著者
楠堀 誠司 吉田 和人 関矢 寛史
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では卓球のショットについて分析を行った.まず打球速度の分析を行い,最大速度で打球した場合にボールが卓球台を横切る時間は人間の全身反応時間の限界値(0.1sec)に相当することを見出した.また,無回転(the theoretical spin-free:TSF)ボールの理論的軌跡を算出し,ショット軌跡に対するボールスピンのはたらきを明らかにした.
著者
前田 寛 岡内 優明
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,トップスピンのボールを打つ時のラケットスイング動作が,手関節に与える負担の割合をグリップ角度の違いという観点から明らかにし,手首に障害を起こさないラケットのスイング方法を探ろうとした.そこで,手関節の3軸周りのオイラー角と,ラケットスロート部に生じる撓みから手関節にかかるトルクを測定した.その結果,手関節にかかる最大トルクはグリップ角度の違いに関わらず同様な値を示した.しかし,ウエスタングリップ,所謂厚いグリップでは,オイラー角の変化をみると回内運動が主に使われており,回内運動はパワー特性にすぐれているため,手関節に負担が小さいと考えられた.
著者
秋永 一枝 上野 和昭 坂本 清恵 田中 ゆかり 松永 修一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「複合メディアによる東京弁アーカイブの構築と電子的公開」の目的は、旧来の研究では埋もれてしまう可能性のあった東京弁としての貴重な一次資料を、汎く利用できるような形にして蘇らせようとするものである。秋永の聞き取りによるアクセントなどの言語情報が付加した自然度の高い談話資料として、文字化データと音声データをセットで利用できるよう電子化し、談話資料、アクセント資料、東京方言語彙資料のデータベースとしても利用できる基礎資料を完成させることができた。
著者
藤井 信幸 富永 憲生 大森 一宏 辻 智佐子 中島 裕喜 張 楓
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

特定地域に集積する多様な在来産業・中小企業について、高度成長期とその後への変化を比較し、その変容過程を明らかにするために事例研究を積み重ねた。事例として取り上げたのは、陶磁器業、木材・木製品工業、綿工業、機械工業ならびに電球工業である。これらの事例研究から、第一に、大量生産システムから多品種少量生産への転換の正否が、1970 年代以降の産地の盛衰に直結した、第二に、この転換の成功が必ずしも地域の雇用の増加には結びつかなかったことなどの事実が判明した
著者
保坂 高殿 和泉 ちえ
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究においては、古典期アテナイ、共和政末期から帝政初期にかけてのローマ、そしてユダヤ人およびキリスト教会の伝統主義がそれぞれどのような歴史的経緯で形成し、その後、特に文化的混淆と相互干渉が顕著な形で現れた帝政後期に至ってどのような展開を見せたのか、その各々の伝統主義の変容に関する基礎的データを収集し、一定の見取り図を作成することができた。1.社会集団に対するアテナイとローマの対処姿勢における顕著な対照性の原因を探るべく、双方の伝統主義の成立過程を精査した結果、前者の伝統主義成立には多分に政治的動機が、後者のそれには民族的同一性意識を形成する文化的動機が深く関与することが判明した。したがって異質文化に対する前五世紀後半アテナイの弾圧の激しさと不寛容さは、当時の政治力学を反映する一時的なものにすぎず、長期間に渡り継承されることはなかった。2.それに対し共和政末期にヘレニズム化に対する反動として生まれたローマの伝統主義は多分に文化的動機に起因するため、異文化に対する弾圧は外観上は穏健な形態をとり、帝国の広域支配という現実も手伝って実質的に寛容であり続けたが、それは民族的同一性意識を規定する通奏低音として長く彼らの意識下に留まった。この点は1世紀から4世紀にかけての帝国のキリスト教迫害においても確認された。3.一方ユダヤ・キリスト教の伝統主義も第一義的には文化的に規定されていたため、大迫害後の帝国と教会の接近時代においても両者の関係に実質的変化はなく、対立は継続された。ただし民間では文化的混淆が進捗し、双方の指導者は文化的異物の峻別に尽力するも成功せず、時代は"異教的中世"へと突入する。4.上記の各々の文脈が描出する伝統主義の変容の軌跡は、学問技芸の受容という側面においても相似形を呈することが確認された。前五世紀後半アテナイにおける自然探求の受容を巡る諸問題、ヘレニズム期アレクサンドリアおよびローマ帝政期におけるギリシア的普遍教養の具体的変容に焦点をあて、古典古代世界の伝統主義の変容に関する個別的例証を提示した。
