恵子は短編小説を中心に研究を進め、それぞれ、博士論文をまとめた。研究分担者の西村美保は、アトウッド文学におけるイギリスの影響、とくにヴィクトリアニズムの展開についてまとめた。研究分担者の、ミシェル・ルールはアトウッドの詩および子ども向けの本の関係について考察した。3冊の書籍、3冊の翻訳書、7編の論文を出版し、学会発表を8回行った。
著者
降旗 建治
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

提案したロジスティックモデルは、1回の測定結果からでも、閾値、許容値、最適値等が推定できる。このモデルを各種感覚・知覚実験法に拡張・展開した。特に、得られた感覚特性(弁別閾値)と各種疲労要因との関係から、疲労現象は、感覚特性だけで把握することは困難であることがわかった。そこで、このモデルが生理学的側面にも有効かどうかを検討した。具体的に、慢性疲労症候群のリスクファクターとして、非侵襲的頭蓋内圧推定法を提案し、新たに頭蓋内圧伝達関数法を構築し、その有効性を検証した。
著者
菅谷 成子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、スペイン支配の中枢がおかれたマニラを外世界(文明)、と内世界が出会う場所として設定し、そこに生きた人々と植民地都市マニラの発展との関わりを解明することであった。具体的には、中国人移民およびその社会が、(1)故郷福建といかなる関係を構築していたのか。(2)マニラの都市的発展に具体的にどのように関わったのか。(3)都市住民として、スペイン人あるいは原住民を中心とする植民地社会といかなる社会・経済関係を構築していたのかという観点から、スペイン植民地都市マニラの歴史を解明することを主な課題とした。まず、先行研究の蓄積を批判的に継承しつつ、スペイン語手稿文書による新知見をもとに、スペイン植民地都市マニラの発展過程をイントラムーロスとアラバーレスとの関係を軸に跡づけた。その過程で、マニラの発展を特徴づけるキーワードは、マニラ・ガレオン貿易、中国人の流入、地震、および周辺海上勢力の動向であるとの認識をえた。次に、マニラの都市住民としての中国人の生活実態を、カトリシズムを基底にすえた植民地社会の文脈に位置づけ明らかにするために、「結婚調査文書」「マニラ司教区裁判所文書」「マニラ公正証書原簿」「マニラ税関文書」等の分析を行った。その結果、植民地社会の人間関係をめぐる個々の具体的な諸相の抽出をえて、その成果の一部を公刊した。さらに18世紀は東南アジア史において「華僑・華人の世紀」と言われるが、マニラの中国人移民社会を、同時代の東南アジア島嶼部各地における中国人移民社会成立の文脈に位置づけ、その特徴を明らかにした。また、過去3年間の研究成果の一部を2001年9月に中国厦門大学で開催された「21世紀初的東南亜経済与政治」国際学術研討会において報告する機会をえた。しかし残された課題も多い。とくに、量的分析によるデータの蓄積や中国人を受入れた現地の人々の視点からの分析はこれからの課題である。
著者
小林 邦和 大林 正直 呉本 尭
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,先ず他者の状態や行動の予測を行う状態・行動予測モデル,他者の行動政策の推定を行う政策推定モデル,他者の行動意図の推定を行う意図推定モデル,複数の感覚刺激の中から特定の刺激のみに着目する注意生成モデル,ヒトの情動を模倣した情動生成モデルをそれぞれ構築した.次に,それらのモデルと学習・推論システムを統合し,マルチエージェントシステムにおける協調行動の創発を指向した脳情報処理模倣型統合システムを開発した.同時に計算機シミュレーションとロボット実験により,本システムの性能評価を行った.なお,成果は,学術論文23編,学会発表(国際会議,国内会議)69編,図書6冊として公表した.
著者
稲垣 伸吉 鈴木 達也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、未知で複雑な環境を移動できる多脚歩行ロボットを実現することを目標に、分散型歩行制御法「接地点追従法」を改良し、高次の運動計画と分散制御のローカルな適応的運動生成とが一貫した分散型歩行制御法を確立することを目指した。まず、高次の運動計画として深度センサを用いた接地点探索手法を開発し、ムカデ型および6脚の多脚歩行ロボットでのシミュレーションおよび実機での実証を行った。そして、運動性能の向上を目指して能動体節間関節と脚の統合的分散制御手法を開発しシミュレーションにより有用性を示した。また、多様な環境での歩行を想定した高次の運動計画と下位の運動制御の統合的なパラメータ設計手法を開発した。
著者
山田 進 町田 昌彦 大橋 洋士 松本 秀樹 今村 俊幸
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではメニーコア計算機用を対象に、量子多体モデルのシミュレーション手法である密度行列繰り込み群法と厳密対角化法の並列化・高速化を実施した。特に、モデルの物理的性質と計算機のネットワークアーキテクチャを考慮して、高速な通信手法を提案しその有効性を確認した。また、開発したコードを実際の物理問題に適用し、それらの物理的性質についての議論を行った。
著者
加藤 弘之
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

