著者
坂本 優子 時田 章史 鈴木 光幸 荻島 大貴 松岡 正造 本田 由佳
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

ビタミンDは現代社会の中で特に不足しがちな栄養素である。われわれは、幼児の「生理的」と言われているO(オー)脚がビタミンD不足に由来すること、ビタミンDサプリメントを使用すると改善が早いことを明らかにしてきた。O脚だけでなく精神発達や免疫機能保持にも重要な栄養素でありながら、われわれのコホートでは、90%がビタミンD欠乏という危機的状況であった。そして、その子ども達の血中ビタミンD濃度も他のコホートと比較して低く、O脚が高率に含まれていた。そこで、本研究では集団を前向きに検討し、妊娠中の母親と生まれてからの子どものビタミンDサプリメントの使用が子どものO脚の程度を軽くするかどうかを検証する。
著者
平野 修 河西 学 平川 南 大隅 清陽 武廣 亮平 原 正人 柴田 博子 高橋 千晶 杉本 良 君島 武史 田尾 誠敏 田中 広明 渡邊 理伊知 郷堀 英司 栗田 則久 佐々木 義則 早川 麗司 津野 仁 菅原 祥夫 保坂 康夫 原 明芳
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-10-21

奈良・平安時代において律令国家から、俘囚・夷俘と呼ばれたエミシたちの移配(強制移住)の研究は、これまで文献史学からのみ行われてきた。しかし近年の発掘調査成果により考古学から彼らの足跡をたどることが可能となり、本研究は考古学から古代の移配政策の実態を探るものである。今回検討を行った関東諸国では、馬匹生産や窯業生産などといった各国の手工業生産を担うエリアに強くその痕跡が認められたり、また国分僧尼寺などの官寺や官社の周辺といったある特定のエリアに送り込まれている状況が確認でき、エミシとの戦争により疲弊した各国の地域経済の建て直しや、地域開発の新たな労働力を確保するといった側面が強いことが判明した。
著者
後藤 佐多良 熊谷 仁 福 典之 宮本 恵里
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、骨格筋の速筋線維や遅筋線維の割合を規定する遺伝子多型を明らかにし、それらの遺伝子多型が将来の生活習慣病リスクとなるか否かについて検討を行った。日本人男性において、ACTN3 R577X多型およびACE I/D多型が骨格筋の筋線維組成に関連することを明らかにした。さらに、これら2つの遺伝子多型の組み合わせが、将来の高血圧発症リスクに影響を及ぼすことを明らかにした。これらの研究成果から、ACTN3 R577X多型およびACE I/D多型は骨格筋の筋線維組成に関連し、将来の高血圧リスクを反映する可能性が示唆された。
著者
細井 浩志
出版者
活水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平安貴族の遅刻の実例を集め、遅刻が多発する原因について、特に摂関期に関して、その原因を明らかにできた。また報時装置である漏刻と日本の時刻制度について、その起源を推測し、古代・中世日本において信じられていた宇宙構造論に関して、多くのことを明らかにした。
著者
田中 加代
出版者
愛国学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

従来の研究においては、近世儒教教育思想とその思想家の教育者としてのあり方に注目してきたのであるが、近世の教育法を現在も残していると思われるのは、伝統芸能の世界ではないかと思い至った。そこで本研究では、日本の伝統芸能の中でも、日本舞踊の世界を対象にすることとした。幼時より舞踊に関わってきたことから、外部からの客観的見方とは異なる内部的な考察が可能であると考えたのである。今日に残る日本舞踊の起源は、近世の歌舞伎舞踊であり、歌舞伎の演目の中に所作事が必ず入るところから、専門の振付師が必要となり、歌舞伎役者を兼ねた振付師が誕生した。彼らは流派を作り家元制度を作って、日本舞踊の指導を職業とした。その一人が四世西川扇蔵であり、その門弟の一人が初世西川鯉三郎である。二世西川鯉三郎は、名優六代目尾上菊五郎に丹精なる教えを受け、舞踊の才のみならず振付の才を発揮し、また弟子の指導においても、師匠ゆずりの卓抜性を示した。機会を捉えた教え方の妙味があったといえる。彼の創作舞踊は、古典の良さを基礎としながらも、能や狂言を取り入れ、現代性を加えて劇的な構成を施し、「舞踊劇」という新しいジャンルとなった。舞踊であっても単に形としての振りに終始するのでなく、文学性(ストーリー性)を重視し、菊五郎譲りの写実的で心理的な舞踊劇であった。すなわち、鯉三郎は日本舞踊の「大衆化」を最も意図したのである。しかしながら、「名人」と言われながらも、鯉三郎の芸や業績に対して、当時の社会的評価は必ずしも高かったとは言えない。真の芸術を正しく評価出来る文化的土壌や国民性を、日本はこれから育成していかなければならない。伝統芸能教育は、これからの生涯学習社会を支え、人々の失われた「感性」を養うことに、大いに力を発揮すべきものと思われるのである。
著者
本間 真人
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