著者
金 聖哲
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

北朝鮮の核外交は、その体制の不調和の結果であると同時に、まさに開放の寸前である体制をわずらわす対外的ディレンマの結果である。体制の内的分化は、非公式的領域(官僚腐敗、闇経済、個人主義など)を生み出して、体制運営全体に不調和をもたらす結果となった。こうした状況の中、北朝鮮は、これまでにない大打撃を被った経済の回復のための必死の翌力をして、その努力は、2002年7月に採択され、以降継続している新たな経済対策として結実した。しかしながら、(日本と韓国を通じて)回り道をして米国にアプローチするという外交が失敗に帰し、以来、北朝鮮は核のゲームに取り込まれてしまっている。2006年10月9日の核実験により絶頂に達した北朝鮮の挑発的な外交は、主要敵国である米国との交渉を目的としたものだった。朝鮮半島における米国の核のプレゼンスと、冷戦期に繰り返し脅威となった核兵器使用の可能性は、北朝鮮の核開発プログラムへの動機に火をつけたのである。しかしながら、北朝鮮の核保有国への道のりをすべて理解するためには、1990年代の決定的に重要ないくつかのターニング・ポイント、すなわちソ連の崩壊と北朝鮮の飢饉、についての分析が必要である。これらの事態に対処するために、国家の存続が最も緊急な事柄となり、次に、この状況が先軍政治を誕生させたのである。米国との戦争(朝鮮戦争)とその後の軍事力の増強の経験のために、北朝鮮にとって、厳しい状況に適応していく中で、軍の重要性を強調することは自然なことであった。先軍政治は、今や国内及び対外政策を貫き通すことになった。北朝鮮の核兵器開発と核実験は、このことがもたらした結果の頂点であると言える。北朝鮮の挑発的な政策は、外交ゲームの中で繰り返された損失への反応によって発生した生存目的の抑止力であると言える。合理的選択に関する心理学的分析によると、その認識した損失は、リスクを避ける選択の代わりにリスクを冒す選択を行為主体に強いる。このように、体制全般の不調和の中で発生した適応過程における失敗が、北朝鮮として「一か八か」(double-or-nothing)的な政策に依存させる役割を担った。同時に、金正日のリーダーシップの特性、すなわち、国内及び対外政策のすべてに面において細心過ぎるほどの関心を向けるような特性を考慮すると、間違いなく、核ゲームは彼の選択であったはずだ。政治家のリーダーシップをコンピューター・オペレーターになぞらえることが、この状況では適切であろう。様々なタイプのコンピューター・プログラムのオペレーターとしての金正日は、最高意思決定者であり、しかもなお、彼の決定は、ハードウェアと、より深い背景で行われでいるため外から見えないオペレーションの両方に依拠しなければならなかったのである。金正日はその背景要因に変化をもたらすため自分の影響力を発揮してきた一方で、その背景要因が今や直近の政策的選択の幅を制約しているのである。
著者
中務 哲郎 高橋 宏幸
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

古代ギリシア・ローマ喜劇と狂言はまったく異なる文化伝統の中で生成発展したが、同時代に材をとり、滑稽な言葉・しぐさ・趣向を用いて笑いの劇を目指すという共通点をもつ。両ジャンルに共通して現れる仲裁人のモチーフ、仕方話の趣向等がいかなる社会制度から生まれたかを考察することにより、両ジャンルの特性を解明した。と同時に、芝居(企み、変装)の意義と効果、虚と実のすり替え、等を具体的な作品に即して分析することにより、喜劇的なるものの本質が両ジャンルに共通することも明らかにした。
著者
THOMAS P. Gill
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

