著者
東辻 久子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Affinity-tagged substrate(Gankyrin)とNEDD8、E1、E2、E3をRosetta cells中でpolycistronicにco-expressすると、in vitro gankyrin neddylation assayと同様にガンキリンはNEDD8修飾をうけた。Gankyrin mononeddylationはp53やpRBのpolyubiquitylation、26S proteasomeでの分解を促進した。S6 ATPaseはこれらをさらに亢進し、C-terminal S6 ATPase mutantは抑制した。
著者
岩井原 瑞穂
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

WikipediaやFacebookなどのソーシャルメディアを対象として,ユーザの投稿行動により生じる履歴や,投稿行動の動機分析を主な目的とする.Wikipediaの編集履歴において,バージョン集合の派生や手戻りをバージョン間に含まれる曲共通文字列を用いて,正確に再構築するアルゴリズムを開発した.またユーザの投稿行動について,投稿の動機を質問票により調査し,新たな友人を獲得する動機,および既存の友人と交流する動機などのモデルを構築した.さらにユーザプロファイルや投稿量などの指標から,投稿動機を高精度で推測できることを示した.
著者
山口 宣夫 小川 法良 杉山 清 伊川 廣道 松葉 慎太郎 清水 昌寿 宗 志平
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

妊娠直前または妊娠中に母マウスを免疫すると、仔動物の能動免疫が長期間(1/6生涯)且つ強力に抑制されることを報告してきた。抑制が強く認められたのは、綿羊赤血球及び卵白アルブミン等のTD抗原であった。仔に抑制を誘導する因子の解析では、抗原分子あるいは母親の移行抗体共に否定的であった。しかし、母仔共にCD4陽性のT細胞が関与していることが判明した。仔における抗体産生の抑制は、母親の主要組織適合抗原複合体(MHC)に拘束されることが明らかになっている。また、母親のTcellをcell-free状態にすると仔に抑制が成立せず、母親と仔の細胞の間にcognateな反応が必要である。また平成12年度〜14年度の研究では仔のリンパ組織中に母親由来の細胞の移行をDNAフィンガープリント法により証明する等の方法により、母仔間に母親リンパ球のtraffickingを証明してきた。15年度はこれらの成績を基にインフォームドコンセントを実施した健常ヒト母子(母親とその男児2名)ボランティア1組を選択し、子における母親由来のリンパ球の移行をHLAハプロタイプの解析により証明することを試みた。HLA遺伝子座はA、B、C、DR、DQを網羅して母親(40才)由来のホモ遺伝子を獲得したリンパ球を児(11才、13才)の末梢血中に追跡した。しかし、この家族間での母子間traffickingを証明するには至らなかった。解析方法の感度、移行細胞の頻度ならびに児体内での増殖能等の影響が考えられた。本年度の成績を踏まえて、今後は自己免性疫患児の症例数を増す様に企画してゆきたい。
著者
飯田 敬輔 鈴木 基史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

比較研究から明らかになった点は多数ある。投資仲裁についていえば、確かに国家のゲートキーピング作用がないため、多数の案件が付託される傾向が強いが、しかし企業はこの仲裁に頼る以前に国家と直接交渉を行い解決に努めるため、これらの仲裁に持ち込まれるのは、ほとんど交渉では解決不可能な案件である傾向が強い。多くの国家は仲裁勧告を履行するが、それができない国家は長期にわたり引き延ばし工作をしていることが明らかとなった。国際司法裁判所については、確かに経済問題のほうが解決する傾向は強いが、意外なことに境界紛争、特に海洋の境界紛争についてはそれが特別協定により国際司法裁判所に付託され、かつ判決履行の確率も高いことが分かった。
著者
劉 崢
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、透過/走査透過電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いた金属有機構造体(MOF)材料の構造解析を可能にする手法を開発し、これを新規なMOFとその内包分子の構造解明に活用することで、MOFの開発・応用の発展に寄与するものである。平成25年度は、電子線ダメージを低減しかつ必要な空間分解能を得るための最適なTEM観察条件を明らかにした。26年度は、この最適条件を基に、更に多様な新規に合成されたMOF材料の構造を決定した。27年度は、更に3種類の新規合成MOFに加え、3種類の共有結合性有機骨格構造体材料の構造解析、及びMOF材料空隙中に分子や金属クラスタなどを内包させた複合構造の解析を遂行した。
著者
高村 学人 安枝 英俊 齋藤 広子 秋山 靖浩
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我が国の住宅市場でマンションに関しては、新築購入よりも中古購入が割合として上回るようになったが、マンションの居住環境を大きく左右するのは、マンション全体の管理の質である。しかし、この情報は、情報の非対称性の問題のため購入者に届きにくい。そこで本研究は、管理の質の情報が実際にどのように提供され、それを促進するにはどのような法制度が必要か、国内での購入者アンケート調査、米仏との比較法研究を通じて探求した。結論は、仲介業者の役割強化の立法が有効であるというものであるが、しかしこのような立法を持つ仏米でなお問題が残ることも同時に明らかとなった。
著者
伊東 敏光 藤井 匡 靍田 茜
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、世界的にも作例の乏しい風景をモチーフとした彫刻を制作にするために何が必要であるかという観点から、「風景彫刻」を成立させるための造形理論と実験制作よる研究を並行しておこなった。理論研究では、日本国内の庭園、工芸等に見られる風景表現を実地調査し、また古代から現代までの絵画表現の変遷や様々な透視図法や遠近法等の調査を通じて、それらの表現方法の彫刻への応用等に付いての考察を重ねた。実験制作では「広島」や「対馬」といった特定の地域を限定した上での、「風景彫刻」の実験制作をおこなった。本研究の成果として特徴的なことは、実験制作によって彫刻による多様な風景表現の可能性を示すことが出来た点にある。
著者
鈴木 和志 千田 亮吉 溜川 健一 福田 慎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