副作用のない純粋な関数型言語の分野で開発された、プログラム変換技術の一つである「融合変換」に、副作用を有する言語に適用可能なものに拡張するためのアルゴリズムを与えた。特にデータモデルとしてグラフ構造を対象とした言語を用いる。グラフ構造は、現実世界の実体を直接かつ自然に表現できるデータ構造であるからである。研究代表者が既に開発した木構造を対象とした副作用を有する言語であるXQueryはグラフ構造も扱うことができるため、この言語に対する健全な融合変換を与えた。また、完全性を示すためのスキーマのクラスと問合せ言語のクラスを示した。
著者
浅沼 俊彦 石蔵 文信 中谷 敏 増田 佳純
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

胸痛消失後の心筋虚血の診断(「虚血の既往」の診断)はしばしば困難であり、非侵襲的かつ簡便な心エコー法でこれが可能になれば、臨床で有用と考えられる。われわれは、動物実験により、最新技術である組織トラッキング法を用いて、これが可能か検討した。その結果、微細な心筋の異常運動(駆出後収縮)は、虚血改善後にも持続することが明らかになり、心エコー法による「虚血の既往」診断が可能と考えられた。
著者
松本 美鈴
出版者
青山学院女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

伝承料理"あらい"の特徴は、きわめて活きのよい魚介類を用いることである。しかし、このような調理の特殊性が、"あらい"の利用範囲を限定している。あらい調理の可能性を広げるために、本研究では、鮮度の異なる魚肉から"あらい"を調製し、調製条件が魚肉の収縮に及ぼす影響を検討した。活スズキの筋肉を試料として用いた。試料は5℃で2日間貯蔵し、経時的にサンプリングし、"あらい"を調製した。"あらい"調製条件は、次の5つである。(1)18℃の脱イオン水中で3分間撹拌。(2)49℃の脱イオン水中で20秒間撹拌。(3)18℃の1mM塩化カルシウム水溶液中で3分間撹拌。(4)18℃の10mM塩化カルシウム水溶液中で3分間撹拌。(5)18℃の100mM塩化カルシウム水溶液中で3分間撹拌。調製した"あらい"物理的性質は、明度、硬直度、レオナーによる破断試験により評価した。また、各種"あらい"からエキスを調整し、筋肉中のアデノシン5'トリリン酸(ATP)と乳酸を測定した。即殺直後および6時間貯蔵した筋肉からは、いずれの条件でも"あらい"が調製できた。しかし、カルシウムを添加した水で処理した"あらい"は、筋肉の硬直度や破断荷重の値が大きく、筋収縮が著しかった。また、即殺後1日冷蔵した肉を脱イオン水中で処理しても筋肉は収縮せず、"あらい"にならなかった。しかし、10mMあるいは100mM塩化カルシウム水溶液で"あらい"を調製すると、即殺してから24時間貯蔵した魚肉においても、解糖系からの収縮エネルギーであるATPが補給され、筋肉が収縮することが認められた。つまり、"あらい"処理用の水にカルシウムが存在すれば、きわめていきのよい魚を用いなくても、"あらい"を調製することが可能であることが明らかとなった。
著者
石田 佐恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

