著者
大迫 一史 黒瀬 光一
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

オオグソクムシを食用として利用することを目的に、タンパク質回収法の検討、回収タンパク質のゲル形成能、内在性プロテアーゼの検討、およびアレルゲン性の検討を行った。タンパク質は塩水利用回収法で機能性を保持したまま回収可能であることが明らかとなった。また、回収タンパク質のゲル形成能は魚類に比較すると弱いが、十分食用可能であることがわかった。一方で、金属依存型プロテアーゼおよびセリン型のプロテアーゼがゲル形成を阻害することが示唆された。また、甲殻類と相当性が高いトロポミオシンを有する事から、これの低減化の必要性が示唆された。
著者
野田 百美
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我々は、微量の分子状水素(水素ガス、飲水中 0.008 ppm)が神経保護作用をもつことをパーキンソン病モデルマウスで示したが(Fujita et al., PLoS One, 2009)、単にヒドロキシルラジカル消去剤としての抗酸化作用だけではなく、持続性の神経保護作用を持つことが示唆された。新たな作用メカニズムとして、シャペロン分子である熱ショックタンパク(Hsp) 72 の発現や、消化官ホルモン・グレリンを介した作用が示唆された。これらの結果は、水素水の慢性摂取による予防医学の解明に大いに貢献することが期待される。
著者
渡邉 浩司
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

13世紀前半に成立した古フランス語散文「聖杯物語群」を対象とした先行研究を総括し、新たな研究の方向性を示唆した。先行研究の総括では「聖杯物語群」の写本伝承、名称、作者、成立年代などに関する主要な論点を整理した。新たな研究の方向性としては神話学的分析を提案し、その具体例として「聖杯物語群」の中でも主として『メルラン続編』(別名『アーサー王の最初の武勲』)、『ランスロ本伝』、『アーサー王の死』が収録する挿話群に注目した。
著者
粟谷 佳司 福間 良明 長妻 三佐雄 馬原 潤二 根津 朝彦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、同志社大学における新聞学専攻の形成と展開を通して、新聞学という学知とその文化を考察した。同志社大学の「新聞学」を戦前から戦後にかけての政治学などの学問の知との関係、戦後大衆化する大学と学生の文化などから複合的に考察し、その生成と展開について検証した。特に、鶴見俊輔を始めとした新聞学専攻の教授や京都の知識人、関係者の言説の研究から、「新聞学」という学知の変遷、学生が関わる大衆文化をその社会空間や言説空間の成立と展開過程から、文献や資料、インタビュー調査などによって分析した。
著者
森口 眞衣
出版者
日本医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は20世紀初頭の日本で創案された森田療法(Morita Therapy)を主対象とした成立史研究である。森田療法は明治近代化期のドイツ医学導入により精神医療が神社仏閣や民間施設などでの対処から精神病院での医療へと変化する時期に成立しており、その過程では仏教との関連がしばしば指摘された。しかし森田療法の成立には仏教だけではなく当時の社会的動態としての宗教との関連が想定されるものの、未整理の部分が残存する。そこで本研究は主に仏教史研究との連関を視野に入れつつ、精神療法と宗教の影響関係について、成立背景という側面から分析を試みる。
著者
塚原 伸治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、現在の商店街について、従来の研究が前提とする「地域活性化モデル」の限界を乗り越えて、民俗学的視点から「もうひとつの活性化論」を提示する。そのために2つの商店街(千葉県香取市、福岡県柳川市)の現地調査を実施し、以下を検討する。第一に、一度シャッター通りとなった商店街の現状を、それぞれの地域における取り組みの産物として理解しなおす可能性を検討する。第二に、商店街の衰退および再生について、過去100年の歴史的経緯との関連から再検討する。それぞれの生活と歴史に根ざした固有の文脈を重視する民俗学の視点を導入することで、21世紀における商店街の衰退と再生を理解するための新たなモデルを構想する。
著者
安達 三美 岡崎 具樹
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