投資資産価格モデルを利用して企業価値の変動を説明する際に、有形資産投資(設備投資)のみならず無形資産の代表としてR&D投資を追加すると、説明力が飛躍的に向上することを実証的に明らかにした。医薬品や電気機械・電子部品産業に属する技術革新的企業では、資産を1単位増加させることで得られる企業価値の増分は、R&D資産(無形資産)による方が設備資産(有形資産)によるよりもはるかに大きい。時価評価の有形資産に対する企業価値の比率であるTobinのq は、従来から設備投資の唯一絶対的な指標とされてきたが、技術革新的企業ではそれが不適切であることを明らかにした。
著者
一郷 正道 小澤 千晶 太田 蕗子 上野 牧生
出版者
京都光華女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

後期インド仏教の論師カマラシーラによる『修習次第』の翻訳研究を行い,付録に,瞑想の方法を述べる箇所のテキスト対照表,引用文献一覧,シノプシス等を加え冊子にまとめた.本書が提示する実践方法が「唯識観行」に基づくことを,先行する唯識文献の対応箇所をあげることで具体的に提示した.また引用文献一覧では,他の文献で同一文献の同一文言を引用するケースを精力的に収集し提示した.これらは,仏教における「哲学」と「行」の伝承の系譜を明らかにする基礎資料を提供するものともなる.
著者
井岡 聖一郎 藤井 光
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

浅層地盤を対象に地盤の見かけ熱伝導率の変動メカニズムの解明とその変動の結果もたらされる熱交換資源量評価を目的として,長さ約8mの地中熱交換器を設置し熱応答試験を実施した。浅層地盤の見かけ熱伝導率の変動を引き起こす要素として地下水面深度の違いを想定し,地下水面深度が異なる5月と9月に熱応答試験を実施した。その結果,地下水面深度が深い9月の試験結果は,熱交換量が少なく熱応答試験の出口温度が5月より高い値を示した。したがって,本研究で対象とした浅層地盤の見かけ熱伝導率変動メカニズムの要因として,地下水面深度の変動が重要であり,地下水面深度が深くなれば,熱交換資源量が小さくなることが示された。
著者
中田 誠一 野田 明子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

鼻呼吸障害があり夜間に無呼吸が認められる人も鼻手術後には、鼻腔の通気性が有意に改善すると睡眠構築、日中の眠気が有意に改善した.夜間のnasal cycleは昼間活動時に比べて回数が少なく、周期が有意に長かった.
著者
石川 正恒
出版者
(財)田附興風会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1) 脳エネルギー代謝への影響ラットを用いた実験で、single spredding depresion(SD)の負荷では5分以内に刺激局所の大脳皮質にalkalosisを認め、続いて同側大脳皮質全域に広がるacidosisの波が観察された。これらは約20分で回復した。ATPはacidosisの発生回復と一致して枯渇回復を示した。120分間の繰り返しSD刺激ではacidosisとATP枯渇が認められたが、45分以後はこの変化が減弱し、60分以後はほとんどみられなくなった。その後にSDの負荷をおこなっても6時間まではacidosisとAPT枯渇は観察されなかった。2) アポトーシスとの関連SDをあらかじめ負荷しておくことにより、脳虚血負荷による大脳皮質での神経細胞の脱落が抑制された。ネクローシスの割合は負荷群と非負荷群で有意差は認めなかった。3) カルシウムホメオスターシスSD負荷によるカルシウムホメオスターシスの変化は組織化学的には認められなかった。以上より、SDは脳虚血による大脳皮質神経細胞の脱落を防止し、このSDによる虚血耐性はアポトーシス防止によるもとと考えられた。
著者
山田 正子 細山田 康恵 山内 好江 瀬戸 美江 澤田 崇子 藤本 健四郎
出版者
千葉県立保健医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