漢方エキス製剤のうち抑肝散製剤(抑肝散と抑肝散加陳皮半夏)について、患者389名(平均年齢:68.6歳)を調査し、副作用の低K血症の発現頻度とリスク因子を検討した。抑肝散製剤投与開始後の34日(1-1600日)に、94名(24.2%)が低K血症を発現していた。低K血症のリスク因子として、抑肝散の投与(抑肝散加陳皮半夏ではない)、K低下薬剤の併用、低アルブミン血症、満量投与の4つが同定された。甘草含量が少ない抑肝散製剤でも、低K血症の発症頻度が高いことが明らかとなった。その傾向は特にK低下薬の併用患者で顕著であり、低アルブミン血症や抑肝散の満量投与で注意が必要であると考えられた。
著者
安村 典子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

プロメテウス神話について初めて言及しているのは紀元前7世紀のへーシオドスである。彼は『神統記』と『仕事と日』の両作品において、プロメテウスに関する物語を記している。『神統記』においては、プロメテウスとゼウスの知恵比べの物語が語られ、『仕事と日』では、ゼウスの火を盗んで人類に与えたプロメテウスに対する罰として、パンドーラが人類に送られたことが述べられている。本研究はこのプロメテウス神話を手がかりとして、(1)この神話のもつ意味を明らかにし、この神話を生み出した古代ギリシア人の精神を考察すること、(2)近代においてこの神話の意味が変容していったのはなぜであったのか、その理由を究明し、この神話のもつ今日的な意味を考察すること、以上の2点について研究することが、その目的である。
著者
久保田 均 久永 直見 高橋 幸雄 佐々木 毅
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

建築業従事者の職業性難聴について、三重県建設労働組合の男性組合員を対象に難聴の原因として考えられる各種有害因子へのばく露、或いは複合ばく露との関連を探る目的で調査研究を実施した。また聴覚に関して、従来の質問紙調査による自覚的聴覚と定期健診時の聴力検査結果(客観的聴覚)との関連を明らかにするための調査も行った。騒音ばく露に振動ばく露が加わると難聴発症のリスクが増幅、そこへ有機溶剤ばく露が加わることでリスクは更に増幅することがわかった。一方、難聴自覚症有り群となし群で、健診時聴力検査の有所見率に差があるか否かの検定を行ったところ、難聴自覚症無し群でも客観的聴覚の有所見率が高まる傾向がみられた。
著者
石橋 恭之 木村 由佳 佐々木 英嗣 千葉 大輔 石橋 恭太
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、再生誘導医薬(HMGB1ペプチド)を用いて関節内組織修復を促進する新たな治療戦略を開発することである。関節軟骨は一度損傷すると自然治癒困難と考えられているが、HMGB1ペプチドにより関節内に間葉系幹細胞誘導することで組織修復を促進することが可能となる。このような治療戦略は従来の再生医療とは異なるコンセプトであり、関節軟骨のみならず、半月板や靱帯修復に応用できる可能性を含んでいる。
著者
藤瀬 泰司
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は,財政民主主義の担い手を育成する公民教育カリキュラムの開発研究である。研究成果は次の4点である。1点目は,不信社会問題を教材した中等公民学習の授業を開発したことである。2点目は,不信社会問題を教材した初等公民学習の授業開発したことである。3点目は,中等公民学習の授業モデルを実践しその効果を確かめたことである。4点目は,初等公民学習の授業モデルを実践しその効果を確かめたことである。
著者
富岡 優子 北澤 菜月 大橋 有佳
出版者
北九州市立自然史・歴史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

