著者
新槇 幸彦 多田 塁
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染を病因とするものが多いと考えられている。そこで当教室の正電荷リポソームを用いた経鼻投与型粘膜ワクチンシステムによるガン治療ワクチンの開発を目指した。その結果、正電荷リポソームと抗原蛋白質の経鼻投与により、抗原特異的血清IgG2cの亢進と免疫マウスリンパ球の抗原特異的IFN-g産生誘導が見られた。これらのことから、正電荷リポソームを用いた経鼻投与型粘膜ワクチンシステムは細胞傷害性T細胞(CTL)活性を誘導可能であることが明らかとなった。
著者
小林 俊一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

水棲生物の中でもイルカの運動能力は高く、胴体を水上に持ち上げる立ち泳ぎができる。しかし、その立ち泳ぎの力学的な解析はされておらず、どのようにしてイルカは立ち泳ぎを実現しているのかが十分に明らかにされていない。そこで、本研究はカマイルカの立ち泳ぎにおける水上と水中における運動挙動を撮影、3次元動作解析によって明らかにし、その胴体を水上に持ち上げる推力を発生するメカニズムを検討した。また、その結果をイルカの尾びれを規範としたフィンを用いた水中推進機構に技術的に移転させ、高推力化を実現させた。
著者
河野 俊彦 高橋 正人 立木 幸敏
出版者
国際武道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

先行研究や我々の調査では、蛋白同化ステロイドホルモン(以下AAS)を利用するスポーツマンか存在していると予想される。しかしながら、その副作用についての詳しい報告、特に血液生化学的、内分泌学的、病理組織学的検索を総合的に行われたものはあまり見あたらない。我々はアンチドーピングの精神に基づき、動物実験系を用いて、現在Dopingとして行われている使用方伝(スタッキング、ステロイドサイクル)を取り入れ実験を行った。その結果、血液生化学的検索では薬物投与群に赤血球数などが高値を示した。また内分泌学的検査では薬物投与群でテストステロン、ジヒドロテストステロン、エストラジオールか高値を示した。病理学的検索では心臓、精巣および副腎に変性が観察された。さらにAAS投与ラットにジャンプトレーニングなどの運動を行わせた実験では、AAS投与による副作用は同様に起こることが確認され、さらに赤血球の増加、心臓の肥大、GOT、LDHの上昇などの副作用が運動によって助長され、より強く現れることが確認された。ステロイドサイクル1サイクルのピーク時と比較して、休薬時にも薬物投与群の内分泌学的変化は継続しているものと考えられる。AASの注射薬としての半減期に依存するものであるが生体への影響は長期間続くものと考えられる。また心臓をはじめとした臓器にみられた変性がこれを裏付けているものと考えられる。よってスポーツの現場で競技力向上を目的に安易にAASを使用することは不公正の点ばかりではなく副作用の点でも避けるべきであるといえよう。
著者
安酸 敏眞
出版者
聖学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、「万有在神論」(Panentheismus)について検討し、その思想的特質を剔抉することを目指した。当初の計画では、(1)セバスティアン・フランク、(2)レッシング、(3)フェヒナー、(4)トレルチ、(5)プロセス思想家、(6)西田幾多郎を取り上げる予定であったが、三年間で纏まった結論を得るには無理があることがわかったので、(1)、(2)、(4)を重点的に研究し、また新たにK.C.F.クラウゼを加えることにした。本研究によって明らかになったことは、(1)この用語がクラウゼによって1828年に造語されたものであること、(2)この概念は神の世界超越性と世界の神内在性を同時に主張しようとしており、したがって汎神論とは一線を画すものであること、(3)クラウゼ自身は"Panentheismus"以外に、"Allingottlehre"という用語も用いていること、(4)「万有在神論」は、ユダヤ・キリスト教的超越神論とストア主義的汎神論(あるいはスピノザ主義的内在論)を総合するような立場を目指していること、(5)しかし汎神論との区別はもとよりきわめて微妙であり、この立場は有神論の側からつねに汎神論の嫌疑をかけられてきたこと、などである。しかし「万有在神論」のモチーフは新約聖書の中にも見出され、また神秘主義やスピリチュアリスムスの系譜にもその方向性を示唆するものが少なくない。その一例をなすフランクの立場はしばしば汎神論と見なされているが、本研究によればむしろ「万有在神論」として捉えられるべきである。レッシシングの立場は"Panta-en-theismus"と名づけうるような独自の特質を備えている。トレルチの神概念は「万有在神論」の方向を示唆しているが、未だ概念的明晰さを欠いている。「万有在神論」の現代的妥当性を擁護するマッコーリーは、それに代えて「弁証法的有神論」(dialectical theism)という用語を提案している。今後の課題は、キリスト教的な「万有在神論」と東洋的なそれとの間の思想的相違を究明することである。
著者
細川 亮一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