給食施設等で使用されているメラミン樹脂製食器からのホルムアルデヒドの溶出量および放散量を洗浄回数の影響も含めて知ることを目的に研究を行った。まず、給食施設を対象に、温冷配膳車の設定温度の調査した。その結果、温冷配膳車の保温の設定温度は65℃が最も多く、保冷設定温度は5℃が最も多かった。そこで、メラミン樹脂製食器の加温条件は65℃とした。次に、アセチルアセトン法によりホルムアルデヒドの溶出量の測定を行ったが、測定方法が適さなかったためか測定をすることができなかった。そのため、測定方法を検討し、ホルムアルデヒドを2,4-ジニトロフェニルヒドラジンで誘導体化し測定する方法により測定を継続中である。
著者
水間 正澄
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

知的障害特別支援学校の児童・生徒における運動器障害を調査し、問題点として姿勢、歩容の異常、足部変形が多くみとめられた。それらに対し、担任教諭および保護者に対して運動や靴の指導を中心に行った。実施度にはばらつきがみられたが実施者には改善が見られた。担任教諭に関しては担任の交代時に指導内容の申し送りがなされていないケースが多かった。結果をもとに作成した指導モデルの活用による実施率の向上に期待したい。
著者
松村 和則 伊藤 恵造 佐藤 利明 山本 大策 山本 由美子 村田 周祐 植田 俊
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

(1) 松村和則「人々の『創造力』とは何か-レジャー開発と環境保全への社会学的接近-」(2) 伊藤恵造「スポーツをめぐる住民組織の変容とその論理-郊外化する手賀沼周辺を事例として-」(3) 村田周祐「地域スポーツイベントと地域社会をめぐる関係性と象徴性-手賀沼トライアスロン大会を事例として-」(4) 植田俊「スポーツクラブによる地域環境保全活動の展開-手賀沼ヨットクラブを事例に-」(5) 山本大策「開発主義国家における地域格差と地域社会の能力的貧困:経済地理学からのアプローチ」(6) 山本由美子「ゴルフ場開発問題をめぐる紛争と地域的対応-長野県北安曇郡松川村・神戸原扇状地の事例-」
著者
生田 眞人
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

カール・クラウスは「文芸劇場」で独特の演劇的パフォーマンスを展開した。彼はまた腐敗したマスメディアを批判し、特にその代表はウィーンの「新自由新聞」である。彼は「時代の精神」に対し断固として反対しており、これは好戦的なファシズム(ムソリーニの場合)に、あるいはナチズム(ヒトラーの場合)に向かっていく傾向を見せる時代への批判であった。この抵抗の精神こそ、クラウスが何故に批判的知識人たちの中で、ある種の国際的名声を勝ち得たかの証左である。
著者
松下 慶寿 大川原 真一
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