当研究は、グローバル化時代においてメディア環境に生じた新しい研究課題を明確にしつつ、同時に、映像データの会析手法のいくつかの流れを統合する手法を確立することを目的とするものであった。具体的には、データ収集とアーカイブ構築、映像データの分析を実施しつつ、従来の映像分析手法の再検討を行い、統合的な手法を模索した。【1】本調査の実施特定期問の地上波6局、全放送時間の番組を記録し、DVD化・データベース化していく方法を模索した。また。1980年代から保管されてき番組録画全資料のデータベース化作業を行った。これは、家庭用ビデオデッキの普及が個人のテレビ視聴にもたらした影響を考えるための資料であると同時に、国内外のテレビ番組サンプルの資料としても活用可能である。【2】調査結果の分析、及び、研究のまとめ映像データ分析についての統合的方法を確立するための考察作業を実施した。【3】研究成果の発表、刊行明らかにされた発見と結果は、論文やミニレポート、研究会報告や報告書などの形式で報告・発表した。本報告書は、それらの資料のうち、映像資料のDVD化・データベース化の方法についての考察、国内外の番組録画資料のデータベースを中心としている。
著者
水野 浩二
出版者
札幌国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

2年間の研究成果は、論文3本、翻訳(部分訳)2本、研究発表2本である。まず論文。(1)「倫理的規範と人間的実践-遺稿《倫理と歴史》(コーネル大学講演)についての研究(1)-」では、一九六五年のサルトルの講演原稿をもとに、倫理的規範(日常生活において一貫している命令的構造)の特質、倫理的規範と人間的実践とのかかわり(規範を人間化する可能性)について検討した。(2)「「全体化するものなき全体化」について」では、遺稿『弁証法的理性批判』第二巻を中心に、全体化としての歴史には個人の実践があるのだが、歴史をひとつの集合体としてみた場合、歴史は個人の意識や意志を超えているように見えるところから、いったい誰が歴史を作ったのか、歴史とは、全体化するもの(作る主体)がいない全体化なのではないのか、という問題を検討した。サルトルによれば、ひとつの真理とひとつの可知性を備えたひとつの人間の歴史が存在する、という。ということは全体化するもの(歴史を作るもの)は存在することになる。しかし、それは単なる個人ではない。共同的個人である。(3)「「具体的なもの」とサルトル哲学」では、サルトルにも影響を与えた、ジャン・ヴァールの『具体的なものへ』(1932年)に触発されて、サルトル哲学を「具体的なもの」というキーワードをとおして読み直してみた。その結果、「具体的倫理」、「具体的普遍」、「具体的なものの水準としての歴史」といった言葉をとおして、サルトル哲学が、具体的なものへの運動の流れに沿ったものであることが判明した。次に、翻訳であるが、(1)ヴァールの『具体的なものへ』のまえがきと序論を訳出し、(2)遺稿『倫理学ノート』の一部を訳出した。最後に、研究発表であるが、論文の(1)を仙台の「現象学を語る会」で口頭発表し、翻訳の(2)を日本サルトル学会で口頭発表した。
著者
坂野 達郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、実空間で培われてきた討議型世論調査の技術をオンライン討議へ移転することを目的とし、日本初のオンラインDPの社会実験をおこなった。討議テーマは、高レベル放射性廃棄物処分方法とし、インターネット調査会社登録のモニターから性別、年齢、居住地を基準に層化抽出を行い,101人の参加者を得た。討議は、Web会議システムを使用した。実験の結果、①Web上においても、実空間上のDPとほぼ同様に、代表性のある参加者が確認できた。②討議参加による学習効果も、ほぼ実空間と同様に起きることが確認できた。③コストは、実空間上のDPにくらべおよそ3分の1から5分の1程度で実現できるめどがたった。
著者
高田 豊雄 ビスタ B.B. 吉本 道隆
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

近年、フィッシングやパスワード推測、不注意によるマルウェア感染といった人間を糸口とするセキュリティ被害が増えている。本研究では、ユーザビリティ工学や教育工学、認知科学といった人間を取り扱う学問の最新成果をとりいれたセキュリティ向上の方策を考案する。具体的な課題としては 1) 最新の認知科学の知識を導入した記憶容易性と安全性を両立させたパスワード認証方式、2) 最新の教育工学の知見を導入したセキュリティ教育システム設計方法論の確立、3) 可用性を重視した一般ユーザ向けセキュリティ対策ツールや対策システムの確立である。
著者
福田 勉 久保 義直
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