2002年夏、ホームレス自立支援法が成立した。これは初めて日本政府が野宿者問題の存在を明確に認め、具体的な対策に取り組み始めたことを意味する。この研究プロジェクトの目的の一つは、こうした動きを受けて、日本の大都市におけるホームレス事情を調査し、各地のホームレス対策と施設の運営を比較し、さらに当事者レベルでの対策のインパクトを考察することにあった。もう一つの目的は、ホームレス問題に関して日本に比べ長い歴史と経験を有するアメリカとイギリスのホームレス対策を調べて、各国と都市のホームレス対策の共通点・相違点を確認した上で、日本のホームレス対策の特徴を抽出し、問題点を明らかにすることである。本プロジェクトにおいては、日本では東京、横浜、名古屋、大阪等で、アメリカではロサンジェルスとニューヘーブン、イギリスではリバプール、ロンドンとオックスフォードでフィールドワークを行った。結論として言えるのは日本に関しては、まず(1)地方による差異が大きく、「大阪モデル」、「東京モデル」、「横浜モデル」と呼ぶことが出来る、少なくとも三つの対策のパターンが見られることである。同じ「自立支援センター」という名称を用いながらも、各地の施設の滞在期間・入所と退所の条件設定・運営方式・再利用のルールはさまざまで、流行語になった「自立支援」は各都市で独自の解釈をされている。さらに(2)各都市では試行錯誤の過程で対策の内容と実施が常に変化しつつある。ホームレス対策は日本では比較的新しい社会問題であることから、行政の対応は現段階ではまだ確定していないといえよう。海外との比較に関しては、(1)イギリスでは2000年から集中的な対策を行われ、路上生活者の人口を数値的には激減させることに成功したが、その一方、ホームレス支援は一大事業に膨張し、シェルター運営の現場を検証すると根強い問題が多く、必ずしも成功例とは言いがたい。(2)アメリカでも各種の大規模なホームレス支援事業が活発に行われているが、これは行政・NGO・キリスト教等の教会がそれぞれ独自の理念、基準で実施しているもので、新鮮なアプローチも見られるがホームレス人口は相変わらず日本のそれよりずっと大きく、総合対策がないというのは致命的な問題に見える。
著者
合場 敬子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

プロテストに合格すると、一応一人前のレスラーとなる。その時の自分の体について、自覚的にその変化を捉えているレスラーは少なかった。これは、デビューして数年までは、先輩との厳しい上下関係の中で、日々の雑用や練習に追われてしまい、自分の身体やプロレスのことをあまり考える余裕がない状況にあったからと推測できる。自分の身体のあり方に自覚的になっていたのは、デビューの後、キャリアを積む過程においてであった。多くのレスラーは、女らしい身体とレスラーとして目指す身体を対立するものとして捉えていた。レスラーであることを優先して、そのための身体をまず第一に考え、女らしい身体の獲得をあきらめている。しかし、そのあきらめに悲壮感はない。なぜなら、レスラーとしての身体を持ち、プロレスができることの方が彼女たちにとって重要だからである。プロレスでは、相手も自分の技を受けてくれる、自分も相手の技をうけるという信頼関係が必要である。したがって、プロレスの闘いは相手をとにかく打ち倒すことではないので、レスラーは自分を「強い」と意識することが希薄になっている。レスラーのジェンダー・アイデンティティの核はレスラーになる以前から形成されたように思われる。自分の体をレスラーの体に変容させることは、彼女たちのジェンダー・アイデンティティにはそれほど影響を与えていないと思われる。一方、ファンのジェンダー・アイデンティティへのプロレスの影響も、確認できなかった。多くの男性ファンは、女性として魅力ある身体とレスラーの身体を区別して把握している。多くの女性ファンは自分がなりたい身体のイメージを、自分の好きなレスラーの体型とは別に持っている。多くのファンは、リングを降りた選手に、「女らしさ」を見ている。対称的に、プロレスをしている女子レスラーは、ファンの視点の中では、ジェンダーを越えた存在として捉えられている傾向があった。
著者
小林 満