光触媒反応に最適化されたマイクロチャネル型リアクター、および並列型マイクロ反応デバイスを開発した。酸化・還元による高付加価値化合物合成について、マイクロ反応場と光触媒反応の特性を組み合わせ、その特性を活かして最終生成物の酸化段階を制御することにより、収率、選択性を向上させ、マクロ式バッチ反応系では実現できない環境負荷低減型の新たな反応プロセスを構築できることを示した。
著者
櫻井 治男 齋藤 平 谷口 裕信 濱千代 早由美
出版者
皇學館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、明治維新を転機とする日本社会の変革状況のなか、新政府の下で実施された伊勢神宮の諸改革の影響による伊勢信仰の持続と変容の解明にある。特に神宮と在地とを繋いでいた御師の制度廃止と旧御師家の活動・生活実態につき岩井田家所蔵資料の活用を図った。その結果、①未公開資料約2万点のうち半数の目録化を完了し、資料の展示公開を行うことで研究及び資料の重要性を示した。②旧檀那地域の調査により、在地と岩井田家との関係が1930年代後半まで続き、伊勢信仰の持続性とかかわる点を明確にした。③参宮者の伊勢における宿泊面で、近代的な旅館業との競争原理のなかで旧師職家の役割が衰退する動向を明らかにした。
著者
柴田 里程
出版者
慶応義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は,従来のモデル選択理論をより体系化するとともにニューロネットワーク,ウエーブレットなどこれまでの伝統的な推測法と異なった側面をもつ計算機依存型の推測法に対しても適用可能な形に拡張し,十分実用に耐える根拠と効力を持つ汎用なモデル選択法を確立することを目的として開始した研究である.まず最初の目的は,Springer-Verlag社から依頼されていたモノグラフ"Statistical Model Selection"の執筆を通じて1つの体系的なアプローチを探索することによりかなり達成できた.特に,BICやABICさらにはMDLに代表されるモデル選択法をベイジアンの立場から統一的に扱うことが判明したことは,今後のこの分野のさらなる発展につながるばかりでなく,ニューロネットワークのノード数の選択などに無反省にこれらの方法が適用されている現状に対する警鐘としても重要な意味を持つ結果である.二番目の目的に対しては,主に離散データに対する統計モデルの選択を中心に研究を進めた.多くの計算機依存型の推測法がこのような離散的な値をとるデータを対象としているからである.その結果,連続的な値をとる場合によく用いられるAICに代表されるモデル選択法をそのまま用いるのは必ずしも適切でないことが明らかになった.その主な理由は,離散分布の場合には推定量の分布の漸近分布への収束が極めて遅く,また一様ではないためである.そこでどんな修正が適当かを探索するとともにそれぞれについて検証を重ねた.その結果いわゆるブートストラップ法による修正項の推定がかなり広範囲に有効であることが判明し,そのために必要なアルゴリズムも開発した.さらに,実際問題への適用例として従来から研究対象としてきた7種類の金利時系列を取り上げ,多変量ARモデルのモデル選択の実証研究を行った.そのためには,変量とラグの自由な組合せでのモデル選択を行えるソフトウエアが存在しなかったためその開発から始める必要があった.このソフトウエアを用いて様々な期間についてモデル選択を行ったところ,バブルの時期も含め様々な期間について共通がモデルを選択できることが判明した.これは実際問題での統計的モデル選択の重要性とその有効性を示す結果である.
著者
久保田 和男
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究期間中,前半に手がけたことは,宋都開封における,北宋時代後期の変容の追求であった。変容の要因として,政治の大きな変革があげられる。周知のように北宋神宗時代は,王安石新法の時代であり,その影響が国都の景観にどのような影響を与えたのか特に,城壁を中心に分析した。それと並行して行った作業が,北宋徽宗時代の政治状況と,国都の状況の関係である。この関係も優れて密接なものであることが判明した。次に,行幸という皇帝の政治行為が首都空間といかなる関わりを持つのかという問題点を追求する事になった。北宋時代に分析は止まったが,大変興味深いことに北宋皇帝は,ほとんど首都空間から離れなかった。したがって,首都空間におけるパフォーマンスが重要となる。皇帝は,大体一ヶ月に一度ずつ,首都に点在する道観仏寺を参拝し,民のために幸福をいのる。そして,目的地と宮殿との往復の過程で,皇帝は首都住民にその身体をさらすことになる。そのことは,宋代に発達した情報網によって,地方にももたらされ,皇帝の実在性が普及した。北宋皇帝にとって王権の維持のために,不可欠の行為の一つだった。中国皇帝の伝統的政治行為として田猟という儀礼的狩猟がある。この田猟についても検討した。歴代の北宋皇帝は,田猟を中止することで,逆説的に王権を強化したという興味深い結論に達した。すなわち,軍事より文化を優先する国是を顯かにするためには,田猟は余りふさわしいものとは考えられなかったのである。最後に,北宋開封に15年間だけあった玉清昭応宮という巨大な道観の興亡について検討した。この宮観の再建をめぐって,皇帝権力(皇太后摂政)と宰相をはじめとする官僚集団が真っ向から対立した。結果,皇太后は譲歩して,官僚集団が,皇帝権力の恣意的な行使に対して一定の枠をはめることに成功した事件である。これをきっかけに,北宋の皇帝-官僚の関係は,以前とは変質したと考えられる。