20世紀の思想を形而上学の視点から解明することができる。ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、アインシュタインを形而上学者として描いた。20世紀の形而上学は、「形而上学(ハイデガー)対反形而上学(ウィトゲンシュタイン、アインシュタイン)」でなく、「20世紀の形而上学(ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、アインシュタイン)」という枠組みとして捉えなければならない。何故ならウィトゲンシュタインは「哲学は論理学と形而上学から成り立っている」と言い、アインシュタインは自らを「形而上学者アインシュタイン」と呼んでいるからである。
著者
国田 賢治 藤原 勝夫 渡辺 一志
出版者
札幌国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、(1)自発性瞬目の出現数の頚部前屈保持に伴う変化の運動経験による差異、(2)頚部前屈保持を伴う眼球運動反応トレーニング後の、眼球運動反応時間および自発性瞬目数の頚部前屈保持による変化、および(3)自発性瞬目及び随意性瞬目時の運動関連脳電位への頚部前屈保持による影響について検討した。検討の結果、以下のような知見を得た。(1)頚部前屈保持を伴う自発性瞬目数の減少は、高速ボール追従群でのみみられた。(2)頚部前屈を伴う眼球運動反応トレーニングを行うと、反応時間短縮効果がみられるようになったが、自発性瞬目数の減少効果はみられなかった。(3)随意性瞬目時のみ運動関連脳電位がみられ、その電位の立ち上がり先行時間は頚部前屈を保持すると短くなり、その電位のピークは大きくなった。
著者
谷口 隆秀
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

宿主の免疫反応により病態が悪化する様々なウイルス感染症が報告されている。それらのウイルスの中には、マクロファージを標的とする様々なウイルスが存在する。ウイルスに感染したマクロファージは宿主体内を遊走してウイルスを全身に拡散するとともに、大量のサイトカイン・ケモカイン等の産生を引き起こし病態を悪化させる。ウイルス性脳炎発症におけるTNFαの役割を明らかにするために、マウスに致死的な急性脳炎をおこすMHV-JHM株を用いて、TNFα遺伝子欠損マウスに対して脳内接種経路での感染実験を行った。その結果、マウスの生存率、CNSにおけるウイルス力価、脳の病理組織学的変化にはマウスの系統による違いは見られず、TNF-αはJHM感染による急性脳脊髄炎の病態発生に重要な役割を果たしていないことが示唆された。また、JHM感染TNF-α遺伝子欠損マウスにおけるサイトカイン発現について検討したところ、各種サイトカインおよびこれらケモカインの発現には系統による差が見られず、TNF-αはJHMによる急性脳脊髄炎におけるサイトカイン動態に関与しないということが示唆された。また、劇症肝炎型株(MHV-3)、脳炎型株(JHM)および弱毒株(S)の3株のマクロファージでの増殖能およびサイトカイン等の遺伝子発現について検討した。MHV増殖能では、3株で有意な差は認められなかった。MHV-3感染マクロファージは、他の株と比べTNFα、MIP1-α等のmRNAが他の2株と比べ多く発現していることが明らかとなった。
著者
石原 明子 奥本 京子 松井 ケティ 浅川 和也 アーノルド ミンデル エイミー ミンデル カール スタファー ダリル メーサー 高橋 隆雄 広水 乃生 桐山 岳大 梁 ビキ 石田 聖 田辺 寿一郎 李 ジェヨン
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

第一に、紛争解決の理論・手法同士の関係性について「紛争を構成する要素」「要素に対応した解決理論」「解決を実践するための手法」という観点から整理し、多様な紛争事例に対応できる「戦略的紛争解決」という枠組みを創出した。第二に、欧米で発展した紛争解決の手法をアジアや日本で活用する場合の適用可能性に関して日中韓等の方に質問紙調査を行い、知見を得た。第三に、原発災害被災者の家族や地域内での人間関係の葛藤のケアと変容支援のためアクション・リサーチを行った。「福島の若手らの水俣訪問ツアー」等を実施し、環境災害からの人生と地域再生に向けた日本型の修復的正義プロジェクトの一つのモデルが形成された。
著者
藤井 一二
出版者
城西国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