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1613年の「カステッリ宛の書簡」のなかでガリレオは聖書と自然学の関係を整理してコペルニクス説のほうがアリストテレス・プトレマイオス体系よりも優位にあることを証明したが、その論理の攻撃性もあって、彼は宗教的な論争に巻き込まれてしまう。その反省から、『偽金鑑識官』から『世界の二大体系についての対話』へと執筆活動が展開していくにつれ、彼の説得の技術は、論理的に敵を打ち負かすだけでなく、「たとえ話」をも導入して、読者をより引き込むものへと進化していった。17世紀の前半には「感覚」を重要視する文化的風土があった。たとえば「感覚に基づく経験と必然的な論証」を自然学の研究手段と考えるガリレオ、あらゆる事物には感覚が備わっているという視点から自然を説明する哲学者カンパネッラ、そして五感を通した快楽を主題としたバロック詩人マリーノである。『アドーネ』のなかでマリーノは、望遠鏡を「遠くにあっても、対象を非常に拡大して、誰の感覚にでも近づける道具」と位置づけているとおり、「感覚」に奉仕する新器具の発明者としてのガリレオを賛美した。また、海の航海者=地理的征服者コロンブスと天空の航海者=自然哲学的征服者ガリレオという2人のイタリア人が新時代の象徴として描かれており、ペトラルカの『カンツォニエーレ』所収「わがイタリアよ、たとえ語るのがむだでも」からレオパルディの『カンティ』所収「アンジェロ・マイヘ」に到るイタリアの偉人たちを引き合いに出しながらイタリアを憂える詩のバロック的変奏をなしているとも考えられる。またマリー・ド・メディシスの招聰によってパリの宮廷に登ったマリーノがこの作品をフランスで発表したことを考え合わせると、新旧論争の前段階の重要な作品と位置づけることも可能であろう。ガリレオの存在がいかに国境や領域を越えた「事件」であったかの証左と言える。
著者
岡元 行雄 長屋 昭義 松浦 和幸 福留 瑠美
出版者
兵庫県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

北淡町の地区別の特徴をまとめると、室津地区は一番祭りに熱心な地区であり、祭りを即座に復活させ、神社の再建も工事に着手しており、祭りを語る住民の熱心さは群を抜いている。育波も室津に次いで熱心で、厄年の加も熱心におこなっている。斗ノ内、浅野南、水越は室津ほどではないが、町をあげて熱心に取り組んでいる。富島や野島は激震地であっただけに、祭りの復活が十分ではなかったし、祭りを語る住民の熱意はあまり伝わってこなかった。祭りを通しての地域のまとまりは弱くなっている。平成14年度は野島地区を中心に調査を行った。野島神社は震災で全壊し、現在も仮神殿があるのみで再建の見通しは立っていない。隣のお寺も全壊したが、再建に向けて檀家で話し合いが続いている。神社よりもお寺の再建が優先されるのはどの地区も同じである。野島神社の氏子は野島8地区と仁井の舟木地区の9地区からなっている。壇尻があるのは江崎、平林、常磐、野島ひきの浦、舟木である。この2~3年野島神社の祭りが復活しており、野島神社のお膝元である野島ひきの浦の壇尻は祭りに参加することがあるが、他の地区は祭りに参加していない。震災で死者が出た地区ということもあり、また過疎化が進んだ地区ということもあり、祭りの復興はあまり進んでいない。この地区も、伊勢講、金比羅講、山浄講、天皇講などの宗教活動が盛んであるが、その宗教行事も、震災後に講を引き受けた家での開催から集会所へ場所を移動させたり、日曜日にまとめて開催したりと簡素化、スリム化を図った地区が目立つ。
著者
海老原 健 阿部 恵 日下部 徹 青谷 大介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

脂肪萎縮症においてレプチン治療が糖尿病、高脂血症、脂肪肝などの代謝異常を改善することをヒトにおいて明らかにしてきた。そこで本研究では、脂肪萎縮症以外にもより一般的な1型および2型糖尿病、高脂血症、脂肪肝において、レプチンが治療薬として有用であることを明らかにした。また、アミリンおよびGLP-1製剤が糖脂質代謝改善作用におけるレプチン抵抗性改善作用を発揮することを明らかにし、レプチン抵抗性状態における併用療法の有用性を示した。
著者
石原 金由 多田 志麻子
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では,現代の子どもの睡眠習慣に焦点を当て,睡眠短縮,就床時刻の後退(夜更かし)が心身の健康状態にどのような影響を与えているかを検討することを目的としていた.研究計画に沿って,当該研究期間に2つの実験的研究,フィールド研究,小学校からの委託調査研究が実施された.概要は以下のとおりである:実験研究1 3名の児童・生徒を対象に縦断的に実施されている.1名につき3日間の測定日を設け,最初の2日は基準日,3日目は2時間睡眠を短縮する実験日であった.基準日の一方は,授業期間と同様の就床・起床時刻を設定し,他は授業期間よりも1〜1.5時間睡眠時間を延長した.測定された指標は,入眠潜時(1日5回測定),舌下温であった.入眠潜時は,基準日と比較して睡眠が短縮されると午前(10:00)及び夕方(18:00)で極端に短くなった.