加齢により、糖尿病などの糖質コルチコイド(Glucocorticoid: GC)の過剰分泌によって起こる病態が発症しやすくなる。そこで、老化によるGC産生系の変化と、老化への影響について検討した。(1)ヒト副腎皮質腫瘍細胞株(H295R細胞)を用いて細胞老化を惹起させると、GADD45Aおよびp38MAPK を介して、GC産生が亢進することを見出した。(2)血清中のGCが高齢マウスで高いことを見出した。また若いマウスで認められるGCの日内変動が、高齢マウスで消失することを見出した。加齢によるGC分泌系の撹乱により、老化そのものや、老化関連疾患の発症および進行が促進されることが示唆される。
著者
藤本 一勇
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脱構築思想を普及させたフランスの哲学者ジャック・デリダ(1930-2004)の基礎概念である「差延」は、伝統的な哲学における時間と空間の概念を変形し、両者が一体となり循環しあう関係を示す戦略素である。この概念を軸に、言語記号、テクスト、経験、情報、テクノロジー、政治権力など広範なデリダの思想を整理・読解し、彼の多様な思考の根底を「差延」というモチーフが貫いていることを明らかにした。その結果、初期の理論的段階、中期の文学的段階、後期の政治・倫理的段階を、表面的な変化にとらわれず、一貫したものとして把握することが可能となり、翻って同時代の多様な環境との相関関係を理解することを可能にした。
著者
熊野 直樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、ナチス・ドイツの麻薬政策と「大東亜共栄圏」との関係を実証的に明らかにする。具体的には、ナチス・ドイツは「満洲国」から輸入した阿片をモルヒネとして障害者等の「安楽死」にも使用していたのではないか。日本から大量に輸入したコカの葉が、ドイツの麻薬政策としてどのように使用されていたのか。覚醒剤の原料である麻黄は内モンゴルで採取されていたが、この麻黄も独日間で取引されていたのではないのか。第二次世界大戦中「大東亜共栄圏」においては、阿片と戦時重要物資とがバーター取引されていたのではないのか。以上の諸問題を実証的に明らかにするのが、本研究の概要である。
著者
山下 佳雄 後藤 昌昭 野口 信宏 下平 大治 檀上 敦
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

われわれは患者本人より採取した間葉系幹細胞より筋肉組織を再生し、舌癌で舌筋を欠損した患者へ使用する再生医療を目標に研究を行った。骨髄や歯髄より採取した幹細胞を用い、ある特殊な環境下で筋芽細胞へ分化を誘導することが可能であることが動物実験によって判明した。将来的に臨床応用できる可能性が示唆された。しかし分化する細胞の効率が良くなく、実際に臨床応用するには改善が必要である。また欠損部に用いる細胞シートの作製も試み動物実験に用いたが、舌という可動性の高い部位にため、実際に生着するには至らなかった。培養ならびに、移植可能な細胞シートの開発が必要である。
著者
阿部 倫明 小柴 生造 三枝 大輔 庄子 睦美
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究における主な発見を以下に記す。1.アルカリ性化剤介入前後における血漿および尿のLC-MS/MSによる尿毒症物質の定量的メタボローム解析の結果、クエン酸Na・K投与群でインドキシル硫酸・パラクレジル硫酸・アルギニノコハク酸の尿中排泄が増加し、インドキシル硫酸の血中濃度が低下した。2.クエン塩Na・K投与によって酸性尿の改善が認められたが、特に早朝尿に比べ随時尿のpH改善が大きいほど腎機能は良い傾向が認められた。クエン酸Na・Kは重曹とは異なりアルカリ性化以外の腎保護効果が期待できる可能性が示唆された。今後の慢性腎臓病の新規治療戦略の骨幹となる可能性が考えられた。
著者
堀 均 紺世 秀子
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

がん患者の免疫抑制の機構として,血中に増加するα-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(α-NaGalase)によってマクロファージ活性化因子(GcMAF)前駆体が分解することが提唱されている.(Yamamoto,N.et al.,1998)このような機構を検証するため,種々のがん細胞におけるα-NaGalase酵素活性について解析を行った.さらにがん患者の免疫賦活を目的として,α-NaGalase阻害剤設計を検討した.1)がん細胞としてHCT116,HepG2細胞と正常細胞としてChung Liver細胞及びラットhepatocytesを用いて,α-NaGalase活性を測定したところ,がん細胞において活性が有意に上昇していた.この際,がん細胞中のα-NaGalaseが,endo型であるか,exo型であるかについてそれぞれのPNP基質を用いて調べたところ,endo型活性は認められなかった.がん患者血清中のα-NaGalaseに関しても同様に検討したところ,endo活性は認められなかった.これより,GcMAF前駆体であるGcProteinのα-NaGalaseによる糖鎖分解の機構(endo型切断)について再検討を要することがあきらかになった.一方,血清より精製したGcProteinからin situで得られたGcMAFによるマクロファージの0^-_2産生能の上昇が認められた.2)mannosidaze阻害剤でアザ糖であろスワンソニンに免疫賦活作用があることから,これをリード化合物として,その水酸基の2面角をコントロールして阻害するグリコシダーゼの種類を制御することを目的にsp2炭素の導入に基づく分子設計を行い,合成ルートの確立を検討した.その結果エナミン誘導体の合成に成功した.これらについてα-NaGalaseを含む各種グリコシダーゼ阻害活性について現在検討中である.
著者
鈴木 正美 梅津 紀雄 岡島 豊樹 大井 弘子 アンタナス ギュスティス セルゲイ レートフ ミハイル スホーチン 木村 英明
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