古代日本と渤海の交渉状況について王城の変遷段階ごとに把握し1、渤海早期の居城と王城(中京・東京城)の位置する延辺地区と日本を結ぶ交流が図們江・海蘭河・布尓哈通河の水路・沿道を主な回廊としたこと、2、中期・後期の上京龍泉府が牡丹江とその流域の交通路によって「日本海」に接する港(津)に連接していた様相・特性を、歴史的、考古学的に究明した。
著者
井上 勝生
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本軍の討伐大隊長文書と戦死兵の石碑碑文、討伐軍兵士個人の従軍日誌複数などを見出した。朝鮮農民ら東学農民軍の抗日蜂起は、従来は注目されなかった中央部山岳地帯で一斉に始まった。この時に、広島の大本営こそが、農民軍主力ほか全部を包囲殲滅する作戦を立案し、派兵した。作戦の後半では、日本軍指導部から殲滅命令が続発されており、朝鮮農民軍数万人以上の厖大な死者を出した。この事実関係を解明・実証した。
著者
遠藤 誠之 玉井 克人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

妊娠中に母体から胎児へ細胞が移行する現象を母体胎児間マイクロキメリズムと言います。その機序により、ある割合で子供が母親由来の細胞に対して免疫学的な寛容を示すことが分かっています。その場合、その子供は母親由来の細胞移植や、母親に特異的なタンパク質に対して拒絶反応を起こしません。我々は今回、この免疫寛容誘導効率を上げるための研究を行いました。妊娠マウスに間葉系幹細胞動員因子HMGB1を投与することで、母体血中から胎児へより多くの間葉系幹細胞が移行することを期待しました。その結果、免疫寛容誘導効率を約4倍増加させることができました。
著者
松本 健一
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

関節可動亢進(III)型エーラス・ダンロス症候群(EDS)の診断法の確立のために、III型EDSの原因遺伝子の一つであるテネイシンX(TNX)の血清濃度の定量系の開発を、ESI-TSQ質量分析計を用いて行った。その結果、健常人の 血清型TNX 濃度は144 ng/mLであることが明らかとなった。また、III型EDS患者血清における病態バイオマーカーの同定のために、III型EDS患者の血清を用いて、健常人血清と比べて発現差異を示すタンパク質の解析をMALDI-TOF/TOF質量分析計を用いて行った。その結果、補体関連の6個のタンパク質が患者血清中において発現増加していることが明らかとなった。
著者
遠藤 芳信
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

陸軍の動員計画策定との関係で、補給・兵站体制構築の特質を3点にわたって解明した。第一に、1894年兵站勤務令に関して、1891年戦時編制草案及び1894年戦時大本営編制等との関係を中心にして解明した。第二に、補給・兵站体制の財政的基盤を分析し、特に日清戦争期の諸予算編成と会計経理の体制構築を解明した。第三に、日清戦争開始期の第五師団の動員と混成旅団の編成を解明し、さらに朝鮮国内における混成旅団の兵站体制構築開始の特質を解明した。
著者
新内 康子 関 正昭 田中 利砂子 プンラープ ナリサラ パッチャラパン コーサンラワット
出版者
志學館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本・タイ発行の日本語教科書における文法用語の使用実態調査、国内外の日本語教師等に対する質問紙調査を行い、日本語教育用文法用語の使用傾向を明らかにした。出自に関しては、「い形容詞」「な形容詞」について日本語教科書等を分析して再検証をするとともに、「て形」「ない形」「辞書形」といった用語の出自に関して言及している文献についての解題も行った。これらの結果をもとに、統一した日本語教育用文法用語の提案も試みた。
著者
島 隆夫 長谷川 一幸 今里 元信 井上 俊司
出版者
公益財団法人海洋生物環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は洋上風力発電施設から発生する低周波水中音の魚類への影響を解明し,洋上風力発電施設の稼働に伴い必要となる環境アセスメントに必要となる知見を得る事を目的としている。本研究の結果,140 dB re 1 μPa/√Hzの100 Hz純音は遊泳行動や摂餌に一時的な影響を及ぼすが,マダイの摂餌リズム,摂餌量および成長,シロギスの性成熟,産卵行動,卵質,卵発生に顕著な影響は認められなかった。しかしながら,水中音に対する聴覚感度や反応は魚種によりさまざまであると考えられるため,洋上風力発電施設から放音される低周波水中音が海洋生物に及ぼす影響を把握するためにはさらなる知見の集積が必要である。
著者
曽根 文夫(山崎文夫) 岡田 なぎさ
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は局所冷却時の皮膚血流調節における冷受容体機能の役割と冷え症者の皮膚血流調節の特徴を明らかにすることであった。局所冷却時の皮膚血流量の減少反応は冷受容体刺激剤メントールの局所投与によって影響されなかった。このことは冷受容体機能が局所性皮膚血管収縮に主要な役割を果たしていないことを示唆する。冷え症者の血流量調節システムの特徴として、全身および局所冷却中に下肢末梢部において皮膚血管収縮が顕著に起こること、それには高いアドレナリン感受性が関与していることが示唆された。
著者
石井 延久 高波 真佐治
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