藕糸織(ぐうしおり)は蓮の繊維から作られた糸(藕糸)を使用した織物である。植物学者大賀一郎は寛文11(1971)年の黄檗宗開祖・隠元隆琦の賛を有す福聚寺(北九州市)の「藕糸織仏画」を日本最古の藕糸織と鑑定した。しかし本品が藕糸という科学的根拠は示されておらず、2018年に赤外分光分析装置と実体顕微鏡を用いた非破壊の分析を改めて行った。結果、当該作品は藕糸と絹糸を撚った糸が使用されている可能性がきわめて高いことが判明したが、当該事例のように科学的根拠を伴わない藕糸織が多々ある。本研究は藕糸織作品について非破壊による再調査を行い、藕糸織がいかなるものか、客観的に提示することを目的とする。
著者
木村 草太
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本年度は、採択課題について、諸外国の差別対策法理の研究を進めるとともに、研究業績を雑誌論文の形で公表した。また、秋には、学会にて、国内の問題状況についての研究報告も行った。まず、本年度は、ヨーロッパ人権裁判所、アメリカ連邦裁判所、ドイツ憲法裁判所の諸判例を研究した。分野としては、トランスジェンダーや同性婚に関するもので、諸外国と日本法の比較の上で、ベースラインの設定の仕方が異なる点などについて研究を深めた。公になった研究実績としては、専門雑誌に、平等原則と非差別原則を概観する論文を発表した。同論文では、同性婚などの問題については、いわゆる権利着目アプローチと、平等着目アプローチがあり、アメリカ法の権利着目アプローチには、幾つかの問題があることを分析した。また、日本の最高裁判例においては、平等原則と立法裁量の問題について、時間的視野のないままに、過去の不合理を解消するための立法裁量と、将来の不合理を解消するための立法裁量の区分の重要性を意識しないものがあり、同一の裁判官が、ある判例では過去の不合理解消のための立法裁量を認識しつつ、別の判例ではそれを認識しないという現象が起きている。最高裁判事レベルで、適切な理論の認識ができていない現状の問題も指摘できた。秋には、全国憲法研究会にて、特に沖縄問題について研究発表を行った。差別感情は、合理的配慮や適性手続の不足を招くことが指摘されており、沖縄米軍基地問題の歴史から、その点を研究する報告を行った。差別と構造的な類似性を示す問題として、政教分離問題がある。今年度は、専門雑誌に政教分離問題に関する研究も発表し、別分野の構造を分析し、研究分野の構造を明らかにすると言う手法での研究も実績として示すことができた。また、関連分野としては、権利主体たる子どもの問題にも取り組んだ。新しい研究分野を発見するきっかけとなると思われる。
著者
伊藤 創 仲 潔 岩男 考哲 藤原 康弘
出版者
関西国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、構文レベルにおける日・英語の事態描写の違いに焦点をあて、日本語を母語とする英語学習者が、母語での事態描写のあり方に即した形で英語表現を構成できるような、より自然で低負担、効率的な英語学習法を提案しようとするものである。そのために、学習者・教科書データ、英語・国語教科書・教材の分析から、1)日本語母語話者の英語に見られる構文的な特徴、2)それらが日本語のどのような事態把握・描写に基づいているか、3)どのような過程でその描写の「型」が形成されるのか、を明らかにする。その上で、4)日本語母語話者の事態把握の型を生かした形で英語表現が産出できるような教材試案を作成、その効果検証を行う。
著者
高村 宏子
出版者
東洋学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の主要テーマは、歴史的、文化的に多くの共通点をもつ米国、カナダにおける日系人、女性、先住民の第一次大戦参加と大戦後の市民権獲得との関係を検証することである。日系人は第一次大戦を市民権獲得のための絶好の機会ととらえ、カナダでは、196名の日系人がカナダ遠征軍に志願してヨーロッパ戦線で戦った。ハワイおよび米国本土からも約500名の日系人がアメリカ軍に志願した。しかし、大戦後、日系人復員兵の米国における帰化権、カナダにおける参政権は人種を理由に認められなかった。日系人たちは法廷闘争を通じて市民権獲得を試みたが、人種の壁に阻まれて挫折した。そこで、日系人復員兵らが、米国、カナダの在郷軍人会にそれぞれ働きかけた。その結果、カナダでは1931年にブリティッシュ・コロンビア州の州選挙法の改正によって、日系人大戦帰還兵の参政権が実現した。また米国では、日系人で大戦帰還兵のトクタロウ・スローカムのロビー活動によって、1935年にナイ・リー法が米国議会で可決され、アジア系の復員兵に帰化権が認められた。女性の場合、参政権の障害となったのは、女性は銃を担いで国を守ることができないという考え方であったが、第一次大戦で女性が正規軍に採用され、さらに軍事貢献以外でも女性の活躍が評価された。米国、カナダにおける議会の審議過程は、戦時中の女性の活躍が高く評価されたことを示している。これらの事例から、軍隊参加が一級市民としての資格を得るための重要な鍵であることが実証された。一方、先住民の市民権問題の複雑さも判明した。アメリカ軍、カナダ軍に志願した先住民は多いが、彼らの動機は必ずしも市民権獲得ではなかった。そして、市民権付与に関する基準もまた、日系人、女性、先住民の間で異なり、さまざまであることが明らかになった。
著者
荒谷 邦雄 細谷 忠嗣 楠見 淳子 苅部 治紀
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年、日本でも国外外来種に対する規制や防除がようやく本格化したが、国内外来種への対応は大きく遅れている。 移入先に容易に定着し地域固有の個体群とも交雑が生じる上に交雑個体の識別が極めて困難な国内外来種はまさに「見えない脅威」であり、その対策は急務である。そこで本研究では、意図的に導入されたペット昆虫を対象に、形態測定学や分子遺伝学的な手法を利用して、国内外来種の実態把握や生態リスク評価、交雑個体の検出、在来個体群の進化的重要単位の認識などを実施し、国内外来種の「見えない脅威」の可視化とそのリスク管理を試み、在来の多様性保全のための効率的かつ効果的なペット昆虫問題の拡大防止策の提言を目指した。
著者
田村 朋美
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

