著者
松澤 暢 内田 直希 内田 直希 有吉 慶介 島村 浩平
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アスペリティ(地震性すべりを起こせる領域)の連鎖・連動破壊のしやすさが何に規定されるのかを調べた.その結果,別の大地震の余効滑り(地震の後のゆっくりした滑り)等の擾乱があると連鎖破壊がしやすくなること,二つのアスペリティが隣接していても,破壊の伝播方向と反対側に位置していれば連鎖・連動破壊は生じにくいこと,連動破壊したときのすべり量は個々のアスペリティの破壊履歴に依存することが明らかになった.
著者
衣笠 竜太 谷口 圭吾
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アキレス腱屈曲点を出現させるメカニズムとその機能的意義は解明されていない。そのため、受動的足底屈動作中におけるヒトアキレス腱の屈曲点出現の解剖学的構造とメカニズム解明を目的とした。アキレス腱は、Kager’s fat pad剥離に伴って座屈したが、腹側への曲率は保持されていた。しかしながら、Kager’s fat padの位置に樹脂を入れると、腹側への曲率は消失した。腱のスティフネスやコラーゲン線維は腱の長軸方向に対して均一な分布であった。つまり、アキレス腱の構造自体が屈曲点をもたらす要因であった。屈曲点によるlength gainは腱の弾性よりも力学的効果によってもたらされていた。
著者
角山 照彦 越智 徹
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、学力の多様化に対応するため、動機づけに効果的とされる映画を活用して、習熟度および動機づけに大きな差がある大学生の英語運用能力の向上を目指した英語教材を開発した。開発教材は著作権法上の制約が少ないパブリックドメイン映画2作品を使用しており、映画の同一場面を素材とした難易度の異なるレベル別のe-learning教材であるが、実験の結果、習熟度の異なる3調査群すべてにおいて有意な得点上昇が観測された。
著者
勇 秀憲
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

地域における良好な景観形成のためには,その地域特性や地域住民の意向に合致した総合的な景観評価法の確立が急務である。特に橋梁景観においては,橋を含む景観の形状と色彩がその景観イメージ・感性に大きな影響を及ぼす。本研究は,橋梁景観の形状特性と色彩特性を相互に考慮し,橋梁新設・改修時や再塗装時などでの色彩評価・選定のための合理的で定量的な工学指標を含む景観評価法・設計法の確立を目標とするものである。平成25年度は,平成24年度に提案した橋梁景観を構成する背景と橋梁の形状に着目した橋梁景観評価法に関し,背景を含む橋梁景観のカラー画像・白黒画像および背景を取り除いた橋梁のみの白黒画像の3種類の画像を対象に,それぞれSDアンケート調査と因子分析の結果から,色彩の有無と背景の有無によるイメージの変化を多変量解析により定量的に調べた。因子分析とクラスター分析を用いてイメージの変化の分類を行い,数量化II類を用いてイメージの変化の分類と景観属性(構造形式,架設場所など)との相互関連性を調べた。色彩の有無や背景の有無によるイメージの変化は,ともにその景観要素(構造形式,架設場所など)に依存することが示された。また,平成23・24年度の研究で提案した色彩評価法の適用事例として,主な世界の絶景風景を対象に,それらの「美しさ」のイメージの分析を実施した。SDアンケートを実施し因子分析から,イメージ特性,主色彩および地域との相互関係を評価し,本色彩評価法の妥当性を示した。なお,主色彩は本経費によるカラーイメージ分析ソフトウェアと色彩色差計により測色し定量化した。本研究提案の色彩評価法,カラーイメージ評価法およびフラクタル解析を連携させることで,本研究を基にして,各種景観に対し色彩特性と形状特性を総合的に配慮できる新しい定量的な景観設計システムの構築を目指すことがきるものと考える。
著者
伊東 学 赤澤 敏之 放生 憲博
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