とくに午前中の眠気増加は全被験者に共通しており,睡眠不足の指標として有効であることが示唆された.また,体温リズムの頂点位相は年齢に伴って後退し,7-8歳で位相が確立されるとした過去の知見とは異なっていた.実験研究2 睡眠の短縮及び延長が日中の眠気に及ぼす影響を検討するために,女子高校生10名を対象に,実験研究1とほぼ同様の手続で実験が実施された.睡眠短縮によって日中の眠気は増大し,睡眠延長によって日中の眠気はわずかに改善された.主観的に睡眠不足を訴えていた者と充足している者とを比較すると,不足群では午前の眠気(10:00)が増加していることと体温リズムの位相後退が見出された.フィールド研究 2つのフイールド研究に着手し,研究1では,小学4年,6年,中学1年,3年を対象に,クラス単位(6年生を除いて各学年2クラス,6年生は1クラス)で体温,睡眠習慣,心身疲労の測定を実施した.体温リズムの位相は,小学生で学年差は見られなかったが,中学生では小学生と比較して約0.6時間後退していた.また,就床時刻の遅い者と早い者とで比較すると,心身疲労は遅い者で有意に高くなっていた.委託調査研究 4小学校の1-6年生を対象に,睡眠習慣,健康調査(ストレス反応質問紙),出来事調査(心理的ストレッサー質問紙,5・6年生にのみ実施)を実施した.心身の健康状態に影響する要因は,心理的ストレッサーだけでなく,睡眠習慣が心理的ストレッサーとほぼ同等に影響を及ぼしていることが明らかにされた.また,睡眠習慣について因子分析を行い,抽出された因子をもとに,生徒個人ごとの睡眠習慣の良否をチェックし,フイードバックした.
著者
松浦 和代 芝木 美沙子 荒 ひとみ
出版者
札幌市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度から平成18年度までに実施した研究活動の概要は、以下の通りであった。わが国の学校トイレの環境衛生と児童の排泄に関する文献研究N II学術コンテンツ・ポータブル(GeNii)の情報ナビゲータを利用し、2005年12月までの研究課題関連文献を検索した。キーワード検索によって得られた総文献数は5000件を越えたが、このうち学校トイレと子どもを対象とした文献は65件であった。文献数の推移から、学校トイレや子どもの排泄に対する社会的関心は1996年以降に高まりを見せた。文献の内容は、実態報告や活動報告が多かった。その背景には、阪神・淡路大震災後の学校トイレ問題や滋賀県栗東中学校の教育荒廃とトイレフレッシュアップ構想、文部科学省による学校トイレの単独改修の認可などの動きがあった。児童の『生活リズム』を見直すモデル事業の実践-ねむり・めざめ・朝ごはん・排便北海道旭川市立近文第二小学校をモデル校として、児童のねむり・めざめ・朝ごはん・排便というわかりやすい健康指標から、児童の生活リズムを見直す健康教育を実施し、モデルプログラムの構築をめざした。平成17年度PTA教育講演会の開催、平成17年度「しっかりねむろう週間」(2週間)の実施、結果のまとめと報告(保健便り)、平成18年度PTA教育講演会、総括とまとめ、を実施した。睡眠週間の実施によって、朝食摂取率、朝の排便率、身体覚醒状況に有意な差が認められた。また高学年になるほど生活習慣の改善が良好であった。この結果は、健康教育の継続が成果を生むことを示唆している。二分脊椎患児の就学およびセルフケアの自立過程における学校トイレ問題社会人として既に自立した二分脊椎患者(女性)1名を対象に、同意を得てインタビューを行い、就学およびセルフケアの自立過程における学校トイレ問題を分析した。1時間40分のインタビュー内容を録音し、逐語録を作成した。抽出されたカテゴリー数は5つであった。それらは、【学校トイレ設備の問題】【休み時間の不足】【自己導尿移行期の母親の心配と葛藤】【同級生から好奇の目を向けられることによるストレス】【校外授業での公衆トイレ問題】であった。以上、研究成果に基づく啓蒙活動にも重きをおき、総説論文・学校トイレガイドライン他を発表した。
著者
前山 総一郎
出版者
八戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