古代ガラスにはSrが100~500 ppm含まれており、地中海周辺地域の出土品を中心にSr同位体比による産地推定が行われている。一方、日本出土品でSr同位体比分析が行われた例はほとんどない。本研究では、日本出土のガラス製遺物のSr同位体比分析を実施し、これまで特定することのできなかった生産地の特定を目指すものである。研究期間の前半では、化学組成において地中海周辺地域で生産された可能性の高いナトロンガラス(Group SI)を分析対象とした。さらに、主成分はナトロンガラスに類似するものの、微量成分や製作技法から判断すると南~東南アジア産と考えられる「ナトロン主体ガラス」(Group SIV)も調査した。その結果、Group SIは確かに地中海周辺地域で生産された「ナトロンガラス」であるが、Group SIVは真正の「ナトロンガラス」ではないことが確認された。さらに、日本出土のナトロンガラス(Group SI)の多くは、現在のイスラエル周辺で生産された可能性が高いことが明らかとなった。研究期間の後半では、インド~東南アジアで生産されたと考えられるカリガラスおよび高アルミナソーダガラスのSr同位体比を測定した。その結果、これらのガラスは地中海産のナトロンガラスとは全く異なる値を示した。特にカリガラス(Group PI)は今回調査した資料の中で最も高い値を示した。筆者らは製品の流通状況などからGroup PIのカリガラスについてインド産の可能性があると考えているが、インドのガンジス川流域の土壌は高いSr同位体比をもつことが知られており、関連性が注目される。最終年度では、これまでに実施した同位体比分析の結果について学会誌で報告するとともに、Sr同位体比にNd同位体比を組み合わせた日本出土のナトロンガラスの産地同定についても試みた。その結果、地中海産のガラスと矛盾しない結果が得られた。
著者
勝村 誠 重森 臣広 田林 葉 森 隆知 森 正美
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本プロジェクト研究は京都府総務部地方課、京都府企画環境部企画参事、京都府農業会議、府内各基礎自治体と連携しながら進められた。研究の目的は、地方政府の各セクションが中央政府の国土政策・地域政策とのかかわりで、それぞれどのように地域振興政策を展開しつつあるのかを具体的に検証していくことにあった。本プロジェクト研究の過程においては、京都府総務部地方課の協力を得て、歴代の「地域づくり施策」担当者にインタビュー調査を行うとともに、業務を通じて収集された資料のうち公表可能なものを提供していただいた。都道府県の「地域づくり」施策については全国に設置された協議会を府県で運営しているケースが大半であるが、全国的なルール作りや財源保障がないために都道府県政のなかにこの施策がどう位置付くかによって、各府県の実情はさまざまである。また、ソフト事業であり、予算の有無にかかわらずできることはあるため、担当者がこの施策に可能性を見いだすか、否かによって、事業の進展が左右されることも明らかになった。また、本研究プロジェクトがきっかけとなり、京都府地域づくり交流ネットワーク推進協議会と「地・生きネット京都」のメンバーで、実施に地域づくりかかわっているリーダの人々と交流を深め、リーダはどのようにして生まれるのかを、ライフヒストリー調査によって明らかにしてきた。報告書にはライフヒストリー調査の成果を掲載することができなかったが、調査によって得られた知見は報告書の随所に反映されている。地域づくりは自主的に進められなければならないが、その担い手にはある種の使命感が欠かせない。また、地域においてそのリーダを支える基盤も重要である。このたびの調査対象者を見る限りでは、地域づくりリーダの資質として、当該地域とそこに暮らす人びとへの愛着・愛情、まわりからの信頼が必要条件であるという結論が得られた。最後に、プロジェクトの活動を通じて京都府職員の方の共同研究への参加を得て、研究成果も執筆していただけたことも大きな意義があると思う。
著者
真山 全 吉田 脩 川岸 伸
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