超音波溶解析出法により市販多孔性バイオセラミックスを部分溶解後、材料表面にリン酸カルシウム微結晶を析出させ、骨形成蛋白質(rhBMP-2)の吸着徐放性を制御し、生体吸収性と骨誘導能に優れたリン酸カルシウム系セラミックスを開発した。バイオセラミックスの表面改質方法として、輸液中の超音波処理技術を確立し、その抗生物質(セファゾリン)吸着徐放性を解明した。組織誘導再生に適当な生体模倣性アパタイト/コラーゲン複合材料を合成し、良好な生体吸収性を立証した。臨床感染巣の新しい定量的評価法の確立には、8例の難治性脊椎感染患者に対して、FDG-PETCTによる感染重症度マッピングの作成を行った。
著者
浅川 雅美 岡野 雅雄
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

464名の大学生を対象に食品CMを用いた視聴実験を行い、(1)「伝達内容」と「Aad」の間に及ぼす「情報的価値」の媒介機能、(2)「視聴印象」と「情報的価値」が「Aad」に及ぼす影響、について検討した。結果は以下の通りである。(1)「情報的価値」が高いケースは低いケースと比べて「Aad」の評定が高い、(2)「伝達内容」と「Aad」の間には、「伝達内容→情報的価値→視聴印象→Aad」と「伝達内容→情報的価値→Aad」の二つの反応プロセスがある、ことが推察された。
著者
山崎 俊明 横川 正美 立野 勝彦
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

リハビリテーション領域における重要な課題である廃用性筋萎縮の進行予防に焦点を絞り、筋萎縮進行中のストレッチ効果、および筋肥大効果が報告されているアドレナリン受容体作用薬(clenbuterol ; Cb)投与との併用効果を調べた。廃用性筋萎縮は、後肢懸垂法により作成し、2週間の実験期間を設定した。実験動物としてWistar系ラットを使い5群に分け、通常飼育群(CON)の他4群を実験群とした。実験群には後肢懸垂処置を行い、後肢懸垂群(HU)、1日1時間ストレッチ実施群(STR)、Cb投与群(Cb)およびストレッチとCb投与の併用群(STR+Cb)とした。分析は、形態評価および機能的評価を行った。タイプI線維断面積は、HU群はCON群の42%に減少したが、Cb群は81%、STR群は58%、STR+Cb群は74%であった。ストレッチ効果を認めたが、併用効果は認められなかった。筋線維タイプ構成比率は、Cb群で有意なタイプII線維比率の増加を認めたが、STR+Cb群では変化なく併用の有用性が示唆された。Cb群およびSTR+Cb群の筋収縮時間はCON群より有意に短縮し、HU群およびSTR群の収縮時間はCON群と差がないことから、Cb投与による悪影響として速筋化傾向が示唆された。単位断面積あたりの単収縮張力はSTR群がCON群と差がなく、しかもCb群より有意に大きい結果から筋伸張の効果が示唆された。実験群の筋原線維タンパク量(MP)は、CON群に比し有意に減少した。実験群間では、Cb群およびSTR+Cb群のMPがHU群およびSTR群より有意に大きく、Cb投与の効果が示唆された。以上の結果から、廃用性筋萎縮進行中のラットヒラメ筋に対する予防的介入方法として、Cb投与による断面積減少の抑制と、筋ストレッチによる伸張刺激の併用効果の有用性が示唆された。
著者
勝 国興
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1508年に竣工したヴェネツィアの「ドイツ人商館」(現中央郵便局)の外壁には、1507年から1510年までに制作されたと考えられるフレスコ画があったが、僅かな断片を除いて消滅してしまった。これを断片の様式や後世の模刻版画、そして文献史料等を加えて推測すると、概ね次のようになるだろう。大運河側壁面(西壁)=ジョルジョーネ制作:《裸婦立像》(ヴェネツィア、アカデミア美術館)、《翼をつけたプットー》(ソルトウッド城)、《裸婦立像》等のザネッティ版画、《天使にかしずく女性》(ヴァザーリ)、《戦利品》(リドルフィ)等々。メルチェリーア側(南壁)=ティツィアーノ制作:《ユディト》(ヴェネツィア、フランケッティ美術館)、《ギガンテス怪獣の闘い》等の断片(同)、《カルツァ・クラブ会員》等のザネット版画等々。しかし配置すべき壁面や壁面内の位置には不明な点が多い。今回の調査によって《ユディト》断片と南玄関壁をつぶさに観察し、両者の合成写真を作成することができたのは大きな収穫だった。そしてとの図像は《ユスティツィア》(正義)とする解釈の方がより適切であることも確認できた。またこの人物像は、ジョルジョーネの《裸婦立像》(西壁)がそうであるように、画家ティツィアーノの絵画様式を典型的に示している。同時にそれはティツィアーノ芸術その後の発展への出発点ともなるもので、この研究課題をさらにヴェネツィア絵画の発展史の研究へ向けさせることともなった。
著者
小寺 隆幸 浪川 幸彦 小田切 忠人 伊禮 三之 井上 正允 梅原 利夫
出版者
京都橘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