フラタニティー(fraternitas)という中世的人的紐帯研究について、修道士中心に比較的古く(8世紀)から広まっていた祈祷兄弟盟約から、12・13世紀において叢生した俗人中心のフラタニティー(兄弟会)への変容過程について実態的解明を目指す本研究は、両者の移行形態であるコルヴァイ修道院領内の「信徒兄弟会」(fidelium frarternitas)を具体的研究事例とした。平成13年度は、ドイツ国ノルトヴェストファーレン国立公文書館にて史料Msc.I 132の調査をおこない、現存部分をマイクロフィルムにて収集した。帰国後、解読作業と電子情報化作業をおこなった。平成14年度は、各信徒兄弟会団体の実態の分析を以下3段階の手法でおこなった。1)史料検証をおこない、その結果、「人名リスト」の1350名が4つの「信徒兄弟会」団体の構成員であったことが判明した(Corvey2団体、Goslar1団体、Wulfelade1団体)。2)これらの団体と修道院(修道院長・修道院共住者団)との関係を、各規約および修道院機構をも確認しつつ解析した。その結果、信徒兄弟会4団体は共通して、(1)教会施設費等を集め修道院に拠出していること、(2)兄弟会の成員のために記念ミサ(memoria)が修道士により挙行されること等が確認され、修道院の祈祷活動をささえることを根底的理由とした結社団体と判明した。3)以上をうけ、俗人兄弟会形成との構造的連関の問題を検討した。その結果、「信徒兄弟会」が(1)俗人(信徒)の主体的形成によること、(2)拠点型結社(Ortsfraternitas)であること、(3)社会中層・下層等の多様な社会層から構成されたこと、という特質をもつことが判明した。以上の検証作業を通じ、本研究は、「信徒兄弟会」が帯びた新しい人的ネットワークの型が、12・13世紀に叢生する都市型俗人兄弟会と通底してこと(俗人の自主形成型・地縁型アソシエーション)をつきとめ、俗人兄弟会発生のメカニズムという、学界でもこれまで未知の領域に一定の見通しを提示し得たと考えている。
著者
佐光 恵子 中下 富子 伊豆 麻子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、自然災害に被災した児童生徒の心身のケアを迅速にかつ適切に進めていくために、被災時の避難所としての学校保健室の機能と養護教諭の役割を明らかにするすることである。第1段階は、新潟中越沖地震による震災直後から学校再開までの学校教育現場における養護教諭の実践活動の実態を明らかにするとともに災害時の保健室の機能を検討した。新潟中越沖地震を経験した養護教諭を対象に半構成的面接法によるインタビュー調査を実施し、質的な内容分析を行った。結果、被災直後から学校再開までの約40日間の養護教諭の実践活動は7つのカテゴリー、「避難所への保健室備品提供と緊急応急的な対応」「児童生徒の安否確認と健康観察」「児童生徒の心のケア」「衛生管理と感染予防活動」「避難所での継続的支援と他職種との連携」「学校再開に向けて保健室復元」「教職員の健康管理」に整理された。課題として、「保健室の環境整備」「情報支援」、「避難所の運営」、「人的支援」、「養護教諭への支援」が示された。第2段階は、自然災害時に応急救護としての機能を学校保健室が持てるために、保健室の備品等の整備現状と課題を明らかにすることを目的に、新潟県の公立学校に勤務する養護教諭372名を対象に保健室の設定状況や必要な備品に関する認識等の自記式質問紙調査を実施した。結果、養護教諭が災害時において学校保健室に必要と考える備品等は、「情報収集のための器機」と「救急処置・疾病予防処置」に関する内容が多かった。しかし、実際の保健室の整備状況は、パソコンやインターネットの設置率は8割を超えたが、テレビの設置率は1割ほどであった。救急箱や救急用医薬品は整備されていたが、松葉杖や滅菌機は4割弱、車いすの設置は3割弱、保健室に隣接するトイレやシャワーの設置は1割であった。保健室環境では、救急車が隣接できない保健室が5割弱を占め、災害緊急時に一時的な保健室の受入れは不可能であると回答した養護教諭は3割弱を占めた。以上のことから、災害緊急時に学校保健室が児童生徒や教職員への対応のみならず、高齢者や小児を含む地元住民の緊急的な多様なケアニーズに対応するためには、避難所となる学校施設における、災害時における学校保健室の機能と養護教諭の役割を明確にする必要があり、保健室の備品や環境整備が喫緊の課題であることが示唆された。
著者
西村 聡