宇宙空間軍事利用は核抑止のための通信や偵察が従来主であった。しかし、宇宙戦能力を米ソの他英仏中印等が備えるに至り、戦闘その他敵対行為の可能性も生じてきた。この宇宙戦を国際法がどう規律するかを検討する。まずは宇宙条約と武力紛争法の適用関係を検討し、更に武力紛争法で宇宙戦は空戦法規の適用で規律すべきなのか又は宇宙空間の安全保障上の意味が空とは異なることや宇宙の特殊性から宇宙戦法規という新domainを考えなければならないかを検討する。サイバー戦には武力紛争法新domain形成力がなかったのは明らかであるから、宇宙戦法規という新domainが成るとしたら20世紀初の空戦法規以来のことになる。
著者
青木 聡 草野 智洋 小田切 紀子 野口 康彦
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

離婚後に円滑な親子交流を実施するために必要な知識や心構えを学ぶホームページ「リコンゴの子育てひろば」を公開した。また,離婚後の共同養育に関するインターネット調査を行い,離婚後の共同養育や親子関係の再構築に必要な支援を検討するための知見を得た。一方,コロナ禍により,親教育プログラム(体験学習型グループワーク)の試行実践と効果検証を行うことができなかった。
著者
田代 晃正 太田 宏之
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

これまで、我々は強い光が眼に入ると、副交感神経反射により眼球内の血管拡張が促されることを明らかにし、この血管拡張が侵害刺激となり三叉神経を刺激(三叉神経ー副交感神経回路)、不快感(眩しさ)を誘発していることを提唱してきた。本年度は、光刺激に伴う三叉神経-副交感神経回路の興奮性増大に対するメラノプシン発現網膜神経節細胞(ipRGC: intrinsically photosensitive retinal ganglion cell)の関与を調べた。強い光が眼に入ると、三叉神経-副交感神経回路が興奮し、流涙反射がおこる。そこで、三叉神経-副交感神経回路へのipRGC の関与を調べるために、光刺激に対する反射涙の量を指標とし、検討を行なった。メラノプシンアンタゴニスト(オプシナミド)を静脈投与し、反射涙量の変化を観察すると、光刺激により誘発される反射涙の量は著しく減少した。また、反射涙を制御する三叉神経脊髄路核中間亜核(Vi)と尾側亜核(Vc)の移行部(Vi/Vc)のニューロンの活動を指標とし、三叉神経-副交感神経回路へのipRGC の関与のさらなる検討を行なった。in vivo 単一細胞記録法を用い、眼球への光刺激に反応するVi/Vcニューロンの神経活動記録を行い、オプシナミドによる神経活動の変調を観察した。その結果、光刺激により誘発されるVi/Vcニューロンの興奮性の増大はオプシナミドの静脈投与により、著しく減少することが明らかとなった。これらの結果より、「眩しさ」を誘発する三叉神経-副交感神経回路の興奮に対するipRGCの活性の関与が示された。今後は、刺激光の波長変化によるipRGCの活性の制御と、三叉神経-副交感神経回路の興奮の関わり合いを検討する。