PISAの数学的リテラシー論の枠組みと調査問題を分析し、さらにPISAに影響を及ぼしたニスによるデンマークの数学教育改革について研究した。PISAの数学的リテラシーは単なる活用ではなく、現実の問題を数学化して考える能力であるが、テストで測りうるのはその断片にすぎない。重要なことはテスト結果ではなく、現実の問題と向き合い、思索し、仲間と対話をする授業を創造することである。日本には量を基礎にする数学教育の豊かな蓄積があり、それを発展させることが求められる。ただこれまでは全員が共通の目標を目指してきたが、授業の中に個々の子どもの数学的コンピテンシーを伸ばすという視点をも位置づける必要がある。
著者
加藤 曜子 安部 計彦 三上 邦彦 畠山 由佳子
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

わが国で扱う児童虐待事例の半数はネグレクトであり、その多くは子どもが親と住み続ける。そのため市町村ベースにした虐待再発防止のための支援のあり方が重要な課題となる。本研究においては、1.地域ネットワークが活発な10都市で在宅支援するネグレクト163事例について、在宅アセスメント指標項目及び社会資源項目を利用し量的分析を実施した。虐待の程度、支援期間、親の問題意識、要保護児童対策地域協議会支援から分析した。ネグレクト事例の86.5%は中度以下で支援期間は長かった。児童は総じて年齢が上がるについて心身や行動状況は悪化していた。親の問題意識が乏しく拒否的であれば、支援ネットワークが組まれにくく、適切なサービスが届きにくかった。2.質的分析では成功事例を分析し援助プロセスを明確にした。3.以上から要保護児童・ネグレクト家庭への支援の基本姿勢、支援のために必要な社会資源を分類、重症度からみた支援領域、要保護児童対策地域協議会の支援ネットワークとしてかかわる関係機関連携を年齢別に16タイプ提出した。
著者
波多野 直哉
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

がんは日本人の死亡原因の第1位である。この予防には、がんの疑いのある方を早期発見し、病院で精密検査を受けることが重要である。簡便で低コストかつ高感度な早期スクリーニング法として、がん患者特有の血中代謝物のプロファイルを用いることを考えた。このため、質量分析計を用いたヒト血清メタボロミクス解析法の確立を行った。これを、膵臓がん患者と健常者の数十例の血清サンプルで実施したところ、複数の代謝物で統計的に有意な変動が見られた。さらに、この代謝物プロファイルの変化のメカニズムを明らかにするため、質量分析計を用いた代謝酵素を網羅的に比較定量するプロテオミクス法を確立した。
著者
伊原 靖二
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