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.能楽雑誌とその複写物を種々入手して,東京及び地方の番組を豊富に収集できた。このことによって,金沢の番組の欠を補えるだけでなく,金沢の能楽師たちの他地方における活動の実態が明らかになってきた。基本資料の整備が進んだことが第一の成果である。2.本研究は金沢能楽会を事例とするが,同時代の状況の中にどう位置づけるか,全国的な傾向と比較することを絶えず心掛けている。たとえば明治の能楽復興が10年代の保護期と30年代の自立期の二つの山があることや,その間の20年前後には演劇改良の影響を受けることなどは,『明治天皇紀』の関連記事の分析によっても跡づけられた。3.一方,金沢に限って見れば,「加賀宝生」の語の使用は,藩末期の能楽の隆盛を回顧して,明治中期に行われるのが,文献上の早い例であることが分かった。また,昭和の戦後間もない頃に「加賀宝生」が金沢市の記念文化財に指定される際に,その定義に関する当時の公式見解が「指定理由書」の中に示されていて,同文書を再発見できたことは収穫であった。4.金沢は「空から謡が降る」土地柄と言われる。その根拠を何に求めるかが課題であったが,『北国新聞』の記事を整理して,そのいわれと変遷を明らかにした。そして,能楽協会会員名簿を基に都道府県別の在住会員の数を比べると,石川県は人口比で全国第2位に位置し,しかも三役が揃い,由緒ある舞台や装束等が伝存することからしても,現在も能楽が盛んな地域といってよいことが確認できた。5.金沢能楽会の設立趣意書の原態を推定し,発起人の顔触れから社会的背景を探り、趣意書の文体に見る金沢の事情と全国的な趨勢を浮かび上がらせた。同じ頃の『金沢開始三百年祭記事』『旧藩祖三百年祭記事』の新たな資料的価値についても明確にした。
著者
大森 洋子
出版者
久留米工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

この研究では、観光と町並み保存が密接に結びついた地方中心市街地の重要伝統的建造物群保存地区が、その資源としての町並みを維持し高めていくための課題を具体的事例に即して明らかにすることを目的としている。主に八女福島と筑後吉井を事例に、(1)現在までの町並み保存とまちづくりの経緯、(2)現況景観、(3)観光活動、(4)町並み保存事業の内容と進捗状況、(5)町並み保存に関する住民の意識について研究分析を行い、以下のことが明らかになった。(1)両地域とも外部からの評価により町並みの価値を初めて認識し、それを活かしたまちづくりを一部の住民有志や行政が模索し始めている。やがてそれが町並みを舞台とするイベントの創出につながり、観光客が増加している。観光客の増加は地域の経済活性化に貢献し、また訪問者と地域住民との交流は地域住民の町並みの価値認識を高め、地域全体の町並み保存のコンセンサスが形成された。(2)公的制度による町並み整備事業を、町並みの持つ文化財、生活環境、観光資源の三つの価値を用いた視点から分析することにより、町並整備の発展の経緯とそれらが住民に与えた影響及び課題を明らかにできた。当初は観光資源整備としての意識が強かったが、現在では町並みの持つ文化財としての価値を重視しながら町並み整備が進められていることが分かった。それは同時に固有の景観を求める観光客のニーズに応えることになり観光資源の価値も高めている。又それは生活環境としての価値と矛盾する場合が多いが、文化財としての価値が損なわれないように努力がなされている。利便性や快適性だけを求めるのではなく、少々の不便さを感じながらも地域の誇りとして町並み保存が行われている。比較的順調に町並み整備が進められていると考えられる。町並み保存型の観光地形成を目指している地区では、この三つの価値のどの価値に重点を置くかは異なっても、三つの価値を守りお互いのバランスをはかりながら町並みを維持していくことが、良好な町並み景観を形成しまちづくりを進めていく条件になると考える。
著者
香川 せつ子
出版者
西九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、19世紀末から20世紀初頭のイギリスを対象に、女性大学教員の量的動向や属性、専攻分野等を検討し、教育研究スタッフへの女性の参入の過程と阻害要因を明らかにした。19世紀末まで女性の大学教員の職場は女性カレッジに集中し、教育研究環境や地位において不利な条件下に置かれながらも、自然科学等の新興学問分野で独自の業績を残したことを指摘した。
著者
村上 宣寛
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

小学生用主要5因子性格検査を全面的に改定し、1674名で全国標準化を行った。質問紙は51項目で構成された。ビッグ・ファイブは40項目で、それに問題攻撃性尺度を追加した。信頼性係数は0.68から0.81、保護者の評定と子供の自己評定の相関は0.39から0.56であった。