現在、勃起神経の局所の損傷を正確に診断できる神経機能検査はない。今回われわれは低周波電気刺激による勃起の誘発と神経の伝導時間の測定方法を検討した。先ず、現在インポテンスの神経学的検査として行なわれている球海綿体誘発筋電図による潜時(bulbo-cavernosus reflex latency time:BCR-L)についてインポテンス343例の臨床成績を検討した。結果は勃起が可能であった若年症例のBCR-Lに延長がみられたり、明らかに勃起神経に損傷を有する症例のBCR-Lが正常範囲であったり、必ずしもBCR-Lの成績と臨床像が一致しないことを明らかにした。そこで、われわれは低周波電気刺激装置を使用して勃起の誘発と陰茎背神経までの伝導時間の測定を試みた。方法は麻酔科領域で疼通治療に使用されている硬膜外脊髄電気刺激法による勃起の誘発と脊髄-陰茎背神経の伝導時間の測定を試みた。症例は重症感電による下肢の痙性疼通と排尿障害を伴うインポテンス患者である。この症例では脊髄陰茎背神経の伝導は障害されており、電気刺激による勃起は誘発できなかった。しかし、脊髄神経の刺激により、下肢の痙性疼通と排尿障害は改善した。本法は脊髄刺激の方法を改善することによりインポテンスの治療に応用するつもりである。このように脊髄刺激による陰茎背神経の表面電位の変化が容易に測定できることからインポテンス22例に経皮的に仙髄部に低周波電気刺激による陰茎背神経の表面電位変化の測定を試みた。結果は22例中17例に仙髄電気刺激による陰茎背神経の表面電位の変化が測定された。その結果、仙髄-陰茎背神経の伝導時間は平均7.79msecで、所家の報告とほぼ一致するデータであった。本法は経皮的に電気刺激するため侵襲がなく、外来で容易に施行できるよい方法と考えられた。
著者
舟山 直治 村上 孝一 尾曲 香織 為岡 進 竹田 聡
出版者
北海道博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、旧暦6月晦日の大祓に関わりの深い北海道南西部の川下・川裾・川濯神社の祭祀について、本州からの伝播、伝承ルートを明らかにするため、北前船の寄港地がある瀬戸内海沿岸から日本海沿岸の地域で分布と祭祀形態の調査を行った。川下・川裾・川濯神は、岡山県、鳥取県、兵庫県、京都府、滋賀県、福井県、石川県の7府県で祭祀されている。特に、福井県西部の祭祀は、水無月神社を「川すそ神」と呼称していることに加えて、1河川の河口を中心に祭神を祀る形態が、北海道の祭祀形態に類似している。
著者
仲地 豊 金沢 徹文
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

当該年度は主として、このかんにリファレンス情報となる各種データおよび全ゲノム解析ツールのアップデートがあったためこれらへの対応と、全ゲノムシーケンス後の2次解析環境の整備をおこなった。全ゲノム解析に必要な参照ゲノム配列を最新のhg38/GRCh38およびJRGv2に、また解析ツールをGATK3/4系にアップデートし、日本人変異データベースに3.5KJPNを採用するなど、解析環境の再構築と検証をおこない、また既存サンプルを用いた再解析もおこなった。これまで既報の変異・多型は遺伝子間領域やイントロン領域でおおく報告されており、全エクソーム解析では同定がむずかしかったが、全ゲノム解析によってこれらの解析・検証が可能なことを確認した。既存論文でみられていた変異・多型が日本人当事者では同定されなかったことから、人類集団間での差異の存在が示唆された。配列解析などから遺伝子上の多型・変異だけでなく、性ステロイドホルモン受容体の認識配列や他転写調節因子の認識配列上にみられる多型・変異についても考察をおこなった。今後は当事者ゲノムの解析に加えて、モデル動物などを利用して脳の性分化時期に機能する遺伝子群の情報を拡充する必要がある。一部の進捗については2017年度生命科学系学会合同年次大会(ConBio2017)にてポスター発表(2017年12月6日、神戸、1P-1186)、およびGID(性同一性障害)学会第20回研究大会にて口頭発表(2018年3月24日、東京、一般演題2-6)をおこなった。