竹炭を活用した生活排水の浄化と再利用を目的として、竹炭による環境阻害物質等の吸着作用を実験的理論的に検討した結果、以下の知見が得られた。(1)竹炭よる界面潜性剤含有排水の吸着処理に関する研究…煙道温度が異なる7種類の竹炭と活性炭を吸着剤に,界面活性剤の平衡吸着実験を行ったところ、竹炭は活性炭ほどの吸着作用は見られなかったが,界面活性剤に対して選択的な吸着作用が見られた。(2)環境阻害物質含有排水の吸着処理に及ぼす各種吸着剤の効果…フェノールおよびビスフェノールAの竹炭を含む各種吸着剤への吸着実験を試み、その性能を比較検討した。竹炭及び3種のポリシクロデキストリンビーズCDPB(α、β、γ-CDPB)による吸着実験から、CDPBへのビスフェノールAの吸着では、最大吸着量はγ-CDPB、吸着平衡定数ではβ-で最も高い値を示した。また熱力学パラメーターの結果から、3種の吸着はすべて発熱反応であり、PCDB自由エネルギー値より、R-CDPBの吸着が最も強いことが示唆された。(3)竹炭及び各種木質炭の物性と吸着能…竹炭及びかぼちゃや松ぼっくり等の天然の木質炭を用いて環境阻害物質の除去率を測定した。竹炭のように、比表面積も大きかった松ぼっくりは比較的どの吸着質も吸着していた。細孔の大きさと分子の大きさが吸着に影響を与えており、細孔が溶けていたり、潰れてしまっている、てっか梨やなすび、もともと細孔の数が少ない柿やまめには、分子が吸着しにくく、除去率が低くなったと考えられる。(4)竹炭及び改質竹炭による環境汚染物質の吸着処理…真竹及び備長竹炭にシクロデキストリンをコーティングした複合体を用いて、吸着能を比較検討した。その結果、真竹ではシクロデキストリンをコーティングすることで、一部を除いて除去率が高くなる傾向が得られ、備長竹炭では減少、またはほぼ変わらないという結果が得られた。この結果から、改質竹炭の吸着性能には分子サイズが影響していることが示唆された。
著者
高橋 ひとみ 衞藤 隆 川端 秀仁
出版者
桃山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

学校教育を円滑に進めるには、遠見視力と近見視力が必要である。現行の遠見視力検査のみでは、多様な「視力の問題」を抱える子どもの対処は不可能であることを明らかにし、教育現場へ近見視力検査を導入するために、時間・労力・費用が最少で、信憑性がある簡易近見視力検査を考案した。視力低下予防と視力改善の効果が認められた眼精疲労改善トレーニングと簡易近見視力検査の全国的な普及を図りながら、疫学的データー収集を行った。
著者
出沢 明 三木 浩
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