海洋天然物ラメラリンα 20-サルフェートは、HIV-1インテグラーゼをIC50値 22 μMで選択的に阻害するとともに、実際の標的細胞に対するHIV-1ウィルス感染をIC50値 8 μMで抑制することが知られている。一方でHeLa細胞に対するMTTアッセイから、ラメラリンα 20-サルフェートのLD50値は274 μMと低毒性であることも報告されている。このようなラメラリンα 20-サルフェートの特徴から新たな抗HIV剤のリードとして期待されるにも関わらず、これまでに構造活性相関研究はほとんどなされてこなかった。そこで本研究では、研究代表者らが開発した合成戦略を用いてラメラリンサルフェート類縁体の効率的な合成を行った。また構造活性相関研究から、ラメラリン五環性骨格並びにスルホ基が抗HIV-1活性に必要であることを見出した。さらに共焦点レーザー走査型顕微鏡による分析と細胞膜-細胞膜融合実験から、ラメラリンサルフェート類の抗HIV-1活性は、以前に提唱されていたインテグレーションの段階というよりウィルスの侵入段階の阻害によるものであることが示唆された。
著者
二宮 啓子 内 正子 山本 陽子 市之瀬 知里 勝田 仁美 岡永 真由美
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、特別支援学校における医療的ケアへの支援体制と看護系大学・看護協会等との協働の実態とそのニーズを明らかにすることを目的とし、教育委員会、特別支援学校の看護師・教諭・養護教諭、看護系大学、看護協会を対象に、7つの質問紙調査等を実施した。その結果、教諭が医療的ケアを実施している特別支援学校では、看護系大学や看護協会等と連携しながら、教諭の医療的ケアの研修体制や看護師への支援体制の整備が進められていたこと、特別支援学校関係者が看護系大学、看護協会に期待していた「教諭や看護師の研修」、「看護師の雇用支援」や「研修や勉強会の開催」に各々の機関が答えられる可能性があることが明らかになった。
著者
松本 昇 小倉 いずみ 高橋 勤 君塚 淳一
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ジョン・ブラウンは過激な奴隷解放論者で、1859年10月、ヴァージニア州にあった連邦政府の兵器庫ハーパーズ・フェリーを襲撃した人物として知られている。襲撃の意図は、南部の黒人奴隷や北部の奴隷解放論者を巻き込んでの暴動を起こすというよりはむしろ、奴隷を解放するための戦争のきっかけを作ることにあったように思われる。ブラウンはハーパーズ・フェリー襲撃後のおよそ二ヶ月後、国歌に対するは逆の罪で公開処刑された。「ジョン・ブラウンの屍を越えて」という歌は、北軍の第二歩兵大隊(別名、タイガー連隊)が1861年にフォート・ウォーレンに来たことと関係がある。その大隊の中に、ヴァージニア州チャールズタウンで処刑された奴隷解放論者と同じ名前を持つジョン・ブラウン軍曹がいた。何かにつけて兵士たちはこの軍曹を、処刑されたジョン・ブラウンと関連づけてからかっていた。そのうちに「ジョン・ブラウンの屍を越えて」という歌ができあがったのである。やがてこの歌は、南北戦争のきっかけをつくったジョン・ブラウンをたたえる歌へと変化していった。この歌が」南北戦争で歌われたのは、ヘンリー・ソローやラルフやラルフ・ワルド・エマソンのような超絶主義者や北部の奴隷解放支持者による一貫したブラウン支持だけによるものではない。戦場でたたかう兵士たちの事情によるところが大きい。つまり、彼らは戦地で無意味に死ぬのではなく、ジョン・ブラウンのように自らの死に意味を持たせるためにこの歌を歌ったのである。ジョン・ブラウンの精神は、合衆国で後世の人々に歌い継がれている。日本でも、「ジョン・ブラウンの赤ちゃん」のメロディが導入され、現在でも「ヨドバシ・カメラ」のCMソングとして歌われている。