1950年代後半~1980年代のソ連や中欧において独自の発展を遂げた非公式芸術(非公認芸術)とジャズ文化の密接な関係およびアンダーグラウンドで生まれた創造の場と人的ネットワークの形成に関して現地調査行い、基礎資料を収集し、それらをもとに研究を重ね、研究会および一般公開のシンポジウムを開催した。これにより旧共産圏社会における芸術文化の特質と機能がかなり明らかになった。
著者
川原 由佳里 田中 幸子
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

諸外国における高度看護実践の発展プロセスを調査した。海外での関連史資料の調査と米国の看護史専門家への聞き取り調査を行った。結果、高度実践看護は様々な変遷を辿り、関係職種との衝突と調整を経て、現行の教育認証、資格認定、権限を整備してきたこと、日本での導入においては看護学の基盤に基づく教育、保健師助産師看護師法での資格規定、検査、診断、処方に関する権限の医師法・薬剤師法を含めた法体系のもとでの整備が必要であり、とりわけ医師による医業独占を廃し、必要な権限を獲得すると同時に、ケアサイエンスとしての看護のアイデンティティと実践の基盤をより確かにすることが重要と考えられた。
著者
去川 俊二 吉村 浩太郎
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

免疫染色では凍結保存した脂肪組織の脂肪細胞はすべて死亡していることが明らかとなった。脂肪幹細胞についても、生存しているものの、割合は小さかった。さらに、脂肪移植の動物実験において、新鮮脂肪組織の移植と比較して、大きく劣ることがわかった。今回の研究によって、現存する脂肪組織の凍結保存方法では、一定の幹細胞は保存できるものの、脂肪細胞は不可能である。幹細胞についても細胞としての凍結保存に比べて、大きく劣ることが分かった。再生医療の重要な細胞源とされる脂肪組織の利用法の最適化について、新しい知見を与えた。組織としての凍結では効率が悪いため、何らかの方法を開発する必要があることが明らかとなった。
著者
上田 隆一
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はロボットで別々に扱われることが多い空間認識技術と学習技術を「記憶」をキーワードに統合し、新たなアルゴリズムを考案することを目的としている。平成29年度の計画では、ロボットが得たセンサ情報と実際に行った行動を記録した「記憶」に対して、記憶中の各部分と空間中の特徴を対応づける研究を行う予定を立てた。平成29年度、実際に得られた成果は1)「教示のためのエピソード上のパーティクルフィルタ(教示のためのPFoE)」の実装と実験による有効性の確認、2)教示のためのPFoEで使う「記憶」のグループ化(クラスタリング)機能の実装と有効性の確認であった。1)の「教示のためのPFoE」は当初計画になかったものであるが、これによって、ロボットが自身のタスクと空間に対する知識を同時に学習する際の学習効率を大幅に向上させることが可能となった。本手法によって、マイクロマウス型のロボットが、ゲームコントローラで教示されたいくつかの動きを再現することを確認している。2)については、1)で作成した「教示のためのPFoE」に、記憶をクラスタリングするアルゴリズムを追加することで、ロボットがタスク中に、自身がタスクのどの段階にいるのかを認識できるようにした。また、この認識結果を使って、ロボットがタスク中に必要な行動をショートカットする問題を緩和することに成功した。1)の成果を平成29年度9月に行われた日本ロボット学会学術講演会において公表した。また、IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA2018)に採択され、平成30年度の5月に公表予定である。2)の成果は、平成30年度の日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会で公表予定である。
著者
山中 恵一 水谷 仁
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

アレルギー疾患に対する抗原特異的治療は免疫療法であり、この奏効機序に関してIL-10産生型抑制性T細胞の誘導によるものと証明した。Th1/Th2バランスの是正ではなく炎症を抑制するサイトカインであるIL-10の炎症部位への局所誘導はアレルギー疾患に対する安全かつ効果的な解決法である。本研究ではアレルゲンの負荷により免疫抑制を誘導するIL-10産生の時系列的解析を行いその発現の時空間的把握を行った。