接触型拡大視内視鏡は25-150倍拡大視が可能で顕微鏡と同じ拡大になり明るい解像力が獲得される。手術の際に神経性間欠性跛行の神経根上の血行動態を評価することが有用な手技であったので報告する。その記録はDVDに記録し後にIPlaboのソフトを関発し解析をした。間歇性跛行は神経根上の血流障害が注目されており今回の研究でプロスタグランヂンの末梢血管からの注入や末梢神経の電気刺激でも血流量(流速、血管径)の増化がみられた。以上接触型拡大視内視鏡は神経根上の血行動態を容易に生理的に測定が可能で他の関節の滑膜病変を観察することに応用されると思われる。29例の間欠性跛行を伴った腰部脊柱管狭窄症の馬尾神経根の微小循環動態を接触型拡大視内視鏡を用いて生理的に近い状態で観察し、腰椎椎体間固定術する際の神経根上の微小循環の血管径や赤血球の流速の変化と定性的変化について評価する。その目的は腰部脊柱管狭窄症患者の神経根の微小循環を観察し、後方腰椎椎体間固定術(posterior lumbar interbody fusion ; PLIF)の際に神経根を内側に展関する前後の神経根上の微小循環の変化を検討することである。対象は腰部脊柱管狭窄症患者でPLIFの手術的治療となった29例(男性15女性14;平均年齢56才)を対象とした。検索した傷害神経根はL5が26例、S1が3例である。傷害神経根上の微小循環を測定し次に神経根をretractしてlumbar interbody fusion施行後に再度同じ部位で測定する。接触型内視鏡を用いた解析はビデオフレームメモリから血球を自動的に認識して流速と血管径を自動的に測定するシステムを作成した。血管内径が100μm以下の細動静脈と100μm以上の15ヶ所で血管径と赤血球の流速度の解析を行った。また定性的変化について評価した。神経根の臨床上の変化はMacnab's criteriaに従って評価した。150倍のcontact endoscopesは29例全例が約20μまでの血管内の血球の動態観察が可能であった。血球と血漿が分離して流れる血漿分離流(plasma skimming)は展開前29例中3例に観察され展開後に8例〔27.6%〕に増えた〔全例血管径100μ以下〕。赤血球の荷電状態の変化により赤血球が一塊となって血漿中を流れる現象のIEA(intravascular erythrocyte agglutination)は展関後100μ以上の血管で3例に認められた。神経根展開前後で血管径100μ以上の血管で赤血球の流速が平均26%〔p<0.005〕減少し、血管径は5%の上昇がみられたが統計学的に有意差は見られない。血管径が100μ以下では血流速度は5%遅れ、血管径は2%の拡大がみられたが統計的有意差は無かった。接触型拡大視内視鏡(contact endoscope)を用いて観察しえた展開前後の神経根の微小循環動態では血管径の大きさに関らず赤血球の流速の低下が認められた。
著者
堀江 薫 村上 雄太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、日本語、韓国語、ベトナム語という「漢字文化圏」に属し、「膠着語」(日韓語)、「孤立語」(ベトナム語)という異なる形態類型論的特徴を持つ3つの言語における、語彙・文法構造に反映した言語接触現象の実態を明らかにすることを目的として3年間の研究を行ってきた。3年間の研究活動は、(I)「ベトナムにおける現地調査」(II)「国内、国際学会における研究発表」(III)「国内外の学術誌、論文集における成果発表」という3点を中心に行われた。(I)に関しては、SARSの流行などのため、当初の計画通り毎年共同で実施することはできなかったが、平成17年3月には代表者(堀江)、分担者(村上)でホーチミン、フエにおいて共同調査、資料収集を行うことができた。(II)に関しては平成15年11月8日に「東アジア言語・東南アジア言語の多機能化の共通性と相違点」フランス語談話会ワークショップ「文法化をめぐって」(京都会館)で共同の研究発表(招聘)を行った。また、この他に、関西言語学会、日本言語学会、社会言語科学会、言語処理学会、言語科学会(JSLS)、日本認知言語学会(JCLA)等での研究発表(招請を含む)を行った。国際学会としては、国際日韓言語学会(JK)、概念構造・談話・言語学会(CSDL)、国際認知言語学会(ICLC)、国際語用論学会(IPrA)、国際文法化学会(NRG3)、国際実用日本語学会(ICPLJ)等での研究発表を行った。(III)に関しては、「11.研究発表」にあげたものをその一端とする論文発表を国内、国外において行った。これらの研究活動の結果、日韓語とベトナム語の間には、言語接触、借用語、文法化に関して形態類型論的な相違を反映した顕著な相違が見られることが分かった。他動性(transitivity)という現象を例に取ると、日韓語は「対格助詞」という助詞に関して「対象」である名詞(句)をマークする用法から「逆接」の名詞節をマークする用法を派生するプロセスが見られるのに対して、ベトナム語や中国語においては、基本的には語順によって目的語をマークするが、それに加えて、「物理的動作」を表す他動詞が「介詞」的な品詞に機能的に転じるという現象が見られるという平行性が観察された。この研究成果は「11.研究発表」の最後にあげた「堀江・村上(印刷中)」として公表することになった。
著者
宮本 俊幸
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

高信頼ソフトウェアの開発は,安心・安全な社会を実現する上で必要不可欠である。本研究では,抽象的な要求仕様から分散システムを構成するモジュールの振る舞いモデルを自動合成する問題に取り組んだ。要求仕様から振る舞いモデルを自動合成するためのペトリネットを用いた手法を提案した。また,提案手法をUMLモデリングツールのプラグインとしてソフトウェア実装した。提案手法はモデルの理解しやすさの点で既存手法より優れていた。
著者
高橋 達也 深尾 彰 藤盛 啓成 山下 俊一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

マーシャル諸島共和国は、34の環礁と火山島が太平洋中部に点在して構成されている島国である。ここでは、合衆国によって1946-58年の間に66回の核兵器実験が行われた。多くの住民は放射性ヨードやセシウムなどを含んだ放射性降下物を呼吸器あるいは消化器からを体内に取り込んだ。この体内からの放射線被曝(内部被曝)による晩期障害として甲状腺がん罹患増加が予測された。そこで1993年から、現地住民の甲状腺検診を開始し4762名の被曝住民のコホートを確立した。そのコホートのベースライン情報を用いた横断研究では、(1)生年がビキニ水爆実験(1954年)以前の年齢層では甲状腺がん有病率が1.5%と極めて高値である、(2)甲状腺がん有病率は被曝推定線量と関連が認められる可能性があるという結果を得た。しかし、低線量被曝晩期効果としての甲状腺がん有病率と被曝量との関連について統計学的に明確な結論を得ることができなかった。この原因の一つが、放射線被爆量推定の精度の低さと考えられた。そこで、本研究ではこのコホートの個人別甲状腺放射線被曝量を推定した。現在のところ、(1)1954年のブラボー実験で被曝したロンッゲラップ環礁住民の被曝線量を基にした簡易推定、(2)各環礁の残留放射性セシウム量を基にした被曝線量率を考慮しないモデルによる推定、(3)各環礁の残留放射性セシウム量を基にした被曝線量率を考慮したモデルによる推定を行った。(1)の推定を用いた研究結果では約5cGyを超える被曝量の集団では明瞭な線量反応関係が得られた。(2)、(3)の推定を用いたモデルでは統計学手に有意ではないが放射線被曝量と甲状腺がん有病率の間に両反応関係を認めた。今後、追跡で得られた総死亡と甲状腺がん罹患を用いた検討を行う予定である。
著者
韓 敏
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ライフヒストリーの手法を用い、安徽省都市部と農村の農民、行政幹部、風水師、キリスト教徒、輿の職人と老人ホーム経営者とその家族の生活実践を調査し、社会主義革命の意義とローバル化による中国の社会変化を考察した。また、安徽省の調査成果と、瀋陽、湖南、広東、福建などの調査データを比較し、共通項目:出産、命名、躾け、学校教育、仕事、消費、交友、恋愛、結婚、家族、子育て、扶養、エージング、死、祭祀を通して、人類学におけるライフヒストリー・アプローチの有効性を明らかにした。
著者
横地 優子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

インド中世前期のシヴァ教研究は、この数十年の間に新資料の発見が相次ぎ大きく進展している。本研究者はそうした新資料の中から、一般信徒向けにシヴァ神話を初めて体系化した『スカンダプラーナ』の校訂研究を行う共同プロジェクトに参加してきたが、本研究課題ではその成果として第31~69章の校訂研究を第2B巻(共著)と第3巻(単著)として刊行し、成立年代等の基礎的研究をほぼ完了した。また、同文献に言及される北インドのシヴァ教聖地の現地調査を行い、文献成立時のシヴァ教の広がりを遺跡等の歴史資料で跡付けた。加えて、長編詩『カッピナ王の興隆』においてシヴァ教優位の下に仏教との共存が提唱されていることを解明した。
著者
廣藤 卓雄 米田 雅裕 内藤 徹 武内 哲二 山田 和彦 鈴木 奈央 松葉 健一 吉兼 透
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高齢者肺炎の多くは誤嚥性と言われ、予防には口腔ケアが効果的とされている。施設における誤嚥性肺炎の発症につき、その頻度、介護度との関係、発症の時期を検討し、口腔ケアとの関係や、口腔内細菌の誤嚥性肺炎への関与の一部を明らかにした。また、同様の方法を用いて、高齢者・障害者の方に多く認められる口臭との関連性についても心理的、生活習慣的側面を踏まえて細菌学的に解析した。